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第三話

メイドさんとの出会いは……

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「はぁはぁ……た、助かったぁ……」

 何とか流れが穏やかなところに辿り着くと這々の体で川の浅瀬まで何とか這い出ることが出来た。
 周りを見渡すが巨虫の姿形らしきものは確認出来なかった。

「ふう……」

 とりあえず命の危機を脱して安堵のため息が漏れる。

「やばいな……結構流されたかな。とにかく二人と合流しないと」

 川の上流側を見るが飛び降りた谷らしきものは全く見えない。
 とりあえず、びしょ濡れのまま川から出ようと前に向くと……。

「あ、あれ?」

 すぐ目の前にしゃがんで用を足している人が1人。
 川の流れる音のせいかこんなに近くに人が居るなんて全く気付かなかった。

「……メイドさん?」

 エプロンドレスって言うんだっけ、長いスカートをたくし上げてこちらをに向いていた。
 相手の女性はいきなりのことで無言のままこちらを見ていた。

 まあなんだ。俺の方は三度目ともなると余裕があるらしく、焦ることもなくゆっくりと観察が出来た。
 見たところセレーネやデルよりも少し年上ってところだろうか。とはいってもこの星じゃ見た目の年齢なんて全く当てにならないけどな。

 紋様族の族長はあのロリっぽい見た目で100歳オーバーだし。

 かなりのの美人で服のせいか体型はあまり分からないが、あっちの毛がないのは確認出来た。ふむ、どうやらこちらでは剃るのがデフォルトなのか。
 たくし上げたスカートからすらりと伸びている脚はかなり綺麗である。

「…………」

「やばっ……」

 身体を一通り見て回って再度顔を見ると驚いた顔から睨むような顔になっていた。
 やばい、見過ぎたか。

「これは……その、じ、事故なんです」

「っ!」

 メイドさんは俺の声により険しい顔になり、側に立て掛けてあった巨大な武器を手にした。

「まじ!? ちょ、ほんと、話を聞いてくれ!」

 手にした武器は軽く2mを超えた……斧? 槍? ポールウェポンやハルバードって言うヤツか。初めて実物を見たけど想像していたよりもゴツいんだな。

 先端には相手を突くための槍、横側には斬るための斧に、その逆側には鎌のような突起が付いて伸びている。
 どの部分で殴られても相当痛いだろう。いや痛いでは済まないか。これほどの武器を人間がしかも女性が簡単に振り回せるのかと疑って思ってしまう。

 だがそんな疑問を余所に豪快な武器を軽々と持ち上げるこのメイドさんは一体……ファンタジーだとこういうのは結構定番でありがちだけどさ。
 いや、ここはファンタジーに見せかけただけで地球とは違う星なだけだけど。

 などと考えている間にメイドさんはそのまま無言で武器を俺の方に構えた。

「話、せめて話を!」

 そして彼女はそのまま飛びかかってきた。

「ちょぉ!?」

 俺の方は逃げることも出来ず身構えて目を瞑ってしまう。

 ざっぱーん!

 すると背後から凄い水音がした。

 何事かと驚き思わず目を開いて振り返ると、先ほどの一緒に谷に落ちた巨大昆虫が川面から出て来ていた。

「なんてしつこさなんだよ! って、え?」

 急に頭上が暗くなり上に目線を向けるとそこには綺麗な脚……それはスカートをひるがえして跳び上がったメイドさんだった。
 そして見えてはいけないものが見えてしまったのは内緒にしておこう。

 ぐしゃぁぁっ!!

 飛び込んだメイドさんは無言で巨大甲虫の頭をポールウェポンの重たい一撃が深々と突き刺すと、そのままかち割るのだった。

「す、すげぇ……」

 メイドさんはそのまま虫の身体に脚を掛けて跳び上がると、巨虫の方は蹴られた反動で仰向けになりながら再び川の中に沈んでいく。

 すると彼女は舞うように元の場所へと着地した。

「おおー!」

 あまりにも一連の動作が綺麗すぎて思わず拍手をしてしまう。
 だがその間ずっと下半身がまる見えであったことも内緒にしておこう。

 メイドさんは俺の視線に気がついたのかさっと衣服を綺麗に着直すと黙ってこちらに寄ってくる。

「あ、あのあの……えーっと……、た、助けてくれてありがとうございます……」

 するとメイドさんは俺を見て何かに気が付いたのか手を振り上げた。
 思わず驚いた俺は目を瞑る。

「大丈夫? こんなところに一人で……もう、怖くないから」

 叩かれるかと思って身構えたが、彼女の手は優しく俺の頭を撫でていた。

「え……?」

 そっと目を開くと、それまでの無表情から少しだけ微笑んでいた。うわっ、なにこの美人顔、笑顔だけでそれは凄くずるくないか。

「……立てる?」

「あ、はい」

 早速ボク扱いされているし……まあそうにしか見えないだろうけど、等と考えながら立ち上がる。
 メイドさんは俺よりも身長が高く、あまり身体の線が出ないメイド服でもプロポーションの良さが見て取れた。

 アップにしてまとめた綺麗な黒髪が少し乱れたのが気になるのか結び直している。
 そんな仕草もなんかメイドさんぽくてぐっときてしまう。

 知らなかった俺はこんなにもメイドさん属性があったのか。

「流されたのはボクだけ?」

「え? あ、はい……ふ、ふえっくしょん!」

 立ち上がると風が冷たく思わずくしゃみが出た。よく考えたら俺はずぶ濡れだった。

 うう……すげえ寒い……。

 それまでは必死だったからか気にならなかったが、事態が落ち着いたことで全身に震えが走り急に寒く感じだした。

「え、あの……な、何を?」

「脱いだ方が良い」

 そんな俺を見かねたのかメイドさんはずぶ濡れの衣服を脱がそうとしてきた。

「ひ、一人で出来ますから!」

「そう……」

 そこでなぜだか少し残念そうな表情になるのはどういうことなのか。
 だが震える身体で思うように手が動かず、衣服の紐が水を含んで固くなって、なかなか脱げない。この世界の衣服にはボタンがほとんどなく、紐で結ぶのがほとんどである。

「ほら」

 見かねたのかメイドさんが俺の手を退けて紐を解いてくれる。

「あ、ありがとう」

「着替えは……」

「鞄の中に入っているから大丈夫」

「そう」

 クールで素っ気ない雰囲気に見えるけど、実は結構いい人っぽい。

「はい、ばんざーい」

「え……あ、はい。って、ちょ……!?」

 メイドさんはそのまま俺の服を脱がせ始めた。あまりに手際がよくて思わず流されてしまう。

「うん、お利口さん」

 あっという間に衣服を脱がされてしまい、パンツ一丁にされてしまった。
 なんて手際なんだ……。どうやら身に着けているメイド服は伊達じゃないらしい。

「こ、ここはさすがに自分で脱ぐから!」

 パンツまで脱がそうとしてきたので慌てて手で押さえながら死守した。

「気にしなくていい」

「いや、気になりますから!」

「さっき私のを見た」

「え? そ、それは……」

「だからお互い様」

「ちょ! あ、だからってそんな強引にっ!」
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