もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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俺、またしてもお披露目会?!

俺、びっくりです!

俺、びっくりです!
いや、なにがびっくりかっていうと。
人間って、たった2週間くらいでこんなに変わっちゃうんだね…しみじみ。


ゲイル、お元気ですか?サフィです。
そちらはおかわりありませんでしょうか?
こっちは大変なことになっておりまするよ…。


俺は俺を向かい合わせでお膝にのせて両腕でしっかりと抱き込んで、俺の顔中にチュッチュしたあげく、今は俺の頭に顔をうずめてクンクンしているお兄様をなでなでしながら、遠い目をしていた。


ルーダのヘルプに、なるはやで王城に駆け付けた俺。
「助かった!」「救世主が!」という顔をして実際にそう口にだした護衛さんたちが必死になりながら「殿下のお部屋でとお待ちください」というのでお兄様のお部屋で待っていたのですが…。
ほんの1分もしないうちに、ダダダダダ!バーン!とお兄様登場!!

「サフィイイイイイイ!!!」

流れるようにお膝に載せられ抱き込まれ。はや30分が経過しております……。
10分くらいは俺も「熱烈だなあ!」なんて思いながら「お兄様ってば、俺のこと大好きなんだからあ」なんてニヤニヤする余裕があったのですが。
いや、にしても長すぎませんか?!
10分を超えたくらいから、腕が疲れたのでもうなでなでは放棄。
無の境地であります。

ミカミカが苦笑しながら「サフィロスが長すぎたんだよ…。まあ、許してやって?」と俺を拝んでいる。
俺を危ない薬みたいに言わないでくれますー?
唇を尖らしてみたら「あ!そうか!」みたいな顔をして、抱っこされたままの俺のお口にひと口大にしたマドレーヌやマカロンを運んでくれるミカミカ。
お口がもほもほしたタイミングでジュースまで飲ませてくれた。
なんてすばらしい侍従っぷりなんでしょ!
って、そうじゃなあああい!

そうこうしているうちに、お兄様のクンクン&ハスハスがちょっと大人しくなってきた。
もうそろそろいいかな?

俺はグイっとお兄様の頬を掴むと、やつれてしまったお兄様の顔をのぞき込んだ。
そしてそっと両手で頬を包み、引き寄せる。

「くるのわすれてごめんね?」

チュ!とお鼻にチュウ。
おでこをくっつけてぐりぐり。
ほっぺすりすり。

うちではこのスペシャルセットで大抵のことは解決する。
効果はてきめん。
ようやくお兄様の目に光が戻ってきた。
そう。お兄様はまたしても闇落ちしてしまっていたのである。
戻ってくれてよかったあああ!!

「サフィ?私は会いに行けないんだよ?サフィが来てくれなきゃダメでしょう?
もう私のことを忘れないって約束して?」

ものっすごい真剣な顔。でも言ってることはまるで捨てられたわんこみたいだよ、お兄様。
ちょっと呆れつつも、確かに今回は俺が悪かったので

「やくそく。ごめんね。でいりきんし かいじょでいいからね。
こうしゃくけ、きてもいいよ」

と素直に謝罪。出入り禁止を解除した。
お兄様、見ない間に俺が倒れたときよりもボロボロになってた。
なんていうか…危うい感じ。
あーあ。クマが凄い。ちゃんとねれてないんでしょ。
お肌のガサガサは、栄養が足りてないしょうこ。
髪にもツヤが無いし、爪だって噛んじゃってる!これ、子供がストレスでやるやつだ!
どうも俺がいないだけでとってもストレスだったみたい。

「出入り禁止は、本当に辛かった…。会いたくても会えないのがこんなに苦しいとは…。
サフィという癒しを知る前は良かったのだが。
癒しを知ってしまってから失うと、こんなに辛いんだね…。
情けないが…私にはもうサフィのいない生活なんて無理なようだ。
どうか…そこを理解して貰えないだろうか?」

必死で訴えるお兄様。

5歳のお披露目会から1週間一緒に過ごしただけで、俺ってばお兄様にとって必需品みたいになっちゃってる。
王様といい、お兄様といい、俺がいないと困っちゃう大人が王城にまで量産されてしまっていた。
俺ってばまるでヤバい人みたいな…?

自分でも気に入ってるこの最高の手触りのほっぺがいけないのだろうか?
それとも幼児特有のにおいだとかに癒し効果があるのだろうか?みんなすぐ嗅いでくるし。
お子様体温にも熟睡効果とかあるのかもしれない。

いずれにせよ、俺がいなきゃダメだって、勝手にインプリンティングされてしまったお兄様。
いきなりゼロになったのがいけなかったのかも。
徐々に減らしていって、俺のいない生活に慣らしていくべきだった。
そこは出入り禁止したあげくすっかり忘れてた俺の落ち度。もーしわけなかった。

俺は子犬のような瞳で俺を見つめるお兄様に、優しく言い聞かせた。

「あいたいときは、きていいからね。
それで、ごはんはきちんとたべて、よるもちゃんとねてね。
くるときは、おしごとやおべんきょうをちゃんとしてから。
それがおやくそく。
がんばったら、よしよししてあげますので!」

お兄様は子供みたいに俺のひとことひとことに、うんうんと頷く。

「分かった。サフィに会えるならば、それを励みに頑張ろう。
しっかりと王子としての責務を果たすよ。
サフィの自慢のお兄様で居たいからね」

そう言って笑う顔には、まだ痩せてはいたけれど、しっかりとお兄様らしい明るさがあった。
うん。もう大丈夫そうだね。よかったあ!

「あのね、おにいさまはいつでもぼくのじまん。
やさしくてかっこよくて、すてきなおにいさまだよ!」

ぱあああああ!!
おお!お兄様からまたあの後光が!まぶしいいい!

ハラハラしながら様子を伺っていたミカミカが安心したみたいに息をつき、俺に親指を出してグッジョブしてくれる。
闇落ちお兄様のお世話、大変だったろうなあ。
こころなしか、ミカミカの頬もこけ、あのピッカピカさらっさらヘアーもところどころほつれている。
こんなぼろっちい大天使は初めて見た。

俺は片手でミカミカを「おいでおいで」して、大きな「?」マークをつけたミカミカの顔にもほっぺすりすりとお鼻にチュウをしてあげた。

とたん、せっかく光の世界に戻ってきたお兄様から黒い影がズモモモモ!

「サフィ?!そういうのは、家族だけにしようね?
つまり、王城ではサフィのお兄様である私だけ。
ああ、あと…特別な時にだけ、父上と母上には許可する。
でも、それ以外にはやってはダメだよ?」

圧が凄い!

俺は無言でこくこくと頷いたのだった。

これからは絶対に絶対に定期的にお兄様のケアをしておこう。
でないと俺も周りの人も面倒なことになる。
今回のことで俺はしっかりと学んだのだった。


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