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東の国
古龍さん4
ハクは小さな身体をゆらりと揺らして笑った。
「聖女よ、我を癒してくれるというのか?
ならばぜひ頼みたい。
なに、駄目で元々よ。
このまま何もできぬのなら、賭けてみようぞ」
「うん!俺が思うに、ヒールだって『治って欲しい』っていう祈りの一種じゃないかな。
だからね、絶対にハクも元気になるよ。信じて!」
俺とゲイル、二人並んでハクの上の手をかざした。
今まで一緒にやったことはないけど、何しろ相手は精霊さんだもの。
一人よりも二人の方がいいと思う。
みんなが見守る中、ゲイルとふたり呼吸を合わせる。
「……ゲイル、いくよ」
「よし!」
「「せーの!ハイヒール!!」」
ぱああっ!
辺り一面が真っ白な光に包まれた。
「わあっ!」
思わず両手で目を覆う。
光が収まったその後には……
ブリードさんの横に、大きな大きな白い龍の姿が!
その龍は長い長い尻尾をゆらゆらさせながら、大きな体を嬉しそうにくねらせていた。
【聖女らよ!助かったぞ!おかげで我が力が戻った!
これならば、そちらの力になれようぞ!
さあ、盟約を果たそうではないか!】
ぶるりとその巨体を揺らし、あっと空に飛び立ったハク。
。
巨大な白蛇にも似たその姿は、なるほど、ドラゴンとは似て非なるもの。
翼はなく、代わりに美しい鬣のようなものが風をうけてたなびく。
陽光を受けた鱗が虹色に光り輝く様はなんとも神々しいものだった。
思わず口を開けて魅入ってしまった。
あれが小さな白蛇さんの本当の姿!
凄い!
「ふふん!わが友は美しかろう!」
「うん。なんていうか……精霊って感じ!祈りや信仰を糧にっていうのが分かる気がする」
欲などとはかけ離れた存在。
純粋に善なるもの。
ゲイルが感嘆の声を上げた。
「……綺麗だ……」
そうだね。すごくキレイだ。
「この地にかような方がいらしたとは……。我らはなんと無知で愚かなことを……」
ミカゲ陛下とブルーが沈痛な声を上げる。
ハクの圧倒的な存在感を前に、改めて精霊をないがしろにしてきた罪悪感に打ちのめされているようだ。
ガクリと肩を落とし、今にも崩れ落ちそう。
「記録を怠ったことは確かに東国の人に責任があるけど、あとは善意と不幸が重なった結果だもん。仕方ないよ。
ハクはきっと恨んでもいないと思うよ。だからこそ、盟約を果たすって言ってくれてるんだし。
悪いと思うんなら、新しい祠を作って、今度こそしっかりと祀ってあげて。
祈りが絶えないように。後世にも伝え続けて。それでいいと思うよ」
身体だけでなく、きっとその心も大きな存在だから。
ハクは氷の山の方に向かうとその真上でぎゅーんと空に向かって一直線に飛んだ。
するとハクの後を追うように氷の山から水蒸気のようなものが空に向かって立ち昇る。
それはみるみるうちに巨大な雲のような塊となった。
大きな口を開け、ハクが海の方向に向かって咆哮。
すると集まった雲が一斉に海に向かった。
そして海の上でぎゅうっと固まり真っ黒な雲に。
その雲はどしゃーっと大量の雨を降らした。
正にその場だけ蛇口をひねったような雨だ。
雨がやみ、空がさあっと晴れる。
雲一つない真っ青な空だ。
風も嵐も止み、天からは温かな陽が降り注いでいた。
「……冬が……去った………」
ミカゲ陛下の口から、かすれた声が漏れた。
「冬が去ったぞ!ははは!冬が去ったのだ!!」
「はははは!や、やった!やりましたっ陛下、やりましたよっ!!ははは!
これで、これでようやく……ようやく春が来ますっ!!」
抱き合って喜ぶ陛下とブルー。
「やったね、ゲイル」
「ああ。これでようやく東国の冬は終わる」
作物が育つまでの間をなんとかすれば、もう東国は大丈夫だろう。
あとはその先を望むかどうか。
これまでと同じ生き方を望むのならばそれでよし。
でも、新しい世界に踏み出すのなら。
「後はトンネル!ハクにやってもいいか聞いてみよう!」
「聖女よ、我を癒してくれるというのか?
