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おかゆ

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セレンディピティ

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ただ食って寝るだけなら獣の一生。生きる価値があると思える人生でなければならない。そうでなければ、なぜ人として生まれたのかわからない。それには、セレンディピティが必要なのだ。

例えば、自宅で作家の仕事をしているとする。その日はもう仕事が終わったので、ちょっくら散歩に出かけようと試みた。時刻は夕方。今日は一日カラッとしたいいお天気で、窓の外には気持ちのいい風や柔らかく頬を撫でるように吹いていた。
少し散歩をするだけだからと、鍵と財布だけを持って、あとは手ぶらで、上にカーディガンをさっと羽織って、歩きやすいぺたんこの靴で外へ出る。石畳の道を歩いていると、なにやらあま~い匂いが漂ってくる。その香りに釣られるようにして歩いていくと売店を見つけた。
クレープ屋さんだ。そこで売っていたのは、ピスタチオのクレープや、バラの花の乗ったピンクのクレープ、すみれの花の砂糖漬けが乗ったうすいラベンダー色のクレープだった。とても可愛らしい。いちごやチョコバナナなラバよく見かけるが、バラやラベンダーとはまた珍しい。
あまりにもいい香りだったのと、可愛らしさに速攻で買うことに決めた。

さっそく一番目についたラベンダー色のクレープを注文し、食べる前に写真を撮ろうと、ふと顔をあげると夕陽が落ちかかった空がサーモンピンクと濃いオレンジのグラデーションになっているのに気づいた。なんて綺麗なのだろうか。思わずうす紫色のクレープを空にかざして写真を撮った。
そんなこんなで散歩を終えて家に戻ると、今度はなんと家のドアノブに花束が刺さっている。誰からだろう。花の上にちょこんと置かれたカードを開けてみると、友達からだった。
少しお喋りでもしようと、うちに遊びに来たようだが、すれ違ったようだ。

急いで、電話をかける。ちょうど散歩に出かけていたこと、今戻ったことを伝えると、偶然まだ近くにいるらしかったので、そのままディナーにでもいくことになった。近くにある行きつけのお洒落なレストランで待ち合わせして、そこで合流し、食事をした。
たくさん喋って、美味しいディナーも堪能して、すっかり満足。食事を終えたあと、月明かりに照らされた川べりをふたりでゆっくりと歩く。
お酒も飲んですこし火照ってた頬をひんやりする風が冷ましてくれて心地よかった。まどろみの中の、散歩。

友人と別れて帰宅した後は、部屋に音楽をかけて、間接照明をつけ、お風呂を沸かす。今日はなんの入浴剤にしようか。
カワフルな入浴剤の中から今の気分で好きなのを選ぶ。
ゆっくり身体を温めて、お風呂からでたら、ちょうどいい眠気に襲われて寝落ちするように夢の中へ。
こうして1日が終わったとして、思い返してみるとこの日には、素敵なセレンディピティーがちりばめられている。
ほんのささいな、小さな喜び、発見、わくわく、うっとりするようなこと。そんなあたたかな偶然が重なるような日々なのであれば、活力が出てくるというものなのだけど。
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