もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

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東の国

東国のクリスマス

東国ではみんな真面目に会議でもしてるかと思いきや……
なんと、宴会が開催されていた!

「はぁ?どうして?ブリードとハクと今後の相談とかは?」

すると俺の後ろでゲイルが申し訳なさそうにうな垂れた。

「あー……、俺の責任かもしれん。ミカミカを連れてくときにな、そのう……伯爵邸によって酒とつまみを……。せっかくの祝い事なんだ、みんなで祝おうと思ってな」

ゲイルの言葉でハッと気づいた。
数日前は疲れ切った顔をしていた東国の人たちが、めっちゃ楽しそうにしている。
おかしな歌を歌って踊って。
お母さんのお膝では幼子が幸せそうに頬をピンクに染めてすやすや。その小さな手にはゲイルが持ってきたのだろう棒つきキャンディーがしっかりと握られていた。

そうか。
決定的な被害があったのは今年だけど、それまでも徐々に長くなっていく冬。
先の見えない恐ろしさを抱えながら、頑張って頑張って暮らしてきたんだもんね。
緩急って言う言葉があるけど、ずっとその「急」の状態だったんだ。
明るい未来の話ができるようになった今日くらいは、緩めたっていい。
何もかも忘れて歌って踊って楽しんで。
きっとゲイルはそう思ったんだろう。


かがり火を囲むように座して酒を飲む集団の中に、キースと公爵の姿もあった。
寛いだ様子のキースの膝には、ミカミカが。
これまた幸せそうにすやすやと寝息を立てている。

こんな風に気の抜けた顔を人前でさらすのを初めて見た。
きっとそれだけ俺たちのいない間、ミカミカは気を張っていたんだろう。
闇落ちしそうなレオンを支えてひとりで頑張ってくれていたんだろう。
もちろんレオンのニュー側近衆(先輩たちやリオや俺のいつメン)も頑張ってくれていたんだろうけど、レオンが気を許せるのってミカミカくらいだもんね。
愛する人キースに会って気が抜けたんだろうな。

愛おしそうに妻を見つめていたキースが俺に気付き、「ごめんな」と片目をつぶる。
人差し指を立てて唇に。

大丈夫。久しぶりに会った新婚さんの邪魔なんてしないから。

「しょうがないなあ」と俺は笑った。

「まあ、数日くらい話し合いがずれてもたいしたことないでしょ。クリスマスだしね」

ぶっちゃけレオンの闇落ち度合いは深まるかもしれないが、それは致し方ない。
今回の俺はかなり頑張ってきたんだから(何しろお尻ぐちょぐちょされちゃったし)耐えてもらおう。




目を覚ましたミカミカは、真っ赤になってきまり悪そうに言い訳した。

「あー、キースへのクリスマスプレゼントってやつだ。俺がキースに膝枕されるのがいいっていうからさあ」

キースも疲れ切ったミカミカを休ませてあげたかったんだろうな。
なんてことは言わずに、いい機会だから揶揄っておく。

「じゃあ、キースからもあげなきゃね。今度はミカミカがキースに膝枕する番でしょ」
「はぁ?!」
「よーし!じゃあ遠慮なく」

揶揄いがいもなくキースが待ってましたとばかりにミカミカの膝にゴロン。
ミカミカは困ったようにキースを指さし「どうする、これ?」と俺に聞いた。

「キースもすっごく頑張ってくれてたから、甘やかしてやって」

「しょうがねえなあ……」

仕方なさそうに言う割には、膝の上のキースの頭を優しくそっと撫でてやっている。
ミカミカったらツンデレさん!

それを見て、向かい側で飲んでいたブルー&レッドがぼやいた。

「俺たちずっと見せつけられていたんですよ?」
「独り身の前で酷くないですか?」

「ならあなた方でくっついてしまえばいいじゃない?」と俺の心のなかのアントワネットが言ったとか言わなかったとか。





一方、さりげなく消えたゲイルは……
公爵といちゃついてた!なんてこったい!
ゲイルの肩に公爵がそっと腕を回して……

「ちょっとお!息子をほおっておいて、いちゃつかないで!」

「サフィ?!あー、なんだ、フィオだって今回頑張ってくれてただろう?」
「いや、ゲイルとサフィラスの頑張りには到底及ばぬ。私は良いから、サフィラスを……」

ごちゃごちゃ言いながらもまたイチャイチャし始める二人。
はい!公爵、健気アピールやめてくださーい!

とはいえ、確かにこの人、とってもお役立ちだった。
無理やりついてきたがったとはいえ、ゲイルのいるところを見つけたり(ストーカーグッズ持たせてたからだけど)、道を切り開いたりと、大活躍だったと言えなくもない。

ぐぬう!

俺は公爵をグイッとしてゲイルの膝の上に乗り込んだ。
右足を跨ぐようにしてくるりと向きを変え、ゲイルの胸にもたれる。

「……公爵にはゲイルの左の半分を貸してあげる」

「ふは! 勝手に俺の貸し借りするなよな! 俺本人に権利はないのか?」

「ホウレンソウを怠ったゲイルには権利はありませーん。ゲイルロスに耐えた俺にこそゲイル権が与えらえるべきでしょう」

「ゲイル、サフィラスはとても頑張っていたぞ?」

「……侯爵も頑張ってたから、特別に左足に膝枕していいよ。許してあげる」

酔っているのか珍しく頬を色づかせた公爵が、そっとゲイルの膝に頭を乗せた。

「……うむ……。いいものだな……とても、いい……」

幸せそうに目を瞑り、頬を緩める公爵。
こうしてみると、この人もちょっとかわいいよね。

そっとその額を撫でてやる俺を、ゲイルがにこにこしながら眺めていた。

「……俺のお父様はゲイルだけだから。パパは王様だし。だからこの人は……ママにする」

「ぶはっ! そりゃいい、フィオがママか! 」

ここで俺はハッとしてゲイルに聞いてみた。
ちょっと言いにくいのだが、ここはハッキリさせておきたい。主に俺の精神衛生上の理由で。
そっと耳もとに口を寄せ、小さな声で。

「あのー。ゲイル、大人の婚約者の男の子はえっちのときにお尻にアレして練習するんだけれども、ゲイルがにゅるりするほう? されるほう? 」
「はぁ?!」

聞いたこともないゲイル渾身の「はぁ?!」が出た。
ど、どうした?!







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