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第3章
夏休み その4 花火大会⑫ ~忍、ご乱心~
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場面は少し戻り凜が二郎とデートごっこでイチャついてた頃、尊と別れ会場を一人さまよっていた忍は今一番会いたいようで会いたくない人物を発見した。
(あれって二郎?それと横の浴衣を着た女は誰だ。ん、なんであいつ腕なんか組んでデレデレしちゃって。まさか軟派でもしたってわけ。全く二郎のくせに調子に乗って、私がガツンと言ってやるわ)
二郎が正体も分からない女とイチャつく現場を見た忍は無性に腹が立ち、怒鳴り込もうとしたところで、突然渋い中年の男が二人の前に現れ、しばらく話しをして女とともに去って行くところを見ていた。
(一体どんな状況なのこれ。あの女は何者?そしてあのおじさんは誰?)
何だかよく分からない3人のやりとりを見ていた忍は一人になった二郎に声を掛けようか悩みながらも、二郎の後をつけることにした。
しばらくして二郎がラムネの屋台から出て来たところで、二郎が皆のいる場所へ戻ると考え思い切って声を掛けることにした。
「二郎、あんた一人で何やっているのよ」
「おぉ忍か。お前こそ尊と一緒だって大和が言っていたけど、どうしたんだ。もしかして迷子か」
二郎は今日初めて会った忍に少し驚きながらも、一緒にいるはずの尊の不在に嫌な予感をさせつつ冗談で返した。
「え、それはその、ちょっと別行動していて、多分先に向こうに戻ってると思うわ。あんたこそさっき一緒にいた女は誰なのよ。あんたまさか軟派でもしたんじゃないでしょうね。変な問題起こして部に迷惑掛けたら承知しないわよ」
「何言ってんだよ、いきなり。女って誰のこと言ってんだよ」
「黒い浴衣着てた大人っぽい綺麗な人のことだよ」
「あぁそっちのことか。全く問題にもならないから安心しろ」
「そっちってなによ。まさかあんた二人も三人も声を掛けていたって事なの」
「いやいや、なんでそうなる。いつから俺はそんなにチャラ男のキャラになったんだよ。てかお前に関係ないだろうが」
「なによ。腕なんか組んで鼻の下のばしてデレデレしていたじゃないの。全くいやらしいわ」
「馬鹿野郎。いつもの事だしからかっているだけで本気じゃ無い相手に誰がデレデレするかよ。まったくコソコソと人を覗き見るようなことして、趣味が悪いぞ」
「べ、別にあんたの事なんて見てないわよ。バカ」
「バカって、お前急に現れたと思ったら何をそんなに怒ってんだよ」
忍は二郎と一緒に花火でも見ようかと誘うつもりだったが、その前に見た女の正体がどうしても気になり、いつものように思わず言い合いになってしまったことを内心後悔して、急にしおらしくなった。
「・・・・ごめん。別に怒りたくて声を掛けたわけじゃないよ。気分を悪くしたなら悪かったよ」
「おう、何だ、どうした急に。別に俺も本気で怒ったわけじゃ無いからそんなに落ち込まないで大丈夫だぞ。俺らがこうやって言い合いになるのもいつもの挨拶みたいなものだしよ」
「そっか、そうだよね。ありがとう、二郎」
忍は尊に二郎との関係を疑われたせいで、あれこれと意識しすぎてどう接したら良いか分からなくなっていたが、二郎の言葉に普段通り意識せずに接すれば良いと思い至った。
そんな様子を不思議そうに見ていた二郎に忍が改めて問いかけた。
「それよりも二郎あんた一人なんでしょ。仕方ないから私が一人寂しいあんたのために一緒に花火を見てやるわよ、感謝しなさい」
忍は手のかかる駄目男の面倒を見る世話焼き彼女のように手を差し伸べて二郎の手を引こうとしたところ思いもよらない回答が二郎から帰ってきた。
