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第2部 サフィ10歳。伯爵家の息子です!
俺のどきどき
あのあと俺はなんだかふわふわした気分でキースに部屋まで送って貰った。
やっぱり手を繋いて歩いたんだけど、指にはめた指輪ごときゅっと握られた。
指輪はサイズピッタリに直されていて、最初からくれるつもりで用意してくれたんだと分かる。
キースの熱が俺サイズの指輪にうつってゆく。なんだか指輪が熱を持っているみたいだと思った。
部屋の前でキースが俺の手をそっと放す。
ぽんぽん、と俺の頭を優しく叩いた。
「遅くまでごめん。風邪をひいてないといいんだが。
温かくして寝ろよ。おやすみ」
ベッドに転がって今日の事を思い出す。
ほんとに、色々あった1日だった。
学校で新しい友達ができたし、冒険者証ももらった。
みんなからお祝いしてもらって、この部屋はたくさんのプレゼントで埋まってる。
ペンやネックレス、鞄や靴、花束、ブローチ。
渡してくれたみんなの顔を思うだけで胸がぽかぽかになる。
お兄様がくれたのはミスリル製の剣。この剣は魔法との愛称が良くって魔力を通しやすいんだって。
それと、凄く軽いのに最強の強度を誇るというアーマー。俺にピッタリのサイズ。
「冒険者として依頼を受ける時に使って欲しい。
本当は私もサフィのパーティーに加わりたいのだが…立場上それは難しい。
私の代わりにこの剣とアーマーがサフィを守ってくれますように」
そう言って剣にキス。
ミスリルの剣が、まるで聖剣みたいに見えた。
危ないことはするなといつもうるさいお兄様だけど、冒険者になるなと言われたことはない。
だけど本当は言いたいんだと思う。
「たまにね…サフィを城に閉じ込めておけたらと思うんだ」
って言ってたから。でもお兄様は
「あちこちを自由に飛び回るのがサフィだからね」
そう言って、俺を閉じ込めるためのものじゃなくて、俺の自由を守るためのものをくれるんだ。
ずっとずっと俺を気遣って見守ってくれた大切な人。
俺が自由に生きられるようにしてくれた。
苦しいとき、寂しいとき、辛いとき。
お兄様とゲイルがいたから、俺は安心していられた。
お兄様に抱きしめられると幸せな気持ちになるよ。
胸がぽかぽかしてくすぐったいような嬉しい気持ちで、ついにこにこしちゃうんだよ。
お兄様は、いつも俺のことが大好きだって言う。
でも「俺も大好きだよ」って言うと
「ふふ。ありがとう。
私の好きと同じなら嬉しいな」
って、笑顔なのにどこか切ない目をして微笑む。
お兄様。
俺ね。たまにだけど、お兄様に見つめられるとドキドキしてちょっと怖いの。
燃やされちゃいそうな熱さがその奥に見えるときがあるから。
それは公爵がお母様について語る時と同じ熱さ。
俺がまだ知らないもの。
あのドキドキが好きってこと?
大人になればわかるかな?
それまで待っててくれるのかな?
だけど。
キースといると、安心する。
「頼っていいんだよ」って言われてるみたいに。
「キースがいたら大丈夫」って思ってる。
なんとなく、同じ辛さを知ってるからかなあ。
言わなくても気持ちが通じるの。
黙って一緒に歩いてても、楽しいの。
指輪をくれたときのキースはなんだか大人って感じで、ちょっと恥ずかしくってドキドキした。
お兄様にもキースにもドキドキしちゃうの、へんかなあ?
このドキドキが「好き」なら、2人とも好きってこと?
それともお兄様と違う好きで、単にカッコいいからドキドキしただけ?
うーん。よく分かんない。
2人がカッコ良すぎるからいけないんだ!
今日のことを思い出してたはずなのに、いつのまにかお兄様とキースが浮かんじゃう。
俺はなんだか「うわああ」と叫びたいみたいな、恥ずかしいみたいないたたまれない気持ちになって、ベッドの上でなんだか火照る顔を両手で覆ってジタバタジタバタ。
「あああああ!なんで2人ともあんなにカッコ良なの?
