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東の国
閑話休題 サフィちゃんのクリスマス2
ゲイルの存在を完全に無視して、レオンが俺を抱きしめたまま、すうっと大きく深呼吸。
「ああ。ようやく息ができた気がする……」
あ、あぶなっ!
レオン、かなりヤバかったのでは?!
え?でもまだ数日だよね?そんなに?
とりあえず病んでしまわぬようレオンをなでなでぎゅうっとしておく。
「よしよし」
ゲイルがものすごおく虚無の顔をしているけれども、これは仕方なし!
婚約者の危機だもの。ゲイルだって理解してくれる。
「いや……父親の前でいちゃつくなよお前ら……」
訂正。ゲイルの理解は及ばずでした。
すると俺に抱き着いたまま、レオンがゲイルに猛抗議。
「そもそも、信頼して旅立たせたのに行方不明になるなんてあり得ないんですよ?ゲイル。
結婚を控えた婚約者において行かれた私の気持ちが分かりますか?
これくらいは昔からしていたでしょう?今さらですよ」
「開き直るなよ」
「どうせ人助けに夢中になっていたんでしょう?
人助けはいいとして、サフィにずっと言われていますよね?ホウレンソウです。
報告、連絡、相談を怠っていなければこうなっていませんよ?
どれだけあなたを心配していたと思っているんですか?
もう少し自分の影響力を考えてください」
で、片は付いたのですか?」
立て板に水のような正論パンチ。
言っていることは素晴らしいのだが、いかんせん俺を抱っこして俺の頭に頬をすりつけ、スンスンしているので全てが台無し。
でも俺だってレオン不足だったから、レオンの胸に頭をぐりぐりして、ホッペもすりすり。
そして、俺だってゲイルが死にかけたのにはかなりオコ。だからこの勢いでレオンにも叱っておいてもらおう。
「レオン、あのね、ゲイルってば魔力枯渇で死にかけてたの!
俺がいかなかったら儚くなっていたかも!
東国の人、魔法とか使えないから、魔力枯渇も知らなかったの。だから安静にしてたら治ると思ってたの。
アウトじゃん!あのままだったらヤバかった!
俺、グッジョブだったんだよ!褒めて!!
それで、ゲイルを叱ってやって!!」
「……はあ?!」
俺の言葉を聞いたレオンの眉がくわっと上がった。
「ゲイル、馬鹿なんですか?いい大人が何をしているんですか!
あなたに何かあればサフィも危険にさらされるんです。
悔しいが、サフィにとってあなたはかけがえのない人なんですから!
もっと自分を大切にしてください。
あなただけの命ではないのですよ?!」
「いや、その………すまん」
言い返す言葉もなくうな垂れるゲイル。
そうだよ、もっと反省して!
「正直、私としては無関係の東国よりもサフィの方が大切なのです。
あなたは、愛する息子の命と他国の有象無象とどちらが大切なのですか?
順番を間違えないで下さい。
まずは護るべきものを守って、それからです」
「面目ない」
うな垂れたゲイルが俺に向かって両手を伸ばす。
「サフィ、すまん。俺は医者だから、目の前の患者を見捨てることはできん。
だが、お前のことは誰よりも大切に思ってる。それだけは分かってくれ」
俺はムスっと口を引き結んだ。
ちょっと泣いちゃいそうだったから。
「……許さないんだからね」
腕の中に飛び込んで行かない俺に情けなく眉を下げたゲイルが、この世の終わりという顔になった。
なし崩し的に許した感じになってたけど、俺はもっと言いたかった。
もっとわかって欲しかった。
「俺が行けば大丈夫だって思ってたけど、だからって怖くなかったわけじゃない。
俺、怖かった。ものすごく怖かった!!
レオンのこと好きだけど、だからってゲイルの好きが減ったりしないんだからね!
レオンとゲイルと、両方必要なの!
必ず連絡はとれるようにして。でなきゃ、助けらんないでしょうが!
分かった?!」
「分かった。二度と忘れない。約束する」
泣きそうに歪んだ顔でゲイルが再度腕を広げた。
「ゲイルっ!!」
「サフィっ!!」
抱き着こうとしたところで、レオンにグイっと引き寄せられた。
「渡さないよ?私だってサフィロスなんだから。
どうせまたすぐ行くんでしょう?……今夜はクリスマスだから。
そのために戻ったんだよね?」
「うん。そうなの。…………怒った?」
さすがにちょっと申し訳ないなと思った俺に、レオンが仕方なさそうにため息をついた。
「寂しくはある。だけど……怒ってはいない。サフィだからね。
きっとクリスマスには戻ると思っていた。
配るプレゼントはマジックバッグに入れてあるよ。
残念だけれど、そろそろ行かないと間に合わない。でしょう?」
「さすが俺の婚約者!レオン、大好き!」
「ふふ。私もだよ、サフィ」
チュ、と額にキスをして「さあ、行っておいで」と俺を送り出してくれたレオン。
なんだかいつもレオンに甘えてしまっている気がする。
待たせてばかりでごめんね。
心配かけてごめんね、レオン。
でもね、レオンが待っててくれるって思うから、俺は安心して行けるんだよ。
「ゲイル、ポーション飲んでおいてね。
王国にもたっくさんヒールを待っている人が居るんだから!」
「ああ。今度は……その……枯渇しないように気を付ける。
もう限界が分かったからな。あんなことにはならない。任せてくれ!」
さあ、子供たちに希望を配ろう。
みんなに希望を配ろう。
「じゃあ、行ってきまーす!!
レオン、メリークリスマス!