「いや、別に俺は一人じゃないけど。お前こそ一人で寂しいなら早いとこ皆のところに戻った方が良いぞ。もうすぐ花火も始めるから、移動するなら早いほうが良いと思うぞ」
二郎は忍の誘いをなんてことでも無いように断った。
「え!」
「え?」
「は!」
「は?」
忍の頭の上に!が、二郎の頭の上に?が見えるほど二人の表情にお互いが何を言っているのか理解できない状況に別の方から声がかかった。
「二郎君、お待たせ。ゴメンね、待たせちゃって。あれ・・・邪魔だったかな」
二郎に声を掛けて近づいてきた四葉は忍の存在に気づいて気まずそうに一歩後ずさりした。
「おう、もう準備はできたのかい。こっちのことは気にせず行こうか。そんじゃ、皆によろしく」
二郎が忍の存在を完全に無い物として四葉とその場を離れようとしたところ忍が再び叫んだ。
「ちょーっと待った!!!あんたもしかしてまたどこかで軟派した人とデートするつもりなの。一体何を考えているの。それにまた年上の大人の人に手を出すなんて何をするつもりなのよ」
忍の盛大な勘違いに二郎と四葉は顔を見合わせて苦笑いした。確かに今日の四葉は学校でのお決まりのスタイルであるメガネとマスクに下ろした前髪の冴えない女子高生では無く、デコ出しハーフアップで綺麗な大人のお姉さんという風貌で元の素顔が三佳に負けず劣らずの美形という事もあり、女子高生らしい子供っぽさを全く感じさせない見た目だった。そう言う意味で、先程までいた凜と同じく忍が年上と勘違いするのはある意味で仕方が無いことだった。
「あの、すいません。私これでも二郎君と同じ高校2年生なんですけど」
四葉は控えめに、しかし、はっきりと忍の間違いを正すように自分の年齢を打ち明けた。
「そんなわけあるかーい!どう見積もってもよくて大学生でしょ。あなた高校生をたぶらかしてどうするつもりですか。こんな朴念仁みたいな奴でも男子高校生なんですよ。こいつらの頭の中なんてスケベな事しか考えてないんですから、いい大人が節度を守らないでどうするですか」
忍は四葉の言葉を全く聞く耳を持たず、意味不明なテンションと口調で二人になるのを止めようと声を張った。
「二郎君、私そんなに高校生に見えないかな、正直ショックだよ」
バッサリと女子高生である事を否定された四葉は半分涙目になりながら二郎に助けを求めた。
「忍、落ち着け。確かに四葉さんの見た目は大人っぽくて高校生には見えないかもしれないが、間違えなく俺らと同じ高校2年だ。というか、俺らと同じ学校の同級生だぞ」
「バカなこと言ってんじゃないわよ。こんな美人がいたら私でも気づくわよ。それに三佳やこの人みたいな美人が同じ学校に何人もいるわけ無いでしょ。バカ。あんたどこかで頭でも打ったんじゃないの」
さらにヒートアップする忍の様子に二郎は白旗を揚げた。その一方で嬉しいやら悲しいやらの四葉は最終手段として自分の素性と自分の知っている忍の事を話して信用してもらおうと話し掛けた。
「お願いです、聞いて下さい。私は結城四葉と言って2年4組、出席番号36番、帰宅部の者です。あなたは二郎君と同じクラスの成田忍さんですよね。たしか女子バスケ部の人で凄く後輩の女子生徒に人気のある人だったと思うのですけど、違いますか」
「どうして私の事を知っているんですか。二郎から聞いたんですか」
「あまり交友関係の広くない私でもあなたのことや三佳ちゃんのことくらい知っていますよ。ウチの学校の有名人ですからね」
「嘘、本当に同級生なの」
忍は四葉の言葉にようやく落ち着きを取り戻して、自分の勘違いを認めるような態度を見せた。
「だから初めからそう言ってんだろうが。どんだけ早とちりなんだよ。四葉さんにちゃんと謝れよ。かなりひどいこと言っていたぞ」
二郎はあきれたように忍を諫めて、四葉に謝罪するように促した。
「あの、すみませんでした。私随分ひどいことを言ってしまって」
