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五年後
閑話休題 ゲイルと公爵5
「あーー!くそ!
とにかく、これで俺とお前は対等だ。
お前は間違いを犯した。俺も同罪!
ってことで、こっからは腹を割って行こうぜ?」
グラスにまだなみなみと酒を注ぎ、一気に飲み干す。
常ならばなんということのない量なのに、言うべきことを言って安心したからか、一気に酔いが回ってきた。
「……なあなあ、サフィをどう思う?すげえかわいいだろ?
我ながら最高に上手く子育てした!
魔力の多さは生まれつきのもんだ。
だが、サフィの良さはそんなとこじゃねえ。
黒いもんも白いもんもなんでも自分のものにしちまう強さ。人の弱さに寄り添い、前に引っ張っていく包容力。どんな苦境も吹き飛ばしちまう逞しさ。どんな相手にも正論を堂々とぶちかますふてぶてしさ。
サフィのいいとこは、その中身だ。
なあ、お前もそう思うだろ?」
ぐでんと机に伏してぐだぐだとノロケれば、
「その言い方は褒めているのか?
だが確かに、サフィラスの本質はその強さにこそあるのだと思う。
しなやかでありながら、決して折れぬ。
まるでエリアナのようだ。
そしてどんな苦境でも切り開くだけの強さ。弱いものに寄り添う優しさ。
人を愛することを知り、愛を与えることに躊躇しない。
それはゲイル、君がサフィラスに与えたものだ。
お前は素晴らしい父親だ」
真面目に返されてしまった。
なんだよ、おい。照れるじゃねえか。
「ははは。そうか?
……そうか。
どうだ?俺、なかなかうまくやったろ?
あんなに可愛くて可愛くて可愛い息子、いねえよな?」
「ああ。サフィラスはとても可愛い。
ゲイルが育てたからこそ、サフィラスはあのように素晴らしい子に育ったのだと思う。
私は……知っているだろうが、あまり子育てには向いていないからな」
あまりにも殊勝な態度に思わず庇うようなことを言ってしまった。
「お前だってライとリオを育てただろう?
そりゃ間違ったことをしたのは確かだ。だが、お前たちはきちんと償ってきた。
よく頑張ったと思うぞ?」
「ライオネルとリオネルが良い子に育ったのはエリアナのおかげだ。私にできたのは……反面教師となることくらいだろう」
寂しげに自嘲するフィオ。
「いやいやいや。アイツらお前にそっくりだぞ?
ライは真面目な努力家だ。表情には出ねえが、照れ屋だし意外と激情家だろう?家族思いでもあるよな?
リオはリオで、おちゃらけて見えるがその本質は策略家。サフィのためにいろいろと手を回してるだろ?周りをガッツリ固めたりさ。
これは全部、お前から受け継いだもんだろ」
そう指摘してやれば、初めて言われたとばかりに少し驚いた顔になった。
「……そうなのだろうか?……ゲイルには私がそう見えているのか?」
「ああ。お前、もともと家族想いじゃん。情にも厚いし。
そもそも、お前がクソ親父に従ってたのだって、親を悪く思いたくなかったからだろう?
お前は途方もなく優しいんだよ。
サフィにだってそうだろ?
お前言いたい放題やりたい放題されてんのに。
一寸くらいは反論しても良かったんだぞ?なんか思うところとか無かったのか?」
意地悪く言ってやれば
「もともと悪かったのは私なのだから……私に贖罪の機会を与えてくれているのだなと。少しでも息子のためにしてやれることがあるのを嬉しいと思っているぞ?」
小首をかしげて自嘲されてしまう。
「お前、ちゃんと父親なんだよなあ……。なのになんでああなっちまったのか………」
ポロリと漏れた呟きに、フィオは遠い目をして語ってくれた。
「…………エリアナは、私にとって妻である以上に最愛の友であり、同志であり……母親のような存在だったのだ」
耳に入ってきた思わぬ単語に、聞き間違いかと問い返す。
「妻は分かる。まあ、友というのもそもそも始まりが友情ってので、そうなんだろうよ。
だが、同志とか母親ってのはおかしくねえか?
てかそもそも『妻である以上に』ってのがおかしいだろ。
あんなに仲が良い夫婦だったくせに」
俺の愛する大切な妹と、俺の愛する可愛い友人。
その二人が愛し合い共に歩む道を選んだ。
だからこそ俺は、お前たちを祝いその幸せを願っていたのに……。
とにかく、これで俺とお前は対等だ。
お前は間違いを犯した。俺も同罪!
