もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

文字の大きさ
152 / 538
第2部   サフィ10歳。伯爵家の息子です!

俺の新たな始まり

第2部のスタートです!
ようやくタイトル回収。冒険者になります!
✧*。٩(ˊᗜˋ*)و✧*。


※※※※※※※※※※※※※※※




ぱんぱかぱーん!!

皆様こんにちは!サフィです!
俺、10歳になりました!!!

そう!俺が昔約束した公爵家で搾取する期限、10歳になったのです!

俺は無事ゲイルの養子になり、正式にグリフィス家の息子「サフィラス・グリフィス」に!
そして…長年居候しておりました公爵家から出る。

あんなに「大嫌い」「早く出たい」って思ってた公爵家だけど。
いつの間にか俺の居場所になってた。

公爵家のみんなは、俺が間違ったことを言わない限り、どんな無理を言っても俺の味方をしてくれた。手助けしてくれた。
むちゃな要求にも黙って応えてくれた。
俺を守るためになら、力もお金も惜しまず使ってくれた。
「お父様じゃない」「家族じゃない」って言われても、俺を見守り続けてくれた。
何より…俺を大切に想ってくれたから。

ライとリオの、そして公爵の真心が俺の気持ちを溶かした。
みんなの愛情が、ちゃんと俺に伝わったんだ。
6年前は絶対に許せないと思ってたけど、やっぱりここに残ってよかったよ。



俺は感慨深く邸を眺めた。

2歳の俺が一段一段這うようにして降りた階段も、もう軽々と上り下りできる。
ゲイルが無理やり壁をぶち抜いて広げちゃった俺の部屋。
公爵が俺のために増設した訓練所。
ライとリオが俺のためにっていろいろ考えてくれた中庭。
今はあちこちに幸せな想い出がある。

バイバイ公爵家。これで一旦さよならだね。
次にここに来るときは、居候じゃなくてお客様な俺だよ。



邸の前で公爵は俺に聞いた。

「……最後に、抱きしめさせてもらっても良いか?」

公爵のその勇気を振り絞った気弱な発言に、俺は黙って手を広げた。
俺をぎゅうっと思い切り抱きしめる公爵。
これまでずっと俺に遠慮して、俺からハグすることはあっても公爵からは触れないようにしていたのに。
それでも、震える手を俺に伸ばし、しっかりとその身に抱き込んだ。
その身体は温かく思ったよりもしっかりと逞しくて、力も強かった。
ドッドッドッ。
伝わる公爵の鼓動は速くて。黙ったままの公爵の激情を俺に伝えてくる。

胸が熱い。
なんでだろ。泣きそう。

俺もぎゅうっと抱き返した。


しばらく抱きしめ合った後、公爵は何度も何度も大きく息をつき、やがてその想いを振り切るように俺を離した。
そして俺の顔をじいっと愛おし気に見つめる。まるでその目に焼き付けようとするかのように。

ひたすら、ひたすら見つめて。
ついに、公爵は言った。


「………サフィラスの部屋はずっとそのままにしておく。
ここを別邸だと思って、いつでも泊まりにくるといい。
私たちは……いつでもお前を歓迎するから」

「うん。ライリオも居るしね。また遊びにくるから。
今までありがとう。…………お父様」

ぐぅ!
声にならない声とともに、もういちど背骨が折れそうなくらいに強く強く抱きしめられた。

「私の…愛する息子、サフィ。
覚えていてくれ。私はこれからもお前を愛している。
だから困った時には遠慮なく頼って欲しい。必ず力になる」

震える声。

「うん。…うん。覚えとく」

ありがとう。そしてさよなら、お父様。
俺は行くよ。





絶対に泣くだろうと思ったリオは笑顔だった。

「だって、サフィとは離れても仲間でしょ?
僕たちをサフィのパーティーに入れてくれるって言ったもんね。
会いにいくから。またギルドにも遊びにいくから。
これで終わりじゃないよね!
だから、こう言わせて。いってらっしゃいサフィ!」

「そうだな。屋敷を出たからって会えないわけじゃない。
会おうと思えばいつでも会えるんだ。
……会ってくれるだろう?」

ライもそう言って俺に手を差し出す。

「うん!もちろん!
グリンアローの仲間だからね!」

俺は差し出された手を掴むと、そのままぐいっとひっぱった。

「うわっ!」

倒れてきたライを受け止め、その背をぽんぽん、と叩いてぱっと離れる。

「またね、ライ、リオ!
俺……行くね!」





ゲイルは門の前に停めた馬車の中で俺を待っていてくれた。

「お待たせ。ゲイル」
「ちゃんとお別れできたか?」
「うん!」

俺は耐え切れずにゲイルに抱き着いた。

「……っ。ど、どうして…どうして涙がでるのかなあ?
俺、俺、ゲイルの息子になれて、嬉しいのに…っ。
これからは、ゲイルの家で、ゲイルとっ一緒にっ暮らせるのに…っそれでも…」
「ああ。…分かってる」
「……ふっ……うっ…っ」
「泣いていいぞ。サフィ。泣けよ」
「…………泣かないもん…っ」
「ほーら。いい子だ。我慢するな。俺が許す」
「………………しつこいよっ!もうっ!ゲイルの…ゲイルのばかああああ!
うわあああああん!もうっもうっ泣きたくっ…なかったのにいいいいいい!
ゲイルがっ悪いっん、だからなああっ!わあああああああん!」


俺はゲイルの胸にぐりぐりと顔を押し付けながら、ゲイルの胸を何度も叩いた。
ゲイルは「ごめんな」「うん。俺が悪かった」「大丈夫だ。大丈夫」って言いながら、俺が泣き止むまで俺の背中を撫でてくれた。
感想 892

あなたにおすすめの小説

結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です

柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。 そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。 真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。 けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。 「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」 彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。 アンリは実は、亡き国王の婚外子。 皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。

何もしなかっただけです

希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。 それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。 ――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。 AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。

あなたの愛したご令嬢は俺なんです

久野字
BL
「愛しい令息と結ばれたい。お前の家を金銭援助するからなんとかしろ」 没落寸前の家を救うため、強制的な契約を結ばれたアディル。一年限りで自分の体が令嬢に変わる秘薬を飲まされた彼は、無事に令息と思いを通じ合わせることに成功するが……

「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った

歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。 だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」 追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。 舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。 一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。 「もう、残業はしません」

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。