もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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聖女を救え!

ごたいめーん!

そんなこんなしていたら、なんとなんと!
騒ぎを聞きつけたのか、中で到着を待っていたらしい宰相さんがご登場! 
門の外まで我々をお出迎えに出てまいりました。

帝国の人よりも浅黒い肌、そしてウエーブのかかった真っ黒は長髪は、前世でいうところのアラブ系。愛想の良い笑みを浮かべたその顔の中で、一瞬だけナージャに向かって油断ならない目をしたのを、俺は見逃さなかった。
彼はわざとらしくナージャに聞いた。

「ナージャ殿下、そちらは王国の皆様でしょうか? 」
「ああ。王国からいらしたレオンハルト殿下とご一行だ」

お兄様が軽くうなずいてみせると、宰相は深々と頭を下げた。

「遠路はるばるようこそお越しくださいました。私は帝国で宰相を務めさせていただいております、バルハ・ムーサと申します。道中ご不便はございませんでしたでしょうか?」

「ありがとう。私は王国の第一王子、レオンハルトだ。そしてこちらは私の側近であり辺境伯の息子、ミカエル・ブルーム。旅の間の私の体調管理をしてくれる医師、ゲルリアス・グリフィス伯爵だ、そのご子息でありサフィラス。宰相であるグランディール筆頭公爵のご子息でありグリフィス伯の甥でもあるリオネル。護衛として王国近衛騎士団オルガ団長、ドラゴンスレイヤーとして知られるS級冒険者のキースも同行している」

お兄様は次々と紹介していった。
さりげなあく、辺境伯だの宰相だの公爵だの、みんな高位貴族なんですよーというアピールも忘れない。護衛のネームバリューもしっかりと利用しておる。さすがお兄様! 

ここでお兄様はなぜか俺をグイっと引き寄せた。
んん?どうしたの?

すると、愛おしそうに俺を見つめながら、額にキス! ひゃああああ! 

「サフィラスはね、私の特別なんだ。サフィがナージャ殿下とクラスメートだったことが縁で、私も帝国の文化に興味を持ってね。こちらにお邪魔させていただくことになった。突然の訪問で申し訳ないがよろしく頼む」

一瞬俺に手を伸ばしかけたゲイルが、お兄様の言葉で手を下ろした。び、びっくりしたあ! そういうことなのね! 
俺と親しいお兄様が、俺にオネダリされてナージャの国に、っていうアレですな! 
甘い視線に一瞬ドキッとしちゃったよおおおう! 先に言っておいて! 
抗議の意味を込めてお兄様を軽く睨む俺に、お兄様はいたずらな笑みで応えた。
これもきっと向こうにはラブラブな二人みたいに見えちゃってるんだろうなあ。
こっち側のみんなは生ぬるーい笑みを見せているんだけどね。

宰相は「あ、ああ……」とあいまいな返事を寄越し、取り繕うかのようにことさらに大きな声を出した。

「さあ、王も皆様をお待ちしております。どうぞ王城にお越しください」

ここでさりげなあく「今思い出した」って感じでお兄様が付け加えた。

「ああ、道中の宿なんだがね。すまないが、各国の客を迎えている宿だと聞いていたが……支配人の教育はどうなっているのかな? 自国の殿下が同席しているのに、殿下を飛ばしていきなり私に声をかけてきたのでね。支配人と使用人をこちらで一旦排除させてもらった。信頼できないものがいると落ち着かないからね。今回はナージャ殿下の顔を立てて見逃したが、各国からの来賓を泊める宿があれでは……」

オルガ団長がずいっと前に出る。

「殿下に対する不敬、許されるものではない。王国として正式に抗議するところを、レオンハルト殿下のご恩情により見逃すのだ。次はないと心得よ!」

団長はわざとあからさまな怒気を向こうにぶつける。
それまで「こんな子供にデレデレするような王子だ、どうとでもなるだろう」と見くびっていただろう宰相が、慌てて居住まいを正す。

「そ、それは大変申し訳ございませんでした!こちらでしっかりと対処いたします!」
「うむ!そうしてくれ。殿下への無礼は王国への無礼と心得よ!」
「勿論でございます!」

ここでフィガロ団長とリアム団長も加勢した。

「今回は信頼できない使用人の代わりに我らが世話をさせて頂いた。あの宿は側妃様と宰相殿が手配されたと聞く。王国からの客人に対する無礼、軍としても正式に意見させて頂きますのでご承知おきください」
「我々が証人となりますので、なあなあになさいませんよう」




宰相とそのおつきの人たちは、逃げるようにして去っていった。
これ以上ここにいて何か責められてはたまらぬ、というところかな。

うん。宰相へのジャブはいい感じに決まったのでは?
お兄様を見上げると、お兄様がニコリと黒い笑みを浮かべた。

「ゲイル。合格ですか?」
「まあ……今のところは。甘ったるいだけのやつにはやれねえからな」

ん?何かの試験だったの?
ゲイルの言葉にキースが肩をすくめる。

「あーあ、出遅れた。負けてられねーな。俺も……」


なんか知らないけど、キースも合格だといいね。





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