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サフィ大忙し
冒険者さんたちの事情
ボロボロ冒険者さんたちの名前は、リーダーがギーグ、調子がいいのがデーツ、俺にサンダーされたのがボーズ。
それにバース、リーグ、ジーンという全部で6人のパーティーだった。
彼らはリンロンの更に向こうの方の国、バース連合から来たのだという。
このバース連合、連合という名称から分かるように、昔ロンドが王国に喧嘩売ってわちゃわちゃやってる間に、その周りの小さな国がいくつか「今のうちに連合組もうぜ」って感じで合わさってできた新しい国。
王様というものはなく、各国の代表のような人が集まっての合議制だそうな。
ゲイル曰く、王国とは国ができたときに「〇〇と××と………で合併して新しい国ができましたよー。バース国となりましたのでね。よろしくお願いしますね」ってお手紙が来た程度の関係。
まあ、敵でもないが味方ってほどでもない。
一応商人の行き来はあるけど、そこまでお付き合いのない国だ。
特産というほどのものもなく、無理してまで外交するほどのこともない国ともいえる。
俺みたいに転移が使えるわけじゃないし、空が飛べるわけでもない。陸路ってことを考えると、用もないのにわざわ来るような距離ではないのだ。間に閉鎖中のリンや面倒なロンドもあるしね。
というわけで。バース連合から来たと聞いて、ゲイルが思わず口にした「なんでわざわざこんなところまで?」というのは、俺たちの共通の疑問。
それにデーツが答えてくれた。
「だからあ、依頼に来たんだって!」
「は? 依頼って……さっきの遠いから無理って断られたってやつ?!え? 目的、俺?!なんでわざわざ?!」
依頼の理由は、こういうことだった。
ドラゴンスレイヤーのキースに加え、新たに王国の「ドラゴンを従えた冒険者」の噂がバース連合にも届いていたんだって。つまり、俺のことですな。
ドラゴンブリーダーっていう称号は聞いてたんだけど、意味不明すぎたようだ。向こうでは文字通りの「ドラゴンのブリーダー」ではなく「ドラゴンを自由に従えている」と捉えていたらしい。
彼らが求めていたのは、ドラゴンを相手にできる冒険者なのだという。
今現在ドラゴン関係の称号はキースと俺くらい。つまり、ドラゴンに対抗できる冒険者は実質俺とキースということになる。王国にはその二人が揃っているというわけだ。
ここからリーダーのギーグが話を引き継いだ。
「バース連合にはもともと伝説のブリザードドラゴンが住んでいてな」
ブリザードドラゴン?!
「ごふっ!」
思わず飲んでいたオレンジジュースを噴いてしまった。
すかさずゲイルが俺のお口をふきふき、キースがテーブルをふきふき。
とてもよい連携です。ご、ごめんね?
うん……アレだよね…………。ブリードじゃん!!
俺とキースとゲイルの目が死んだ。
聞き耳を立てていた王国ギルド勢の目も俺に集中した。
はいはいはい。そうですよー。あのブリードさんでしょうねえ。分かってるってばあ!
俺はとりあえずそ知らぬふりで先を促す。
「し、しつれー!続きをどうぞ!」
「あ、ああ。
もともとブリザードドラゴンが住んでいたんだが、年に数回魔物を根こそぎ狩ってくれるくらいで害はなかった。
逆に冒険者の少ないウチとしては助かってたくらいなんだ。巣のある山の辺りさえ避ければ良かったからな。
だが……様子が変わってな。何故か急にどっかに飛んで行っちまった。
で、抑止力が無くなったせいで一気に魔物が増えちまったんだ。元々冒険者は少ないし、他所の助けを呼ぶにも時間がかかっちまうってんで、俺ら連合の冒険者は出ずっぱりだ。大変だったぜ……」
心底辛かったようで遠い目をするギーグ。周りの連合ズも思い出して渋ーいお顔。
お、お、お疲れい!
「ところが、だ!」
ダン!と机をたたくギーグ。ど、どうした?!
「先月急に戻ってきたと思ったら、増えてたんだよ!二頭に!!」
めっちゃ心当たりある!すんごおおおくある!!
思わず目をウロウロさせる俺。
ゲイルとキースも宙を見つめている。
「これまでは適宜餌を狩ってくれてたんだが、量が二倍になった。しかも、魔物を狩ってたはずなのに、牛まで狩られちまうようになったんだ……」
牛!
それを聞いたキースが、バッと俺を見た。
ゲイルも「ん?」というお顔で俺をじーっと見つめている。
え?俺?俺が牛の味を教えたから?もっと食べたきゃ狩って来いって言ったから?
