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第三話
夜ご飯にしますよ
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二人の妄想から30分位経ってやっと普通に戻ってきた。
デルが再び俺が落ち込まないよう気を紛らわせるため日が落ちる前に晩飯の用意をしようと提案してくれ一度全員で外に出た。
だがさすがに臭いが酷いので少しキャンプ地を移動して準備を始めた。
ここはメイドの出番とアティウラが料理をかって出てくれたので、残り3人は適当に座って待っている状態だった。
昨夜もそうだったけど伊達にメイド服を着用してはいない。見ているだけで分かるほど手際が良かった。
それに調理道具は全部彼女持参で、簡易のかまどまで持っているし。だから荷物がかさばるんだと思うんだけど。
「本当になんと言ったらいいか……」
セレーネがお茶を入れたカップを渡しながら、未だに謝り続けていた。
「だから、もう気にしなくていいって」
「勇者様……」
「本当に大丈夫だから」
確かに嫌われているのに比べれば何倍もマシだとは思う。
だが妄想とは言え自分がそういう対象となった話はそれなりの衝撃だった。
彼女たちの頭の中で、どんなことをされているのか。しかも扱いはかなり情けない部類だったので、さすがに少し怖くなってしまった。
俺もそれなりの妄想はしているのであまり人のことは言えないんだけど。
身も心も10代のときに聞かされたら、女性不信気味になったかもしれない。
実際しばらく身体の方はプルプルと震えていたし。精神が30代だったおかげで震えが止まればどうってことでもなくなったけど。
その間なんだかんだ優しいデルはセレーネとアティウラを遠ざけて俺の相手をしてくれていた。
まだ少し泣きそうな顔のセレーネ。
どうやら本当に反省しているらしい。
困ったな。俺の方はもう気にしていないんだが。
「ま、まあ、そういう妄想なら誰だって……いや俺だってすることはあるんだし、おあいこだろ」
「おあいこですか。そ、それはわたくしのことと考えてもよろしいのでしょうか」
「ま、まあ、そうだけど」
「本当ですか!? そ、それは一体どのような妄想をしていらっしゃるのでしょうか」
全く……、どうしてそこで嬉しそうにするのかね。
「い、言えるわけないだろ……言えないようなことだから妄想なんだし」
なんでそんなことを聞きたがるのかといまいち理解が難しいと実感しながら、俺はお茶を啜る。
「も、もしかして……そんなに凄いことなんですか!? ど、どうしましょう……お尻でしょうか? あ、勇者様は胸の方がお好みのようでしたから……もしや授乳!? 赤ちゃんプレイ?」
「ぶーっ!!」
「わっぷ!?」
とんでもないことを言い出したセレーネに思わずお茶を噴き出してしまった。
「こ、これがお好みの妄想なのでしょうか?」
「げほごほっ……そんなわけあるか! ごほっ、聖女が、い、いきなりなんてことを言い出すんだよ!」
「今回の謝罪も含めてわたくしに出来る範囲で勇者様の妄想の一部を実現してみようかと思った次第なのですが……」
一体この聖職者様は何を仰っているんだ!?
「あのさ、トラウマを刻まれたばかりなんだから、それじゃ謝罪にならないって。下手してもっと悪化したらどうするのよ」
「ええ!? ど、どうして」
デルの指摘に何故かアティウラが反応した。
「あのね……コイツは確かに変態でスケベだけど、女性不信に陥った今の状態で妄想を体現したところで全部穿って見えるかもしれないじゃない」
「聞いてみないと、わ、分からないじゃない?」
だからなんでアティウラが反論するんだよ。
「結局これは謝罪ですって体の良い言い訳にしかなっていないの。むしろセレーネの方にしかメリットがないかもしれないじゃん」
「わ、わたくしにだけになるのでしょうか」
「だってコイツの妄想って余程の変態的じゃない限りセレーネにとっても嬉しいことでしょ?」
「あ……確かに」
確かに俺の妄想が実現出来たとして、セレーネがそれをある程度恥ずかしがったり嫌がれば今後そういう妄想トラブルは減っていくだろう。
逆に懲りてない。もしくはむしろ嬉しかったり喜んだら、今後も同じことを繰り返す可能性が高くなる。
「そ、そのようなこと……あ、ある……かもしれませんが、それでも今回の件はしっかりと謝罪はしておきたいのです」
「だったらもう十分に謝ったでしょ、むしろコイツはそのせいで余計な気を使うんだから、そろそろいつも通りに戻りなよ」
デルはこういう事柄では極めて常識派なので今回ばかりは居てくれて本当に助かる。
「デルの言うとおり、もうセレーネは十分謝ったと思うよ。だからあまり気にしすぎても俺も……そのどうしていいか困るから」