ズルくない⁈」
「何がずるいんだ?」
「ひゃあ!」
びっくりして手をどけたら、ゲイルだった。
「ゲイル!びっくりしたあ!
酔っ払いはもう良き?ヒールしたの?」
「ああ。もう十分酔っ払いしたからな。
で、サフィ。顔が赤いし、挙動不審だったぞ?
どうした?」
ギシリとベッドをゆらして横に座ったゲイルが、俺の顔を覗き込んできた。
まるで全てお見通しみたいに。
「な、な、な、なんでもないの!」
「いや、ジタバタしながら『ズルい』って叫んでただろ?
誰がずるいんだ?」
俺の横に寝転がりながら、俺の前髪をそっと払うゲイル。
「……」
「ん?お父様に話してみ?サフィ?」
あーーん!俺が大好きなその声はズルい!
「ゲイルもズルい!みんなズルい!
どうしてそんなにカッコ良いのおおおおっ!!
俺だけカッコ良くない!!カッコ良くなりたいのに!
なんかドキドキしてカッコ悪いの!
ズルいズルいズルい!!」
「そうか。サフィはカッコ良い誰かにドキドキしたのか。……その指輪か?」
「………なんで分かったの?」
「そりゃあ、サフィのお父様だからなあ」
そう言うと、ゲイルはぎゅうっと俺を腕の中に抱え込んだ。
「しかし…そうか。ドキドキしたのかあ……!
あーーー!クソ!!」
腕の力がどんどん強くなる。
「ゲイル!いたい!」
「あ、ああ。すまん。
…サフィも大きくなったんだなあ…」
しみじみと、どこか寂しそうに呟くゲイル。
「うん。もう10歳ですのでね!
学校も行けるし、冒険者にもなりましたし!
……大人にならない方がよかった?」
大人になった俺はもう可愛くないのかな?
ちょっと心配になった俺が聞いたら、ゲイルはまた腕の力を強くした上、抱っこのまま俺をゆさゆさと揺さぶった。
「こーら!んなわけねえだろ!
幾つになろうと、サフィは俺のかわいいかわいい息子だ!
大人になるのを見るのが親の楽しみなんだぞ?
けど……いつか親離れすんのかなあ、と思うとなあ…ちと寂しくはある。
まあ、それが父親ってもんだ!」
「あのね。
ゲイルだってずっとずーっと俺の大好きなお父様だよ。
大人になってもずっと特別だし、大好きだよ!」
「ふふふ。そうか。それは嬉しいなあ!
でもな。いつかサフィにも愛する人ができる。
んで、そいつがサフィをかっさらって行くのかと思うと…」
「ゲ、ゲ、ゲ、ゲイル!顔!顔こわいから!」
「あ、ああ。すまんすまん」
かっさらっていく奴は殺すと言わんばかりの顔だった!
これはヤバい!
いつか俺が好きになった人はゲイルと戦いになるかもしれぬ。
誰かを好きになったら、その人の強さも確認しなきゃ!
どっちが負けても嫌だから、ちょうど互角がよき!
ゲイルと互角かあ…ハードル高すぎない?
あれ?なんかもう「好きとか嫌いとか」じゃなくて「強いかどうか」の次元になってきてない?
そう思ったら、なんかドキドキだとかズルいだとかいうのが全部小さなことみたいな気もしてきて、俺は思わず笑ってしまった。
うん。
今はゲイルが1番好き!
だって「お父様と戦って俺を勝ち取って!」なんて思えないもん。
あれ?
なんかこれ、俺が勝ち取る側、掻っ攫う側じゃなくて、俺が勝ち取られる側、掻っ攫われる側が前提になってない?
俺、まさかの嫁ポジ?
違うでしょ!
俺は夫!
俺が「オヨメさん下さい」する側、戦う側だからね?
とりあえず。
「ゲイル。余計な心配は無用!
俺はまだまだゲイルが1番好きなんだからね!」
しっかりと伝えたら。
「サ、サフィー!!!
お父様も!お父様もサフィが1番だぞおおお!」
更に深く抱き込まれた。
「あとね。
かっさらうのは俺!だから、ゲイルは安心して良き!」
笑顔で保証したら、何故か急にスン。
「あ、ああ。…そうなると…いいよな。うん」
いきなりの弱腰!
