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東の国
はやる心を抑えて
更新が滞り申し訳ございません。。
しばらくはサフィちゃん、クリスくんの交互更新になるかもしれませぬ……。
クリスくんの方がある程度話数が進みましたので、このあたりで一旦最初の方からまとめ直しを、と思ったのですが。(ご、誤字が……結構ありまして……おはずかしい………。)
気になるところをちまちま修正しだしたらキリがなく……。
お時間頂戴しております………。
よろしければ、この機会にをち。の他の作品などお読み頂きながらお待ち頂けたらうれしいです、なんて……|ω・)チラリ 作者名をクリックすると出てまいりまするので!ぜひ!
※※※※※※※※※
扉の内側は広場のようになっていた。
雪は無く、あちこちに小さな畑が作られている。
外で聞こえたのは、その畑に水をやったり世話をしている人たちの音だったみたい。
温度が少し暖かく感じるのは、あちこちに置かれている簡易ストーブのおかげ。
鉄の箱みたいなものに火のついた炭が入れてある。
余熱を利用して上に鉄の鍋やポットを置いて湯を沸かしている。うんうん。生活の知恵だね。
「……思ったよりも状態がいい」
ほんとだよね。正直……たくさんの不幸を目にすることになるって覚悟してたもん。
あちこちに人が倒れてて、ぐったりしてる、みたいな。
「ゲイルだろう。このやり方は以前見たことがある」
公爵の声が少し震えていた。
「うん。俺も冒険者になるときに習った。焚火よりも長持ちするからって」
あちこちにゲイルの痕跡がある。
この畑だって、ゲイルがつくったんだろう。
たった10日間でここまで。
本来なら雪に埋もれているはずの王城から雪を無くし、植物を生やし、育て……。
風、火、緑……あらゆる魔法を使いまくったはず。
怪我や病気の人の治療だってあるのに。
背筋がゾクっとした。
分かってしまった。
「俺が行かなきゃダメ」「俺が行けば大丈夫」って思った訳が。
ゲイルが俺に連絡できなかった、ルーダを呼べなかった理由が。
最初は単に酷い状況に気を取られルーダを呼ぶのを後回しにしただけだったんだと思う。
次々と患者が担ぎ込まれ、治療に追われ、その機械を失った。
そして……ルーダを呼ぶだけの魔力が無くなったんだ。
俺も魔力は底なし。
それでも初めてルーダを呼んだときには意識を失った。
すぐに魔法の使い方を覚えて魔力も沢山になって平気になったけど。
ルーダを俺とゲイルしか呼べないのは、契約者ではないってこともあるけれど、要するにそれだけの魔力がみんなにないから。だから契約者である俺がお願いしても、俺かゲイルがいなきゃだめなのだ。
で。ここが大事。
ゲイルも魔力が底なしだって言われているけど、それは違う。
たぶん、俺以外に誰が最強だと言われたら間違いなくゲイル。でも底なしじゃない。
正確には、魔力が膨大だからこれまで魔力が尽きるようなことにはなっていなかった、それだけ。
ただ、こんな「国を丸ごと」治療したり、守ったりするような、そんなことがなかっただけなの。
俺がいたらゲイルをヒールできるから、全く問題なし!
