もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

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不穏な影

ナージャのお母様を救い隊

グリフィス家の「ザ・美味いもんセット」(ゲイルと俺の好物セット)を帝国ご一同にもご堪能頂き、甘えん坊さんになってしまったナージャよしよししてる間に、公爵&リオ、キースが合流した。そして王城に向かったお兄様たちも戻ってくる。

バーン!と扉が開くや否やリオが飛び込んできた。

「ねえ!緊急事態ってどういうこと⁈サフィが早退してたのと関係あるっ?」

リオは相変わらずの勢い。
その後ろから現れた公爵は、さすがに落ち着いている様子。表情一つ変えずに淡々とこう言い放つ。

「サフィラス。敵は何処にいるのだ?私が排除しよう。名を教えてくれ」

あ。落ち着いてなかった。ヤル気だこの人。どうどうどう。

微妙に冷静でない公爵家に比べ、S級冒険者のキースはさすがだった。

「で、どうした?サフィ。そこにいる子、確か王族だよね?俺たちが呼ばれたこととなにか関係あるのかな?俺に何をして欲しい?」

腕を組んで何気ないふうで話しながらも油断無くナージャたちを牽制している。




俺はチームリーダーとして、まずはナージャたち新メンバーを紹介することにした。

「えっとお。わざわざ集まってくれてありがとうね。この子はナージャでございます。帝国の第一王子で、こっちに留学してきたの。でもんって、俺の誘拐犯です!あと、こっちは侍従のヒュンゲルさん。よろしく!」

「「「「はあああああ⁈」」」」

キースが素早く俺の身体を引き寄せ、背にかばう。
公爵はあっという間に氷魔法を展開。ナージャの周りを囲っている。

「貴様!サフィに手を出すとは!」

ビリビリとその殺気で空気を震わせるキースと公爵に、ナージャとヒュンケルは抱き合ってブルブルと身を震わせていた。

瞬間。ブワリと暖かな空気が広がり、殺気や氷魔法で作られた檻が霧散した。
ゲイルだ。す、すごい!一瞬で場を制した!
この部屋がまるごとゲイルの結界内に入ったのだ。

「おい。落ち着けよ。まあ、まずは話を聞いてやってくれ」




ナージャたちの母国である帝国は、うちの国の半分くらいの大きさ。うちの国とはけっこういろいろ違うらしい。魔力というよりも武力重視。いわゆる物理攻撃に特化した国なのだという。
聖獣はライオン。王族の中に代々聖獣の声が聞こえるものがでるんだそうな。でもって、王族は聖獣の守護により圧倒的なパワーを得る。その力で国を平和に治めているんだって。いわゆる王族至上主義。
そして聖女さんは平民とか貴族とか身分や血に関係なく現れる。治癒や浄化に特化していて、戦いによる傷や戦いで穢された土地を浄化するのがお仕事。
聖女が生まれると聖獣がそれに気づいて、王族に伝える。それで早いうちに保護することが多いんだって。そのまま王子に娶られる場合が大半。すごく名誉なことだから、みんな喜んでお嫁になるんだってさ。これもナージャの「聖女を娶る発言」の理由の一つだったみたい。

王族至上主義っていうと前までの貴族至上主義のウチみたい。思ったより前時代的な武闘派の国なんだね。
まあ、魔王とか生まれないみたいでそれだけはちょっとうらやましいけど。

ちなみに、うちの貴族の多くは魔力持ちで様々な魔法が使える。どうやらそれは国を守護する聖獣フェンリルの加護によるものらしい。知らんかった!
魔法が使えるのは便利なんだけど、そのぶん魔素の影響を受けやすい。だからうちには魔王が生まれて、その魔王を生まれないようにするシステムみたいなのが聖女になるのですな。

ルー親子が「ほかの国にも聖獣がいるよ」「それぞれの聖女がいるよ」って言ってたのはこういうことなんだね。聖獣の能力の違いが、そのまんま国の個性とか聖女の能力の違いになってる感じ。
魔法に特化したフェンリルはかなり上位の聖獣らしいから、結果的にうちの国もこの世界の中ではかなりな上位国となっておりまする。
ちょっと前までは他の国の侵略とかあったみたいだけど、返り討ちを繰り返すうちに、どこの国もうちには攻めてくなくなったそうな。なのでうちの国の最近の戦闘っていうのは、貴族の家門同士の小競り合いに近い。あとはクーデター的な?
それも俺のコンサートでおっちゃんたちと王様たちが一枚岩となったおかげで、今は平和そのもの。
とにかく俺とゲイルがいるだけでこの平和は続いていくっぽい。

こういう背景を考えると、ナージャのしでかしはかなり激ヤバ。おもにナージャの国にとって。だってうちのほうが圧倒的に強いんだから!喧嘩うったらアカン!
お兄様のリボンとかなくって万が一誘拐とかになっちゃってたり俺が泣いちゃってたりしたら………。ひいいいい!想像しただけで恐ろしい!俺の身内の無双が行われるところだった!




