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5巻
5-3
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◇
王都の西。大通りの真ん中に、ヒースクリフ派の魔法使いたちが集団で作業をしている場所があった。
手押しの荷車に藁を敷き詰め、それに火をつけている。そのままでは白くなってしまう煙に魔法をかけて黒煙を生み出している。
「あの……マーク隊長。本当にこんなことをしていいんですか? わざわざ敵に位置を知らせるような真似をして」
燃料となる藁をひとまとめにしながら青年が聞く。魔法騎士団時代、マークの部下だった男だ。
マークは王宮のある方角を見上げる。ここからでは建物が邪魔をして、王宮の姿をはっきり見ることはできない。
しかし、騒ぎが起こった気配は感じ取っていた。その様子からマークはヒースクリフが作戦の第一段階を成功させたことを察する。
「いいんだよ。俺たちの目的はレオンとディーレインを一対一にさせることだ。こうして目立っておけば相手の注意を引ける」
そう言うとマークは他の魔法使いたちに藁をもっと高く積み、火をさらに大きくするように指示を出した。
「大丈夫でしょうか。悪魔に憑かれたという魔法使いたちが集団で攻めてきたらヤバいんじゃ」
青年はなおも不安そうな顔をしているが、マークは特に気にしている素振りを見せない。
同時に八箇所で黒煙を焚いているため、複数の場所に敵が張り込んでいることに相手も気付いているはず。
冷静で慎重な指揮官がいれば、うかつに戦力を分散させることはないかもしれない。
しかし悪魔は違う。人間を侮っているやつらなら、必ず一人ずつバラけてやって来るだろうという確信がマークにはあった。
「それはないだろう。アイツらの目的はヒースクリフが奪った王冠だ。それをいち早く探して取り返すなら分かれた方が効率的だしな」
二人が話している間にも荷車の上の藁はメラメラと燃えている。
そろそろ衛兵たちがこちらへやって来てもいい頃だとマークが思っていると――
「報告! アーサー派の魔法使いたちがこちらへ来ます!」
見張りに行かせていた者が声を上げて戻ってきた。
よし、とマークは手のひらを拳で叩くと、
「お前ら、火はもういいぞ。悪魔は俺が相手をする。お前たちは他の衛兵を引きつけてくれ」
と指示を出した。
その頃には「飛行」魔法を使った敵の魔法使いたちが建物を飛び越えて姿を見せていた。
マークは腰に差した剣に手を伸ばし、魔力を溜める。
「やるぞ、ファルトス」
その声に返事はなかったが、マークは心の中で気持ちが重なるのを感じていた。
現れたアーサー派の魔法使いたちは皆、空中で杖を抜き、魔法を構築している。火、風の遠距離魔法が多い。
その魔法が自分たちに届く寸前までマークは待った。そして、あと少しで魔法が当たってしまうというところで剣を引き抜く。
「炎閃」
言葉と共に繰り出される斬撃。その剣にはマークが溜めた魔力が込められていた。斬撃は魔法にぶつかり、それを切り裂く。
切り裂かれた魔法は火に包まれ燃えていく。
自分の生み出した魔法が燃えるという状況にアーサー派の魔法使いたちは戸惑い、動きが一瞬止まる。
マークの斬撃はそれだけでは終わらなかった。切り裂いたところから生まれた炎は円を描くように広がり、空中にいる魔法使いたちに襲いかかる。
「ぐあっ」
それを浴びた魔法使いたちは痛みで「飛行」を維持できずに、地面に落ちる。
辛うじてかわした他の魔法使いがマークに標的を絞り、追撃しようとするが動きが半歩遅い。
