もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

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俺はA級になる!

辺境伯は強火イケオジ

俺とキースの腹筋を殺した辺境伯の挨拶が終わり、レオンが俺たちを紹介した。

なんだか俺とキースってば、レオンの付きそいみたいになっちゃってるう!
依頼を受けたのは俺たちですよー!
レオンのほうがオマケなのでございまするよー!

ちょっと唇を尖らしていれば、視線を感じる。
誰だ?!

顔をあげたらば、すっと目をそらす辺境伯。
え?辺境伯?

そ知らぬふりでもぐもぐと前に置かれたおやつを堪能。またしても感じる視線に、ガバリと顔をあげれば、さっとそらされる視線。

もぐもぐもぐ。ガバリ!サッ!
………なんのゲームだろうか?あっちむいてホイ?

もぐもぐ……とみせかけてガバリ!
バチィ!と辺境伯と視線があった。
逃さぬぞ!じいいいいいいい!
なんの御用でござりましょうか?

すると辺境伯のお顔がぐにゃりと緩んだ。

「か、か、か、かわいいぞ!かわいすぎやしないか、サフィちゃん!
おじ様にお歌を歌ってくれないかい?
あの可愛らしい声をまた聴きたいなー?
その菓子が気に入ったのかい?
もっと持ってこさせよう!
おい、ウリエル!菓子をトレーごと持ってこい!
紅茶のおかわりはまだか!サフィちゃんのお茶がもうなくなってしまうではないか!」

なぬうううう?
え?だれこれ?
このゆるゆるデレデレのお顔をしたおじ様、どなたですかあ?

あちゃー!
ミカミカがおでこに手をあて天を仰いだ。

「あーあ……。だから目を合わせるなって言ったのに………」

「サフィは私のものです!あげませんからね?」

レオンは慌てて俺を隠そうと腕の中に俺を抱え込んだ。




はい。
俺はいま母熊の腕にいだかれ、新たに出されたおやつを頂いております。
母熊の腕は非常に固くて温かく、ガッシと俺のボディを支え。ひろーいお膝と合わせて安定感抜群!

この圧倒的な筋肉の前では、俺の恥じらいなどちっぽけなもの。
大人な俺が抱っこされても異次元すぎて全く恥ずかしさを感じません。


なんでこうなったのかと申しますと……
そう、イケオジはサフィガチ勢だったのだ!
みなさま覚えておいでだろうか。あの聖女お披露目会のことを。
あの時あの場にいた高位貴族のおっちゃんたち。その中にこの辺境伯もいらっさったのでありました!
そうそう、そういえばいたね、イケオジ!

何を隠そうこの辺境伯、強いものと可愛いものに目がないのだそう。
そんでもって、俺の例のコンサートで「ガビーン」と衝撃を受けた。
いわく。

「あんなに可愛い存在がこの世に存在してよいのか?
あんなに小さいとプチっとつぶれてしまうのではないか?
なんと!天使の歌声だ!ああ、天使であったか!」

こうしてイケオジはサフィガチ勢となった。

そんでもって「サフィは私のものですが?」なレオン vs
「王都のやつらばかりズルい!だれが国を守ってると思ってるんだ!辺境騎士団ごと王都にひっこししちゃおうかなー?そうすると困るのはだれかなー?」辺境伯!

熾烈で醜い戦いの末、イケオジではなくイケオジの横の母熊のお膝に、というところで妥協点を得たのであった。

ちーん。

なんてくだらないの!


さてこの辺境伯、辺境を守らねばならずそうそう王都へは出てこれない。
仕方なくミカミカに定期的に「今日のサフィちゃん」を手紙に書かせていたのだという。

おう………強火……
とおっても強火でござった……。

そして、ミカミカ作の「サフィちゃん通信」により、俺がドラゴンを倒したがっていることを知った。
そこでドラゴンがでるやいなや
「サフィちゃん、ドラゴン倒したがっているんだよね?
ウチの騎士団と一緒なら、C級でもいけるんじゃね?きっと大喜びだよね!
オジサンもサフィちゃんと会えるし一石二鳥じゃね?」
いそいそと依頼を出しましたとさ!

っていうのが今回の依頼の真相だった。
なにそれ!もうそれ、出来レースじゃん!

だからギルド長、懐から出したのか。
もとから掲示板に貼り出すつもりなかったんだね……。

明かされた衝撃の事実にキースもあんぐり。
もんのすごおおく軽蔑した視線をイケオジに投げている。

ちなみに、キースの知名度はこの辺境にも轟いていた。
むしろ「強さこそ正義」な辺境だからこそ、キースはみなの憧れ人、アイドル扱いらしい。
そんなキースに生ごみでも見るような視線をよこされ、さすがの辺境伯もちょこっと反省。

「……いや、私情はあったが、アイスドラゴンが我らの手に余るのも本当でな?
一頭ではないのだ。数頭のドラゴンが人里近くまで降りてきている。
下手に刺激するよりも、一気に叩きたい。
どうか力を貸してもらえないだろうか」

いいわけクサい気もするけど(だってこんだけ熊がいれば倒せるでしょ?!)、俺にとってはグッジョブな依頼ではあった。
なのでイケオジを庇ってやることにする。

「キース、許してあげて?
俺とキースに一頭づつもらえたらそれでヨシってことで!
だって俺、ドラゴン倒したいんだもん!C級でドラゴン倒す機会なんてもうないでしょ?
一刻もはやくあの称号やめたいの!」

「サンダーエンジェルか?かわいいではないか!とてもよく似合っている。
考えたものは天才だな!」

こらっイケオジ!余計なことをいわないの!エンジェルなどゆるしません!
俺はドラゴンスレイヤーないしドラゴンライダーになるのですから!







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