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ミカミカとキースの結婚式!
ミカミカの決意
キースの言葉に会場は静まり返っていた。
たぶんキースが皆の前で自分の過去に触れたのはこれが初めて。
クリスも、カイトも、キースに「家族がいなかった」ことは知っていてもキースが家族に命を狙われ、自らの意志で「家族を捨てた」ことは知らなかったはず。
キースは「家族に命を狙われた」という言葉で、暗に「自分は他国の高位貴族の血筋なのだ」と明かしたのだった。
それはきっと辺境伯が息子であるミカミカとその家族に配慮したからこそ。
S級冒険者でありゲイルの養子、つまり元平民という立場だけではミカミカの隣に立つには弱いと判断したのだろう。隠していたことを明かすことで、ここにいる人たちとミカミカに誠意を示したのだ。
ミカミカと辺境の面々、そしてゲイルとパパとお母さまはキースの出自を知っている。
でも、他の高位貴族たちはそれを知らない。
家族はもちろん、高位貴族のおっちゃんたちだって、昔ならともかく今は身分で人を馬鹿にしたりはしないはず。
それでも、本来の出自を匂わせることで、キースを夫とするミカミカの立場はより盤石となるだろうから。
ミカミカにもそれが分かったのだろう。
溢れる感情を必死に押さえ込もうとしているが、その目には隠し切れない涙が浮かんでいた。
「……キース……お前………」
ギュッと目をつぶり、顔をあげるミカミカ。
今度はミカミカが朗々と声を張り上げた。
「……皆さんの前で私も誓わせてください。
このように素晴らしい人を夫とできたことを神に感謝いたします。
皆さんご承知の通り、私はレオンハルト殿下の側近として幼き頃より殿下と共に生きてまいりました。
この命を賭してレオンハルト殿下を支え、お護りする。そう誓って。
殿下は私の主君です。ですが、不敬を承知で言わせてください。私にとっては友であり家族なのです。
共に笑い、そして共に泣き、苦しみ、支え合って生きてきました。
わがままを言わず、常に人のためにと己を磨く殿下に、息を吐く場を作って差し上げたかった。
これからもそうやって生きていくものだと思っておりました。
そこにサフィが現れた。
サフィは私と殿下の世界に新しい風をもたらしました。
大声で泣き笑い、感情を露わにするサフィに、殿下は変わられた。
年相応にわがままを口にし、拗ねて落ち込む。
そんな殿下を見て、私は嬉しく思うと同時に少し寂しく思ったのです」
そう語るミカミカの目はあまりにも優しくて、慈愛に満ちていた。天使というより聖母様みたいだ。
感極まったレオンが「ミカ…」と湿った声で呟いた。もう半泣き。
ミカミカってばレオンの第二のお母さんだもんね。
いい王子として頑張ってたレオンを理解し支えてくれた大切な人、ミカミカ。
「そんな顔するなよ、レオン。
こほん、王妃様には申し訳ないのですが、まるでひとり息子の巣立ちを見守る母のような気持ちでしたね」
ここでしんみりとしていた会場がどっと沸いた。
この緩急がいかにもミカミカだよね。
「サフィはそれだけではなく心強い新たな仲間を私たちにもたらしてくれました。
そう、私の夫、キースです。
彼はとても強い。なにしろS級冒険者ですから。
でも彼の良さはそれだけではありません。彼は『この人がいれば大丈夫』だと思わせてくれるのです。
本来ならレオンもサフィも簡単にふらりと街歩きなどできる立場にありません。
それを可能としたのがキースなのです。
彼さえいれば大丈夫、私たちは絶大な信頼を彼に置いています。
強さのみならず、幅広い知識、人脈、とっさの機転。彼には全てが備わっているのです。
皆さんご存じの通り、私は強い。この腕には自信があります。辺境で幼い頃より鍛えられてまいりましたから。
だからこそ、レオンを一人で護ろうとしてしまった。
……結果的に私たちの世界を狭めてしまった。
サフィとキースがそれを変えてくれました。
キースはレオンを敬いながらもよきライバルとなってくれました。決して手を抜かず、対等でいてくれた。
