441 / 538
五年後
閑話休題 ゲイルと公爵7
ご拝読頂きありがとうございますっ!!
ゲイルの話、おもった以上に長くなっております。
色々と語れなかったことを一気に………。
大人組もね、色々と抱えておりました。
もうしばらくお付き合いくださいまし。
そしてきっと今いちばん不憫なのはお兄様wwwごめんよレオン…!
※※※※※※※※※※※
俺の言葉にフィオは目を数回瞬かせ、そしてとても柔らかな微笑を見せた。
なんというか……蕾がほころぶような、そんな笑み。
「……!」
その無垢さがなんだか胸にグッときて、ごくりと唾をのみ込んだ。
あれ?
待てよ、こいつなんて言ってた?
エリアナとこいつは同志?同じ想いを抱えていた?
……エリアナが俺に似ていたから?
…………もしかしてコイツ、昔から俺に惚れてたのか?
聞き流していた部分がようやくしっかりと脳に届き、思わず顔に血が昇った。
え?
そういうことだったのか?
もしかして……エリアナも?
いや、あっちは妹としての、家族としての愛情だろう。俺の母親みてえに世話焼きだったからなあ。
でも、こいつは……
思わずマジマジと見つめれば、しっかりとその視線を絡め捕らえてしまった。
「これでもうあなたに隠していることはない。
ゲイル。サフィラスの父となりサフィラスを護り育ててくれたことに感謝している」
ああ。胸が、熱い。
酒のせいだけじゃない、これは……フィオの熱だ。
「そして………言わせて欲しい。私はそんなあなたを愛している。
いや、ずっと愛してきた。
息子を殺しかけた私に、そんな資格はないのかもしれない。
だが、どうか、これからもサフィラスとゲイルの傍に居ることを許して欲しい。
どうか、私を側においてもらえないだろうか?」
涼やかな濃紺の瞳の奥に燃える激情。
その熱が俺を射抜く。
「………俺は重いぞ?」
そう。俺の愛は、重い。
俺が特別扱いした相手は、俺に執着して狂う。俺を自分だけのものにしようとする。
こっちの気持ちなんてお構いなしに。
可愛がっていた後輩も、尊敬していた先輩も。
共に学んだ友ですら。
俺の愛をほんの少し注いだだけでおかしくなった。
そして言うのだ。
「自分はあなたにとって特別なのではないのか」と。
「自分以外のことに心を割かないでくれ」「自分だけを見ろ」と。
なんども誘拐されかかった。薬を盛られるのにも慣れている。
なのに、彼らからすれば俺こそが加害者なのだ。
「私がこんなに愛しているのに、ゲイルが私だけのものになってくれないからだ!」
「私を愛しているのだから、私のものになるべきだ」
だから俺は、満遍なく愛を注ぐようになった。
特別を作らず、慎重に距離を測って。
俺の重過ぎる愛を薄めて薄めて。
「俺は皆を愛している」のだと。「お前だけが特別なのではない」と。
親友と言えるのは、クリスとハルト、そしてフィオくらい。
こいつらだけは壊れなかった。
俺の友情を愛情をそのまま受け入れ、スポンジのように吸収し、同じものを返してきた。
俺を縛り付けることもなく、俺のありのままを受け入れてくれた。
だからこいつらの側でだけは息が吸えたのだ。
その中でも、こいつは特別だった。
不器用で、健気で。愛を求めながらも手を伸ばすすべを知らない、それが可哀そうで可愛くて。
思わず手を伸ばし、可愛がった。目をかけてしまった。
でもこいつが俺を束縛することはなかった。
そっと俺とエリアナの側に寄り添い続けた。
こいつなら、狂わずにずっと俺の側に居てくれるんじゃないか。
俺の愛を思う存分注いでも受け止めてくれるんじゃないか。
そんな期待をした。
その時には俺はこいつを…愛していたのかもしれない。
だが、フィオはエリアナの手を取った。
きっとエリアナとならば、こいつもなんの障害もなく幸せな家庭を築ける。
そしてフィオならばエリアナを幸せにしてくれるだろう。そう思った。
そこからは、幸せな公爵家を見守ってきた。
寂しさはあれ、二人とライやリオの幸せを見ているだけで満たされる気がした。
なのに、俺はその幸せを護れなかった。
エリアナを救えず、こいつを一人にした。幼いサフィを護れなかった。
そんな俺の罪の上に、俺の愛は成り立っている。
俺の幸せは成り立っていた。
なのに、息子を手放すのが辛いと思っちまった。
いつまでも子供でいて欲しい、なんて。
俺の腕の中で護られいて欲しい、なんて。
俺の嫌っていたアイツらみてえじゃねえか。
なあ、フィオ。
俺の罪。俺の愛。
お前の罪。お前の愛。
すれちがっちまったそれを、絡まっちまった糸を、解いてもいいのか?
