もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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新たな目標

唖然茫然

俺の言葉は先輩たちには驚きだったみたい。
鳩が豆鉄砲を食らったようなお顔に。

え?まさか考えたことも無かったとか言わないよね?
ん………?え?

そ、そうか。商会をしているという先輩たちのお祖父さまからしたら、王様は可愛い娘に手をつけ命の危険にさらしたあげく城から追い出した憎い男、だもんね。
そりゃ庇うようなこと考えるはずも言うはずもないよね……。
お母さまだって、世話になっている父親や商会の手前何も言わないか……。

王様を憎ませるようなことを刷り込まれてもいないみたいだから、先輩たちが王様に対して思っている「権力を傘に手を出し、妊娠させたあげく責任をとることもなく城から追い出した」っていうのは、商会の人たちがそう思って二人を不憫がったこと、母親と自分たちの置かれている状況から判断したことなのだろう。

実際の心の内はわからない。
俺も「王様からしたらこうなんじゃないか」っていうだけでそれが本当かなんて知らないし。
本当にクズ王で、手を出したあげく追い出しただけなのかもしれないしね。

だけど、先輩たちを見ていると、父親である王様がそんな人だとは思えないんだよね。
だってすっごく真っ当なんだもん。できる人たちだし。
それに「色々危険だから船の上で育った」っていう割には実際に危険にあったりはしてないみたいだし。
これ、どう考えても権力者である王妃様派閥に圧力かけてる人、先輩たちに手を出そうとする人を止めてる人がいるとしかおもえない。
はい、そんなの王様しか無理!

ということで先輩たちに「王様は先輩たちのことを大切に思ってるし守ってるのでは」と言った訳なのですが。



俺だって、何も考えてないとか、先走るとか言われがちだけれど、何も考えていないわけではないの。
正直、ずけずけとぶしつけに先輩たちの事情にかなり踏み込んだ自覚はある。
センシティブ案件に遠慮なしに頭突っ込んだ自覚もあるにはある。
ゲイルとかに「え?そうなのか?」とか言われそうだけれど。あるったらある!




レオンがスカウトしたっていうことは、レオンのことだから先輩たち周辺をきっちり調べているはず。
つまり、レオンはこの二人を王国に引き込んでしまった方がいい、そう判断したんだよね。
これまでの流れでいうと、外交的戦力になると判断したんだろう。

で、外交。
先輩たちが王国の城で働いてくれるとすれば、どこかで先輩たちの国と繋がる可能性があるわけで。
そうしたら先輩たちは「王国の特使として」そっちの国に行って向こうの王城に入ることもあるわけで。

ここで確認しましょう。
王国ってね、この世界の中ではけっこうな大国なの。
今はリンロンとも仲がいいし、帝国ともがっつり繋がってる。
そんな王国にわざわざ敵対しようなんて国はあんまりない。
魔法大国としても有名だしね。
そんな王国が後ろ盾なんだよ?
そうなれば先輩たちには、何の手出しもできなくなる。

つまり、先輩たちが「王国の特使」となった時点で王様の枷ははずれ、それなりに親子としての交流を持つことも可能になるのだ。
むしろ向こうの国としては、その方がありがたいはず。
だって「何の価値もない」「むしろ禍根を招く可能性」だった二人に、できちゃったんだもん「二人が王族であるメリット」が。
王国と強い結びつきを持てる、というメリットが。
交流を持つことも可能、どころか、国としては積極的に推奨したいくらいだよね?
王妃様やその派閥の人だって、もう二人が他国の人間となり自分たちの地位を脅かさないとなれば、少しは心穏やかでしょう?



ねえ、これはあくまでも俺の考えだし、そういう未来もあるという仮定にすぎない。
だけどね、数パーセントでもそんな未来があるとすれば。

自分の知らないところで自分を思ってくれていた人がいる幸せを、俺は知ってる。
先輩たちも「父親に捨てられた」と思っているより、「父親が自ら枷を嵌めてまで守ってくれていた」方が幸せでしょう?
もしこれで先輩たちが不幸な育ちをしていたのなら「いまさら!」と受け入れられないかもしれない。
だけど、王城から追い出されたおかげで、祖父にも商会の人たちにも愛されて幸せに生きてきた。「愛された土台がある」先輩たちなら。
そんな「もしも」な可能性を受け入れられるんじゃないのかな?



俺の家族やキースの家族みたいに、すれ違ったりどうしようもない家族もいる。
捨てたことでようやく心の折り合いをつけられる、そんな家族もあるんだよ。

図々しい後輩からのお願い。
もしも親子で交流できる可能性があるのなら、その可能性を掴まえて欲しい。
だから、考えたこともないのなら、今考えて?
考えるのが無理なら、心の片隅に留めておいて。
王様が先輩たちを守っていた可能性を。

ゲイルが俺に公爵たちのことを「捨てなくっていい」って言ってくれたみたいに、俺は言うよ。
「拾えそうなものは拾っておいて!その方が得でしょ!」って。
愛はいくらあってもいい。でしょう?












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