もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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俺とレオンの婚約式

未来に向かって走れ!

ゲイルがひょいと俺を膝に乗せた。

「俺としちゃあ、ずっとお前をこうしてたいとこだけどな?
正直、お前とレオン率いる国を見てみたい。
きっと素晴らしい国になるぞ?」

「サフィの凄いのはね、魔法だけじゃないんだよ。そのアイディアと実行力、周りを巻きこんで変える力。世界は良くなるって思わせてくれる力なんだと思うな?
まだ父上もいる。母上もいる。それに公爵だって宰相として助けてくれる。
全部やらなくていいんだ。サフィがサフィのままでいてくれたら、この国はよくなる。私はそう信じている。
あと…個人的にサフィがいてくれるだけで私のやる気は倍になる!」

最後のところでパチンとウインクするレオン。

「あはははは!倍になるの?」




ここでゲイルは俺を向かい合わせに抱きなおし、目と目を合わせ、力強く笑う。

「お前は、走れ。お前が走った先に新しい未来がある。
俺たち大人はな、子供の背を押してやるためにいるんだよ。子供を思いっきり走らせてやるためにいるんだ。
間違ったらケツを叩いてやる。疲れて立ち止まるときには、温めてやる。

だから、安心して走れ、サフィ。

お前たちはすぐに王になるわけじゃない。
俺たち大人がついてる。思いっきり走らせてやる。

普通の王や王妃が動くのは大変だ。命を守るために多くの護衛も必要になるし、宿の手配だっている。
だが、お前らは違う。
サフィなら、お目付け役としてキースをつけるだけでなんとかできるだろう?
レオンとサフィなら動けるんだよ。なんだってできちまう!
レオンならお前を走らせてくれる。一緒に走ってくれる。
こんな王子、なかなかいねえぞ?
これがどんなにすごいことか分かるか?サフィ。

お前は地位も年齢も国境も超えて、人を結びつける力がある。人の善性を引き出す力がある
それこそが、サフィの最大の能力なんだと俺は思う。
貴族の檻から抜け出して、走れ。国も何もかも飛び越えてやりたいようにやってみろ。
成人までまだ5年もある。
この5年でお前が成し遂げたものを俺は知ってる。
お前が走った先に、新しい未来があると俺は信じる。
だからな、サフィ。恐れるな。お前はお前のままでいい。やりたいようにやれ!お父様が許す!」


ゲイルの低い声で紡がれる言葉が、俺の耳から身体の中に浸透する。溢れだす。
この身体からあふれ出すもの。それは……希望だ。

「俺、冒険者するよ?
そのまま王子の婚約者で、冒険者だけど王妃様とかになっちゃってもよき?」

「ああ。お前ならやれる」

「サフィ以外に誰がなるっていうの?サフィいいんだ。
私はサフィを愛している。そしてね。サフィ以上にこの国の王妃にふさわしい人はいないとも思っているよ?」

俺は、4歳のときに「やりたいようにやってやる」と決めた。
その言葉通り、みんなに助けられ励まされながら、やりたいようにやりたいことをやりまくってきた。
能力の助けがなくたって、俺はきっとそうやって生きてきたと思う。
魔法が使えなければ剣で。剣がだめなら、この腕で。

努力なしに授かったチートだけど、俺にしかないこの力を活かして、この力だけに頼らずに俺はどんどん走ればいい。
だってもし間違った方向に走ったららきっとゲイルが、キースが、レオンが、みんなが俺を止めてくれるから。

「あのね。俺、頑張ってみる。
ちょびっと怖くなっちゃったんだけど、怖いって思えてよかったと思う。
だって、好きとかだけで婚約しちゃったけど、王妃様とかになるとしたらそれだけじゃあダメでしょ?
レオンの婚約者なら、好きとかだけじゃなくって責任と覚悟が必要!
それが俺にはなかったから」

「……それは私が敢えて気づかれぬようにしていたから。
狡いんだよ、私は。サフィを手に入れるためならなんでもするような人間なんだ。
……失望した?」

レオンが項垂れた。

「それで俺が気づかせずに全部ひとりで負うつもりだったんでしょ?」

ちらり、と目を逸らすレオン。ほーら、当たってた!

俺はフンッと鼻息を鳴らした。

「あのね、レオン。俺は誰ですか?」

「…サフィ、かな?」

「そう。聖女で最強の冒険者でゲイルの息子、サフィだよ!
ちょいビビってしもうたが、俺はツエエですのでね?レオン1人に負わせるわけないでしょ!
婚約とか結婚って『2人で生きようね』ってお約束だよね。なら、勝手に1人で責任したらダメでしょおが!」

「……だって、私のわがままでサフィを巻き込んだんだよ?まだ10歳なのに、何も教えずに強引に……」

「確かに強引だったけど、選んだのは俺!俺ですからね⁈
他の子とレオンがご一緒するの嫌なんだから、しょーがないでしょ!レオンは俺のお兄様なんだもん!俺のなんだもん!
婚約が早いか遅いかだけです!レオンは俺ののですのでね!」

ビシッと宣言したらば、レオンの眼からボロボロボロっと涙が溢れた。

「これまで気付かなくてごめん。
レオンが背負ってるものに気付かなくてごめんね?
たったひとりでずっと背負ってきたんだね。ずっとひとりで背負うつもりだったの?」

「…………ミカもいたよ?」

首をかしげてちょっと茶化すみたいに言って笑うけど。
ミカミカは王族じゃないから。だからミカミカには背負わせられなかったんでしょう?
分かるよ。今なら分かる。

俺と出会ったときのお兄様は完璧だった。
それは期待を背負って、未来を背負って、完璧であろうと自分を律して頑張っていたから。
幼い頃から、たった一人の後継者として頑張っていたから。



俺はゲイルのお膝から降り、とててとレオンの前に。
そしてその大きくて小さな背中にぎゅうっと腕を回す。

「大丈夫!おまかせあれです!
俺ね、もうわかったから。責任とかだってわかったし、ちゃんと覚悟できましたのでね!
背負うよ。俺も半分背負う!
俺ツエエですので問題なっしんぐ!
これからはずうっと一緒なんでしょ?だから一緒にがんばろう!」

「ふ、ふふふ。
ああ。ああそうだね、サフィはそういう子だった。
ズルくて怖がりでごめんね?
こんな私でもいい?一緒に頑張ってくれる?」

まーだそんなこと言うレオンに、俺は呆れ顔でチチチと指を振った。

「レオンが狡くて怖がりでかわいいことなんか、とっくの昔に知っておりますが?」

ブハッとゲイルが噴き出す。

「だよなあ!
レオン、お前サフィの前じゃあ相当やらかしてるぜ?いまさらだわ!」

「そう、いまさらなのですよ!
俺はそんなレオンがよきなのですし!」

レオンは真っ赤になって口をぱくぱく。
その両手を俺はぎゅっと握った。

「なんとかブルーはおしまい。
俺は未来にむけて走りますのでね!
ちょっと立派な王妃様になれるかはわかんないけど、俺は俺の王妃様を目指しますので!
強くてたくましいくてムキムキの冒険者の王妃に、俺はなる!!」



両手をつきあげてー!
せーの!ご一緒にー!

「エイエイ、オー!!!」


「懐かしいなあ、それ!」
「……たくましくてムキムキは必要ないんじゃないかな?」


ちょっとお!2人とも、一緒にやってよね!!!
レオンが鼻声なのは見逃してあげるから!





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