「いや、そんな謝らないで下さい。それに二郎君もちゃかり私の事を高校生には見えないって言っていましたので、後で二郎君にたっぷり謝ってもらいますから大丈夫ですよ」
笑顔で忍に接する四葉に二郎は顔を背け聞こえないふりをして話しを切り上げようとした。
「まぁこれで一件落着ってことで、お互いに水に流そうじゃないか。な、忍。そういうことで、ついさっき四葉さんと偶然会って、この後一緒にぶらつくことを約束したもんだから、誘ってくれて悪いけど忍は先に皆の所にでも戻ってくれよ」
「まぁ、そういうことなら、わかったけどさ、ふん」
忍はどうにも納得できないような表情を浮かべつつも、渋々二人の前から離れ人混みの中へ入っていた。
忍を見送った四葉は申し訳なさそうに二郎に尋ねた。
「良かったのかな、私邪魔じゃなかった。成田さん、すごく残念そうだったけど」
「大丈夫だよ。忍とは長い付き合いで、俺の顔を見ると大体怒っている奴だからさ。いつものことだと思って気にしないでよ」
「そうなら良いけど。それよりも二郎君、さっきの事だけれども、後でゆっくり話そうか」
「うん、さっきの話って何だろうね。あ、そうだ、これラムネ飲む。四葉さんが喉渇いてると思ってさっき買っといたんだけど」
「・・・・もうしょうがないな。これで許してあげます。でも、私だってこれでも女子高生なんだよ。流石に寄ってたかって年上に見えるって言われたら流石に傷つくんだからね。二郎君わかった」
「はい、ごめんなさい。でも、忍も俺も褒め言葉で言ったつもりなんだけど」
「二郎君、何か言いたいことでもあるのかな」
「いや何でもありません。どこからどう見て華の女子校生にしか見えません」
「うん、よろしい。それじゃ、これさっき二郎君が買ったパンだよ。私も持ってきたからどこかで食べながら花火見ようよ」
四葉は二郎を黙らせて、本来の目的である花火鑑賞に気持ちを切り替えて二郎と二人並んで歩き出した。
二郎は隣で冷えたラムネと揚げたてのカレーパンを両手に持ちながら、夜空に咲き誇るいくつもの花火を楽しそうに笑顔で見上げる四葉の横顔を見ながらふと思うのであった。
(四葉さん、最近なんだか凜先輩に似てきたような。・・・・それにしてもただ花火を見るだけのはずだったのになんだか色々と疲れたな)
(あれって二郎?それと横の浴衣を着た女は誰だ。ん、なんであいつ腕なんか組んでデレデレしちゃって。まさか軟派でもしたってわけ。全く二郎のくせに調子に乗って、私がガツンと言ってやるわ)
二郎が正体も分からない女とイチャつく現場を見た忍は無性に腹が立ち、怒鳴り込もうとしたところで、突然渋い中年の男が二人の前に現れ、しばらく話しをして女とともに去って行くところを見ていた。
(一体どんな状況なのこれ。あの女は何者?そしてあのおじさんは誰?)
何だかよく分からない3人のやりとりを見ていた忍は一人になった二郎に声を掛けようか悩みながらも、二郎の後をつけることにした。
しばらくして二郎がラムネの屋台から出て来たところで、二郎が皆のいる場所へ戻ると考え思い切って声を掛けることにした。
「二郎、あんた一人で何やっているのよ」
「おぉ忍か。お前こそ尊と一緒だって大和が言っていたけど、どうしたんだ。もしかして迷子か」
二郎は今日初めて会った忍に少し驚きながらも、一緒にいるはずの尊の不在に嫌な予感をさせつつ冗談で返した。
「え、それはその、ちょっと別行動していて、多分先に向こうに戻ってると思うわ。あんたこそさっき一緒にいた女は誰なのよ。あんたまさか軟派でもしたんじゃないでしょうね。変な問題起こして部に迷惑掛けたら承知しないわよ」
「何言ってんだよ、いきなり。女って誰のこと言ってんだよ」
「黒い浴衣着てた大人っぽい綺麗な人のことだよ」
「あぁそっちのことか。全く問題にもならないから安心しろ」
「そっちってなによ。まさかあんた二人も三人も声を掛けていたって事なの」
「いやいや、なんでそうなる。いつから俺はそんなにチャラ男のキャラになったんだよ。てかお前に関係ないだろうが」
