もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

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東の国

ゲイルとの再会2

勝手知ったるとばかりに、許可が出たとたん俺は走り出した。

「ゲイルううう!ゲイルーーーっ!!」

バッカーンと扉をぶち破る勢いでさっき通り過ぎたゲイルの部屋に。

!!いた!!

広い部屋の真ん中に置かれたお布団。
その上でゲイルが身を起こしていた。

「……よう、サフィ。来ちまったか」

へらりと笑うゲイル。

「~~~!!」

ふらふらともつれる足を動かしてゲイルの胸に。
ぎゅううっと抱き着き、ゲイルの匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
ああ、骨!骨が当たる!!いつもはもっとがっしりしてるのに!!

「ありがとな。助かったぜ。ちと魔力使い過ぎちまってな。ルーダを呼べなくなっちまった」

苦笑するゲイルの目の下には真っ黒なクマ。頬もこけているし、全体的に身体が薄くなってる。

「……ばか!魔力多いって言っても、限度があるでしょおに。
次はないんだからね。ホウレンソウ大事!
着いたら最初にルーダ!すぐにマークしてたら俺だってすぐに来れたんだからね!
後回し、ダメ!」

「……すまん」

身体全体をぴったりとくっつけ、俺の魔力をゲイルに。
俺もゲイルも聖女だから、魔力の質は同じはず。
このまんまヒールを続けても、根本的解決にはならないから。
元々の力が弱ってると最低限の回復しかできないから。

急にジョバっとしないように、できるだけじわっと染み出すイメージでちょろちょろと送り込めば、抱き着いたゲイルの身体がじんわりと温かくなっていく。

「魔力枯渇状態って、下手したら死んじゃうんだからね?
歴代最強っていっても、エンドレスで大量の人を癒したり、城を温めたり結界したり植物育てたり。
短時間でいっぺんにやったらそりゃあこうなるでしょうよ!」

よし。ここからば、ジャバジャバーっと。

「うわ!なんかこれ、ヤベエな」

煩い!ゲイルがいけないんだから、大人しくしてなさい!
見ることはできないけど、なんとなあく、吸いこまれるのが好くなった気がするところで、一旦ストップ。

うん。ここまでやれば大丈夫。
次はこっち!
てかこっちの方が大事だから!

「ハイヒール!」

ビカビカーッ!

光の後に現れたゲイルは、いつものゲイルに戻っていた。

「「ゲイルっ!!」」

え?今俺の声に誰か被っ……
どーん!
俺ごとゲイルに抱き着いてきたのは、公爵だ。

「ちょっと!」と文句を言ってやろうとして、やめた。
公爵の身体が震えていたから。

「………良かった、ゲイル。お前まで居なくなったらと思うと背筋が凍った。私を殺す気か?」

聞いたこともない弱弱しい声だった。
いつもスンとしてるのに。最近はたまにオタついてるけど。
なにそれ。公爵ってばそんなだったっけ?

「すまん、フィオ。てか、お前まで来たのかよ。向こうは大丈夫なのか?」

返すゲイルの声が甘い。
俺を甘やかすときの声に似ている。

「婚約者の危機に駆け付けぬわけがなかろう!」
「ははは。しょうがねえ奴だなあ。……まあ、サンキュ。心配かけたな」

公爵の頭をナデナデするゲイルと、涙ぐみながら大人しく頭を差し出している公爵。

「あー……そうきたか……」

呆れたようなキースの声が聞こえた。


え?

なにこれ?
この人たち、俺の目の前、いや、俺の頭の上でイチャついてるの?
嘘でしょ?!
ゲイルなんて死にそうになってたクセに?
公爵なんてダメ親父のクセに?

「はああああ?!」

俺の口から出たこともない低い低い声が出た。

バリっとゲイルと公爵を引き剥がし、憤怒の表情でゲイルと公爵にビシっと指を突き付ける。

「二人とも離れてっ!ゲイルはそこに座りなさい!!」

シャキン!
俺の圧に押され、ゲイルと公爵がビシっと背筋を伸ばした。

怒りのあまりパリパリッと静電気しながら俺は叫んだ。

「ゲイル!ゲイルが抱っこするのも、甘やかすのも俺にしなきゃでしょうが!
公爵にするくらいなら、俺をもっと甘やかしてよっ!
何日離れてたと思ってるの?俺はゲイルの可愛い大事な息子でしょうに!!
連絡もなく…っこ、こんなにっ、離れたの……っ、初めてなんだからーーーーっ!!」

半泣きで叫ぶ俺に、ゲイルの顔がクシャりと歪んだ。

「サフィ!!」

俺を抱き寄せてその膝に乗せ、俺の顔のあちこちにキスを降らせる。

「俺の勘だって、外れること、あるかもだしっ、心配したんだからねっ!
ゲイルが、し、死にかけって感じた俺の気持ち……っ分かる?」

「……ああ。分かるぞ。俺も10年前に大切なサフィを失うところだったんだから。……マジですまん。俺が悪かった」

その両手で俺の頬に触れ、流れる涙をぬぐう。
そして俺の目を覗き込むようにしてコツンと額を合わせた。

「ごめんな。我を忘れちまったんだ。気付いた時にはどうしようもなくなってた。
……お前に会えないまま逝っちまうのかと怖かった。
ありがとう、サフィ」

ゲイルの唇も声も微かに震えていた。

「……怒ってるんだから。ちょっと様子見てきてっていうだけなのに、死にかけるなんて。
結婚式どころじゃなくなるし、レオンだって激オコになるし、俺なんて……っ再起不能なんだからね。
俺のゲイルをっもっと大事にしてよおおっ!ゲイルはっ……俺の、側に居なきゃっダメなんだからねっ!」

涙と鼻水を遠慮なくゲイルの胸元に吸わせてやった。

「すまん」

しばらくの間、俺は失いそうになった大切なぬくもりをひたすらに味わった。
この叩かな胸に、腕に支えられて俺は生きて来た。
俺に最初に愛を与えてくれた人。
俺さえいれば大丈夫っていう感じはしたけど、それでも、絶対なんてないから。
もしも、万が一、って。ずっと怖かった。
本当は震えるくらいに。泣き叫びたいくらいに怖かった。


部屋の隅でズっと鼻をすする音。
あ、ブルーとグリーンも付いてきてたんだ。
いいけど。



てことで。

俺は抱き着いた腕に渾身の力を込めた。

「マッスル増強!」

ギリイイイイ!

「いて!イテテテテ‼!サフィ!痛えって!!こら!!」
「サフィラス!ゲイルが潰れるっ離しなさいっ!」
「知るかっ!後でヒールすればいいでしょっ!!公爵と婚約って何?!いつのまにそんなことになってるの?
俺、聞いておりませんけれど?!」

「あーーー!
…………とりあえず、サフィ、放してやれ。それじゃゲイルだって話せねえだろ?」

「……しょうがない。マッスル解除。
公爵とゲイルはそこに正座!お布団の上じゃない!床に直接座りなさい!!
二人とも、報連相!報告・連絡・相談!婚約するまえにすることがあったでしょうに!!」






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