で、でもそれって、もっと焼いて欲しかったらリンロンから持っておいで、って意味だったんだけど……。
まさかあれで牛の味が癖になったとか?!
てか、ブリードってば新婚さんだからって、ジークにサービスしてるんじゃない?
あああああ!全部俺のせいじゃん!すまんかった!!大変申し訳ないっ!
「魔物を狩る頻度も増えてな?逆に森にも近寄れなくなっちまったんだ……。そうなると、今度は魔物を狩れなくて冒険者が食いっぱぐれちまう。ただでさえ少ない冒険者が他所に行っちまうといざって時に困るだろ?
ドラゴンを狩るなりなんなりして、どうにかしなきゃならねえんだよ………」
「あと、他の問題もある。ドラゴンがなぜか夜に暴れるようになっちまったもんで、地震が多くなっちまってな。二次被害が半端ねえんだよ…………」
そ、それってばドラゴンのいやんあはん……。
い、いたたまれない……。
ひたすら俯き机に視線を向ける俺。
心が痛い……。ボロボロ冒険者などと言って申し訳なかった……。
サンダーしたりしてすまんかった……。
しょんぼりした俺にギーグがなぜか感動。
「そうか!分かってくれるかドラゴンライダー!あんたいい子だなあ!そうなんだよ、すっげえ大変なんだって!」
ゲイルとキースがじとーーー。
俺の良心がズキンズキンと………い、いや、マッテ?
思い返してみよう?
もともとブリードってば番を探すために来たっていってたよね?
どのみちジークかどこぞのドラゴンが連れ帰られる予定だったのでは?
とすれは俺のせいではないのでは?
シャキーン!サフィ、ふっかーつ!
うん。タイミング的にアレだったけど、俺のせいではない。
これは運命!そう、運命だったのです!
「運命だもんねえ!しょうがないよねえ!」
にこにこと断言すれば、連合勢がドン引き。
「いや、ここまで話を聞いてそれで済ますのか?」
「酷え………」
ち、違いますよ?って違わないけど、そういうことではなくう!
「ま、間違い!今のはギーグに言ったのではなく!俺の心の中の話でござりますので!」
言えば言うほど連合ズはドンびいていく。
「ラッキーチャームは腹黒だったのか………」
「まだ10歳なんだろ?王国怖えな……」
「ツエエ奴には俺らの気持ちなんてわかんねえんだよ……」
あーーーん!違うんだってええええ!!!
それにバース、リーグ、ジーンという全部で6人のパーティーだった。
彼らはリンロンの更に向こうの方の国、バース連合から来たのだという。
このバース連合、連合という名称から分かるように、昔ロンドが王国に喧嘩売ってわちゃわちゃやってる間に、その周りの小さな国がいくつか「今のうちに連合組もうぜ」って感じで合わさってできた新しい国。
王様というものはなく、各国の代表のような人が集まっての合議制だそうな。
ゲイル曰く、王国とは国ができたときに「〇〇と××と………で合併して新しい国ができましたよー。バース国となりましたのでね。よろしくお願いしますね」ってお手紙が来た程度の関係。
まあ、敵でもないが味方ってほどでもない。
一応商人の行き来はあるけど、そこまでお付き合いのない国だ。
特産というほどのものもなく、無理してまで外交するほどのこともない国ともいえる。
俺みたいに転移が使えるわけじゃないし、空が飛べるわけでもない。陸路ってことを考えると、用もないのにわざわ来るような距離ではないのだ。間に閉鎖中のリンや面倒なロンドもあるしね。
というわけで。バース連合から来たと聞いて、ゲイルが思わず口にした「なんでわざわざこんなところまで?」というのは、俺たちの共通の疑問。
それにデーツが答えてくれた。
「だからあ、依頼に来たんだって!」
「は? 依頼って……さっきの遠いから無理って断られたってやつ?!え? 目的、俺?!なんでわざわざ?!」
依頼の理由は、こういうことだった。
ドラゴンスレイヤーのキースに加え、新たに王国の「ドラゴンを従えた冒険者」の噂がバース連合にも届いていたんだって。つまり、俺のことですな。
ドラゴンブリーダーっていう称号は聞いてたんだけど、意味不明すぎたようだ。向こうでは文字通りの「ドラゴンのブリーダー」ではなく「ドラゴンを自由に従えている」と捉えていたらしい。
彼らが求めていたのは、ドラゴンを相手にできる冒険者なのだという。
今現在ドラゴン関係の称号はキースと俺くらい。つまり、ドラゴンに対抗できる冒険者は実質俺とキースということになる。王国にはその二人が揃っているというわけだ。
ここからリーダーのギーグが話を引き継いだ。
「バース連合にはもともと伝説のブリザードドラゴンが住んでいてな」
ブリザードドラゴン?!
