もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

文字の大きさ
183 / 538
不穏な影

ゲイル大人気!


あれから俺たちは馬車でグリフィス家に到着。
でもって先にミカミカとお兄様に王城に連絡してもらい、その間にマリーに頼んでゲートで公爵家とリオを呼んでもらった。
ティガーにはキースへの連絡をお願いしつつ、軽食の手配も。ナージャ達には「うちの国の料理をふるまう」体でグリフィス家に来てもらったからね。念のため。

公爵たちとキースが揃うまで、俺たちは楽しくお食事。

「ちょっと、これ食べてみて!あのね、スパイスがすんごくおいしいんだから!おすすめ!」
「この肉に刺さった棒はどうすればいいのだ?」
「その棒を手で持ってかじりつくの。下町で人気のお料理を完全再現してもらったんだよ!ガブリってするのがおいしいの」

おそるおそる手でもって、端っこをチミっと齧るナージャ。

「!本当だ!おいしい!」

今度は大きくガブリ!
俺も両手で持ってガブリとかじりつく。
うんうん。こうやって一緒の食卓を囲むのが仲良くなるひけつ。

「黒ヒョウさんも食べて?侍従さんも。無礼講でいきましょう!」

黒ヒョウさんの名前は知らないので、とりあえず勝手に呼んでみた。

「黒ヒョウさん……?私のことでしょうか?
大変失礼いたしました。
私はナージャ殿下の侍従をしておりますヒュンゲルと申します。
この度はうちの殿下が大変ご迷惑をおかけしました。
あのようなご無礼にもかかわらずこのようなご厚情、痛み入ります」

もんのすんごおく申し訳なさそう。うん。なんかもう、すんごく苦労してそうだよねえ。

「ご丁寧にどうもです。そりゃあ王子様の暴走なんて止められないもん。
だけど、もうちょっとオコしてもいいと思うよ?
ナージャはまだ子供なんだから、誰かが叱ってあげなきゃでしょお。
俺だっていっつもゲイルとかに叱られてるし」

ゲイルがゲンコツを見せながらニコッと笑った。

「そうだぞ。なんでもかんでもヨシにしたら、ろくな大人にならんからな!」
「俺のお父様はね、かっこよくて強くっていつも優しいんだけど、ちゃんと怒るときはオコ。
最高のお父様なんだよ!」

自慢してやったらナージャがちょっと寂しそうに笑った。

「うらやましいな……。父上は……立派な王なのだ。
だが……私が聖獣と通じるようになってから少し距離ができてしまった。父上は聖獣が見えないらしくてね」
「ねたまれちゃったんだね」

ズバリ言ってやったらみんなが慌てて俺のお口をふさいだ。
だってそうとしか言いようがないでしょ?ほかになんて言えと?

言われたほうのナージャはどこかスッキリした表情に。

「うん。そうだね。妬まれてしまった。
家臣の一部には私が成人次第、王位交代すべきだというものも居て……」

「ちょっとお!帝国の内情まではなしちゃダメでしょお!」

慌てる俺に「いまさらだよ」とナージャは笑った。
確かにね。聖女誘拐しようとしたことに比べたら、いまさらだ!

「人それぞれ能力は違うんだ。息子が自分より優れているなら、それは親として喜ばしいことなんだぞ?
うちのサフィの能力だって俺よりすげえんだぜ?
だけど、俺はそれが嬉しいし自慢の息子だと思ってる!父親ってのはそういうもんだ」

俺はてれてれとゲイルに抱き着いた。

「ゲイル!好き!」
「俺も好きだぞー!」

ゲイルもぎゅっとしてくれた。
そして、ナージャに向けて腕を広げた。おいで、と。

「お前の父親が狭量なだけだ。お前は悪くない」

ナージャの顔がくしゃりとゆがんだ。ゲイルの腕の中に飛び込んでくるナージャ。
俺とゲイルはふたりでナージャをぎゅうっとした。

「やきもちはね。やくほうが悪いの。大人の嫉妬は見苦しいものなのですよ」
「サフィに言われたかねえけどな。まあそういうこった!」

ナージャがゲイルの腕の中でまるまりながらぼそぼそと何か言っている。

「ん?なんて言ったの?」
「……私の父もゲイルならよかったのに……」
「残念でしたー!ゲイルは俺の!でも、一緒にいる間はナージャにも抱っこ分けてあげる」
「おいおい。俺はモノか?」
「!分けてほしい!……ゲイルが構わないのならば……」

ゲイルがため息をついた。
「しょうがねえなあ、変なのになつかれちまった」とか言いながら、ナージャを優しい目で見つめ、抱っこしてあげてる。
うむ。しょうがない。ナージャに今は譲りましょう。
ゲイルの抱っこはね、もんのすごい威力だから!
ちょっと落ち込んでも悲しくても元気になるし、嬉しいときにはそれがもっと大きくなるんだ!

俺はゲイルのお膝を譲ってナージャの後ろからナージャを抱きしめてあげた。
俺とゲイルでナージャをサンドイッチだ!
名付けて「聖女サンド!」豪華でしょお!
大丈夫だよ、ナージャ。俺たちで助けるからさ!
俺にはお母様はもういないから。ご褒美はナージャのお母様の抱っこでいいよ。

幸せそうに小さな声で「お父様……」ってつぶやいたナージャを見た俺はつぶやいた。

「俺もちょっとやきもちー!」
感想 892

あなたにおすすめの小説

結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です

柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。 そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。 真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。 けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。 「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」 彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。 アンリは実は、亡き国王の婚外子。 皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。

何もしなかっただけです

希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。 それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。 ――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。 AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。

あなたの愛したご令嬢は俺なんです

久野字
BL
「愛しい令息と結ばれたい。お前の家を金銭援助するからなんとかしろ」 没落寸前の家を救うため、強制的な契約を結ばれたアディル。一年限りで自分の体が令嬢に変わる秘薬を飲まされた彼は、無事に令息と思いを通じ合わせることに成功するが……

「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った

歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。 だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」 追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。 舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。 一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。 「もう、残業はしません」

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。