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俺とレオンの婚約式
翌朝レオンが豹変した
翌朝。
「んーーー」
あたたかなものに包まれて俺は目を覚ました。
ほかほかとても良い感じ。いいにおいもするう……。
いい匂いの元にお顔を近づける。くんくんくん。
ふいー……。この枕、なんだか落ち着く匂いでござるのう……。ぐりぐりぐり。
どれ、もうひと眠り…………。
もぞり。
ここでなぜか枕が動いた。むむ?
おい、逃げるな枕!
逃がさぬ、という想いを込めてぐいぐいグイッと枕にしがみつく。
こんなよき心地のもの、逃がしてたまるか!俺の枕!!
「サフィ!!ごめん!本当にごめん!限界なんだっ!!ごめんねっ?」
ベリッ!
むりやり引き離された枕は枕じゃなくてレオンだった。
手を突っ張るようにして無理やり俺を引き剥がしたレオンは、真っ赤な顔で俺に謝罪しながらヨロヨロ、しかし必死な勢いでスタタターっと部屋から出て行ってしまった。
「へ?え?な、なに?どうしたの?」
枕と勘違いしたからってそこまでオコ?
昨日はあんなに甘々モードだったのに、翌日豹変?!
こ、これはいわゆる……「手に入れたら飽きた」という噂の………けんたいき!!
まだ結婚だってしてないのに!!
ガガーーーン!なんということだ!!
ま、まさか、俺のチュウが下手だったから?!そんなことで?!
ひ、ひどい!ひどすぎるううううう!!
廊下の方から「はあ?!レオ、レオン?!」という焦ったようなミカミカの声と、バタバタとした足音が聞こえた。
そして恐る恐る部屋の扉がノックされる。
「……サフィ?あの……俺だけど、開けていいか?」
ミカミカだ。
「俺って誰?オレオレ詐欺ですかあー?」
「オレオレ詐欺ってなんだ?詐欺じゃなくってミカエルとキースだぞー?」
「ちなみに俺はチュウが下手だったからってレオンに捨てられた可哀そうな婚約者ですが、何か?!」
「サフィがおかしなこと言ってる」だの「いつものことだろ?」だの二人がドアの前でぼそぼそ言ってるのが聞こえる。二人とも、ちゃんと聞こえてるからね?!
「おーい、いいか、入るぞ?」
返事もしてないのにキースが入ってきた。
「いいっていってないでしょおが!」
「………サフィがやさぐれてやがるぞ。どうした、サフィ」
はい。絶賛やさぐれております。
婚約式で初めての夜なんじゃなかったの?!朝からこんなひどい仕打ち、ある?!
謝ってたけど、絶対に許してあげないんだからね!!
「婚約式の最初の朝なのに、レオンにベリってされて『え?』ってなってる間に『ごめん限界』って俺を引き剥がしてレオンがどこかにいっちゃった!ひどいっ!」
あまりの冷たい仕打ちに、俺、泣きそう。
うりゅ、となるのを必死で止めてる。
俺の説明で何か察してくれたらしい。キースが「ああー」と納得の表情になり、ミカミカが「ほら、チーンしな?」とハンカチで俺のお鼻をチーンってしてくれた。
うう……。優しさが染みる……。
ぎゅうっとミカミカママのお腹にしがみつき、ちょっと気を抜くとまたうりゅうりゅっとなるお顔をむいむいと押し付けた。
「………ほかほかでいい匂いで幸せってなって二度寝しようと思ったのに……。枕が……俺をベリって……」
「ま、枕が?……ああ、レオンか」
「もうレオンじゃない。枕。新婚約者さんの朝なのに、婚約者をベリってしてスタタターっと出て行っちゃうレオンなんて知らないもん。アレは枕」
とっても傷ついた。レオンにあんな冷たいことされたことないもん。レオンの方から俺を引き剥がすなんて!