「そう、ですね……わたくしが至らないばかりに申し訳ありませんでした」
「だからもう謝る必要はないって」
「そ、そうでした」
その後笑顔を取り戻したセレーネは俺の隣に座って昨日何があったかを話してくれた。
二人の方はさほど大きな出来事はなくシェルターがあったこともあり魔物などに襲われるなどの危険な目にあうこともなかった。
魔法を使うこともなかったので今だ二人ともMPは満タン状態のままだという。
そうやって話をしている間に、ほぼ今まで通りに戻っていた。
話が終わる頃にアティウラの料理が出来上がり真っ赤なシチューのようなものが皿に盛られて渡される。
「うわ!?」
それを見て俺は思わずギョッとしてしまう。これって血じゃないよな。何せこの世界の料理はおおよそ茶系統の色ばかりだったし。
生臭さは感じない……、それに何か懐かしいような、あ、もしかしてトマトの類か。それと肉も塊として見えるのも驚きだった。
「これは南の乾燥野菜を使ったから、お肉は村で貰ったやつ」
セレーネとデルの方も俺と同じように不思議そうな顔をして料理を見ていた。
「美味しいと思う。そしてこれは私からの謝罪」
やはり二人は見た目に躊躇しているので俺がまずは食べてみる。
「あむ……ん……んー……んっ!」
こ、これは……。
「ごくん……ん……これ超美味いんだけど!」
乾燥野菜は予想通りトマトのようなものだった。程良い酸味と旨味が口に広がりとても美味しかった。
「何これ!?」
「このようなもの初めて食べました!」
二人とも俺の様子を見て直ぐさま口に含むと俺と同じ反応だった。そのまま3人して勢いよくスプーンを動かす。
「美味っ! 美味っ! 肉も超ー美味い!!」
昨夜も美味しかったが、その比でない料理にありつけ、思わず何度も口走ってしまうのだった。
そのまま全員でアティウラの作った料理を心ゆくまで堪能するのだった。
デルが再び俺が落ち込まないよう気を紛らわせるため日が落ちる前に晩飯の用意をしようと提案してくれ一度全員で外に出た。
だがさすがに臭いが酷いので少しキャンプ地を移動して準備を始めた。
ここはメイドの出番とアティウラが料理をかって出てくれたので、残り3人は適当に座って待っている状態だった。
昨夜もそうだったけど伊達にメイド服を着用してはいない。見ているだけで分かるほど手際が良かった。
それに調理道具は全部彼女持参で、簡易のかまどまで持っているし。だから荷物がかさばるんだと思うんだけど。
「本当になんと言ったらいいか……」
セレーネがお茶を入れたカップを渡しながら、未だに謝り続けていた。
「だから、もう気にしなくていいって」
「勇者様……」
「本当に大丈夫だから」
確かに嫌われているのに比べれば何倍もマシだとは思う。
だが妄想とは言え自分がそういう対象となった話はそれなりの衝撃だった。
彼女たちの頭の中で、どんなことをされているのか。しかも扱いはかなり情けない部類だったので、さすがに少し怖くなってしまった。
俺もそれなりの妄想はしているのであまり人のことは言えないんだけど。
身も心も10代のときに聞かされたら、女性不信気味になったかもしれない。
実際しばらく身体の方はプルプルと震えていたし。精神が30代だったおかげで震えが止まればどうってことでもなくなったけど。
その間なんだかんだ優しいデルはセレーネとアティウラを遠ざけて俺の相手をしてくれていた。
まだ少し泣きそうな顔のセレーネ。
どうやら本当に反省しているらしい。
困ったな。俺の方はもう気にしていないんだが。
「ま、まあ、そういう妄想なら誰だって……いや俺だってすることはあるんだし、おあいこだろ」
「おあいこですか。そ、それはわたくしのことと考えてもよろしいのでしょうか」
「ま、まあ、そうだけど」
「本当ですか!? そ、それは一体どのような妄想をしていらっしゃるのでしょうか」
全く……、どうしてそこで嬉しそうにするのかね。
「い、言えるわけないだろ……言えないようなことだから妄想なんだし」
なんでそんなことを聞きたがるのかといまいち理解が難しいと実感しながら、俺はお茶を啜る。
「も、もしかして……そんなに凄いことなんですか!? ど、どうしましょう……お尻でしょうか? あ、勇者様は胸の方がお好みのようでしたから……もしや授乳!? 赤ちゃんプレイ?」
「ぶーっ!!」
「わっぷ!?」
とんでもないことを言い出したセレーネに思わずお茶を噴き出してしまった。
「こ、これがお好みの妄想なのでしょうか?」
「げほごほっ……そんなわけあるか! ごほっ、聖女が、い、いきなりなんてことを言い出すんだよ!」
「今回の謝罪も含めてわたくしに出来る範囲で勇者様の妄想の一部を実現してみようかと思った次第なのですが……」
一体この聖職者様は何を仰っているんだ!?