「ごふっ!」
思わず飲んでいたオレンジジュースを噴いてしまった。
すかさずゲイルが俺のお口をふきふき、キースがテーブルをふきふき。
とてもよい連携です。ご、ごめんね?
うん……アレだよね…………。ブリードじゃん!!
俺とキースとゲイルの目が死んだ。
聞き耳を立てていた王国ギルド勢の目も俺に集中した。
はいはいはい。そうですよー。あのブリードさんでしょうねえ。分かってるってばあ!
俺はとりあえずそ知らぬふりで先を促す。
「し、しつれー!続きをどうぞ!」
「あ、ああ。
もともとブリザードドラゴンが住んでいたんだが、年に数回魔物を根こそぎ狩ってくれるくらいで害はなかった。
逆に冒険者の少ないウチとしては助かってたくらいなんだ。巣のある山の辺りさえ避ければ良かったからな。
だが……様子が変わってな。何故か急にどっかに飛んで行っちまった。
で、抑止力が無くなったせいで一気に魔物が増えちまったんだ。元々冒険者は少ないし、他所の助けを呼ぶにも時間がかかっちまうってんで、俺ら連合の冒険者は出ずっぱりだ。大変だったぜ……」
心底辛かったようで遠い目をするギーグ。周りの連合ズも思い出して渋ーいお顔。
お、お、お疲れい!
「ところが、だ!」
ダン!と机をたたくギーグ。ど、どうした?!
「先月急に戻ってきたと思ったら、増えてたんだよ!二頭に!!」
めっちゃ心当たりある!すんごおおおくある!!
思わず目をウロウロさせる俺。
ゲイルとキースも宙を見つめている。
「これまでは適宜餌を狩ってくれてたんだが、量が二倍になった。しかも、魔物を狩ってたはずなのに、牛まで狩られちまうようになったんだ……」
牛!
それを聞いたキースが、バッと俺を見た。
ゲイルも「ん?」というお顔で俺をじーっと見つめている。
え?俺?俺が牛の味を教えたから?もっと食べたきゃ狩って来いって言ったから?
で、でもそれって、もっと焼いて欲しかったらリンロンから持っておいで、って意味だったんだけど……。
まさかあれで牛の味が癖になったとか?!
てか、ブリードってば新婚さんだからって、ジークにサービスしてるんじゃない?
あああああ!全部俺のせいじゃん!すまんかった!!大変申し訳ないっ!
「魔物を狩る頻度も増えてな?逆に森にも近寄れなくなっちまったんだ……。そうなると、今度は魔物を狩れなくて冒険者が食いっぱぐれちまう。ただでさえ少ない冒険者が他所に行っちまうといざって時に困るだろ?
ドラゴンを狩るなりなんなりして、どうにかしなきゃならねえんだよ………」
「あと、他の問題もある。ドラゴンがなぜか夜に暴れるようになっちまったもんで、地震が多くなっちまってな。二次被害が半端ねえんだよ…………」
そ、それってばドラゴンのいやんあはん……。
い、いたたまれない……。
ひたすら俯き机に視線を向ける俺。
心が痛い……。ボロボロ冒険者などと言って申し訳なかった……。
サンダーしたりしてすまんかった……。
しょんぼりした俺にギーグがなぜか感動。
「そうか!分かってくれるかドラゴンライダー!あんたいい子だなあ!そうなんだよ、すっげえ大変なんだって!」
ゲイルとキースがじとーーー。
俺の良心がズキンズキンと………い、いや、マッテ?
思い返してみよう?
もともとブリードってば番を探すために来たっていってたよね?
どのみちジークかどこぞのドラゴンが連れ帰られる予定だったのでは?
とすれは俺のせいではないのでは?
シャキーン!サフィ、ふっかーつ!
うん。タイミング的にアレだったけど、俺のせいではない。
これは運命!そう、運命だったのです!
「運命だもんねえ!しょうがないよねえ!」
にこにこと断言すれば、連合勢がドン引き。
「いや、ここまで話を聞いてそれで済ますのか?」
「酷え………」
ち、違いますよ?って違わないけど、そういうことではなくう!
「ま、間違い!今のはギーグに言ったのではなく!俺の心の中の話でござりますので!」
言えば言うほど連合ズはドンびいていく。
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