私に対しては、さりげなく重さを肩代わりし、隣に立ってくれた。
そこでようやく私は、背負うものを人に押し付けることを覚えたのです」
横に立つキースに向かってニコリとキレイな笑顔をみせたミカミカに、キースがすかさず突っ込む。
「酷いな、ミカ。俺は押し付けられていたのか?」
「訂正します。キーズ自ら喜んで背負いに来ました」
軽妙な掛け合いにまたしても会場に笑いが起こった。
そこでミカミカは一呼吸おくと、スッと落ち着いた声音に戻る。
「私が背を預けようと思えたのは、キースだけです。彼が私に頼ることを教えてくれました。
実は私は……婚姻するつもりはありませんでした。
私はレオンとその婚約者を護り、レオンが王となってからは王と王妃、そしてそのお子を護って生きていく。
そう心に決めていたからです。私は妻を、夫を第一とすることができません。
そんな私でも良いと言ってくれる相手がいるとは思えませんでした。
でもキースは違った。私と同じ志を、想いを持ち、私を理解してくれる。
ふたりで同じ未来を見ていけるのです。
私は彼を優先することはできません。でも、ここで皆さんに誓います。
私の忠誠は王家とレオンに。でも私の愛はキースと共に。
この命がどこでいつ果てようとも、この魂は永遠にキースと共にあるのだと」
キースと同じ誓いで挨拶を終えたミカミカは、今まで見たミカミカの中で一番美しかった。
そんなミカミカを見つめるキースの表情も、見たこともないほど優し気で、切ないほどの愛おしさに満ちていた。
思わず言葉もなく見惚れてしまう俺とみんな。
と、レオンが拍手し始めた。
その拍手はみるみるうちに伝染し、大きな歓声に代わる。
二人は幸せそうな笑みを湛え、肩を組んで大きく手を振りその完成に応えた。
「おい!誓いのキスがまだだぞ?」
ゲイルだ。ここでそんなセリフをぶちこむなんて、さすがお父様!
「式でやっただろ、ヤメ……」
言いかけたミカミカの顎をキースの指が掬いあげ、ぶちゅうう!!
お、お口に!お口にちゅーです!!
レオンがまたまた俺の目を隠し、会場にはゴリラの怒号とクリスの指笛が高らかに響き渡ったのでした。
たぶんキースが皆の前で自分の過去に触れたのはこれが初めて。
クリスも、カイトも、キースに「家族がいなかった」ことは知っていてもキースが家族に命を狙われ、自らの意志で「家族を捨てた」ことは知らなかったはず。
キースは「家族に命を狙われた」という言葉で、暗に「自分は他国の高位貴族の血筋なのだ」と明かしたのだった。
それはきっと辺境伯が息子であるミカミカとその家族に配慮したからこそ。
S級冒険者でありゲイルの養子、つまり元平民という立場だけではミカミカの隣に立つには弱いと判断したのだろう。隠していたことを明かすことで、ここにいる人たちとミカミカに誠意を示したのだ。
ミカミカと辺境の面々、そしてゲイルとパパとお母さまはキースの出自を知っている。
でも、他の高位貴族たちはそれを知らない。
家族はもちろん、高位貴族のおっちゃんたちだって、昔ならともかく今は身分で人を馬鹿にしたりはしないはず。
それでも、本来の出自を匂わせることで、キースを夫とするミカミカの立場はより盤石となるだろうから。
ミカミカにもそれが分かったのだろう。
溢れる感情を必死に押さえ込もうとしているが、その目には隠し切れない涙が浮かんでいた。
「……キース……お前………」
ギュッと目をつぶり、顔をあげるミカミカ。
今度はミカミカが朗々と声を張り上げた。
「……皆さんの前で私も誓わせてください。
このように素晴らしい人を夫とできたことを神に感謝いたします。
皆さんご承知の通り、私はレオンハルト殿下の側近として幼き頃より殿下と共に生きてまいりました。
この命を賭してレオンハルト殿下を支え、お護りする。そう誓って。
殿下は私の主君です。ですが、不敬を承知で言わせてください。私にとっては友であり家族なのです。
共に笑い、そして共に泣き、苦しみ、支え合って生きてきました。
わがままを言わず、常に人のためにと己を磨く殿下に、息を吐く場を作って差し上げたかった。