「なによ。腕なんか組んで鼻の下のばしてデレデレしていたじゃないの。全くいやらしいわ」
「馬鹿野郎。いつもの事だしからかっているだけで本気じゃ無い相手に誰がデレデレするかよ。まったくコソコソと人を覗き見るようなことして、趣味が悪いぞ」
「べ、別にあんたの事なんて見てないわよ。バカ」
「バカって、お前急に現れたと思ったら何をそんなに怒ってんだよ」
忍は二郎と一緒に花火でも見ようかと誘うつもりだったが、その前に見た女の正体がどうしても気になり、いつものように思わず言い合いになってしまったことを内心後悔して、急にしおらしくなった。
「・・・・ごめん。別に怒りたくて声を掛けたわけじゃないよ。気分を悪くしたなら悪かったよ」
「おう、何だ、どうした急に。別に俺も本気で怒ったわけじゃ無いからそんなに落ち込まないで大丈夫だぞ。俺らがこうやって言い合いになるのもいつもの挨拶みたいなものだしよ」
「そっか、そうだよね。ありがとう、二郎」
忍は尊に二郎との関係を疑われたせいで、あれこれと意識しすぎてどう接したら良いか分からなくなっていたが、二郎の言葉に普段通り意識せずに接すれば良いと思い至った。
そんな様子を不思議そうに見ていた二郎に忍が改めて問いかけた。
「それよりも二郎あんた一人なんでしょ。仕方ないから私が一人寂しいあんたのために一緒に花火を見てやるわよ、感謝しなさい」
忍は手のかかる駄目男の面倒を見る世話焼き彼女のように手を差し伸べて二郎の手を引こうとしたところ思いもよらない回答が二郎から帰ってきた。
「いや、別に俺は一人じゃないけど。お前こそ一人で寂しいなら早いとこ皆のところに戻った方が良いぞ。もうすぐ花火も始めるから、移動するなら早いほうが良いと思うぞ」
二郎は忍の誘いをなんてことでも無いように断った。
「え!」
「え?」
「は!」
「は?」
忍の頭の上に!が、二郎の頭の上に?が見えるほど二人の表情にお互いが何を言っているのか理解できない状況に別の方から声がかかった。
「二郎君、お待たせ。ゴメンね、待たせちゃって。あれ・・・邪魔だったかな」
二郎に声を掛けて近づいてきた四葉は忍の存在に気づいて気まずそうに一歩後ずさりした。
「おう、もう準備はできたのかい。こっちのことは気にせず行こうか。そんじゃ、皆によろしく」
二郎が忍の存在を完全に無い物として四葉とその場を離れようとしたところ忍が再び叫んだ。
「ちょーっと待った!!!あんたもしかしてまたどこかで軟派した人とデートするつもりなの。一体何を考えているの。それにまた年上の大人の人に手を出すなんて何をするつもりなのよ」
忍の盛大な勘違いに二郎と四葉は顔を見合わせて苦笑いした。確かに今日の四葉は学校でのお決まりのスタイルであるメガネとマスクに下ろした前髪の冴えない女子高生では無く、デコ出しハーフアップで綺麗な大人のお姉さんという風貌で元の素顔が三佳に負けず劣らずの美形という事もあり、女子高生らしい子供っぽさを全く感じさせない見た目だった。そう言う意味で、先程までいた凜と同じく忍が年上と勘違いするのはある意味で仕方が無いことだった。
「あの、すいません。私これでも二郎君と同じ高校2年生なんですけど」
四葉は控えめに、しかし、はっきりと忍の間違いを正すように自分の年齢を打ち明けた。
「そんなわけあるかーい!どう見積もってもよくて大学生でしょ。あなた高校生をたぶらかしてどうするつもりですか。こんな朴念仁みたいな奴でも男子高校生なんですよ。こいつらの頭の中なんてスケベな事しか考えてないんですから、いい大人が節度を守らないでどうするですか」
忍は四葉の言葉を全く聞く耳を持たず、意味不明なテンションと口調で二人になるのを止めようと声を張った。
「二郎君、私そんなに高校生に見えないかな、正直ショックだよ」