本来ならゲイルにだって自己治癒力があるから問題はないはずなの。
だけど、考えて欲しい。
俺だって死にかけたことがあるんだよ。
幼い俺は、とにかく栄養が足らなくって弱ってて、回復に回せる余力が無かった。
だから自己治癒も発動できなくって、死にかけた。
もちろん魔法とか知らなかったこともあるけれど。
最低限の命の維持が難しい状況だったんだ。
単純にこの国には食べ物が足りなかった。
ゲイルのことだから、弱った人を優先して自分を後回しにしたに違いないの。
そんな状況で働き詰めに働いて、魔力を使い続けて。
「……急ごう。急いで王様に会ってゲイルのところに案内してもらおう」
ホントはゲイルのところに直行したけど。
それはダメだと思うから。
ゲイルの息子として恥じぬ行動を。
俺が言わなくてもみんなには分かったみたい。
キースの空気がピリッと引き締まった。
「ああ」
公爵がそっと俺の肩を抱いた。
「サフィラス。大丈夫だ。私もいる。ゲイルはお前が思うよりも強い男だ。ゲイルを信じよう」
「うん。分かってる。だから、まずは王様とお話しなきゃ。
それまでは、もう少しゲイルには待っててもらおう。
で、会ったらお仕置き!自分も大事にして、ってゴツンってしてやるんだ! 」
ボトッと涙が出たのをグイっとぬぐう。
「…………ゲイル殿には必ず会わせる。だが……他国のものをそのまま通すわけにはいかんのだ。
恩人の息子だというのに……すまない」
俺たちの声が聞こえたのだろう。前を行くサモンさんがその足を速めながら謝罪した。
「大丈夫。分かってるから。俺も話したいことがあるし、先にそっちに行くよ」
「ああ。ゲイルがここにいたらそういうはずだ」
「うむ。その通りだ」
公爵の光はちょうど俺たちの進む方に向かっている。
王様のいるところの奥にゲイルもいるんだろう。
つまりは、恩人として大切にして貰っているはず。東国の人を信じよう。
歩く道すがら、たくさんの人が廊下に座り込んでいた。
ぐったりと疲れてはいるけど、その表情には希望がある。
うん。こっちも大丈夫そう。
パタパタパタっと足音がして、振り返ると小さな子供たちがちょこっと柱の陰から顔を出していた。
王城に避難してきた子供たちなんだろう。
ひらひら、と手を振ってみたら、ピャっと引っ込み、またちょこん。
照れくさそうに汚れた顔でニコッと笑ってくれた。いい子たちだ。
動く元気はあるみたいだけれど、どの子もとても痩せている。
ああ。
そうだよね。
これじゃあ、ゲイルだって限界まで頑張っちゃうよね。
「あの、ちょっといいですか?」
一応サモンさんに一声かけて。
「キース、いい?」
バッグに手を突っ込みながら念のため保護者に確認した。
何を、と言わなくても分かったみたい。
キースが「サフィならそう言いだすと思った。ちょっとの時間くらい誤差だろ。いいぞ、やれ」と笑う。
よし。
ごめん公爵、ゲイル。
ちょっとだけ時間頂戴。
しゃがんで子供たちに「おいでおいで」してみたら、あっという間にたくさんの子に囲まれてしもうた。
「ねえねえ、おねえちゃん、だれ?」
「えっとね、お兄ちゃんは冒険者のサフィよ。ゲイルの息子。あのね、お兄ちゃん、ここに来る前に他の国で沢山お買い物してきたんだけど、買いすぎちゃったから重くても困ってるの。パンなんだけど、ちょっとだけ食べてくれない?」
鞄から20個くらいパンを取り出すと「わあっ」と歓声が上がった。
でも、お腹をぐうぐう慣らしているのに誰も手を伸ばそうとしない。
チラッと大人の方を見たり、他の誰かを気にしてる。
「まずは一人一個ね。君たちのお母さんとかお父さんたちの分もあるし、他の子の分もあるからね。大丈夫。これ食べて待ってて?」
「いいの?」
「うん。まだまだ沢山あるから」
「ありがとう!」
子供たちはほっとしたような顔になり、ようやくパンに手を伸ばした。
パンに夢中になっているうちに、さりげなーく子供たちにクリーンとヒール。
うん。これでひとまずは安心。
「じゃあ、ご用があるから行ってくるね。また後で遊ぼう!」
「!また後で遊んでくれる?」
「うん。ご用がすんだら、ね?」
頭をなでなでして、ぎゅっ!
