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五年後
閑話休題 ゲイルと公爵9
肩を叩きあって、頭を突き合わせて愚痴ったり、惚気たり。
酒瓶を何本も空けて語り続けていると……
いつの間にかフィオの顔が近くにあった。
霞む眼で見上げれば、さすが綺麗な顔をしてやがる。
ああ。やっぱこいつ、カッコいいよなあ。
まつ毛バサバサじゃねえか。
よく見ると、口元はサフィに似てる……?
ん?見上げる?
いつの間にか俺は横に倒れ、フィオに膝枕されていた。
何ツー失態だ。
「……あー……すまん。起きる。……あー、クゾ、さすがに頭がぼーっとするぜ。
ヒー……んっ……!」
ぼんやりする頭を左右に振って、「ヒール」と言いかけた唇をフィオに塞がれた。
「フィ…「ゲイル……黙って」
強引なようでいて優しく触れるフィオの唇。
白皙の美貌は、冷たそうに見えるのに……その唇は存外熱い。
フィオの柔らかなまつ毛がパサパサと俺の瞼を撫でる。
こんな距離を誰かに許すのは、いつぶりだろう。
フィオの熱が、魔力が、俺の中になだれ込んでくる。
拒否しなくては、と思うのに、あまりの気持ちよさに動けなくなる。
なんとか拒もうと掴んだはずの腕も、力の入らぬまま、甘えたようにフィオにすがるだけになってしまった。
何度も何度も角度を変えてキスを落とす。
唇に、瞼に、頬に、額に。
余すところなく口付けられた。
ああ。溺れそうだ。
この十年、俺は父親として生きて来た。
男としての自分の想いに蓋をして。見ないふりで。
こいつは俺の大切な息子を傷つけたヤツなのだから、と。
でも、被害者である本人が言うんだ。
「ゲイルは寂しがりだから、公爵にお願いすることにした」と。
もう無理だ。
拒めねえ。
サフィ、もういいか?いいよな?
お前が言っていたのは、こういうことなんだろう?
震える吐息が、伝わる鼓動が、色を濃くした瞳が俺に限界を伝えて来る。
なのに、こんな時にもこいつはお利口にまるで忠犬のように俺の許可を待っている。
何度も何度もキスをして、俺の目を覗き込み、そこに何かを探している。
今俺が拒めば、こいつは引くのだろう。
苦笑しながら、ひとりでその欲を宥めるのか。
そう思ったら、脳がかっと焼ける気がした。
思わずフィオの後頭部に手を回し、グッと引き寄せる。
今、俺の息子が……考えたくもねえが、大人になろうとしている。
そんな日に俺も、なんて笑っちまうけど。
「俺の息子から離れろ!まだ早い!」なんて無粋なことをするよりはいいはずだ。
だろう?
フィオ、俺をここに繋げ。
お前の胸につなぎ留めてくれ。
自ら深く口づけ舌を絡ませると、一瞬の躊躇の後すぐさまそれに応えてきた。
確かめるように舌を擽り、俺の吐息を奪う。
そっと上あごを辿られれば、思わずビクッと身体が跳ねた。
おい、そこで驚くなよ。
俺だって驚いてる。まさか童貞でもあるまいしこんな風になるなんてな。
こっちはこの10年、修行僧みてえに生きて来たんだよ。
そういう意味ではほぼリセットされちまってんだ。
だから、ゆっくり……
髪をかき混ぜて落ち着かせようとすれば、分かったとでもいうようにほほ笑んでそっと俺の耳をかじってきやがった。
そうじゃねえ!
全身が跳ねる。
どこに触れられても気持ちいい。
温かい風呂にでも使ってるみてえに、触れられたところからぐにゃぐにゃに溶けてしまいそう。
「……って、そうじゃねえ!」
流されそうになって慌ててフィオの頬を両手で掴んだ。
「逆だろ、逆!お前が下だろ?」
「………え?」
なに「心底驚いた」みてえな顔してんだよ。
「…………は?俺の方が年上なんだ。俺が上に決まってんだろうが」
「いや、私にはそっちの経験はないのだが……」
「俺にだってねえよ!!」
こんなときばかり表情豊かだな、おい。
驚愕、と顔に書いてやがる。
「いや、そこで驚いた顔すんじゃねえよ!
てめえまさか、俺が適当な男に掘らせるようなヤツだとでも思ってたのか?
俺は女が好きだ!いや、好きだった!
てか、確かに男の経験はあるが、可愛いタイプのヤツから『政略婚の前にどうしても想い出が欲しい』と請われて抱いてやったくらいだっての!
お前、俺を何だと思ってんだよ?」
「ゲイルはとても美しいし、性別関係無しに好意を持たれている故……てっきり……過去にはそういう相手もいたのかもしれぬと……」
「いねえよ!俺はヤル側なんだよ!だから……「では私が初めてということでよいのだろうか?」
どうしてそこで興奮すんだよ。
てか、お前もそんな顔して処女がいいってタイプだったのか?
当たってんだよ!
いきなりデカくすんな!ビビるだろうが。
だから俺は上だ、と言おうとしたのに、そんなに嬉しそうな顔されたら……
しょうがねえなあ、って思っちまうだろうがよ……。
思わず目をそらせば、この男、わざわざ確認してきやがった。
「私はゲイルを抱きたいと思っている。あなたを愛したいのだ。どうか許して欲しい。
あなたの初めてが欲しい。頼む。許してくれ」
くそ!この俺に「抱いていいぞ」って言えってえのか!