バッサリと女子高生である事を否定された四葉は半分涙目になりながら二郎に助けを求めた。
「忍、落ち着け。確かに四葉さんの見た目は大人っぽくて高校生には見えないかもしれないが、間違えなく俺らと同じ高校2年だ。というか、俺らと同じ学校の同級生だぞ」
「バカなこと言ってんじゃないわよ。こんな美人がいたら私でも気づくわよ。それに三佳やこの人みたいな美人が同じ学校に何人もいるわけ無いでしょ。バカ。あんたどこかで頭でも打ったんじゃないの」
さらにヒートアップする忍の様子に二郎は白旗を揚げた。その一方で嬉しいやら悲しいやらの四葉は最終手段として自分の素性と自分の知っている忍の事を話して信用してもらおうと話し掛けた。
「お願いです、聞いて下さい。私は結城四葉と言って2年4組、出席番号36番、帰宅部の者です。あなたは二郎君と同じクラスの成田忍さんですよね。たしか女子バスケ部の人で凄く後輩の女子生徒に人気のある人だったと思うのですけど、違いますか」
「どうして私の事を知っているんですか。二郎から聞いたんですか」
「あまり交友関係の広くない私でもあなたのことや三佳ちゃんのことくらい知っていますよ。ウチの学校の有名人ですからね」
「嘘、本当に同級生なの」
忍は四葉の言葉にようやく落ち着きを取り戻して、自分の勘違いを認めるような態度を見せた。
「だから初めからそう言ってんだろうが。どんだけ早とちりなんだよ。四葉さんにちゃんと謝れよ。かなりひどいこと言っていたぞ」
二郎はあきれたように忍を諫めて、四葉に謝罪するように促した。
「あの、すみませんでした。私随分ひどいことを言ってしまって」
「いや、そんな謝らないで下さい。それに二郎君もちゃかり私の事を高校生には見えないって言っていましたので、後で二郎君にたっぷり謝ってもらいますから大丈夫ですよ」
笑顔で忍に接する四葉に二郎は顔を背け聞こえないふりをして話しを切り上げようとした。
「まぁこれで一件落着ってことで、お互いに水に流そうじゃないか。な、忍。そういうことで、ついさっき四葉さんと偶然会って、この後一緒にぶらつくことを約束したもんだから、誘ってくれて悪いけど忍は先に皆の所にでも戻ってくれよ」
「まぁ、そういうことなら、わかったけどさ、ふん」
忍はどうにも納得できないような表情を浮かべつつも、渋々二人の前から離れ人混みの中へ入っていた。
忍を見送った四葉は申し訳なさそうに二郎に尋ねた。
「良かったのかな、私邪魔じゃなかった。成田さん、すごく残念そうだったけど」
「大丈夫だよ。忍とは長い付き合いで、俺の顔を見ると大体怒っている奴だからさ。いつものことだと思って気にしないでよ」
「そうなら良いけど。それよりも二郎君、さっきの事だけれども、後でゆっくり話そうか」
「うん、さっきの話って何だろうね。あ、そうだ、これラムネ飲む。四葉さんが喉渇いてると思ってさっき買っといたんだけど」
「・・・・もうしょうがないな。これで許してあげます。でも、私だってこれでも女子高生なんだよ。流石に寄ってたかって年上に見えるって言われたら流石に傷つくんだからね。二郎君わかった」
「はい、ごめんなさい。でも、忍も俺も褒め言葉で言ったつもりなんだけど」
「二郎君、何か言いたいことでもあるのかな」
「いや何でもありません。どこからどう見て華の女子校生にしか見えません」
「うん、よろしい。それじゃ、これさっき二郎君が買ったパンだよ。私も持ってきたからどこかで食べながら花火見ようよ」
四葉は二郎を黙らせて、本来の目的である花火鑑賞に気持ちを切り替えて二郎と二人並んで歩き出した。
二郎は隣で冷えたラムネと揚げたてのカレーパンを両手に持ちながら、夜空に咲き誇るいくつもの花火を楽しそうに笑顔で見上げる四葉の横顔を見ながらふと思うのであった。
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