その時にはすでにマークは飛び上がっており、突きを繰り出していた。
空中で繰り出される突きの連撃。
その一つ一つが炎を纏い魔法使いたちを襲う。
マークが地面に着地した頃には襲ってきた魔法使いたちは皆、地面に倒れていた。
「火を消してやってくれ。その後は拘束して後方に……誰も死なせるな」
マークが指示をすると、後ろで見ていたヒースクリフ派の魔法使いたちが倒れたアーサー派の魔法使いたちにかけよる。
マークが倒した者の中に動ける者はもういなかった。
誰も死んではいない。
マークは剣を収め、残党がいないか確認した。
今の中に悪魔がいないことはわかっていた。悪魔がいればこんなに容易く片付くことはなかっただろう。
第一陣に悪魔がいなかったのならば悪魔はそもそもここに来ていないか、それとも隠れてこちらの出方を窺っているかのどちらかだ。
恐らく後者だろう。
マークは自分の読みを信じて警戒を解かなかった。そしてその読み通り、その後すぐに悪魔は姿を現した。
「人間のくせに、なかなかやるようだな」
突如として宙に現れたソイツはマークを見下ろして笑う。マークは剣に手をかけたまま、来訪者を見上げた。
「総員退避……ここは俺に任せろ」
現れた悪魔から決して目を離さずにマークは告げる。何が起こるのか理解したその場にいた魔法使いたちは、すぐに指示通りに避難する。
「よし、遊ぼうか小僧」
そう言って宙から降りてくる悪魔。
マークの前に現れたのはア・ダルブだった。
◇
上空から降りかかる燃えた岩の塊をオードは辛うじて避けた。
逸れた岩はそのまま建物にぶつかり、倒壊させる。岩から燃え移った火が建物に燃え移るのをオードは逃げながら見ていた。
「おいおいどうした? 挑みに来たんだよな、人間。だったら何故逃げる?」
楽しくて仕方がないといった様子でオードを追いかけ回しているのは悪魔の一人である。
燃えた岩を生み出し続ける彼女からオードは逃げ回るしかなかった。つい先程までオードはマークと同じように別の地点で藁を燃やして陽動していた。
そこに現れたのが彼女だ。
兵士を引き連れず、たった一人で現れた彼女は突如として巨大な燃える岩、「隕石」の魔法を発動させた。
一瞬の間に出現した燃え盛る岩に対抗できる者は、その場にはいなかった。
藁を積んだ荷車は粉々に、さらにその魔法の衝撃で付近のいくつかの家が倒壊する。
その状況に分が悪いと判断したオードは、精霊の魔法を行使して注意を引きつけた。
味方の魔法使いたちとは逆方向に走り、一人で悪魔の魔法に対処する。
「おいおい、どうしたんだよ人間。お前、精霊の主人だろ? 魔力でわかるぞ。なのになんで攻撃してこない」
悪魔の言う通り、オードはただ逃げ続けるだけだった。
街の入り組んだ道を走り回るが、決して撒こうとする動きではない。
時折後ろを振り返っては悪魔の位置を確認している。
「ああ、なるほど」
悪魔は納得して歩みを止める。ちょうどオードも逃げるのをやめた。悪魔は周囲の建物を見渡す。
先程まで通っていた道にある建物よりも、街並みが豪華になったように見える。
「貴族連中の家……か」
呟く悪魔にオードは頷く。
「そうさ、ここならどれだけ暴れても住人に被害は出ない」
オードが逃げ回ったのは王都に住む人たちに危害を加えたくなかったからだ。
アーサーを止めるために始まった今回の作戦。開始するよりも前にヒースクリフ派の魔法使いたちは何も知らない王都の住人たちに避難を呼びかけている。
王子同士の権力を巡った戦いに国民を巻き込むわけにはいかないという、ヒースクリフの考えがあったからだ。
オードが最初に藁を燃やしていた場所。そこはまさに平民が住む地域だった。商店が立ち並び、大通りに面していて目立つために陽動はそこで行う方が効果的だった。