「あのさ、トラウマを刻まれたばかりなんだから、それじゃ謝罪にならないって。下手してもっと悪化したらどうするのよ」
「ええ!? ど、どうして」
デルの指摘に何故かアティウラが反応した。
「あのね……コイツは確かに変態でスケベだけど、女性不信に陥った今の状態で妄想を体現したところで全部穿って見えるかもしれないじゃない」
「聞いてみないと、わ、分からないじゃない?」
だからなんでアティウラが反論するんだよ。
「結局これは謝罪ですって体の良い言い訳にしかなっていないの。むしろセレーネの方にしかメリットがないかもしれないじゃん」
「わ、わたくしにだけになるのでしょうか」
「だってコイツの妄想って余程の変態的じゃない限りセレーネにとっても嬉しいことでしょ?」
「あ……確かに」
確かに俺の妄想が実現出来たとして、セレーネがそれをある程度恥ずかしがったり嫌がれば今後そういう妄想トラブルは減っていくだろう。
逆に懲りてない。もしくはむしろ嬉しかったり喜んだら、今後も同じことを繰り返す可能性が高くなる。
「そ、そのようなこと……あ、ある……かもしれませんが、それでも今回の件はしっかりと謝罪はしておきたいのです」
「だったらもう十分に謝ったでしょ、むしろコイツはそのせいで余計な気を使うんだから、そろそろいつも通りに戻りなよ」
デルはこういう事柄では極めて常識派なので今回ばかりは居てくれて本当に助かる。
「デルの言うとおり、もうセレーネは十分謝ったと思うよ。だからあまり気にしすぎても俺も……そのどうしていいか困るから」
「そう、ですね……わたくしが至らないばかりに申し訳ありませんでした」
「だからもう謝る必要はないって」
「そ、そうでした」
その後笑顔を取り戻したセレーネは俺の隣に座って昨日何があったかを話してくれた。
二人の方はさほど大きな出来事はなくシェルターがあったこともあり魔物などに襲われるなどの危険な目にあうこともなかった。
魔法を使うこともなかったので今だ二人ともMPは満タン状態のままだという。
そうやって話をしている間に、ほぼ今まで通りに戻っていた。
話が終わる頃にアティウラの料理が出来上がり真っ赤なシチューのようなものが皿に盛られて渡される。
「うわ!?」
それを見て俺は思わずギョッとしてしまう。これって血じゃないよな。何せこの世界の料理はおおよそ茶系統の色ばかりだったし。
生臭さは感じない……、それに何か懐かしいような、あ、もしかしてトマトの類か。それと肉も塊として見えるのも驚きだった。
「これは南の乾燥野菜を使ったから、お肉は村で貰ったやつ」
セレーネとデルの方も俺と同じように不思議そうな顔をして料理を見ていた。
「美味しいと思う。そしてこれは私からの謝罪」
やはり二人は見た目に躊躇しているので俺がまずは食べてみる。
「あむ……ん……んー……んっ!」
こ、これは……。
「ごくん……ん……これ超美味いんだけど!」
乾燥野菜は予想通りトマトのようなものだった。程良い酸味と旨味が口に広がりとても美味しかった。
「何これ!?」
「このようなもの初めて食べました!」
二人とも俺の様子を見て直ぐさま口に含むと俺と同じ反応だった。そのまま3人して勢いよくスプーンを動かす。
「美味っ! 美味っ! 肉も超ー美味い!!」
昨夜も美味しかったが、その比でない料理にありつけ、思わず何度も口走ってしまうのだった。
そのまま全員でアティウラの作った料理を心ゆくまで堪能するのだった。
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