そうなるから!俺ツエエですのでね!
やっぱり手を繋いて歩いたんだけど、指にはめた指輪ごときゅっと握られた。
指輪はサイズピッタリに直されていて、最初からくれるつもりで用意してくれたんだと分かる。
キースの熱が俺サイズの指輪にうつってゆく。なんだか指輪が熱を持っているみたいだと思った。
部屋の前でキースが俺の手をそっと放す。
ぽんぽん、と俺の頭を優しく叩いた。
「遅くまでごめん。風邪をひいてないといいんだが。
温かくして寝ろよ。おやすみ」
ベッドに転がって今日の事を思い出す。
ほんとに、色々あった1日だった。
学校で新しい友達ができたし、冒険者証ももらった。
みんなからお祝いしてもらって、この部屋はたくさんのプレゼントで埋まってる。
ペンやネックレス、鞄や靴、花束、ブローチ。
渡してくれたみんなの顔を思うだけで胸がぽかぽかになる。
お兄様がくれたのはミスリル製の剣。この剣は魔法との愛称が良くって魔力を通しやすいんだって。
それと、凄く軽いのに最強の強度を誇るというアーマー。俺にピッタリのサイズ。
「冒険者として依頼を受ける時に使って欲しい。
本当は私もサフィのパーティーに加わりたいのだが…立場上それは難しい。
私の代わりにこの剣とアーマーがサフィを守ってくれますように」
そう言って剣にキス。
ミスリルの剣が、まるで聖剣みたいに見えた。
危ないことはするなといつもうるさいお兄様だけど、冒険者になるなと言われたことはない。
だけど本当は言いたいんだと思う。
「たまにね…サフィを城に閉じ込めておけたらと思うんだ」
って言ってたから。でもお兄様は
「あちこちを自由に飛び回るのがサフィだからね」
そう言って、俺を閉じ込めるためのものじゃなくて、俺の自由を守るためのものをくれるんだ。
ずっとずっと俺を気遣って見守ってくれた大切な人。
俺が自由に生きられるようにしてくれた。
苦しいとき、寂しいとき、辛いとき。
お兄様とゲイルがいたから、俺は安心していられた。
お兄様に抱きしめられると幸せな気持ちになるよ。
胸がぽかぽかしてくすぐったいような嬉しい気持ちで、ついにこにこしちゃうんだよ。
お兄様は、いつも俺のことが大好きだって言う。
でも「俺も大好きだよ」って言うと
「ふふ。ありがとう。
私の好きと同じなら嬉しいな」
って、笑顔なのにどこか切ない目をして微笑む。
お兄様。
俺ね。たまにだけど、お兄様に見つめられるとドキドキしてちょっと怖いの。
燃やされちゃいそうな熱さがその奥に見えるときがあるから。
それは公爵がお母様について語る時と同じ熱さ。
俺がまだ知らないもの。
あのドキドキが好きってこと?
大人になればわかるかな?
それまで待っててくれるのかな?
だけど。
キースといると、安心する。
「頼っていいんだよ」って言われてるみたいに。
「キースがいたら大丈夫」って思ってる。
なんとなく、同じ辛さを知ってるからかなあ。
言わなくても気持ちが通じるの。
黙って一緒に歩いてても、楽しいの。
指輪をくれたときのキースはなんだか大人って感じで、ちょっと恥ずかしくってドキドキした。
お兄様にもキースにもドキドキしちゃうの、へんかなあ?
このドキドキが「好き」なら、2人とも好きってこと?
それともお兄様と違う好きで、単にカッコいいからドキドキしただけ?
うーん。よく分かんない。
2人がカッコ良すぎるからいけないんだ!
今日のことを思い出してたはずなのに、いつのまにかお兄様とキースが浮かんじゃう。
俺はなんだか「うわああ」と叫びたいみたいな、恥ずかしいみたいないたたまれない気持ちになって、ベッドの上でなんだか火照る顔を両手で覆ってジタバタジタバタ。
「あああああ!なんで2人ともあんなにカッコ良なの?