しかし戦闘は違う。
付近の住人たちはすでに避難しているか、アーサーの戴冠を見に広場に集まっていて無人だっただろう。だが建物があった。戦闘で壊れた建物は時間をかけなければ元に戻らない。
戻るまでの時間、そこに住んでいた人たちに苦痛を強いることになる。
オードは最初から、陽動が成功したら貴族たちの屋敷が建つ王都の中央におびき寄せるつもりだったのだ。貴族たちは皆、アーサー派かヒースクリフ派に分かれている。
この騒動の原因も知っていて、当事者とも言えるだろう。屋敷が壊れても別荘や頼る伝があるだろうし、平民を犠牲にするよりもいいというオードの考えだ。
まんまとおびき寄せられた悪魔だが、その表情は先程よりも高揚している。
オードが逃げるのをやめたということは、これから戦闘が始まるということ。それは彼女にとって朗報と言える。
悪魔にも性格は様々あるが、激しい戦闘を好むという点において彼女の右に出る者はいない。
悪魔は頭上に「隕石」を作り出す。
オードは覚悟を決めて杖を構えた。
「おい、人間。せっかくだ、お前の名前を聞かせろ」
「悪魔に人間的な決闘の慣習を守る意思があるとは思わなかったね。王都出身貴族、オード・マグナガルだ」
ニカッと悪魔が笑う。
その笑みが余裕の表れなのか、精神の昂りなのかオードにはわからない。
不気味な笑みだった。
「いいぜぇ。せいぜい知恵を絞って戦ってくれ。狂気の悪魔、ア・ドリスだ」
王都の中央、東寄りの貴族地域でオードとドリスの戦いが始まった。
◇
「あぶない!」
叫んだルイズは手を伸ばし、一人の魔法使いを突き飛ばした。
その魔法使いの背後に敵が忍び寄り、不意打ちで命を刈り取ろうとしていたからだ。
間一髪。まさにそんなタイミングで振り下ろされた刃の魔法は、倒れた魔法使いとルイズの上を通り過ぎた。ルイズはすぐに身を起こし、助けた魔法使いを抱えて距離を取る。
「大丈夫ですか? ここは私に任せて、あなたはダレンのところへ向かってください」
突然のことに萎縮してしまったのか、ガタガタと震えている魔法使いは辛うじて頷く。
ルイズの目から見てもかなり若い魔法使いだった。
まだ学院を卒業したてなのではないかと思えるくらいだ。勇ましく戦いに参加したはいいものの、まさか自分が襲われるとは思ってもいなかったのだろう。
ルイズはその魔法使いが離れるまで敵から目を逸らさないようにした。
つい先程までこの場所に敵の姿はなかった。襲撃者は突如として現れたことになる。
「転移魔法……あなたがア・シュドラね」
ルイズは目の前に立つ襲撃者……ア・シュドラを睨みつける。
彼女のことはレオンから聞いている。
五年前の王都襲撃の首謀者で、転移魔法を持つ実力者。五年前は学院の女教師、アイリーン・モイストの体を乗っ取っていたらしいが、今のシュドラはまるっきりの別人である。
小柄で可愛らしい顔をしているものの、そこに作り出される表情は酷く不気味にも見える。
何より、彼女が持っている武器。魔法で作り出された両手持ちの大きな鎌が、邪悪さを強調しているようにルイズには見えた。
「いかにも、私がア・シュドラだ。我が主君の命により、お前たちを殲滅する」
そう言ってア・シュドラは鎌を構える。当然ながら交渉の余地はない。
走り出したシュドラに合わせてルイズも迎え撃つ。振り下ろされた鎌をルイズは体を後ろに反らせて避けた。
鎌の切先がルイズの前髪を数本、はらりと落とす。ルイズは怯まずに両手に魔力を集め、縄のようにして、それをシュドラに絡ませる。
縄はシュドラの両足を絡め取り、動きを封じようとする。
シュドラはすぐにそれを切り落とした。