ならばぜひ頼みたい。
なに、駄目で元々よ。
このまま何もできぬのなら、賭けてみようぞ」
「うん!俺が思うに、ヒールだって『治って欲しい』っていう祈りの一種じゃないかな。
だからね、絶対にハクも元気になるよ。信じて!」
俺とゲイル、二人並んでハクの上の手をかざした。
今まで一緒にやったことはないけど、何しろ相手は精霊さんだもの。
一人よりも二人の方がいいと思う。
みんなが見守る中、ゲイルとふたり呼吸を合わせる。
「……ゲイル、いくよ」
「よし!」
「「せーの!ハイヒール!!」」
ぱああっ!
辺り一面が真っ白な光に包まれた。
「わあっ!」
思わず両手で目を覆う。
光が収まったその後には……
ブリードさんの横に、大きな大きな白い龍の姿が!
その龍は長い長い尻尾をゆらゆらさせながら、大きな体を嬉しそうにくねらせていた。
【聖女らよ!助かったぞ!おかげで我が力が戻った!
これならば、そちらの力になれようぞ!
さあ、盟約を果たそうではないか!】
ぶるりとその巨体を揺らし、あっと空に飛び立ったハク。
。
巨大な白蛇にも似たその姿は、なるほど、ドラゴンとは似て非なるもの。
翼はなく、代わりに美しい鬣のようなものが風をうけてたなびく。
陽光を受けた鱗が虹色に光り輝く様はなんとも神々しいものだった。
思わず口を開けて魅入ってしまった。
あれが小さな白蛇さんの本当の姿!
凄い!
「ふふん!わが友は美しかろう!」
「うん。なんていうか……精霊って感じ!祈りや信仰を糧にっていうのが分かる気がする」
欲などとはかけ離れた存在。
純粋に善なるもの。
ゲイルが感嘆の声を上げた。
「……綺麗だ……」
そうだね。すごくキレイだ。
「この地にかような方がいらしたとは……。我らはなんと無知で愚かなことを……」
ミカゲ陛下とブルーが沈痛な声を上げる。
ハクの圧倒的な存在感を前に、改めて精霊をないがしろにしてきた罪悪感に打ちのめされているようだ。
ガクリと肩を落とし、今にも崩れ落ちそう。
「記録を怠ったことは確かに東国の人に責任があるけど、あとは善意と不幸が重なった結果だもん。仕方ないよ。
ハクはきっと恨んでもいないと思うよ。だからこそ、盟約を果たすって言ってくれてるんだし。
悪いと思うんなら、新しい祠を作って、今度こそしっかりと祀ってあげて。
祈りが絶えないように。後世にも伝え続けて。それでいいと思うよ」
身体だけでなく、きっとその心も大きな存在だから。
ハクは氷の山の方に向かうとその真上でぎゅーんと空に向かって一直線に飛んだ。
するとハクの後を追うように氷の山から水蒸気のようなものが空に向かって立ち昇る。
それはみるみるうちに巨大な雲のような塊となった。
大きな口を開け、ハクが海の方向に向かって咆哮。
すると集まった雲が一斉に海に向かった。
そして海の上でぎゅうっと固まり真っ黒な雲に。
その雲はどしゃーっと大量の雨を降らした。
正にその場だけ蛇口をひねったような雨だ。
雨がやみ、空がさあっと晴れる。
雲一つない真っ青な空だ。
風も嵐も止み、天からは温かな陽が降り注いでいた。
「……冬が……去った………」
ミカゲ陛下の口から、かすれた声が漏れた。
「冬が去ったぞ!ははは!冬が去ったのだ!!」
「はははは!や、やった!やりましたっ陛下、やりましたよっ!!ははは!
これで、これでようやく……ようやく春が来ますっ!!」
抱き合って喜ぶ陛下とブルー。
「やったね、ゲイル」
「ああ。これでようやく東国の冬は終わる」
作物が育つまでの間をなんとかすれば、もう東国は大丈夫だろう。
あとはその先を望むかどうか。
これまでと同じ生き方を望むのならばそれでよし。
でも、新しい世界に踏み出すのなら。
「後はトンネル!ハクにやってもいいか聞いてみよう!」
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