もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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まさかまさかの新生活

俺とゲイルとみんなの未来

公爵はしかし強い目をしてこう断言する。

「だが、私はエリアナと出会った。
エリアナに出会い、彼女を愛した。彼女が私の全てとなったのです。
彼女が私の運命なのです」

言い切った! 
愛ゆえに堕ちた公爵だけど、そこまで人を愛せるのは凄い。
そう思った。
お母様は公爵の運命だったんだね。

ゲイルが「助かった!」みたいな顔をしている。気持ちはわかる。

しかし、ルーダは無情だった。

「実はそのエリアナとかいう女は幼き頃に儚くなっておるはずの命だったのだ。
だからゲイルと番うはずだったのだよ」

ががーん!お母様、ほんとなら大人になる前に死んでたの⁈

「な、なんと!!しかし、エリアナは…」
「うむ。そうだ。その理は、女が生き延びたことで変わった。
そしてゲイルから生まれるはずだったサフィラスの運命もまた違うものに変わったのだ」

俺を含め、関係者全ての脳内はぐるぐるに。
お母様が若いうちに死ぬのは運命だった。
逆に生きてたからこそ理が変わってしまい、色々な事が変わってしまった。
それはいい事なの?
悪い事だったの?
俺がゲイルから生まれてたら、何か変わった?サフィもあんな目に合わなかった?

ゲイルが苦々しい声で搾り出すように言った。

「……俺が医者になってエリアナの治療をしたからか?
それがサフィの運命を歪めることになっちまったのか?
俺が理通りにしていれば、サフィは苦しまずに済んだのか?
本来ならサフィは生まれてからずっと俺が守ってやれたのか?」

俺のせいでサフィは…、と顔を歪めるゲイル。

ルーダは憐れむような眼差しをゲイルに向ける。

「……そうだ。お主の選択で運命が変わった。サフィの運命もな」
「そうか…」

俺は思わずツッコんだ。

「ゲイル、なんかおれのためにおちこんでるけどさ。
いや、うんめいかわらなきゃ、ゲイル、ママになってたんだよ⁈
ぼくはゲイルママうれしいけど。
それって、BなLで、こうしゃくとラブってたってことだよ⁈
こうしゃくとちゅーしたり、すきすきしたりなのよ⁈
りかいしてる⁈」

しーん。

「公爵とラブ…?」
「びーなえる、とは?」
「公爵とちゅー…すきすき…」
「ゲイルと公爵が…」

みんなの唖然とした呟きにゲイルが真っ青になり固まってしまう。
ショックが強すぎたようだ。

「…サフィは救いたい…だが…」

公爵をちらりと見て

「………無理だろ…」

絶望のおかお。
ほおらね!無理でしょ!

流れ弾に被弾した公爵が眉をへにょん。
ご、ごめんよ公爵!

「そ、それに運命が変わった良い面もあるのだぞ?」

ルーダがなんだか慌ててフォローみたいなことをしてくれる。
ナイス!ルーダ!!

「本来居ないはずのそこな2人が生まれたのだからな」

ルーグは優しい瞳でライリオをさす。

「そのままエリアナが生きてさえいれば、皆幸せに暮らせただろう。
しかし…既にエリアナの命は、ギリギリだったのだ。
サフィを世に送り出すため、理はエリアナの命を繋いでいた。
サフィが生まれ、元来の理どうりにエリアナは失われた。運命だったのだ」

そうか。
俺のせいじゃなかった。
元々失われているはずの命だったんだね。
なんだか俺は少しホッとした。
ある意味、ゲイルが、公爵の愛がお母様の命を救い、理さえ捻じ曲げて死の運命を先延ばしにしていたのか。
それって…すごいよね。

強い愛が人を生かし。
強い愛の結果、俺は不遇に置かれた。
でも、それがなければ、ライもリオも生まれなかった。

だったらさ。
俺はこう思うんだ。
不遇に置かれたけど、今はゲイルと一緒。サフィと俺も幸せ。
だからさ。

「ライとリオがうまれてよかった。
ゲイルがうんめいかえたおかげ。
こうしゃくがうんめいみつけたおかげ。
これでよき」

ルーダが俺に目で同意してくれた。

「エリアナはなくとも、公爵がゲイルかサフィを愛せば理どうりに幸せになれただろう」

うん。
…でも、そうはならなかった。

俺の心の中がわかるように、ルーダは頷く。

「だが…元来の理を外れていたエリアナの力は弱く、公爵は浄化されきっていなかった。負を拭いきれなかったのだ。
そのためエリアナの死により負に飲まれ、ゲイルもサフィも遠ざけてしまった」

思い出したのか、公爵の顔が苦痛に歪んだ。
今もなお、エリアナの死は彼の心を苦しめるのか…。

「公爵に悲しみや怒りが満ち溢れてた為に負の魔力が集まり、浄化に向かっていた筈の歪みが再び出てしまった。
エリアナもなくゲイルもサフィも離され、聖女の浄化のないまま公爵は負の魔力を溜め始めた。
周りにも影響は出ていた筈だ。

エリアナを奪ったこの世界への怒りは消えず、公爵の悲しみはあまりにも深かった。
サフィとゲイルなしには負を拭いきれぬ。魔王化は時間の問題だった。
我はそのために子を遣わしたのだ」

確かに公爵家、おかしかった。
ライリオも。
普通なら徐々に癒えていくはずなのに、悲しみに囚われたまま抜け出せない、みたいな感じだった。

愛って、なんだろう。
人を救い、人を堕とす。
なんて美しくて哀しい。
未だに彼を苦しめるほどに。

俺は公爵に歩み寄り、そっとその背を抱いた。

「かなしかったね。つらかったね。くるしかったね。
でも、もうだいじょうぶ。
ちゃんとエリアナはライリオをのこしてくれたでしょ?
ことわりからはずれてまで、ふたりをのこしてくれたでしょ?
それって、あいだよね。
ライリオは、ずっとずっときえない、あいのあかしなんだよ」

黙ったまま顔を覆って俯く公爵の口から漏れる堪えきれぬ呻き。

「…グゥッ……フッ…ウウッ…」

ライリオも俯き、震えながら声を漏らさぬよう堪えている。

「ライリオも。こっち」

俺はまとめて3人に手を伸ばした。

「きせきのかぞく。エリアナのあいのあかし。しあわせのあかし。
であえてよかったね。
ルーダのいうとおり。だいじょうぶ。
みいんなでしあわせになるの。
エリアナはそのためにがんばったの」

前は俺を避けていた公爵が。今は俺に遠慮している公爵が。
耐えきれぬように俺を強く、強く抱きしめた。
生まれて初めての公爵の抱擁は、なんだか昔想像してたより熱くて。
嫌いなはずなのに、俺の胸を温める。
エリアナの愛に免じて、今だけは抱っこ許してあげるよ。

「………すまなかった、サフィ。……ありがとう」

俺は初めての公爵の香りを胸いっぱいに吸い込む。最初で、最後の公爵の匂い。
エリアナの代わりに俺が覚えててあげる。

「いったでしょ。
ぼくふぐうでも、ライリオがうまれてよかった。
いまはゲイルがおとうさま。ちゃんとゲイルがいる。だから ぼくもだいじょうぶ!」

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