では。このような背景を知ったうえで、ナージャの置かれた状況をば聞いていただきましょう。
お食事を終えた俺たちは、みんなで王城に移動してお話合いでございます!
一応、他国に国の代表としていくことになるから、王様と王妃様にも説明するのです。

ナージャたちはゲート使えないから、特別に今回だけ使えるように簡易許可を出してもらった。
ゲートのことを他にばらさないように魔法契約書にもしっかりとサインをもらったよ!

集まったお部屋は…いつもの会議室!あの、お披露目会のあと集まったお部屋だ。
みんなにソファやそこらへんに座ってもらって、俺は前で開会宣言!
はい、ちゅーもーく!

「えーっと。ごほん!ではこれから『ナージャのお母様を救い隊』、第一回会議を開催いたしまする!」

はい、はくしゅーーー!パチパチパチパチー!

俺たちにとってはいつものノリなんだけど、初めてのナージャは困ったみたいにきょろきょろして、慌ててパチパチしている。
うん。早く慣れてね。

「さいしょに、ナージャの事情を説明しますのでね。ナージャ、みんなに話をしていい?」
「うん。私の勝手な事情でサフィを巻き込んでしまった。それなのに助けてくれるというのだ。私に異論はない。ただ、我が国の内情にかかわる話だ。ここだけの話にしてもらいたい」

確認のためにみんなの顔を見回すと、みんな真剣な顔で頷いてくれた。よかったあ!

「ナージャのお母様は正妃様。でもって、聖女なんだって。ナージャの国の人の魔力量ってそんなに多くないの。肉体強化とかに特化した能力なんだって。聖女のお母様も同じ。浄化なヒールする魔力はあるけど、それは聖獣から借りて使ってる感じ。自分の魔力が大きいわけじゃないの。それでね、聖獣の声が聞こえる特殊な魔力持ちのナージャを産むときに、身体が耐えられず虚弱になっちゃったの。自己治癒もできないんだって」

みんなの視線がナージャに集中し、ナージャが泣き笑いみたいな表情になった。

「これって、誰かと似てるでしょ?」
「……母上と似てる。ナージャは…サフィだよね?」

リオがどこか痛いみたいな顔をして言った。

「うん。そう。ナージャのお母様はなんとか生きてるけど、厳しい状況なんだって。それで次の代の聖女の治癒なら…って自分の国の聖女を探したんだけど、まだ赤ちゃんだったの」

キースが額に手をあて「あー……」と脱力する。
そうだよねえ。せめて子供くらいならなんとかなったかもなのに。

「なんとかならないか、っていうときに、聖獣さんが『どこかに強い聖女がいる』って言いだしたんだって。それで聖獣さんの力で探して見つかったのが、うちだったの。誰かは公表してなかったけど、探索で場所を特定して、うちの学院だってわかったの。王様に正式に助けを要請するように頼んだんだけど『他国に弱みを見せられない』って断られたんだって」
「……身内の恥をさらすようだが……実は母上の派閥の政治的な力は弱まっている。代わりに側妃の派閥の力が強くてね。側妃の圧力がかかっているんだ。母がいなくなれば彼女が正妃だからね……。王宮の誰が敵で誰が味方なのか、私にはわからない。だから、父王に『留学したい』と嘘をついてここに来たんだ」

ここまではみんなちょっと同情的な感じで、うんうん、と聞いていた。
だけどナージャがこうを口にしたとたん、一気に空気は剣呑なものに。

「……本当の目的は聖女を娶って連れ帰ることだ。一目ぼれしたと言って連れ帰り、母上を治療してもらうつもりだった。聖女にはその代わりに私の妻、王太子妃という地位を与えようと……」

パリパリパリ…!
空気がビリビリすると思ったらキースの身体から電気が!静電気みたいなのがバリバリしちゃってる!
公爵の周りの空気はどんどん冷えていき、吐く息白くなっちゃってる!氷魔法でちゃってるじゃん!
そんな二人の間で化学反応がおきて水蒸気みたいなのがモクモクモク!

「ああああ!あくまでも!あくまでも、ナージャはご褒美のつもりでね!ナージャの国では王妃とか王太子妃とかがすごく名誉なことでみんな奪い合いみたい!でもって、ナージャも自分の国ではモテモテだったもんだから、およその国でもみんな喜んで結婚したがると思ってたみたい。
ちょっと痛い思考回路だけど、悪気はないの!自意識過剰は恥ずかしいけど、世間知らずの箱入り育ちだから、許してあげて!みんなだって、思春期特有の恥ずかしい勘違いとかしちゃったことあるでしょお!黒い歴史ってやつなの!もう十分恥はかいたから!一生の心の傷になってるから!許してあげて!」

俺が必死になってナージャをかばったおかげで、みなのお怒りは鎮まった。
ナージャはあまりの感動でだろう。床にうち伏して俯いて震えている。うんうん。いいんだよ。俺は分かってるから!
そんなナージャに周りからはどこか同情的な視線が集まっていた。
よし!この感じならみんな協力してくれそう!我ながらグッジョブ!
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