これからもそうやって生きていくものだと思っておりました。
そこにサフィが現れた。
サフィは私と殿下の世界に新しい風をもたらしました。
大声で泣き笑い、感情を露わにするサフィに、殿下は変わられた。
年相応にわがままを口にし、拗ねて落ち込む。
そんな殿下を見て、私は嬉しく思うと同時に少し寂しく思ったのです」
そう語るミカミカの目はあまりにも優しくて、慈愛に満ちていた。天使というより聖母様みたいだ。
感極まったレオンが「ミカ…」と湿った声で呟いた。もう半泣き。
ミカミカってばレオンの第二のお母さんだもんね。
いい王子として頑張ってたレオンを理解し支えてくれた大切な人、ミカミカ。
「そんな顔するなよ、レオン。
こほん、王妃様には申し訳ないのですが、まるでひとり息子の巣立ちを見守る母のような気持ちでしたね」
ここでしんみりとしていた会場がどっと沸いた。
この緩急がいかにもミカミカだよね。
「サフィはそれだけではなく心強い新たな仲間を私たちにもたらしてくれました。
そう、私の夫、キースです。
彼はとても強い。なにしろS級冒険者ですから。
でも彼の良さはそれだけではありません。彼は『この人がいれば大丈夫』だと思わせてくれるのです。
本来ならレオンもサフィも簡単にふらりと街歩きなどできる立場にありません。
それを可能としたのがキースなのです。
彼さえいれば大丈夫、私たちは絶大な信頼を彼に置いています。
強さのみならず、幅広い知識、人脈、とっさの機転。彼には全てが備わっているのです。
皆さんご存じの通り、私は強い。この腕には自信があります。辺境で幼い頃より鍛えられてまいりましたから。
だからこそ、レオンを一人で護ろうとしてしまった。
……結果的に私たちの世界を狭めてしまった。
サフィとキースがそれを変えてくれました。
キースはレオンを敬いながらもよきライバルとなってくれました。決して手を抜かず、対等でいてくれた。
私に対しては、さりげなく重さを肩代わりし、隣に立ってくれた。
そこでようやく私は、背負うものを人に押し付けることを覚えたのです」
横に立つキースに向かってニコリとキレイな笑顔をみせたミカミカに、キースがすかさず突っ込む。
「酷いな、ミカ。俺は押し付けられていたのか?」
「訂正します。キーズ自ら喜んで背負いに来ました」
軽妙な掛け合いにまたしても会場に笑いが起こった。
そこでミカミカは一呼吸おくと、スッと落ち着いた声音に戻る。
「私が背を預けようと思えたのは、キースだけです。彼が私に頼ることを教えてくれました。
実は私は……婚姻するつもりはありませんでした。
私はレオンとその婚約者を護り、レオンが王となってからは王と王妃、そしてそのお子を護って生きていく。
そう心に決めていたからです。私は妻を、夫を第一とすることができません。
そんな私でも良いと言ってくれる相手がいるとは思えませんでした。
でもキースは違った。私と同じ志を、想いを持ち、私を理解してくれる。
ふたりで同じ未来を見ていけるのです。
私は彼を優先することはできません。でも、ここで皆さんに誓います。
私の忠誠は王家とレオンに。でも私の愛はキースと共に。
この命がどこでいつ果てようとも、この魂は永遠にキースと共にあるのだと」
キースと同じ誓いで挨拶を終えたミカミカは、今まで見たミカミカの中で一番美しかった。
そんなミカミカを見つめるキースの表情も、見たこともないほど優し気で、切ないほどの愛おしさに満ちていた。
思わず言葉もなく見惚れてしまう俺とみんな。
と、レオンが拍手し始めた。
その拍手はみるみるうちに伝染し、大きな歓声に代わる。
二人は幸せそうな笑みを湛え、肩を組んで大きく手を振りその完成に応えた。
「おい!誓いのキスがまだだぞ?」
ゲイルだ。ここでそんなセリフをぶちこむなんて、さすがお父様!
「式でやっただろ、ヤメ……」
言いかけたミカミカの顎をキースの指が掬いあげ、ぶちゅうう!!
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