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東の国
ドラゴンと龍
ブリードの話は「早く言ってよおおおお!」なものだった。
曰く「何も聞かれなかったゆえ、知っているものと思うておったぞ」だそう。
王国に守護獣フェンリルがいるように、東国には古くから龍がいる。
ちなみに、ドラゴンと龍はその成り立ちが違うらしい。
ドラゴンは魔獣。元々の始まりはトカゲが魔素により魔物化し、それが進化を遂げていったもの。
一方龍はどちらかというと精霊などに近い存在。火や水や土、そういうもの自然物から精霊は生まれた。川や滝、雨や嵐などのエネルギーから生まれた存在が龍なのだそう。
どちらも「ドラゴン」とひとまとめにされることもあるのだけれど、ドラゴンに「ブリザードドラゴン」や「アイスドラゴン」「ファイアードラゴン」など色々な属性のドラゴンが居るのとは違って、龍は基本的に水属性。その成り立ちゆえ、天候を操作したり、水を操作することに長けている。
人の住まぬ極寒の地である東国に、はるか昔数人の流れ人が住み着き、いつしかそれが村となった。住処を追われた人や、流れ着いた人を受け入れるうち、村はいつしか国となった。
こうして東国が誕生した。
東国の人は、厳しい環境ゆえ、天候を司る龍を信仰し崇めた。
この地にあった龍は、人々の願いに応えその信仰を糧に東国を守り、氷を鎮める役目に担っていたのだという。
ブリードも同じ水属性ということでアイスドラゴンだった時に何度かあったことがあったんだって。
「初めての発情期で番を探しておってな。同じ水属性のドラゴンがいるときき来てみたところ、龍だったのだ。話してみると気のいい奴で、ときどき会うておうたのだ。
だが、この100年ほど顔をみておらなんだ。
我がこの地に関わるのならば、先に奴に話を通しておかねば。我らにも義理というものはあるのだ。
それに、この氷が問題だというのならば、そもそもの原因がヤツである可能性が高いのだが……」
なんと!
そもそもドラゴンとは別に龍が居るのにも驚きだし、東国に居たのも知らなかったんですが?!
龍ってアレだよね?あのラーメンのどんぶりに描いてある、日本の昔の話で坊やが乗ってる、アレでしょ?
え?その龍がこの氷漬けの原因?
はあああ?聞いてませんけど?!
俺は東国の人にもブリードが言ったことを伝えた。
「……なんと……!この地にそのような存在が!!」
俺や王国勢が驚いているのは当たり前として。
なんであなた方まで驚いているのでしょうか?!
なんかめちゃくちゃ嫌な予感がしてきたんだけど?
ここで「はい!」と護衛ブルーが手を挙げた。
発言は挙手で、が定着したようでなによりだ。
「はい、ブルーの発言を許可します!」
「私は祖父から昔聞いたことがあります。
伝承のようなものなのですが……昔この地に龍が降り立ち、祖先を災害から守ってくれたのだと。
祖先はその龍を守り神として讃え、ご神体を入れた祠を作って祀っていたそうなのですが……50年ほど前の火事でその祠は燃えてしまったのだと」
しーん………。
あの……
なんかそれ……
恐る恐るブリードを見れば、「うむ。それだな」と呆れたように尾を震わせた。
「ご神体が焼けると龍にも影響するの?ご神体は飾りではなく?」
「ドラゴンを模したご神体であれば、飾りにすぎぬ。いわば象徴のようなものだな。
しかし龍の場合は意味が違う。もともとはエネルギーの塊ゆえ、ご神体と龍は繋がっておるのよ。
祀られ地に縛られた龍はご神体に集まった祈りを力としておるゆえ、それが無くなれば衰えていくのみ。
そうして古き龍は消え、またエネルギーが溜まれば新たな龍が誕生するのだ」
「ってことは、その火事が原因じゃん!
天気とか見てくれてた龍がだんだん弱って消えたから、こうなったんじゃん!」
思わず「ムキー!」とワシワシ髪をかき混ぜてしもうた。
なんてこった!
「原因は分かったけど、50年前!もう龍が消えちゃってたならどうしようもないじゃん!」
ダーン!と足ドンする俺を「どうどう、落ち着け」とゲイルが宥める。ついでにボサボサになった髪も直してくれた。
ふう…いかんいかん。思わず我を忘れてしもうた。
だってさあ。だってさああ!!
俺と同じことを思ったみたいで、東国の面々の顔にも絶望が浮かんだ。
「と、と、トンネル!トンネルして移住しよう!みんなでバースに行けばいいんじゃない?」
するとブリードがのほほんと首を傾げる。
「いや、ヤツはまだ消えてはおらぬぞ?話を通すと言っておろうが」
「はあ?だって消えたからこうなってるんでしょ?」
「力が弱まった結果だろう。だが、昨年まではここまでではなかったのであろう?
