もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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東の国

三日後

3日後の早朝。
レオンが起きるより先に起きた俺は、ベッドの下にこっそりと隠してあったマジックバッグを取り出した。

ここには念のため密かに色々なものを集めて詰め込んでおいた。
ゲイルが必要としそうな薬や医者のお道具をしこたま。
ゲイルが好きなお酒とお菓子。
保存食になりそうな食べ物をしこたま。
マジックバッグ(中)に保存して大事にちょこっとずつ食べていたイカ焼きも。(そろそろまたクラーケンを狩りにいかねば!)
それと、着替えとか変装のお道具とか、役に立ちそうなもろもろを。
マジックバック(大)の容量ギリギリまで詰め込んでおいたのだ。

颯爽とバッグを肩にかけ、覚悟を決めた。

レオンとみんなにはきちんと伝えておくようにってルーダは言ってたけど。
俺は一人で行く。向こうに着けばルーダを呼ぶんだし、何も問題はない。
俺の勘がそう言ってる。

相談したら絶対に反対されるか、誰か一緒に着いてくるって言うと思う。
でも、みんなには申し訳ないけれど、とにかく早く行きたいのだ。
それに、こう言ってはあれだが……みんな目立ちすぎる。
俺一人なら誰にも警戒されることなく東国で行動できると思うから。


毎日遅くまでお仕事をしてまだ眠っているレオンにそっと頭を下げる。
ごめんね、レオン。
きっとすごく凄く心配かけるよね。
でも、すぐにゲイルと一緒に帰ってくるから。
ルーダを通じてルーに連絡を入れるし。

直接言うべきなのはわかってるけど、手紙で許してね。

「ルーダと一緒にゲイルを迎えに行きます。俺の勘は予知らしいです。その勘が、俺が行かなきゃって言ってるの。俺が行けば大丈夫だって言ってるの。だから、行くね。
ごめんね。心配しないで。
レオン、大好き。みんなによろしく」

最後の一文は、書いていて「あれ?これって死亡フラグじゃね?」と思ったのだが、まあ問題ない。俺ツエエので。
これを書いておいた場合と書いておかなかったときとでは、レオンの闇落ち具合に天と地ほどの差があるはず。きっと。

そうっと部屋からでようとしたら…



「サフィ、行くの?」

寝ていたはずのレオンの声が。

ばっと振り返れば、眠っていたはずのレオンの目が俺をじっと見つめていた。

「起きてたの?」
「うん。サフィならそろそろ動くんじゃないかと思って。
私が何を言っても、連れて行ってはくれないんだよね?」
「うん。一人じゃなきゃダメ。
ごめんね、レオン。俺、ちゃんとゲイルを連れて帰ってくるから。
聖女の予知?みたいなので、俺が行ったら大丈夫なはずなの。だから、行くね」
「……止めても無駄なんだよね?分かってる」

黙ったままのレオンが俺に向かって腕を伸ばした。
恐る恐る近づくと、ぎゅうっと腕に抱き込まれる。

「必ずに戻ってきて。
五日だけ待つ。それ以上は待たないよ?」

俺を抱きしめるレオンの腕も、声も、震えていた。
全身で「行かないで欲しい」と言っていた。
でも、俺は行く。ごめんね、レオン。
きっとゲイルを連れ帰るには俺じゃなきゃダメなの。

「……ありがと。ちゃんとホウレンソウするからね。信じて待ってて」

祈りを込めてレオンのお口に俺からキスした。
必ず元気に帰ってくるから。待ってて。






こうして、俺は旅立った。
まだ見ぬ東国へ。

転移はバースの王宮内の俺とゲイルの部屋。
正式には来賓室なんだけど、俺とゲイルはいつ来てもいいことになっている。
実質俺とゲイルの私室だ。

朝日が昇ったばかりの早朝。
寝ているところ申し訳ないが、俺は容赦なくバース君のお部屋の扉を叩いた。

「たのもーーー!俺!サフィが来ましたよーーー!!」

そう。ここの扉には24時間扉を護る護衛なんておりません。
夜になったら王宮の門をぴったりと閉じ、鍵をかける。それで朝になるまで来客禁止なのです。
一応門の内側には守衛室があって、泊まり番さんとかはいる。居眠りしちゃってることが多いけど。

門を閉めた後は割とゆるゆる。
わざわざ押し入る理由がないだろ、って意識なのです。
なんというかその辺がいかにもバース。

だからバースくんのお部屋の扉をドンドンして起こすのだ。なにしろ緊急事態ゆえご容赦くだされ。

「朝早くごめんなされーー!サフィでーっす!バースくんに用があるので!お願いいたしますーーっ!!」

扉の向こうでバタバタと音が聞こえ、ガチャリと扉が開いた。
バースくんだ。
寝ていたみたいで、髪はボサボサだし、慌てて羽織ったらしいガウンの前もだらしなく開いている。

「サ、サフィ?どうしたんですか?え?ゲイルは?」

きょろきょろと俺の後ろを確認し、ゲイルが居なくて残念そうに肩を落とした。

「そのゲイルのことで来たの。ちょっと失礼しますよー」

俺はワタワタするバースくんに構わず、ひょいっと隙間から中に入り、遠慮なくソファに腰かける。

「え?は?ち、ちょっと!あの、ここ、俺の寝室なんですけど……」

「婚姻前の人が他の男の寝室に入っていいのか?」などとブツブツ言っているが、他の男も何もバースくんだし。問題などないでしょうに。

とりあえず、マジックバックの中からポットとカップを取り出し、自分の分とバースくんの分を入れる。
それと、アップルパイも二つ。
パイを見てバースくんの目が俄然ぱっちり開いた。
そう、バースくん、ゲイルのお土産でこれを食べて以来、クマさんパイが大好物なのだ。

「はい。これバースくんの。どうぞ」

「え?いいのか?じゃあ!」

目の色変えて鷲掴みするバースくん。あーあ。お行儀が悪いですぞ?
俺はきちんと頂きますをしてから、頂きます。

「……うん。おいしい!
バースくんもおいしかった?」

「はい!なんですかねえ、この味。どうしてもうちでは出せないんですよねー」
「はい。食べたね?それね、ワイロだから」

「食べたからには俺のお願い事を聞いて頂きますよ!」と言えば、バースくんは「ゲイルとサフィは恩人なんだから、ワイロなんてなくてもなんでもお手伝いしますが?」と目をパチクリしたのでした。
そうだった!この人たちもゲイルの親派、俺の下僕なのでした!



かくかくしかじか、とゲイルから連絡が無いことを告げれば、みるみるうちにバースくんの目が真剣なものに変わった。髪を掻き上げ、きちんとガウンの前を止め居住まいを正す。

「ゲイルは、10日ほど前にここを発っている。ブリード様の背に乗っていったから、その翌日には東国についているはずなんだ」
「やっぱり。ってことは、東国に行ってから一週間以上になるってことだよね?
予定では数日で戻るはずだったのに、いくらなんでも遅すぎるでしょ?」
「……………」

繭を顰め、言おうか言うまいな迷っているバースくん。

「何かあるなら言って。どんなことでもいいから。情報が欲しいの」

バースくんは、覚悟を決めたように話し出した。

「実は……ウチに来ていた東国の商人が言うには……先月東国で暴動が起きたというんだ。
一応もう鎮圧されたとはいっていたが……暴徒化した一部がまだ捕まっていないらしい」


はあ?なにそれ?!初耳ですが?!

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