もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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不穏な影

お兄様来校

昼休み。
突然学院長に呼び出され、行ってみたらば、まさかのお兄様がいた!
顔を合わせるや否やぎゅっと抱きしめられる。

「サフィ!大丈夫かい?問題は起こっていない?」

そのままパタパタと慌ただしく全身をくまなくチェックされた。

「え、何もないですけど?どうしたの?」

きょとんとした俺を見て安心したのか、お兄様は息を吐き肩の力を抜いた。

「良かった…!ルーダがね。サフィの側によその聖獣の力を感じるって言うもんだから、慌ててしまった」
「何かあればルーダが先にこっちにくると思うよ?」
「言われてみればそうなんだけどね。調べてみたらサフィのクラスに他国の王子がいたから。最近きな臭い噂のある国なんだ」

きな臭い?なんか最近キースからも似たような言葉を聞いたことがある。
この国は王様たちのお陰で平和なんだけど、他国は違うのかもしれない。

「ナージャのこと?なんか、ナージャの国の聖獣が聖女について教えたみたい。娶りに来たって言ってた」

ピシ!
お兄様のまとう空気が一瞬で凍りつく。

「サフィ?詳しく話を聞かせて?」



俺はナージャが俺にロックオンしたけどすかさずお断りした話をした。
俺が手を叩き落としたとこでは「偉いよ!よくやったね、サフィ!」と褒められた。エヘン!やるときはやる子ですのでね!

最後まで聞いたお兄様は難しい顔に。

「うーん。確かにサフィはとてもかわいいから一目惚れする気持ちもわかるけど。どうもそれだけじゃあなさそうだね。少しこちらでも調べてみるよ。
サフィは絶対に一人にならないようにね?必ず誰かお友達と行動するんだよ?強いとはいえ、不意をつかれる可能性もあるし」
「うん!りょーかい!ミルくんたちと居るね!ミルくんからも一人になっちゃダメって言われてるし」
「ミルくんはしっかりした子だからね。言うことをちゃんと聞くようにね?」

私がついていられたらいいんだけど、なんて言い出すお兄様に、俺は大丈夫だと胸を張った。
ナージャって変な子だけど、悪い子とは違う気がするし。
みんなもいるから大丈夫だよ!

お兄様は困ったみたいな顔で頷く。

「それでも心配なんだよ。サフィは私の大切な子だから。サフィに何かあったら、私は何をするかわからない」

うつむくお兄様の両手をにぎにぎして俺は言った。

「俺にはお兄様も、ゲイルも、キースも、仲間もいるでしょ。だから、大丈夫!」

「ふふ。そう願うよ。でも、これだけはつけさせて?サフィの居場所を知らせる魔法がかけてあるんだ。これがあれば、サフィがどこにいても助けに行ける」
「リボン!これにそんな機能があるの?すごい!」
「魔塔主が作ってくれたんだ」
「バイツー先生が?」
「うん。サフィに付けて貰うように、ってね」

お兄様は俺の髪にリボンをつけて満足そうに笑った。

「毎日付けるんだよ?わかった?」
「うん!任せて!ゲイルに頼んでおくね!」
「私が居る朝は私がつけてあげるからね?」

なんだか迷子札みたいだね。
でも普通にステキなおリボンでいい感じ!

「お兄様、見て!似合う?」

くるうりと回ってみせたら、お兄様が笑った。

「うん!かわいいよ。やはりリボンにして良かった!よく似合う」
「えへへー!大事にするね!ありがとお!」


ほんとはね。大丈夫だって言ったけど、ほんの少しだけ不安なの。
だって、ナージャは俺が聖女だって知ってた。一目見たたかだけで俺をロックオンしたんだ。何かしらの能力があるんだと思う。しかもわざわざ留学までしてここに来たんだから、それだけ聖女が必要なんだろう。
嫌な予感に、背中がゾワゾワする。

お兄様のリボン。これがきっと俺を助けてくれる。聖女の予感みたいなものが俺にそう教えてくれた。

これから何があるのかわからないけど、しっかりと身を守らないと!俺に何かあったら大切な人たちが悲しむから。

俺はお兄様にぎゅうっと抱きついた。

「あのね。何もないと思うけど。もし何かあったら、このおリボンがお兄様を俺のところに導いてくれるからね。お迎えにきてね。待ってるからね」

お兄様もぎゅうっと抱きしめてくれた。

「大丈夫!絶対に。必ずサフィの元に辿り着くからね。神に誓うよ。もしもの時には……私はどんなことをしてもサフィを取り戻す」

うん!お兄様を信じてる!
俺の国の王子様がナージャじゃなくてお兄様で良かった!
だって、お兄様はどんな時も俺に意見を聞いてくれるんだ。
自分の気持ちを押し付けたりしない。
だから俺はお兄様が好きなんだ。

「お兄様!大好き!」
「ふふ。私も大好きだよ、サフィ」



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