もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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東の国

王様のところに

子供たちと別れ、王様の所に向かう。

サモンさんが小さな声で「……ありがとう。サフィラス様、あなたも同じことを……」と呟いたのが聞こえた。

「同じって?誰と?」

思わず聞き返せば、苦笑しながら答えてくれた。

「ああ、すまぬな。ゲイル殿もここに来た際に同じようにされていたものだから」

情けないことだ。他国の方にここまで……と言葉を詰まらせるサモンさん。
彼等はこんなになるまで他国に助けを求めようとしなかった。
東国だけでなんとかしようと頑張って頑張って。
どうしようもなくなるまで頑張りすぎたんだ。
ゲイルが来なければどうなっていただろう。

「情けなくないよ。天災なんだもん。
王城を要塞にして備えてた。それで王城を解放して国民を受け入れてる。
できることはやってるように見えるけど?
逆にもっと早く他国に助けてって言ってもよかったんじゃないかな?
頑張るのはとてもいいことだけど、頑張りすぎ」

「サフィ」

キースが俺を宥めるけれど、それでも言わせて。

「本来の外交はギブ&テイク。おんぶに抱っこじゃ外交にならない。
侵攻されちゃう危険性を孕んでるから助けてしにくいのも分かるよ。
だけど。ハッキリ言うね?ぶっちゃけ今この状態の東国には侵攻する旨味なんてないよ。
元々氷の山を越えてまで属国にする意味がないの。
個人的にはショーユとかコメとかミソとか、ものすんごく旨味がありますけれども!
まだそれ、他国ではそこまで知られてないから。
普通に考えて、リスクやコストを考えると、どれもここを属国にするほどのものじゃないの。
外交するくらいでちょうどいいんだよ。
だから、俺がこの国の偉い人だったなら侵攻されるリスクより国民が救われる可能性に掛けるよ。
ゲイルが来たのはたまたまでしょ。それが無かったら、どうなってた?
余所者が偉そうにごめんだけど、そういうことをするのが、偉い人の仕事だと俺は思う。
他国に頼らず独自の文化を築いてきたっていうのは、凄いことだし、尊敬する。
でも、もうちょっと頼ってもいい。外に目を向けてもいいんじゃないかな?
俺とゲイルはそのためにきたの」

「うむ。確かにそれは同感だ。
天災などの支援は隣国としての義務である。私はそのように考えている。
このような未曽有の事態に乗じて侵攻するような国は、所詮それまでの国。
そんなことをすれば、周辺諸国からの信頼を失うことになろう。
ならば支援することで恩を売り名を上げることを選ぶ。それが為政者というものだ」

「難しいこと言ってるけど、要するに胸を張って助けられておけばいい、ってこと!」

「…………ってのが、としての客観的な意見だ」

ああ!そうだった、俺たち冒険者!!
公爵なんて絶対にそうは見えないだろうけど、冒険者の付き添い!
宰相なんかじゃないからね!

「……冒険者、ですか……」

薄々気付いてたけど、もう確信になっちゃったみたい。
サモンさんは困ったように笑った。

「なかなか内側に居ると見えないものですな。仰る通り、我々は少し頑なになっていたようだ」

肩を落とした痩せた背中をキースがドンと叩いた。

「すまんな、うちのが好き勝手言っちまって。
だが、おおむね間違いじゃないと俺も思うぞ?
自国でなんとかできることと、できないことがある。その見極めが大事なんじゃないか?
俺は冒険者だ。ずっとソロで活動してきた。
それでも分かってるぜ?行き詰ったときに誰かの手を借りるのは悪いことじゃない。
それが恥だとも思わないし、手を借りたって俺に誇りが無いわけじゃない。
借りをつくったら返せるときに返せばいい。だろ?
ってのは、サフィに教わったんだけどな?」

「ゲイルをお迎えに寄ってみただけなんだけど、たまたま色々持ってきてるんだよね。偶然?
バースに寄ってゲイルの所に行くって言ったらお土産たくさん貰ったから。
あと、ちょっと……旅とかしようかなって、多めに食料仕入れてたから。
それを良ければ提供したいんだけど。
それを含めて王様にご相談させて欲しい。
だからさ、サモンさん。安心して。ここからは良くなるよ。
ゲイルだって俺がいたら大丈夫だから。
さあ、王様の所に行こう!あっちでいいよね?」

タタターっと走り出した俺を慌ててキースが追ってくる。

「サ、サフィラス殿?!こ、こら!どこに行くっ!」

サモンさんたちは何が起こったのか分からず唖然としていた。
よし、今のうち!
身体強化と風魔法でスピードアップ!

「こ、こら!サフィ!」

「いいじゃん。王様には許可とってるんでしょ。
。貴族の作法とか知りませんし?
行きながらたまたま道に迷ってゲイルの居るところの前を通って、偶然にもヒールが暴走しちゃうかもだけど。
ちゃんと先に王様に挨拶するから。
それでいいでしょ?」

あ、あっち!公爵の光はあっちに続いてる!

「すみませーんっ、俺はドラゴンライダーのサフィでええっす!許可はとってますので!通りますよおおおっ!」

走り抜ける俺、追いかけるキースに気付いた人たちが、びっくりした顔をして飛びのいた。

「ごめんねええっ急いでるからっまた後でえええっ!!」

光の先は左側の通路の向こうに続いていた。
ゲイルがいる。
ああ。どうしよう。なんか、ゲイルの力みたいなのがちょびっとしかない。
限界を超えて魔力使い過ぎだよ、ゲイル!
俺が来なきゃどうするつもりだったの?


たぶん、普通のヒールじゃもう足りない。
お母様は俺を産んだ後、生命力自体が足りなくなさすぎてゲイルのヒールでも治せなかった。
これは不可能を可能にする力。
無から有を産み出す力。

扉を抜けて、向こうのゲイルに。俺とゲイルならできるはず。
届け、俺のパワー!!今こそ頑張れ聖女の力!!

手のひらを突き出し、渾身のヒールを送る。
聖女から聖女へ、魔力と生命力をどどーん!

「スーパーウルトラハイヒール!!」

ビャビャーン!!

光というよりも水流みたいな魔力の渦が扉の向こうに吸い込まれていった。

ドッパーーン!

ぱああ、と部屋の内側から凄い光があふれ出る。

ヨシ!

会いたいのはやまやまだけれど。抱っこして欲しいのはやまやまだけれど。
今の俺は「迷ってたまたまゲイルの前を通っていっただけのゲイルの息子」なので。
王様に会うのが先だって分かっておりますので。

「後でくるからね、ゲイルー!大好きーーっ」

叫びながら、ちょびっと涙や鼻水なんぞ垂れ流しながら。
俺はそのまま王様の居る方向(推定)に向かったのでした。




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