私も俺も、と集まってきた子をみいんなぎゅっ。
よく頑張ったね。
お腹を空かせて辛くても、彼らはみな譲りあい分け合うことを知っている。
大人だってみんな痩せているけれど、子供たちのパンを奪うことも、俺にねだることもしない。
きちんと人としての矜持と誇りを持った人たち。
それだけで、東国の国民性みたいなものが分かる気がした。
しばらくはサフィちゃん、クリスくんの交互更新になるかもしれませぬ……。
クリスくんの方がある程度話数が進みましたので、このあたりで一旦最初の方からまとめ直しを、と思ったのですが。(ご、誤字が……結構ありまして……おはずかしい………。)
気になるところをちまちま修正しだしたらキリがなく……。
お時間頂戴しております………。
よろしければ、この機会にをち。の他の作品などお読み頂きながらお待ち頂けたらうれしいです、なんて……|ω・)チラリ 作者名をクリックすると出てまいりまするので!ぜひ!
※※※※※※※※※
扉の内側は広場のようになっていた。
雪は無く、あちこちに小さな畑が作られている。
外で聞こえたのは、その畑に水をやったり世話をしている人たちの音だったみたい。
温度が少し暖かく感じるのは、あちこちに置かれている簡易ストーブのおかげ。
鉄の箱みたいなものに火のついた炭が入れてある。
余熱を利用して上に鉄の鍋やポットを置いて湯を沸かしている。うんうん。生活の知恵だね。
「……思ったよりも状態がいい」
ほんとだよね。正直……たくさんの不幸を目にすることになるって覚悟してたもん。
あちこちに人が倒れてて、ぐったりしてる、みたいな。
「ゲイルだろう。このやり方は以前見たことがある」
公爵の声が少し震えていた。
「うん。俺も冒険者になるときに習った。焚火よりも長持ちするからって」
あちこちにゲイルの痕跡がある。
この畑だって、ゲイルがつくったんだろう。
たった10日間でここまで。
本来なら雪に埋もれているはずの王城から雪を無くし、植物を生やし、育て……。
風、火、緑……あらゆる魔法を使いまくったはず。
怪我や病気の人の治療だってあるのに。
背筋がゾクっとした。
分かってしまった。
「俺が行かなきゃダメ」「俺が行けば大丈夫」って思った訳が。
ゲイルが俺に連絡できなかった、ルーダを呼べなかった理由が。
最初は単に酷い状況に気を取られルーダを呼ぶのを後回しにしただけだったんだと思う。
次々と患者が担ぎ込まれ、治療に追われ、その機械を失った。
そして……ルーダを呼ぶだけの魔力が無くなったんだ。
俺も魔力は底なし。
それでも初めてルーダを呼んだときには意識を失った。
すぐに魔法の使い方を覚えて魔力も沢山になって平気になったけど。
ルーダを俺とゲイルしか呼べないのは、契約者ではないってこともあるけれど、要するにそれだけの魔力がみんなにないから。だから契約者である俺がお願いしても、俺かゲイルがいなきゃだめなのだ。
で。ここが大事。
ゲイルも魔力が底なしだって言われているけど、それは違う。
たぶん、俺以外に誰が最強だと言われたら間違いなくゲイル。でも底なしじゃない。
正確には、魔力が膨大だからこれまで魔力が尽きるようなことにはなっていなかった、それだけ。
ただ、こんな「国を丸ごと」治療したり、守ったりするような、そんなことがなかっただけなの。
俺がいたらゲイルをヒールできるから、全く問題なし!