ズルくない⁈」
「何がずるいんだ?」
「ひゃあ!」
びっくりして手をどけたら、ゲイルだった。
「ゲイル!びっくりしたあ!
酔っ払いはもう良き?ヒールしたの?」
「ああ。もう十分酔っ払いしたからな。
で、サフィ。顔が赤いし、挙動不審だったぞ?
どうした?」
ギシリとベッドをゆらして横に座ったゲイルが、俺の顔を覗き込んできた。
まるで全てお見通しみたいに。
「な、な、な、なんでもないの!」
「いや、ジタバタしながら『ズルい』って叫んでただろ?
誰がずるいんだ?」
俺の横に寝転がりながら、俺の前髪をそっと払うゲイル。
「……」
「ん?お父様に話してみ?サフィ?」
あーーん!俺が大好きなその声はズルい!
「ゲイルもズルい!みんなズルい!
どうしてそんなにカッコ良いのおおおおっ!!
俺だけカッコ良くない!!カッコ良くなりたいのに!
なんかドキドキしてカッコ悪いの!
ズルいズルいズルい!!」
「そうか。サフィはカッコ良い誰かにドキドキしたのか。……その指輪か?」
「………なんで分かったの?」
「そりゃあ、サフィのお父様だからなあ」
そう言うと、ゲイルはぎゅうっと俺を腕の中に抱え込んだ。
「しかし…そうか。ドキドキしたのかあ……!
あーーー!クソ!!」
腕の力がどんどん強くなる。
「ゲイル!いたい!」
「あ、ああ。すまん。
…サフィも大きくなったんだなあ…」
しみじみと、どこか寂しそうに呟くゲイル。
「うん。もう10歳ですのでね!
学校も行けるし、冒険者にもなりましたし!
……大人にならない方がよかった?」
大人になった俺はもう可愛くないのかな?
ちょっと心配になった俺が聞いたら、ゲイルはまた腕の力を強くした上、抱っこのまま俺をゆさゆさと揺さぶった。
「こーら!んなわけねえだろ!
幾つになろうと、サフィは俺のかわいいかわいい息子だ!
大人になるのを見るのが親の楽しみなんだぞ?
けど……いつか親離れすんのかなあ、と思うとなあ…ちと寂しくはある。
まあ、それが父親ってもんだ!」
「あのね。
ゲイルだってずっとずーっと俺の大好きなお父様だよ。
大人になってもずっと特別だし、大好きだよ!」
「ふふふ。そうか。それは嬉しいなあ!
でもな。いつかサフィにも愛する人ができる。
んで、そいつがサフィをかっさらって行くのかと思うと…」
「ゲ、ゲ、ゲ、ゲイル!顔!顔こわいから!」
「あ、ああ。すまんすまん」
かっさらっていく奴は殺すと言わんばかりの顔だった!
これはヤバい!
いつか俺が好きになった人はゲイルと戦いになるかもしれぬ。
誰かを好きになったら、その人の強さも確認しなきゃ!
どっちが負けても嫌だから、ちょうど互角がよき!
ゲイルと互角かあ…ハードル高すぎない?
あれ?なんかもう「好きとか嫌いとか」じゃなくて「強いかどうか」の次元になってきてない?
そう思ったら、なんかドキドキだとかズルいだとかいうのが全部小さなことみたいな気もしてきて、俺は思わず笑ってしまった。
うん。
今はゲイルが1番好き!
だって「お父様と戦って俺を勝ち取って!」なんて思えないもん。
あれ?
なんかこれ、俺が勝ち取る側、掻っ攫う側じゃなくて、俺が勝ち取られる側、掻っ攫われる側が前提になってない?
俺、まさかの嫁ポジ?
違うでしょ!
俺は夫!
俺が「オヨメさん下さい」する側、戦う側だからね?
とりあえず。
「ゲイル。余計な心配は無用!
俺はまだまだゲイルが1番好きなんだからね!」
しっかりと伝えたら。
「サ、サフィー!!!
お父様も!お父様もサフィが1番だぞおおお!」
更に深く抱き込まれた。
「あとね。
かっさらうのは俺!だから、ゲイルは安心して良き!」
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「あ、ああ。…そうなると…いいよな。うん」
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