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不穏な影
ゲイル大人気!
あれから俺たちは馬車でグリフィス家に到着。
でもって先にミカミカとお兄様に王城に連絡してもらい、その間にマリーに頼んでゲートで公爵家とリオを呼んでもらった。
ティガーにはキースへの連絡をお願いしつつ、軽食の手配も。ナージャ達には「うちの国の料理をふるまう」体でグリフィス家に来てもらったからね。念のため。
公爵たちとキースが揃うまで、俺たちは楽しくお食事。
「ちょっと、これ食べてみて!あのね、スパイスがすんごくおいしいんだから!おすすめ!」
「この肉に刺さった棒はどうすればいいのだ?」
「その棒を手で持ってかじりつくの。下町で人気のお料理を完全再現してもらったんだよ!ガブリってするのがおいしいの」
おそるおそる手でもって、端っこをチミっと齧るナージャ。
「!本当だ!おいしい!」
今度は大きくガブリ!
俺も両手で持ってガブリとかじりつく。
うんうん。こうやって一緒の食卓を囲むのが仲良くなるひけつ。
「黒ヒョウさんも食べて?侍従さんも。無礼講でいきましょう!」
黒ヒョウさんの名前は知らないので、とりあえず勝手に呼んでみた。
「黒ヒョウさん……?私のことでしょうか?
大変失礼いたしました。
私はナージャ殿下の侍従をしておりますヒュンゲルと申します。
この度はうちの殿下が大変ご迷惑をおかけしました。
あのようなご無礼にもかかわらずこのようなご厚情、痛み入ります」
もんのすんごおく申し訳なさそう。うん。なんかもう、すんごく苦労してそうだよねえ。
「ご丁寧にどうもです。そりゃあ王子様の暴走なんて止められないもん。
だけど、もうちょっとオコしてもいいと思うよ?
ナージャはまだ子供なんだから、誰かが叱ってあげなきゃでしょお。
俺だっていっつもゲイルとかに叱られてるし」
ゲイルがゲンコツを見せながらニコッと笑った。
「そうだぞ。なんでもかんでもヨシにしたら、ろくな大人にならんからな!」
「俺のお父様はね、かっこよくて強くっていつも優しいんだけど、ちゃんと怒るときはオコ。
最高のお父様なんだよ!」
自慢してやったらナージャがちょっと寂しそうに笑った。
「うらやましいな……。父上は……立派な王なのだ。
だが……私が聖獣と通じるようになってから少し距離ができてしまった。父上は聖獣が見えないらしくてね」
「ねたまれちゃったんだね」
ズバリ言ってやったらみんなが慌てて俺のお口をふさいだ。
だってそうとしか言いようがないでしょ?ほかになんて言えと?
言われたほうのナージャはどこかスッキリした表情に。
「うん。そうだね。妬まれてしまった。
家臣の一部には私が成人次第、王位交代すべきだというものも居て……」
「ちょっとお!帝国の内情まではなしちゃダメでしょお!」
慌てる俺に「いまさらだよ」とナージャは笑った。
確かにね。聖女誘拐しようとしたことに比べたら、いまさらだ!
「人それぞれ能力は違うんだ。息子が自分より優れているなら、それは親として喜ばしいことなんだぞ?
うちのサフィの能力だって俺よりすげえんだぜ?
だけど、俺はそれが嬉しいし自慢の息子だと思ってる!父親ってのはそういうもんだ」
俺はてれてれとゲイルに抱き着いた。
「ゲイル!好き!」
「俺も好きだぞー!」
ゲイルもぎゅっとしてくれた。
そして、ナージャに向けて腕を広げた。おいで、と。
「お前の父親が狭量なだけだ。お前は悪くない」
ナージャの顔がくしゃりとゆがんだ。ゲイルの腕の中に飛び込んでくるナージャ。
俺とゲイルはふたりでナージャをぎゅうっとした。
「やきもちはね。やくほうが悪いの。大人の嫉妬は見苦しいものなのですよ」
「サフィに言われたかねえけどな。まあそういうこった!」
ナージャがゲイルの腕の中でまるまりながらぼそぼそと何か言っている。
「ん?なんて言ったの?」
「……私の父もゲイルならよかったのに……」
「残念でしたー!ゲイルは俺の!でも、一緒にいる間はナージャにも抱っこ分けてあげる」
「おいおい。俺はモノか?」
「!分けてほしい!……ゲイルが構わないのならば……」
ゲイルがため息をついた。
「しょうがねえなあ、変なのになつかれちまった」とか言いながら、ナージャを優しい目で見つめ、抱っこしてあげてる。
うむ。しょうがない。ナージャに今は譲りましょう。
ゲイルの抱っこはね、もんのすごい威力だから!
ちょっと落ち込んでも悲しくても元気になるし、嬉しいときにはそれがもっと大きくなるんだ!
俺はゲイルのお膝を譲ってナージャの後ろからナージャを抱きしめてあげた。
俺とゲイルでナージャをサンドイッチだ!
名付けて「聖女サンド!」豪華でしょお!
大丈夫だよ、ナージャ。俺たちで助けるからさ!
俺にはお母様はもういないから。ご褒美はナージャのお母様の抱っこでいいよ。
幸せそうに小さな声で「お父様……」ってつぶやいたナージャを見た俺はつぶやいた。
「俺もちょっとやきもちー!」
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