ならば、奴はまだ消えてはおらぬはずだぞ?」
曰く「何も聞かれなかったゆえ、知っているものと思うておったぞ」だそう。
王国に守護獣フェンリルがいるように、東国には古くから龍がいる。
ちなみに、ドラゴンと龍はその成り立ちが違うらしい。
ドラゴンは魔獣。元々の始まりはトカゲが魔素により魔物化し、それが進化を遂げていったもの。
一方龍はどちらかというと精霊などに近い存在。火や水や土、そういうもの自然物から精霊は生まれた。川や滝、雨や嵐などのエネルギーから生まれた存在が龍なのだそう。
どちらも「ドラゴン」とひとまとめにされることもあるのだけれど、ドラゴンに「ブリザードドラゴン」や「アイスドラゴン」「ファイアードラゴン」など色々な属性のドラゴンが居るのとは違って、龍は基本的に水属性。その成り立ちゆえ、天候を操作したり、水を操作することに長けている。
人の住まぬ極寒の地である東国に、はるか昔数人の流れ人が住み着き、いつしかそれが村となった。住処を追われた人や、流れ着いた人を受け入れるうち、村はいつしか国となった。
こうして東国が誕生した。
東国の人は、厳しい環境ゆえ、天候を司る龍を信仰し崇めた。
この地にあった龍は、人々の願いに応えその信仰を糧に東国を守り、氷を鎮める役目に担っていたのだという。
ブリードも同じ水属性ということでアイスドラゴンだった時に何度かあったことがあったんだって。
「初めての発情期で番を探しておってな。同じ水属性のドラゴンがいるときき来てみたところ、龍だったのだ。話してみると気のいい奴で、ときどき会うておうたのだ。
だが、この100年ほど顔をみておらなんだ。
我がこの地に関わるのならば、先に奴に話を通しておかねば。我らにも義理というものはあるのだ。
それに、この氷が問題だというのならば、そもそもの原因がヤツである可能性が高いのだが……」
なんと!
そもそもドラゴンとは別に龍が居るのにも驚きだし、東国に居たのも知らなかったんですが?!
龍ってアレだよね?あのラーメンのどんぶりに描いてある、日本の昔の話で坊やが乗ってる、アレでしょ?
え?その龍がこの氷漬けの原因?
はあああ?聞いてませんけど?!
俺は東国の人にもブリードが言ったことを伝えた。
「……なんと……!この地にそのような存在が!!」
俺や王国勢が驚いているのは当たり前として。
なんであなた方まで驚いているのでしょうか?!
なんかめちゃくちゃ嫌な予感がしてきたんだけど?
ここで「はい!」と護衛ブルーが手を挙げた。
発言は挙手で、が定着したようでなによりだ。
「はい、ブルーの発言を許可します!」
「私は祖父から昔聞いたことがあります。
伝承のようなものなのですが……昔この地に龍が降り立ち、祖先を災害から守ってくれたのだと。
祖先はその龍を守り神として讃え、ご神体を入れた祠を作って祀っていたそうなのですが……50年ほど前の火事でその祠は燃えてしまったのだと」
しーん………。
あの……
なんかそれ……
恐る恐るブリードを見れば、「うむ。それだな」と呆れたように尾を震わせた。
「ご神体が焼けると龍にも影響するの?ご神体は飾りではなく?」
「ドラゴンを模したご神体であれば、飾りにすぎぬ。いわば象徴のようなものだな。
しかし龍の場合は意味が違う。もともとはエネルギーの塊ゆえ、ご神体と龍は繋がっておるのよ。
祀られ地に縛られた龍はご神体に集まった祈りを力としておるゆえ、それが無くなれば衰えていくのみ。
そうして古き龍は消え、またエネルギーが溜まれば新たな龍が誕生するのだ」
「ってことは、その火事が原因じゃん!
天気とか見てくれてた龍がだんだん弱って消えたから、こうなったんじゃん!」
思わず「ムキー!」とワシワシ髪をかき混ぜてしもうた。
なんてこった!
「原因は分かったけど、50年前!もう龍が消えちゃってたならどうしようもないじゃん!」
ダーン!と足ドンする俺を「どうどう、落ち着け」とゲイルが宥める。ついでにボサボサになった髪も直してくれた。
ふう…いかんいかん。思わず我を忘れてしもうた。
だってさあ。だってさああ!!
俺と同じことを思ったみたいで、東国の面々の顔にも絶望が浮かんだ。
「と、と、トンネル!トンネルして移住しよう!みんなでバースに行けばいいんじゃない?」
するとブリードがのほほんと首を傾げる。
「いや、ヤツはまだ消えてはおらぬぞ?話を通すと言っておろうが」
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