「………まず、もうその固い話し方をやめろ。お前昔は普通に話してただろうがよ。
俺と付き合うってんなら、もっと力をぬけ。そうしたら……許してやる」
酒瓶を何本も空けて語り続けていると……
いつの間にかフィオの顔が近くにあった。
霞む眼で見上げれば、さすが綺麗な顔をしてやがる。
ああ。やっぱこいつ、カッコいいよなあ。
まつ毛バサバサじゃねえか。
よく見ると、口元はサフィに似てる……?
ん?見上げる?
いつの間にか俺は横に倒れ、フィオに膝枕されていた。
何ツー失態だ。
「……あー……すまん。起きる。……あー、クゾ、さすがに頭がぼーっとするぜ。
ヒー……んっ……!」
ぼんやりする頭を左右に振って、「ヒール」と言いかけた唇をフィオに塞がれた。
「フィ…「ゲイル……黙って」
強引なようでいて優しく触れるフィオの唇。
白皙の美貌は、冷たそうに見えるのに……その唇は存外熱い。
フィオの柔らかなまつ毛がパサパサと俺の瞼を撫でる。
こんな距離を誰かに許すのは、いつぶりだろう。
フィオの熱が、魔力が、俺の中になだれ込んでくる。
拒否しなくては、と思うのに、あまりの気持ちよさに動けなくなる。
なんとか拒もうと掴んだはずの腕も、力の入らぬまま、甘えたようにフィオにすがるだけになってしまった。
何度も何度も角度を変えてキスを落とす。
唇に、瞼に、頬に、額に。
余すところなく口付けられた。
ああ。溺れそうだ。
この十年、俺は父親として生きて来た。
男としての自分の想いに蓋をして。見ないふりで。
こいつは俺の大切な息子を傷つけたヤツなのだから、と。
でも、被害者である本人が言うんだ。
「ゲイルは寂しがりだから、公爵にお願いすることにした」と。
もう無理だ。
拒めねえ。
サフィ、もういいか?いいよな?
お前が言っていたのは、こういうことなんだろう?
震える吐息が、伝わる鼓動が、色を濃くした瞳が俺に限界を伝えて来る。
なのに、こんな時にもこいつはお利口にまるで忠犬のように俺の許可を待っている。
何度も何度もキスをして、俺の目を覗き込み、そこに何かを探している。
今俺が拒めば、こいつは引くのだろう。
苦笑しながら、ひとりでその欲を宥めるのか。
そう思ったら、脳がかっと焼ける気がした。
思わずフィオの後頭部に手を回し、グッと引き寄せる。
今、俺の息子が……考えたくもねえが、大人になろうとしている。
そんな日に俺も、なんて笑っちまうけど。
「俺の息子から離れろ!まだ早い!」なんて無粋なことをするよりはいいはずだ。
だろう?
フィオ、俺をここに繋げ。
お前の胸につなぎ留めてくれ。
自ら深く口づけ舌を絡ませると、一瞬の躊躇の後すぐさまそれに応えてきた。
確かめるように舌を擽り、俺の吐息を奪う。
そっと上あごを辿られれば、思わずビクッと身体が跳ねた。
おい、そこで驚くなよ。
俺だって驚いてる。まさか童貞でもあるまいしこんな風になるなんてな。
こっちはこの10年、修行僧みてえに生きて来たんだよ。
そういう意味ではほぼリセットされちまってんだ。
だから、ゆっくり……
髪をかき混ぜて落ち着かせようとすれば、分かったとでもいうようにほほ笑んでそっと俺の耳をかじってきやがった。
そうじゃねえ!
全身が跳ねる。
どこに触れられても気持ちいい。
温かい風呂にでも使ってるみてえに、触れられたところからぐにゃぐにゃに溶けてしまいそう。
「……って、そうじゃねえ!」
流されそうになって慌ててフィオの頬を両手で掴んだ。
「逆だろ、逆!お前が下だろ?」
「………え?」
なに「心底驚いた」みてえな顔してんだよ。
「…………は?俺の方が年上なんだ。俺が上に決まってんだろうが」
「いや、私にはそっちの経験はないのだが……」
「俺にだってねえよ!!」
こんなときばかり表情豊かだな、おい。
驚愕、と顔に書いてやがる。
「いや、そこで驚いた顔すんじゃねえよ!
てめえまさか、俺が適当な男に掘らせるようなヤツだとでも思ってたのか?
俺は女が好きだ!いや、好きだった!
てか、確かに男の経験はあるが、可愛いタイプのヤツから『政略婚の前にどうしても想い出が欲しい』と請われて抱いてやったくらいだっての!
お前、俺を何だと思ってんだよ?」
「ゲイルはとても美しいし、性別関係無しに好意を持たれている故……てっきり……過去にはそういう相手もいたのかもしれぬと……」
「いねえよ!俺はヤル側なんだよ!だから……「では私が初めてということでよいのだろうか?」
どうしてそこで興奮すんだよ。
てか、お前もそんな顔して処女がいいってタイプだったのか?
当たってんだよ!
いきなりデカくすんな!ビビるだろうが。
だから俺は上だ、と言おうとしたのに、そんなに嬉しそうな顔されたら……
しょうがねえなあ、って思っちまうだろうがよ……。
思わず目をそらせば、この男、わざわざ確認してきやがった。
「私はゲイルを抱きたいと思っている。あなたを愛したいのだ。どうか許して欲しい。
あなたの初めてが欲しい。頼む。許してくれ」
くそ!この俺に「抱いていいぞ」って言えってえのか!
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