甘々された後だっただけにダメージが大きい。ショックでありまするよ……。
ぐずぐずしてたら、ミカミカが俺の頭をなでなで。
「あー……あのな?なんつーか、新婚、いや、新婚約者?の朝だからこそっつーか、あの、大人の朝にはいろいろあるんじゃないのかなー……なんて……?」
「何があるというのですか?!新婚約者の朝なんて、抱っこして『おはよ』ってチューして起きるものでしょおが!間違ってもベリってしてスタタター、じゃないでしょっ!俺、間違ってる?!」
「ま、間違ってない!間違ってはいないな!!」
大変な剣幕で迫る俺に、両手をあげて「敵意はありません」のポーズになったミカミカ。
するとキースが頭をかきかきなぜか言い訳。
「あー……大人にも大人の事情というものがあってだなあ……。レオンだって抱っこして『おはよ』ってチュウ?それやりたかったと思うぞ?だが婚約者だからこそというか、サフィがまだ子供だからこそというか……アレでだなあ……朝は……うん、大人には色々あるんだって!!」
そんなキースを俺はジロリと睨んだ。
「色々あるのは後からやればいいでしょおに。俺をベリってしてまでやること?
ミカミカはレオンの味方してもいいけど、キースは俺の味方しなきゃでしょ!俺の家族なんだから!!」
プンスカと怒れば、キースが困ったように眉を下げた。
「俺はもちろんサフィの味方だぞ?いや味方だからこそ、サフィの貞操を守ったレオンに対して尊敬の念というか憐みというかだなあ……まあ、色々あるんだよ」
「ていそーを守った?」
ミカミカが苦笑しながら遠慮がちに俺に聞く。
「えっと、あのな、そのう…サフィは閨って習ったか?」
「ねや?それって結婚したらのエッチのこと?」
「わああああ!!み、身も蓋もねえ!ま、まあそうだな」
「それはまだ子供だから習わなくていいってゲイルが言ってた。大人になったらねって。子供はネヤしないでしょおに」
「うーーん。やっぱりなあ!ゲイルだもんなああああ!!レオンもそれ分かってて、そんなサフィを可愛いって思ってそうだしなあああ!知ってた!奴らがそういう奴らだって、俺、分かってた!!」」
ミカミカが頭を抱えてしもうた。
キースがなぜか「すまん」と頭を下げている。
ふう、とため息をつき、困ったような顔でミカミカが教えてくれた。
「えっとな。貴族だと普通は8歳くらいから習い始めるんだ。特に王族や高位貴族は後継者問題やらなんやらで12歳で結婚とか、結婚してすぐってヤツも多いしな。通常の成人は15歳だが、高位貴族だけは婚約したら成人って扱いが許されるんだよ」
「ほうほう!てことは、俺はもう成人?」
「うーーーん……サフィだからなあ……。一般的には子供だけど、貴族というくくりの制度上は成人って感じかなあ………」
ふむふむ。理解した。
てことは俺は本来なら「ねや」も習ってなきゃだし、エッチも解禁だったわけですな。
「だけれども、子供がエッチなことはだめでしょお!」
「「だよなあああ!!!俺もそう思うよ?!」」
ミカミカとキースが激しく同意してくれた。だよねえ!
「んん?でもなぜにいま、ネヤの話をしたの?レオンのベリっと関係ありますのか?」
首をかしげると、ミカミカが「サフィって無駄に察しがいいよなあ!」と自分のオデコをペシン!
苦悩顔のミカミカに変わって今度はキースが話始めた。
「えっとな、サフィにはまだ早いかもしれんが、大人は好きな人にはそういうことがしたいと思うんだよ。
レオンだっってそうだぞ?
だけど、サフィはまだ子供だろ?だからしない。
その代わり、あの……えっとだなあ……朝にはいろいろあるんだ」
よくわからんが、色々あるのか。
「つまり、レオンがベリっとしたのは『ネヤ』しなかったからで、それは大人なので仕方なしということ?
