もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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東の国

宝の山?

一応ゲイルや公爵、陛下にも、俺が割った石を確認してもらった。

「……鉄鉱石だな、こりゃあ」
「まさか、こんな風に転がっていようとは……」

ミスリルみたいに高価ではないけれど、鉄は加工がしやすいので安価だけれど一定の需要がある。
鍋や料理用ナイフ、農作業道具とか、そういうのは全部鉄だしね。
消耗品だからコンスタントに売れ続けるのだ。

運のいいことに、農業国が山を越えた先に……。そうバースだ。
あそこは酪農も農業も盛んだから、鍬、鋤などの農作業道具を他国から仕入れている。
東国では食料が足りない、バースでは鉄が足りない。
需要と供給のバランスがばっちりなのでは?

みたいなことを言ってみたら、俺たちの中で一番バースに詳しいゲイルが「確かになあ」と同意。
取引としては悪くないのだけれど、問題は「どう運ぶか」
今でさえ商人さんは一年かけて準備して決死の覚悟でようやく年に一度山を越えているのだ。
多くの荷を運ぶのは無理だろう。

うーん………。
問題は山か………。
邪魔な山をどう楽ちんに通過するか……。

「………とんねる……、そう、トンネルを掘りましょう!!」

「…………は?!」

「ゲートすれば簡単に行き来はできるんだけれど、それだと俺とかがいなきゃできないでしょ?
バースの人は魔法使えないし。継続的な取引をするためには、俺やゲイルがいなくてもできるようにしなきゃ。
てことでブリード便もダメ。
なので、穴をほってしまいましょう!ショートカットするの!
穴の中は寒いけど、外気関係なく温度が一定に保たれてるはず。
だから少なくとも氷の山を通るよりも寒くないよ。
普通のあったかい服装で魔道具とか無くても大丈夫だと思う」

「しかし、氷の山は読んで字のごとく地表を氷におおわれているのだぞ?どうやって穴を掘るのだ?
残念だが、我が国にそのような技術はない」

「そこは俺とゲイルと公爵とドラゴンで!」

「ドラゴン?!」

「ほら、俺ってばドラゴンライダーですので!
つまりは、氷魔法の公爵が地表の氷を操作して穴の部分の氷を無くす。
でもって、俺とドラゴンでドッカーンを繰り返して、最後にゲイルが土魔法で穴を補強して完成!
ゲイルはまだ魔力が完璧に戻ってるわけじゃないから、すぐに開始するのは無理だけど。
計画的にやっていけばいいんじゃない?」

ドヤア、と胸を張る俺。
褒め街をしているというのに、誰も褒めてくれない。なんで?

見るとみんな茫然と目を見開いたまま微動だにしない。
前世ではトンネル普通にあったけど、確かにこっちではみたことない。
人力では難しいからだったのかな?

ええ?でもこっちには俺とブリードさんがいるんだよ?
一応実現可能なプランを口にしたつもりなんですけど?
一寸むくれそうになったところで、ゲイルがようやく口を開いた。

「い、いや……スケールでかすぎねえか?そんな規模のトンネルなんて聞いたことねえぞ?
ダンジョン自作するみてえなもんだろ?」

「うむ。山を一つ貫通するなどあまりにも規模が大きすぎる。前代未聞だ。私はともかく、ゲイルの負担が心配だ」

公爵、もうゲイルの旦那さんぶるつもり?
俺がゲイルのヒールするに決まってるでしょ!それに、俺がゲイルに無理させるわけないじゃん!
ちゃんと何回かに分けてやるつもりだもん!



「ダンジョンみたいに曲がりくねったりする必要ないんだし。真っすぐに貫通するだけなら、大丈夫!
ブリードさんのドラゴンブレスと俺のファイアーボールを交互にやって穴を掘るでしょ。そこにゲイルが土魔法で表面をしっかりと固めて、床も平らにならすの」

「お、おう。サフィが言うと簡単そうに聞こえちまうんだよなあ……」

「ゲイル、騙されるな。簡単そうに聞こえるが、氷の山の貫通だぞ?穴掘りなんてもんじゃねえだろ」

キースの裏切り者めっ!キースは相棒なんだから、俺の味方をしてくれなきゃ!

しかもここで更なる問題提起。

「これまでは氷の山がある種、他国の侵略を退ける盾となっていた面もあろう。
トンネルが出来たとして、それが新たな脅威を産むのではないか?
これまで我が国が他国に頼らず自給自足でやってきたのは、他国の付け入る隙を作らぬ為。
他国より攻め入られても防げるだけの戦力を有していないからなのだ。
これまではこの国にはサフィラス殿のいうように『侵略するほどの旨味がなかった』。
しかし、鉄鉱石という資源があることが分かった。
さらに味噌や醤油が諸国に広まれば、この国を手に入れんと欲する国もあるのではないか?」

「うん。そのリスクはあります。
だからね、まずはトンネルの向こうとこっちに扉をつけて、門番さんをおいたらいいんじゃない?
そのうえで、他国と協定を結んだらどう?
この大陸、王国とリンドールとロンド、バース、東国で不可侵の協定を組むの。ついでに海を越えて侵略されるようなことがあれば、お互いに助け合うことにするの。
この大陸全体で大きな一つの国、みたいなイメージ」

「そのようなことが可能なのだろうか?」

「可能か、じゃないの。可能にするんだよ」

 
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