サフィがさ。言ってたんだ。
「ゲイル。俺がレオンと結婚するとゲイルは一人になるでしょ。
勿論ずっとゲイルのこと大好きだし、会いに行くし、大好きなお父様であることは変わらないんだけど。
これから俺の一番はレオンなの。だってそれが夫夫ってものでしょ?
だからあのね、寂しいけど、ゲイルはゲイルを一番に愛してくれる人を見つけて。
俺の代わりにゲイルの側に居てくれる人を見つけて欲しい。
公爵ってさ、ダメな人だけど、父親としてはぜんぜんなんだけど、ゲイルを大事にできるのはあの人かなと思う。
だってゲイルってばちょっとダメな人、好きでしょ。世話焼きだし。
あの人ってば誰かついてないとダメダメだし。ゲイルも、誰かがいないと寂しんぼだし。ピッタリでしょ。
だから俺、いいよ。
最高の父親もいるし、婚約者もいるし。最高に幸せだから、恩赦する。公爵、恩赦!
なので、遠慮なんてなっしんぐ!ってことで!
無理しなくてもいいけど、我慢もしなくていいからね!了解?」
もう抑えなくていいのか?
拒絶しなくていいのか?
……俺の罪も赦されたのだろうか。手を伸ばしてもいいのだろうか?
愛する息子の一番はもう俺じゃない。
息子の成長が嬉しい。でも本当は寂しい。寂しくてたまらないんだ。
兄貴、姉さん、エリアナ。俺の愛した人たちはもういない。
俺は愛したい。想いのままに愛したい。
このいき場のない愛を。想いをどうしたらいいのか分からない。
受け止めてくれたのはサフィ。
俺の愛する息子。
でもそんな俺の愛するサフィも、俺から去っていく。
俺と同じ罪を背負うフィオ。
なあ、サフィ。いいのか?
俺の愛をまた注ぐことが許されるのだろうか。
フィオ。
お前は強い。お前は変わったんだな。
お前の方から手を伸ばしてきやがった。
罪を背負って、背負い続けて、それでも俺を求めるか。
だったら俺も………
「なら、傍に居ろ。俺の愛を受け止めろ。俺と共に罪を抱えて生きろ。
俺と共にサフィを愛し、サフィのために生きろ」
ゲイルの話、おもった以上に長くなっております。
色々と語れなかったことを一気に………。
大人組もね、色々と抱えておりました。
もうしばらくお付き合いくださいまし。
そしてきっと今いちばん不憫なのはお兄様wwwごめんよレオン…!
※※※※※※※※※※※
俺の言葉にフィオは目を数回瞬かせ、そしてとても柔らかな微笑を見せた。
なんというか……蕾がほころぶような、そんな笑み。
「……!」
その無垢さがなんだか胸にグッときて、ごくりと唾をのみ込んだ。
あれ?
待てよ、こいつなんて言ってた?
エリアナとこいつは同志?同じ想いを抱えていた?
……エリアナが俺に似ていたから?
…………もしかしてコイツ、昔から俺に惚れてたのか?
聞き流していた部分がようやくしっかりと脳に届き、思わず顔に血が昇った。
え?
そういうことだったのか?
もしかして……エリアナも?
いや、あっちは妹としての、家族としての愛情だろう。俺の母親みてえに世話焼きだったからなあ。
でも、こいつは……
思わずマジマジと見つめれば、しっかりとその視線を絡め捕らえてしまった。
「これでもうあなたに隠していることはない。
ゲイル。サフィラスの父となりサフィラスを護り育ててくれたことに感謝している」
ああ。胸が、熱い。
酒のせいだけじゃない、これは……フィオの熱だ。
「そして………言わせて欲しい。私はそんなあなたを愛している。
いや、ずっと愛してきた。
息子を殺しかけた私に、そんな資格はないのかもしれない。
だが、どうか、これからもサフィラスとゲイルの傍に居ることを許して欲しい。
どうか、私を側においてもらえないだろうか?」
涼やかな濃紺の瞳の奥に燃える激情。
その熱が俺を射抜く。
「………俺は重いぞ?」
そう。俺の愛は、重い。
俺が特別扱いした相手は、俺に執着して狂う。俺を自分だけのものにしようとする。
こっちの気持ちなんてお構いなしに。
可愛がっていた後輩も、尊敬していた先輩も。
共に学んだ友ですら。
俺の愛をほんの少し注いだだけでおかしくなった。
そして言うのだ。
「自分はあなたにとって特別なのではないのか」と。
「自分以外のことに心を割かないでくれ」「自分だけを見ろ」と。
なんども誘拐されかかった。薬を盛られるのにも慣れている。
なのに、彼らからすれば俺こそが加害者なのだ。
「私がこんなに愛しているのに、ゲイルが私だけのものになってくれないからだ!」
「私を愛しているのだから、私のものになるべきだ」
だから俺は、満遍なく愛を注ぐようになった。
特別を作らず、慎重に距離を測って。
俺の重過ぎる愛を薄めて薄めて。
「俺は皆を愛している」のだと。「お前だけが特別なのではない」と。
親友と言えるのは、クリスとハルト、そしてフィオくらい。
こいつらだけは壊れなかった。
俺の友情を愛情をそのまま受け入れ、スポンジのように吸収し、同じものを返してきた。
俺を縛り付けることもなく、俺のありのままを受け入れてくれた。
だからこいつらの側でだけは息が吸えたのだ。
その中でも、こいつは特別だった。
不器用で、健気で。愛を求めながらも手を伸ばすすべを知らない、それが可哀そうで可愛くて。
思わず手を伸ばし、可愛がった。目をかけてしまった。
でもこいつが俺を束縛することはなかった。
そっと俺とエリアナの側に寄り添い続けた。
こいつなら、狂わずにずっと俺の側に居てくれるんじゃないか。
俺の愛を思う存分注いでも受け止めてくれるんじゃないか。
そんな期待をした。
その時には俺はこいつを…愛していたのかもしれない。
だが、フィオはエリアナの手を取った。
きっとエリアナとならば、こいつもなんの障害もなく幸せな家庭を築ける。
そしてフィオならばエリアナを幸せにしてくれるだろう。そう思った。
そこからは、幸せな公爵家を見守ってきた。
寂しさはあれ、二人とライやリオの幸せを見ているだけで満たされる気がした。