本来ならゲイルにだって自己治癒力があるから問題はないはずなの。
だけど、考えて欲しい。
俺だって死にかけたことがあるんだよ。
幼い俺は、とにかく栄養が足らなくって弱ってて、回復に回せる余力が無かった。
だから自己治癒も発動できなくって、死にかけた。
もちろん魔法とか知らなかったこともあるけれど。
最低限の命の維持が難しい状況だったんだ。
単純にこの国には食べ物が足りなかった。
ゲイルのことだから、弱った人を優先して自分を後回しにしたに違いないの。
そんな状況で働き詰めに働いて、魔力を使い続けて。
「……急ごう。急いで王様に会ってゲイルのところに案内してもらおう」
ホントはゲイルのところに直行したけど。
それはダメだと思うから。
ゲイルの息子として恥じぬ行動を。
俺が言わなくてもみんなには分かったみたい。
キースの空気がピリッと引き締まった。
「ああ」
公爵がそっと俺の肩を抱いた。
「サフィラス。大丈夫だ。私もいる。ゲイルはお前が思うよりも強い男だ。ゲイルを信じよう」
「うん。分かってる。だから、まずは王様とお話しなきゃ。
それまでは、もう少しゲイルには待っててもらおう。
で、会ったらお仕置き!自分も大事にして、ってゴツンってしてやるんだ! 」
ボトッと涙が出たのをグイっとぬぐう。
「…………ゲイル殿には必ず会わせる。だが……他国のものをそのまま通すわけにはいかんのだ。
恩人の息子だというのに……すまない」
俺たちの声が聞こえたのだろう。前を行くサモンさんがその足を速めながら謝罪した。
「大丈夫。分かってるから。俺も話したいことがあるし、先にそっちに行くよ」
「ああ。ゲイルがここにいたらそういうはずだ」
「うむ。その通りだ」
公爵の光はちょうど俺たちの進む方に向かっている。
王様のいるところの奥にゲイルもいるんだろう。
つまりは、恩人として大切にして貰っているはず。東国の人を信じよう。
歩く道すがら、たくさんの人が廊下に座り込んでいた。
ぐったりと疲れてはいるけど、その表情には希望がある。
うん。こっちも大丈夫そう。
パタパタパタっと足音がして、振り返ると小さな子供たちがちょこっと柱の陰から顔を出していた。
王城に避難してきた子供たちなんだろう。
ひらひら、と手を振ってみたら、ピャっと引っ込み、またちょこん。
照れくさそうに汚れた顔でニコッと笑ってくれた。いい子たちだ。
動く元気はあるみたいだけれど、どの子もとても痩せている。
ああ。
そうだよね。
これじゃあ、ゲイルだって限界まで頑張っちゃうよね。
「あの、ちょっといいですか?」
一応サモンさんに一声かけて。
「キース、いい?」
バッグに手を突っ込みながら念のため保護者に確認した。
何を、と言わなくても分かったみたい。
キースが「サフィならそう言いだすと思った。ちょっとの時間くらい誤差だろ。いいぞ、やれ」と笑う。
よし。
ごめん公爵、ゲイル。
ちょっとだけ時間頂戴。
しゃがんで子供たちに「おいでおいで」してみたら、あっという間にたくさんの子に囲まれてしもうた。
「ねえねえ、おねえちゃん、だれ?」
「えっとね、お兄ちゃんは冒険者のサフィよ。ゲイルの息子。あのね、お兄ちゃん、ここに来る前に他の国で沢山お買い物してきたんだけど、買いすぎちゃったから重くても困ってるの。パンなんだけど、ちょっとだけ食べてくれない?」
鞄から20個くらいパンを取り出すと「わあっ」と歓声が上がった。
でも、お腹をぐうぐう慣らしているのに誰も手を伸ばそうとしない。
チラッと大人の方を見たり、他の誰かを気にしてる。
「まずは一人一個ね。君たちのお母さんとかお父さんたちの分もあるし、他の子の分もあるからね。大丈夫。これ食べて待ってて?」
「いいの?」
「うん。まだまだ沢山あるから」
「ありがとう!」
子供たちはほっとしたような顔になり、ようやくパンに手を伸ばした。
パンに夢中になっているうちに、さりげなーく子供たちにクリーンとヒール。
うん。これでひとまずは安心。
「じゃあ、ご用があるから行ってくるね。また後で遊ぼう!」
「!また後で遊んでくれる?」
「うん。ご用がすんだら、ね?」
頭をなでなでして、ぎゅっ!
私も俺も、と集まってきた子をみいんなぎゅっ。
よく頑張ったね。
お腹を空かせて辛くても、彼らはみな譲りあい分け合うことを知っている。
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