俺のチュウがへたくそだから飽きたとかではなく?」
「「それはない!!!」」
二人の声が揃った。
「レオンがサフィに飽きるなんてことあり得ねえだろ!!10年執着し続けてるやつだぞ?」
「俺だってレオンの執念に負けたんだぞ?あいつが飽きるとかあり得ん!」
「んーーー」
あたたかなものに包まれて俺は目を覚ました。
ほかほかとても良い感じ。いいにおいもするう……。
いい匂いの元にお顔を近づける。くんくんくん。
ふいー……。この枕、なんだか落ち着く匂いでござるのう……。ぐりぐりぐり。
どれ、もうひと眠り…………。
もぞり。
ここでなぜか枕が動いた。むむ?
おい、逃げるな枕!
逃がさぬ、という想いを込めてぐいぐいグイッと枕にしがみつく。
こんなよき心地のもの、逃がしてたまるか!俺の枕!!
「サフィ!!ごめん!本当にごめん!限界なんだっ!!ごめんねっ?」
ベリッ!
むりやり引き離された枕は枕じゃなくてレオンだった。
手を突っ張るようにして無理やり俺を引き剥がしたレオンは、真っ赤な顔で俺に謝罪しながらヨロヨロ、しかし必死な勢いでスタタターっと部屋から出て行ってしまった。
「へ?え?な、なに?どうしたの?」
枕と勘違いしたからってそこまでオコ?
昨日はあんなに甘々モードだったのに、翌日豹変?!
こ、これはいわゆる……「手に入れたら飽きた」という噂の………けんたいき!!
まだ結婚だってしてないのに!!
ガガーーーン!なんということだ!!
ま、まさか、俺のチュウが下手だったから?!そんなことで?!
ひ、ひどい!ひどすぎるううううう!!
廊下の方から「はあ?!レオ、レオン?!」という焦ったようなミカミカの声と、バタバタとした足音が聞こえた。
そして恐る恐る部屋の扉がノックされる。
「……サフィ?あの……俺だけど、開けていいか?」
ミカミカだ。
「俺って誰?オレオレ詐欺ですかあー?」
「オレオレ詐欺ってなんだ?詐欺じゃなくってミカエルとキースだぞー?」
「ちなみに俺はチュウが下手だったからってレオンに捨てられた可哀そうな婚約者ですが、何か?!」
「サフィがおかしなこと言ってる」だの「いつものことだろ?」だの二人がドアの前でぼそぼそ言ってるのが聞こえる。二人とも、ちゃんと聞こえてるからね?!
「おーい、いいか、入るぞ?」
返事もしてないのにキースが入ってきた。
「いいっていってないでしょおが!」
「………サフィがやさぐれてやがるぞ。どうした、サフィ」
はい。絶賛やさぐれております。
婚約式で初めての夜なんじゃなかったの?!朝からこんなひどい仕打ち、ある?!
謝ってたけど、絶対に許してあげないんだからね!!
「婚約式の最初の朝なのに、レオンにベリってされて『え?』ってなってる間に『ごめん限界』って俺を引き剥がしてレオンがどこかにいっちゃった!ひどいっ!」
あまりの冷たい仕打ちに、俺、泣きそう。
うりゅ、となるのを必死で止めてる。
俺の説明で何か察してくれたらしい。キースが「ああー」と納得の表情になり、ミカミカが「ほら、チーンしな?」とハンカチで俺のお鼻をチーンってしてくれた。
うう……。優しさが染みる……。
ぎゅうっとミカミカママのお腹にしがみつき、ちょっと気を抜くとまたうりゅうりゅっとなるお顔をむいむいと押し付けた。
「………ほかほかでいい匂いで幸せってなって二度寝しようと思ったのに……。枕が……俺をベリって……」
「ま、枕が?……ああ、レオンか」
「もうレオンじゃない。枕。新婚約者さんの朝なのに、婚約者をベリってしてスタタターっと出て行っちゃうレオンなんて知らないもん。アレは枕」
とっても傷ついた。レオンにあんな冷たいことされたことないもん。レオンの方から俺を引き剥がすなんて!