なのに、俺はその幸せを護れなかった。
エリアナを救えず、こいつを一人にした。幼いサフィを護れなかった。
そんな俺の罪の上に、俺の愛は成り立っている。
俺の幸せは成り立っていた。
なのに、息子を手放すのが辛いと思っちまった。
いつまでも子供でいて欲しい、なんて。
俺の腕の中で護られいて欲しい、なんて。
俺の嫌っていたアイツらみてえじゃねえか。
なあ、フィオ。
俺の罪。俺の愛。
お前の罪。お前の愛。
すれちがっちまったそれを、絡まっちまった糸を、解いてもいいのか?
サフィがさ。言ってたんだ。
「ゲイル。俺がレオンと結婚するとゲイルは一人になるでしょ。
勿論ずっとゲイルのこと大好きだし、会いに行くし、大好きなお父様であることは変わらないんだけど。
これから俺の一番はレオンなの。だってそれが夫夫ってものでしょ?
だからあのね、寂しいけど、ゲイルはゲイルを一番に愛してくれる人を見つけて。
俺の代わりにゲイルの側に居てくれる人を見つけて欲しい。
公爵ってさ、ダメな人だけど、父親としてはぜんぜんなんだけど、ゲイルを大事にできるのはあの人かなと思う。
だってゲイルってばちょっとダメな人、好きでしょ。世話焼きだし。
あの人ってば誰かついてないとダメダメだし。ゲイルも、誰かがいないと寂しんぼだし。ピッタリでしょ。
だから俺、いいよ。
最高の父親もいるし、婚約者もいるし。最高に幸せだから、恩赦する。公爵、恩赦!
なので、遠慮なんてなっしんぐ!ってことで!
無理しなくてもいいけど、我慢もしなくていいからね!了解?」
もう抑えなくていいのか?
拒絶しなくていいのか?
……俺の罪も赦されたのだろうか。手を伸ばしてもいいのだろうか?
愛する息子の一番はもう俺じゃない。
息子の成長が嬉しい。でも本当は寂しい。寂しくてたまらないんだ。
兄貴、姉さん、エリアナ。俺の愛した人たちはもういない。
俺は愛したい。想いのままに愛したい。
このいき場のない愛を。想いをどうしたらいいのか分からない。
受け止めてくれたのはサフィ。
俺の愛する息子。
でもそんな俺の愛するサフィも、俺から去っていく。
俺と同じ罪を背負うフィオ。
なあ、サフィ。いいのか?
俺の愛をまた注ぐことが許されるのだろうか。
フィオ。
お前は強い。お前は変わったんだな。
お前の方から手を伸ばしてきやがった。
罪を背負って、背負い続けて、それでも俺を求めるか。
だったら俺も………
「なら、傍に居ろ。俺の愛を受け止めろ。俺と共に罪を抱えて生きろ。
俺と共にサフィを愛し、サフィのために生きろ」
あなたにおすすめの小説
結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です
柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。
そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。
真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。
けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。
「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」
彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。
アンリは実は、亡き国王の婚外子。
皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。
何もしなかっただけです
希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。
それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。
――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。
AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。
あなたの愛したご令嬢は俺なんです
久野字
BL
「愛しい令息と結ばれたい。お前の家を金銭援助するからなんとかしろ」
没落寸前の家を救うため、強制的な契約を結ばれたアディル。一年限りで自分の体が令嬢に変わる秘薬を飲まされた彼は、無事に令息と思いを通じ合わせることに成功するが……
「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った
歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。
だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」
追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。
舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。
一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。
「もう、残業はしません」
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。
下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。
ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。
小説家になろう様でも投稿しています。