戻ったらたくさんチュウしようね!大人のチュウもしてもいいからね!特別!」
「「サ、サフィ?!」」
ゲイルが青くなり、レオンが真っ赤になった。
「ルーダ、きて!今年も精霊の使徒、やりますよーっ!!」
「ああ。ようやく息ができた気がする……」
あ、あぶなっ!
レオン、かなりヤバかったのでは?!
え?でもまだ数日だよね?そんなに?
とりあえず病んでしまわぬようレオンをなでなでぎゅうっとしておく。
「よしよし」
ゲイルがものすごおく虚無の顔をしているけれども、これは仕方なし!
婚約者の危機だもの。ゲイルだって理解してくれる。
「いや……父親の前でいちゃつくなよお前ら……」
訂正。ゲイルの理解は及ばずでした。
すると俺に抱き着いたまま、レオンがゲイルに猛抗議。
「そもそも、信頼して旅立たせたのに行方不明になるなんてあり得ないんですよ?ゲイル。
結婚を控えた婚約者において行かれた私の気持ちが分かりますか?
これくらいは昔からしていたでしょう?今さらですよ」
「開き直るなよ」
「どうせ人助けに夢中になっていたんでしょう?
人助けはいいとして、サフィにずっと言われていますよね?ホウレンソウです。
報告、連絡、相談を怠っていなければこうなっていませんよ?
どれだけあなたを心配していたと思っているんですか?
もう少し自分の影響力を考えてください」
で、片は付いたのですか?」
立て板に水のような正論パンチ。
言っていることは素晴らしいのだが、いかんせん俺を抱っこして俺の頭に頬をすりつけ、スンスンしているので全てが台無し。
でも俺だってレオン不足だったから、レオンの胸に頭をぐりぐりして、ホッペもすりすり。
そして、俺だってゲイルが死にかけたのにはかなりオコ。だからこの勢いでレオンにも叱っておいてもらおう。
「レオン、あのね、ゲイルってば魔力枯渇で死にかけてたの!
俺がいかなかったら儚くなっていたかも!
東国の人、魔法とか使えないから、魔力枯渇も知らなかったの。だから安静にしてたら治ると思ってたの。
アウトじゃん!あのままだったらヤバかった!
俺、グッジョブだったんだよ!褒めて!!
それで、ゲイルを叱ってやって!!」
「……はあ?!」
俺の言葉を聞いたレオンの眉がくわっと上がった。
「ゲイル、馬鹿なんですか?いい大人が何をしているんですか!
あなたに何かあればサフィも危険にさらされるんです。
悔しいが、サフィにとってあなたはかけがえのない人なんですから!
もっと自分を大切にしてください。
あなただけの命ではないのですよ?!」
「いや、その………すまん」
言い返す言葉もなくうな垂れるゲイル。
そうだよ、もっと反省して!
「正直、私としては無関係の東国よりもサフィの方が大切なのです。
あなたは、愛する息子の命と他国の有象無象とどちらが大切なのですか?
順番を間違えないで下さい。
まずは護るべきものを守って、それからです」
「面目ない」
うな垂れたゲイルが俺に向かって両手を伸ばす。
「サフィ、すまん。俺は医者だから、目の前の患者を見捨てることはできん。
だが、お前のことは誰よりも大切に思ってる。それだけは分かってくれ」
俺はムスっと口を引き結んだ。
ちょっと泣いちゃいそうだったから。
「……許さないんだからね」
腕の中に飛び込んで行かない俺に情けなく眉を下げたゲイルが、この世の終わりという顔になった。
なし崩し的に許した感じになってたけど、俺はもっと言いたかった。
もっとわかって欲しかった。
「俺が行けば大丈夫だって思ってたけど、だからって怖くなかったわけじゃない。
俺、怖かった。ものすごく怖かった!!
レオンのこと好きだけど、だからってゲイルの好きが減ったりしないんだからね!
レオンとゲイルと、両方必要なの!
必ず連絡はとれるようにして。でなきゃ、助けらんないでしょうが!
分かった?!」
「分かった。二度と忘れない。約束する」
泣きそうに歪んだ顔でゲイルが再度腕を広げた。
「ゲイルっ!!」
「サフィっ!!」
抱き着こうとしたところで、レオンにグイっと引き寄せられた。
「渡さないよ?私だってサフィロスなんだから。
どうせまたすぐ行くんでしょう?……今夜はクリスマスだから。
そのために戻ったんだよね?」
「うん。そうなの。…………怒った?」
さすがにちょっと申し訳ないなと思った俺に、レオンが仕方なさそうにため息をついた。
「寂しくはある。だけど……怒ってはいない。サフィだからね。
きっとクリスマスには戻ると思っていた。
配るプレゼントはマジックバッグに入れてあるよ。
残念だけれど、そろそろ行かないと間に合わない。でしょう?」
「さすが俺の婚約者!レオン、大好き!」
「ふふ。私もだよ、サフィ」
チュ、と額にキスをして「さあ、行っておいで」と俺を送り出してくれたレオン。
なんだかいつもレオンに甘えてしまっている気がする。
待たせてばかりでごめんね。
心配かけてごめんね、レオン。
でもね、レオンが待っててくれるって思うから、俺は安心して行けるんだよ。
「ゲイル、ポーション飲んでおいてね。
王国にもたっくさんヒールを待っている人が居るんだから!」
「ああ。今度は……その……枯渇しないように気を付ける。
もう限界が分かったからな。あんなことにはならない。任せてくれ!」
さあ、子供たちに希望を配ろう。
みんなに希望を配ろう。
「じゃあ、行ってきまーす!!
レオン、メリークリスマス!
戻ったらたくさんチュウしようね!大人のチュウもしてもいいからね!特別!」
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ゲイルが青くなり、レオンが真っ赤になった。
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