もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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東の国

ゲイルは恐る恐るドアをノックした

と。

コン、コン。

ものすごおく遠慮がちなノックのあと、ものすごーくわざとらしい咳払いが聞こえた。

「……ごほん!えへん!」

コン、コン、コン。

「……あーー……サフィ、サフィー。起きたかー?
あー、お父様が来たぞー?入っても大丈夫かー?
その……なんだ……まだ寝てるならそう言ってくれよー!
入るぞーー!三つ数えたら入るからなー!いいなーー!」

何してるのだゲイルは。さっさと入ればいいのに。

「ゲイルーー!おはよう!!」

ごちゃごちゃ言っててなかなか入ってこないから、中からバーンとドアを開けてあげた。

「うわあっ!サ、サフィ?!…………元気そうだな?」

「?元気ですが?」

「は、ははは!元気そうだ!……うん。どこも痛いところは無さそうだが…念のためぴょんぴょんできるか?」

「?」

真ん中らへんはごにょごにょ言ってて聞き取れなかったけど、とりあえず言われた通りにぴょんぴょんぴょんとジャンプしてみせ、ついでにくるーりと回ってカッコいい感じにシュタッとしてみた。

「これでいい?」

「よし!いや、良かった。うん。良かった!
レオン……お前は素晴らしい男だ。さすがは俺が見込んだ男。こっちにこい!ハグしてやる!」

ゲイルはなぜかレオンをべた褒めして頭を魔で回している。
俺がやったぴょんぴょんは何だったんだ?せっかくサービスでくるっとしてあげたのに!

と思ったが、ゲイルに撫でまわされているレオンが急に疲れた表情になって少し甘えているように見えたから黙って見守ってあげた。婚約者の心遣いだ。





「ゲイル、とりあえずレオンにざっくり説明しておいた。
でもって、交易結ぶんだったらそのまんま結んで来ちゃっていいよって。公爵ってば一応宰相だから、その権限をくれるって!
トンネル云々はさておき、しょうゆとミソについてはすぐに交渉して仕入れたいんだけど!
あといろんな食材があるに決まってるからそこんとこも詳しく知りたい!
また東国に戻るよ!」

「あ!ちょっと待って!」

レオンが机の引き出しから何やら取り出しサラサラサラっとサインした。

「はい。これを持って行って。
これを持つものに東国との交易に関する全権を委任する、と書いてある。私のサインも入っているから」

と、ここでゲイルが口を開いた。

「お前ら冒険者一行ってことにしてるんじゃねえのか?どうすんだ?」

「あーーー!」

そうだった!だってゲイルに様子見してもらうだけのつもりだったし、俺もゲイルを助けて戻るつもりだったから!
大事にしなくていいようにしたつもりだったのに、大事になってしまった!

「……水戸黄門しよう」

「は?なんだって?」

「えっと。本で読んだ偉い人の話。その偉い人は身分を隠して諸国を回っててね。悪者を倒してるんだけどさ。
身分が分かる書状みたいなのをバーン手出して『このいんろ……ごほん、書状が目に入らぬか!』ってやって正体を明かすの。
レオンがちょうどいい奴くれたから、それ見せて『この書状が目に入らぬか!実は我ら正体を隠しておったが王国の宰相御一行なるぞ!ちなみに俺は王子の婚約者なるぞ!』ってしたらいいんじゃない?」

ゲイルの目が死んだ。

「……普通に『隠してて悪かった。実は』って言っちまおう。そうしよう」

まあそれでいいならいいけど。
水戸黄門の方が絶対カッコいいのに。





こうして王国で一晩を過ごした俺たちは、またしてもレオンを残してトンボ帰りすることになった。
レオンは「最後にもう一度」と俺をぎゅうっと抱っこしてスンスンして、「もう少し」とさらに5分くらい抱っこしてからようやく笑ってくれた。

「さあ、行っておいで。ホウレンソウを忘れずに!何かあればすぐルーダを寄越すようにね?」

「了解!レオン、行ってくるね?あの……ミカミカにキース借りちゃってごめんねって言っておいて。
帰ったら3日くらい休みにするから!」

「分かった。あまりゲイルを困らせてはだめだよ?」

「はーい!」




ついでに食堂に行ってたらふく美味しそうなものをマジックバッグに詰め込んで東国に。

みんな大丈夫かなあ?
一寸は色々進んでいるんだろうか。



「戻ったよーー!キース、こ、…氷の人ー!」




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