甘々された後だっただけにダメージが大きい。ショックでありまするよ……。
ぐずぐずしてたら、ミカミカが俺の頭をなでなで。
「あー……あのな?なんつーか、新婚、いや、新婚約者?の朝だからこそっつーか、あの、大人の朝にはいろいろあるんじゃないのかなー……なんて……?」
「何があるというのですか?!新婚約者の朝なんて、抱っこして『おはよ』ってチューして起きるものでしょおが!間違ってもベリってしてスタタター、じゃないでしょっ!俺、間違ってる?!」
「ま、間違ってない!間違ってはいないな!!」
大変な剣幕で迫る俺に、両手をあげて「敵意はありません」のポーズになったミカミカ。
するとキースが頭をかきかきなぜか言い訳。
「あー……大人にも大人の事情というものがあってだなあ……。レオンだって抱っこして『おはよ』ってチュウ?それやりたかったと思うぞ?だが婚約者だからこそというか、サフィがまだ子供だからこそというか……アレでだなあ……朝は……うん、大人には色々あるんだって!!」
そんなキースを俺はジロリと睨んだ。
「色々あるのは後からやればいいでしょおに。俺をベリってしてまでやること?
ミカミカはレオンの味方してもいいけど、キースは俺の味方しなきゃでしょ!俺の家族なんだから!!」
プンスカと怒れば、キースが困ったように眉を下げた。
「俺はもちろんサフィの味方だぞ?いや味方だからこそ、サフィの貞操を守ったレオンに対して尊敬の念というか憐みというかだなあ……まあ、色々あるんだよ」
「ていそーを守った?」
ミカミカが苦笑しながら遠慮がちに俺に聞く。
「えっと、あのな、そのう…サフィは閨って習ったか?」
「ねや?それって結婚したらのエッチのこと?」
「わああああ!!み、身も蓋もねえ!ま、まあそうだな」
「それはまだ子供だから習わなくていいってゲイルが言ってた。大人になったらねって。子供はネヤしないでしょおに」
「うーーん。やっぱりなあ!ゲイルだもんなああああ!!レオンもそれ分かってて、そんなサフィを可愛いって思ってそうだしなあああ!知ってた!奴らがそういう奴らだって、俺、分かってた!!」」
ミカミカが頭を抱えてしもうた。
キースがなぜか「すまん」と頭を下げている。
ふう、とため息をつき、困ったような顔でミカミカが教えてくれた。
「えっとな。貴族だと普通は8歳くらいから習い始めるんだ。特に王族や高位貴族は後継者問題やらなんやらで12歳で結婚とか、結婚してすぐってヤツも多いしな。通常の成人は15歳だが、高位貴族だけは婚約したら成人って扱いが許されるんだよ」
「ほうほう!てことは、俺はもう成人?」
「うーーーん……サフィだからなあ……。一般的には子供だけど、貴族というくくりの制度上は成人って感じかなあ………」
ふむふむ。理解した。
てことは俺は本来なら「ねや」も習ってなきゃだし、エッチも解禁だったわけですな。
「だけれども、子供がエッチなことはだめでしょお!」
「「だよなあああ!!!俺もそう思うよ?!」」
ミカミカとキースが激しく同意してくれた。だよねえ!
「んん?でもなぜにいま、ネヤの話をしたの?レオンのベリっと関係ありますのか?」
首をかしげると、ミカミカが「サフィって無駄に察しがいいよなあ!」と自分のオデコをペシン!
苦悩顔のミカミカに変わって今度はキースが話始めた。
「えっとな、サフィにはまだ早いかもしれんが、大人は好きな人にはそういうことがしたいと思うんだよ。
レオンだっってそうだぞ?
だけど、サフィはまだ子供だろ?だからしない。
その代わり、あの……えっとだなあ……朝にはいろいろあるんだ」
よくわからんが、色々あるのか。
「つまり、レオンがベリっとしたのは『ネヤ』しなかったからで、それは大人なので仕方なしということ?
俺のチュウがへたくそだから飽きたとかではなく?」
「「それはない!!!」」
二人の声が揃った。
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