もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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新生活スタート!

俺のおかえりなさい会


俺は今中庭に居る。
でもって、どうして中庭にいるかというと…。
「サフィおかえりなさい食事会」が催されたのである!
そ、そんなオーバーな……!


なんと、公爵が俺の周りをうろちょろしてたのは、そのお誘いをするためだったのです。
何か言いたげにしているのに、なかなか言い出せずモダモダしていた公爵。

「サ、サフィラス……少し良いだろうか?」
「………なんですか?」
「………実は…」

もおおおお!!何なの?言いたいことがあるんならさっさと言って!

あまりにモダモダしているので、遂にゲイルがキレた。

「おい!何か言いたいことがあるんだよな?さっさと言え!いつまでそうやってんだよ!
サフィ、コイツの話を聞いてやってくれるか?
ほら!話せ!」

ゲイルもすっかり公爵の扱いが変わったよね。今なんて、コイツって言ったよ?
昔は仲が良くって公爵がゲイルを兄のように慕ってたって聞いた事がある。
でも俺の件でゲイルが怒り心頭、公爵に一線を引いて接するようになった。
それからまた公爵の俺への接し方の変化によって、少しづつゲイルの公爵への態度も変わっていき…。
俺のいない一週間、一緒に工事を頑張って。
遂に「こいつ」扱い。遠慮なくぞんざいな扱いに。

そんなゲイルに促され、ようやく公爵が口にしたのが…

「…今晩、何か予定はあるだろうか?……もし、もしよければだが、サフィラスが戻った祝いの食事会を中庭でさせて貰えないだろうか?新しい使用人たちの紹介もしたいと思っておるのだが…。どうだろう?」

俺はこれまではほとんど俺の部屋から出なかった。
せいぜい図書館に行くとかそれくらい。
だって「敵の家」くらいの感じだったんだもん。
食事もゲイルとエリアス、ティガマリと一緒に、ティガーが作ったものを部屋で食べていた。

でも、そこから少しづつ話す機会が増え、たった1週間ではあるが、俺は少し変わった。
だからかもしれない。
公爵には、これを機会にみんなで食事ができれば、という想いがあったようだ。
新しい使用人の紹介もかねて、って言われたら、断れないもんね。
公爵、なかなかの策士。さすが宰相である。

俺はゲイルをちらりと見た。
ゲイルが苦笑しながら頷く。

「………とくによていはないので。いきます」

空気を読んで大人の対応をした俺を褒めて欲しい!

「そ、そうか!では、私は先に行っている。ライオネル、リオネル、サフィラスに案内を頼む」

公爵はあのモダモダが嘘のように、心なしか足取りも軽く去っていった。
……あの人、こんな人だったんだね…。
冷静に見たら…凄く分かりやすい。ちょっとポンコツだし。

「……こまったおとなだね」
「…そうだな。まあ、中庭に行ってやろうぜ。色々と張り切って準備させてたみたいだしな」



ライオネルとリオネルが言うには、訓練所を作ったり、外壁を強化しただけじゃなく、敷地の外に出れない俺が退屈しないようにと中庭を改築したんだって。

「サフィが楽しめるように、僕も色々と考えたんだよ!楽しみにしてて!」
「うん。私もアイディアを出したんだ。喜んでもらえたら嬉しい」

どんな風に変わったんだろう。ってゆーか、変わる前なんて知らないんだけどね!
中庭っていうからには、花壇とかベンチとかある感じ?
お散歩コースみたいになってるんだろうか。



ちょっとドキドキしながら向かった中庭は…

「オモテたんとちがーう!!なかにわのていぎとは!!」

思わず叫んでしまったが、許して欲しい。
だって、だって!
なにこれ!中学校のグラインドより広いじゃん!
邸の裏手。邸と邸に囲まれ見えないようになった場所は、庭なんてもんじゃなかった。
ちょっとした公園じゃん!

