もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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俺、またしてもお披露目会?!

閑話休題 エリアナのお話

その日の晩、ゲイルがエリアナについて沢山の話を聞かせてくれた。

エリアナは基本的には楽観的な人だったそうだ。
そこは俺とよく似てる。
「困っちゃったあ」なんていいつつも、にこにこ。
「なんとかなるでしょ」と笑い、本当になんとかなってしまったらしい。
そこらへんは聖女の血筋の影響とかあったのかな?

いつも穏やかで、家族みんなに愛されてた。
ゲイルと叔父と姪の関係とはいえ、兄妹みたいに育ったんだって。
あんまり怒るようなこともなかったんだけど、あのゲイルを「こら!」ってしかり飛ばす面もあった。
ただ優しいだけの人じゃなかったんだね。

公爵は、ゲイルに会いに来たときにエリアナに知り合った。
ゲイルとエリアナが侯爵家の庭でエリアナ発案の「ピクニックランチ」をしてるときに、たまたま公爵が怪我を治療しに訪ねてきたんだって。
ゲイルはそれまでにも怪我の治療(前公爵にやられた怪我もあったんだろう)とかで公爵に会ってたし、結構親しくしてたらしい。
それでも、普通は医者の方を邸宅に呼ぶから怪我した本人は訪ねてこないし、訪ねるにしても前触れは出すんだけど。

その時は出兵後に

「このまま治療をして帰る。いったん邸に戻るよりその方が効率的だ」


って、なんとそのまま馬で侯爵家にやってきてしまったんだそうな。そこらへんの残念さが公爵、って感じ。
まあ相当ゲイルに懐いてたっていうのもあるんだろう。ゲイルに言ったらムスっとするから言わないけど。

で、血がついたままの服で突然現れた公爵にエリアナは仰天。
普通の貴族女性はそんなの見たら卒倒するんだろうけど、エリアナは違った。
激怒したらしい。

「あなた!
怪我をしたまま馬に乗ってくるなんて、何を考えているの⁈
それにその服!汚れたままだし、血もついているじゃないの!
さっさと脱ぎなさい!
黴菌が入ったらどうするの!」

医師であるゲイルをそっちのけで、てきぱきと指示を出し、公爵の上半身を丸裸にしてしまった。

ちなみにゲイルは「まあ、パッと見た感じ命に係わるもんでもねえって分かってたしな。女にビビって言うなりになってる公爵がすんげえ面白かったからみてた」って。

公爵は、初めて会うエリアナに叱り飛ばされたあげく服をはぎ取られ、相当驚いた。
鉄仮面どこ行った、って感じでポカーンとして、親に叱られた幼子みたいな表情をした。
ゲイル曰く「可愛かったぜ?こいつこんな顔もできるんだ、って驚いた」

そりゃそうだよね。
なんと言っても公爵だよ?
そんな身分の人を叱り飛ばすなんてありえないし。そもそも公爵、顔が怖いし!普通は叱り飛ばすなんて無理!

それを出会ったばかりの、しかも穏やかで大人しそうな高位貴族の女性がやったわけだ。
おまけに、血を見て卒倒するどころか「雑菌が入るから汚い服を脱げ!」って自ら男性の服をはぎ取っちゃうんだもん。
そら公爵だって、ぽかーん、だ。
俺もよく「じょうしき!」って怒られるけど、その俺ですら「ええー⁈」って思う。

でもゲイルに言わせれば、俺はエリアナのそういう面をよく引き継いでるんだって。
「お前が怒ったときは俺だってビビる。
公爵もお前の言いなりだっただろう?
あれはエリアナの刷り込みもあるけどな」
だそうな。

て。話がずれちゃった。

とにかく、その後ゲイルが治療を引き継いだんだけど。
治療後の公爵にエリアナはにこっと笑って

「せっかくだし、あなたもここでお茶をして行きなさいな。
顔色が悪いし痩せすぎよ?きちんと栄養をとっている?
このサンドイッチはね、私が作ったの。
栄養バランスを考えて作ってあるから、あなたも食べて。
これは命令よ。
あんな無礼な訪問をしたんですから、異論は認めません!」

って公爵の口に無理やりサンドイッチを押し込み、あれを食べろ、これを食べろとうるさく世話を焼いたらしい。

後でゲイルが聞いたところによると、エリアナには公爵が「捨てられた子猫」みたいに見えてたんだって。
公爵が捨てられた子猫!
公爵の顔に猫耳が生えた映像が浮かんでしまって、俺は爆笑。
俺のお母様、ほんとに最高!!
一見はかなげにすら見えるあの外見で、中身はけっこう強引。
ゲイルとエリアスと通じるものがある。
さすがサフィール家。

こういうギャップに公爵はやられちゃったのかもね。
それから公爵は前触れもなくちょくちょく侯爵家に顔を出すようになったんだって。
絶対それ「初対面で一目ぼれ」ってやつじゃん!
なんだよ、公爵。むちゃくちゃいい話!
王道中の王道だよ、これ!!


よく考えたら、運命を変えた最初の人ってエリアナじゃね?
ゲイルの治療で運命を変えて生き延びて、公爵を一目ぼれさせて、ライリオまで産んで俺を産んだエリアナだけど。
そもそも、治療したゲイルが貴族のままヒールも使う医者になれたの、エリアナさんが説得して後押ししたからじゃん!
反対してたゲイルの兄である父親を言いくるめて、更に平民になるとまで言ったゲイルを説得して伯爵位を継がせて。貴族と医者を両立させちゃったんだもん。凄いよね。
ある意味で最強なんじゃない⁈

その最初のエリアナの強さが、運命の流れを変えて彼女自身の命をながらえさせた。
公爵やゲイルの運命を変えて、新たな命を生み出したんだ。



会ったことはないけど。
今でもみんなの心にしっかりと根を下ろし、ゲイルに優しい顔をさせるエリアナは、俺の心にもしっかりと根を下ろした。
ゲイルから産まれるはずだった俺は、新しい運命には存在してなかったのかもしれない。
なのに。エリアナは俺まで頑張って産んじゃったんだ。凄すぎない?
ゲイルから生まれてたら冷遇はされてなかったと思うけど。
それでも、いろいろなことを知った今は、俺、この運命でよかったって。
お母様から生まれてよかったって思ってるよ。
お母様、最高!


俺の中のエリアナ成分は少しかもだけど、最強の遺伝子だよね。
公爵・ゲイル・エリアスっていう最強の男たちを従えちゃうんだもん。
最強の遺伝子でもって、俺は頑張って楽しく生きていく。
みんなのお尻ひっぱたいてでも前に進むよ。

産んでくれてありがとう。お母様。




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