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読書
しおりを挟む子供の頃、読書が苦手だった。学校で朝の15分間、読書をしなければいけない
時間があったけど、読書をしていると、気づけばただ文字を目で追っているだけで
内容があまり入ってきていない。しっくりこないし、面白いとも思えない。
だけども、朝の15分は読書の時間が設けられているので、
ある日友達と学校の図書館に本を借りに行くことになった。
図書館は好きだった。あの古い本が醸し出す、懐かしいような
古い木の甘い匂いのような、静かで暖かい感じが好きだった。
ずらりと並べられている本を、なんとなく
端から目で追っていく。なにを読もうかな。
ふと、目が止まったのは、ゴシック調な表紙の
少し分厚めの児童小説だった。蜘蛛と、チェスの絵柄だ。
(ハリポタではない)
なんだこれと思って手にとって、表紙をペラペラとめくってみる。
分厚いけど、文字はそんなに小さくないし、読めるかも。これでいっか。
みんなが素通りしていった棚の
おそらく子供が手に取りづらいであろう表紙の
その本を借りることにした。
そもそも、私は読書が好きではない。
だからなんでもいいや、なんて思っていたけど、
その本を読むと、なんと情景がすぐに浮かんできた。
まるで映画館の席に腰をおろしたかのようにワクワクする。
静けさの中で、私の頭ではそこそこの音量で劇画上映されている。
セリフが声になって聞こえ、登場人物が、物語に沿って動く。
15分経って、先生が終了の合図を出した。
ふと、私の意識もこちらの世界に戻ってくる。
私はどこに行ってたのか?頭の中の映画館かも。
こんな感覚になったのは初めてだった。
今までの読書の時間は、なんだったのだろう?この本だけ?
とても不思議だった。
その本は、結構長かったけど、全巻読んだ。
というか、読めた。
そうして、他の本を読まないといけなくなってしまった。
次はどうしよう。また適当に選んでも大丈夫かもしれない。
だって私はもう、読書ができる人間になったんだから。
だけど、興味のない本、なかなか気持ちが入れない本だと
やっぱり目で文字を追っているだけになる。
あれ、映画館はどこ行ったんだろう?入れない。
しっかり読もうと、頑張ったって無駄だった。
これは私が選んでいるのではない。
どうやら読んでみて、入れる本と、そうでない本がある。
入れない本は、完全に私の中で扉が閉まっている。
神経の中の、頭の中のあの上映もされない。
神経が動く気がないらしい。
どんなにいい本でも、入れない本なら、私はこの本で
泣くことも笑うことも、傷つくこともできないだろう。
つまり、情動が一切反応しなくなっている。
実用書なんかは、情動ではなく学びがメインなので、別枠。
本は、人だ。
そう思った。完全に、好き嫌いが分かれる。
好きなら、友達になれるし、神経伝達が行われる。
体が、その世界を受け入れ、私に風景を見せてくる。
だけど、興味のないものや好かないものは、
なんにも動いてくれない。神経がぴくりともしない。
あっそ、早くあっち行けば?とでもいうかのように。
私には、必要のないものだ、早く、しめだせ!
目で文字を追っても、小賢しいことしてもそんなのむだだ。
そういう反応をされる。
これは、無意識の決定。
無意識を覆すことはできない。
ここは、遺伝子に刻まれた、分子レベルの決定であると思う。
意識を持った私が、そとの事情(学校の読書タイム)で
無理やりやっても、その本が私に合わないなら無駄な領域がある。
困ったな、せっかく本が読める人間になれたと思ったのに。
それは全部ではない、ということ。
だけど大人になるにつれて、どんな本でも頭の上映ができるように
なってはいった。そうはなっても結局のところは、
取り憑かれたように本に食い入る感じではない。
そうなれる本は今でも、やはり、私にとっては非常に限られている。
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