ライトアップされた中庭は、花の種類によりいくつかのゾーンに分けられており、それぞれが可愛らしい小道でつなげられていた。
トンネルのような花のアーチがかかっている場所もあるし、動物型に刈り込まれた木が並ぶゾーンもある。
あそこのあたりなんて……もしかして、迷路ではなかろうか?
それぞれの場所にはその場に合わせた様々なベンチが配置され、庭を眺めながら休憩できるようになっている。
……完全に公園じゃん!園芸のテーマパークじゃん!

おまけに、よく見ればあちこちに色々な種類のブランコまで配置されている。
もしかして、俺が遊ぶように?
………マジですか。

「これなら、屋敷の中でも楽しめるでしょ!サフィ、お外に出かけられないから、おうちで楽しめるようにと思って!僕がブランコ考えたんだよ!乗る時には、僕が押してあげるからね!」

さらに、それぞれの小道の終着点となる庭の中央には池まであり、その池の真ん中には鳥かごのような形の東屋が。
その東屋まではそれぞれのゾーンから綺麗な橋を渡って行けるようになっていた。

「池には魚も放してあるんだ。気に入って貰えるといいんだが…」

ライリオが教えてくれるが…。
敷地の外に出れない、といっても、そもそも敷地がでかいのである。
敷地内に池とかちょっとした裏庭という名の森だってあるのだ。
王城や侯爵家、伯爵家にだってゲートで行けるんだし、退屈しないで十分過ごせると思うんだけど…。

あまりの「中庭」の規模にお口あんぐり。

「げ…ゲイル…。これ、きぞくのふつう?やりすぎじゃないの?おれのかんかくがへん?
ゲイル、どうおもう?これ、しってたんでしょ?」

庭を指さして思わずゲイルに問えば、ゲイルがそっと目をそらした。

「……公爵が張り切ってな。リオネルとライオネルと額を突き合わせて設計していたんだ。まあ……黙って貰っておいてやれ」

やっぱゲイルだってやり過ぎだと思ってたんじゃん!
しかも、これ、俺の?俺のってことなの?
お、お、重いわーーーーーー!!!激重なプレゼントじゃん!!

どう?嬉しい?とキラキラとした目で見てくる2人に、俺が言えたのは………。

「……すごいね…。そうぞういじょう」



食事会の会場は、池の中の東屋だった。
どうして分かったかというと、正面の橋の上にずらりと新しい使用人の皆さんが並んでいたからだ。

えええー?あそこ通るの?
むちゃくちゃ通りづらい……!!!

ちなみに公爵家の使用人は、俺の魔力レインボー判明により「秘密保持&サフィを守る」ということで全て入れ替えられたんだって。魔法契約をして守秘義務を課した新しい使用人たちのほとんどが侯爵家から斡旋された使用人で、少数精鋭。みんな武芸にも通じているそうだ。
料理人も、王家から紹介された新しい料理人。人柄も腕もお墨付き!
公爵家にしては凄く少ない数の使用人だけど、ひとりひとりの能力は粒ぞろい。
この人たちが、みんなでしっかりと俺を守ってくれる「チーム公爵家」である。

なんか、俺一人のせいでこんな大事に…。す、すまん……!!!
こうなってみると、まあ色々あったにせよ、俺を守れるだけの権力とお金がある公爵家に生まれて本当に良かった。
力のない貴族に生まれてたら、希少な属性ってことであっちゅーまに誘拐監禁コースだったかも。

俺は複雑な思いを抱えながら、使用人の並ぶ橋の上へ。
ひとりひとりの自己紹介を聞きながら「サフィラスです。よろしく」とペコリ&あくしゅあくしゅ!
なんか、前世の選挙前の政治家みたいだな、なんて思わず遠い目をしてしまう。

結構な時間をかけて挨拶し終えた俺は、東屋に足を踏み入れた時にはふうふうと息を切らしてしまっていた。

「………なかにわ。そうなんしかねないおそろしいばしょ…」

中庭!おそるべし!
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