ってことで、こっからは腹を割って行こうぜ?」
グラスにまだなみなみと酒を注ぎ、一気に飲み干す。
常ならばなんということのない量なのに、言うべきことを言って安心したからか、一気に酔いが回ってきた。
「……なあなあ、サフィをどう思う?すげえかわいいだろ?
我ながら最高に上手く子育てした!
魔力の多さは生まれつきのもんだ。
だが、サフィの良さはそんなとこじゃねえ。
黒いもんも白いもんもなんでも自分のものにしちまう強さ。人の弱さに寄り添い、前に引っ張っていく包容力。どんな苦境も吹き飛ばしちまう逞しさ。どんな相手にも正論を堂々とぶちかますふてぶてしさ。
サフィのいいとこは、その中身だ。
なあ、お前もそう思うだろ?」
ぐでんと机に伏してぐだぐだとノロケれば、
「その言い方は褒めているのか?
だが確かに、サフィラスの本質はその強さにこそあるのだと思う。
しなやかでありながら、決して折れぬ。
まるでエリアナのようだ。
そしてどんな苦境でも切り開くだけの強さ。弱いものに寄り添う優しさ。
人を愛することを知り、愛を与えることに躊躇しない。
それはゲイル、君がサフィラスに与えたものだ。
お前は素晴らしい父親だ」
真面目に返されてしまった。
なんだよ、おい。照れるじゃねえか。
「ははは。そうか?
……そうか。
どうだ?俺、なかなかうまくやったろ?
あんなに可愛くて可愛くて可愛い息子、いねえよな?」
「ああ。サフィラスはとても可愛い。
ゲイルが育てたからこそ、サフィラスはあのように素晴らしい子に育ったのだと思う。
私は……知っているだろうが、あまり子育てには向いていないからな」
あまりにも殊勝な態度に思わず庇うようなことを言ってしまった。
「お前だってライとリオを育てただろう?
そりゃ間違ったことをしたのは確かだ。だが、お前たちはきちんと償ってきた。
よく頑張ったと思うぞ?」
「ライオネルとリオネルが良い子に育ったのはエリアナのおかげだ。私にできたのは……反面教師となることくらいだろう」
寂しげに自嘲するフィオ。
「いやいやいや。アイツらお前にそっくりだぞ?
ライは真面目な努力家だ。表情には出ねえが、照れ屋だし意外と激情家だろう?家族思いでもあるよな?
リオはリオで、おちゃらけて見えるがその本質は策略家。サフィのためにいろいろと手を回してるだろ?周りをガッツリ固めたりさ。
これは全部、お前から受け継いだもんだろ」
そう指摘してやれば、初めて言われたとばかりに少し驚いた顔になった。
「……そうなのだろうか?……ゲイルには私がそう見えているのか?」
「ああ。お前、もともと家族想いじゃん。情にも厚いし。
そもそも、お前がクソ親父に従ってたのだって、親を悪く思いたくなかったからだろう?
お前は途方もなく優しいんだよ。
サフィにだってそうだろ?
お前言いたい放題やりたい放題されてんのに。
一寸くらいは反論しても良かったんだぞ?なんか思うところとか無かったのか?」
意地悪く言ってやれば
「もともと悪かったのは私なのだから……私に贖罪の機会を与えてくれているのだなと。少しでも息子のためにしてやれることがあるのを嬉しいと思っているぞ?」
小首をかしげて自嘲されてしまう。
「お前、ちゃんと父親なんだよなあ……。なのになんでああなっちまったのか………」
ポロリと漏れた呟きに、フィオは遠い目をして語ってくれた。
「…………エリアナは、私にとって妻である以上に最愛の友であり、同志であり……母親のような存在だったのだ」
耳に入ってきた思わぬ単語に、聞き間違いかと問い返す。
「妻は分かる。まあ、友というのもそもそも始まりが友情ってので、そうなんだろうよ。
だが、同志とか母親ってのはおかしくねえか?
てかそもそも『妻である以上に』ってのがおかしいだろ。
あんなに仲が良い夫婦だったくせに」
俺の愛する大切な妹と、俺の愛する可愛い友人。
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だからこそ俺は、お前たちを祝いその幸せを願っていたのに……。
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