「小賢しい真似を。力では勝てないから小細工か」
切られて落ちた縄は地面に溶けるように消えていく。
「おあいにく様、私は色々と考えて戦うのが好きなの……でも、力で勝てないとは言ってないわよ」
ルイズはニヤリと笑う。
その瞬間、シュドラの立つ地面から再び縄が飛び出した。
今度は先程よりも太く長い。地面から現れた縄はシュドラの体に絡みつき、地面と連結する。
その無数の縄に一時的にシュドラは身動きを取れない状態になった。
「なに?」
突然のことにシュドラは驚く。
彼女が切り落としたはずの縄は実はルイズの罠だった。
地面に消えていくように見せかけて、ルイズは魔法を遠隔で操作したのだ。
シュドラを拘束している間にルイズは別の魔法を構築する。極大の水の魔法だった。
大きな渦を巻く水がルイズの前に集まり、まっすぐにシュドラ目がけて放たれる。
水は身動きの取れないシュドラを呑み込み、竜巻のように大きくなる。
今のルイズにできる最大限の魔法ではあるが、それだけで勝負が決まるほどシュドラは弱くはない。
魔力を高め、一瞬のうちに爆発させてその水の中から抜け出してくる。
「なるほど。力がないと言ったことは撤回しよう」
ルイズの攻撃はシュドラにとって予想外だった。まさか人間にこれほどの力があるとは思っていなかった。
しかし、彼女にとって脅威と呼べるほどでもない。
「確かにお前は強いようだ。悪魔の一人や二人なら倒せるかもな。だが、お前の目の前にいるのは悪魔の中でも選りすぐりの強者。お前たちに勝ち目はない」
言い切るシュドラにルイズは呆れた顔になる。
「聞いていたよりもずいぶんお喋りね。余裕の表れかしら? 言っておくけどこっちにだってちゃんと作戦はあるわよ。ほら、さっさと戦う準備をしなさい」
そう言ってルイズは構えるが、シュドラは彼女の言葉に呆然としているようだった。
「理解できん。お前ほどに力があれば実力の差にも気付くはず。それでも向かってくる理由はなんだ。どこからそんな希望を持てる」
立ち尽くすア・シュドラを前にルイズも攻撃を仕掛けずにいた。
◇
王都西の商店街。そこは平時であれば貴族も平民も足を運ぶ賑わったところだった。
しかし、内戦が始まった今となっては見る影もない。客など当然寄りつくはずもなく、店の主人たちもヒースクリフ派の魔法使いたちの説得により避難している。
ただ一つ、ボロボロの外観でありながら多くの魔法使いが足繁く通う魔法商店「魔魔堂」を除いて。
その店主であるクエンティン・ウォルスは目の前で心配そうに貧乏ゆすりをする男、ダレンに声をかける。
「そんなに気を張り詰めていても仕方ないさ。僕たちに今できるのは気長に待つくらいだろ」
「それはわかっている……わかってはいるが、落ち着かないんだよ」
二人が待っているのはこの国の第二王子にして、彼らが担ぐ旗頭でもあるヒースクリフだ。
ダレンは窓から見える景色を眺めながら少しだけ後悔し始めていた。
今回の作戦を考えたのはレオンとクエンティンである。そうでなければ主人であるヒースクリフに王冠の奪取なんて危ない真似をさせるわけがない。
いや、後悔などしても遅い。止める機会などいくらでもあった。最後まで反対することもできたのだ。
結局自分はヒースクリフの覚悟に押されたのだ。ダレンの胸中は自責の念でいっぱいだった。
作戦といっても大したことではない。ヒースクリフがアーサーの不意をつき、王冠を奪取する。
そして、風精霊の力を使い姿を隠して魔魔堂まで逃げてくる。
ヒースクリフを魔魔堂で匿いながら、他で陽動して敵戦力を拡散させ、ディーレインとレオンが一対一で戦えるようにする。
それが作戦の全貌だった。
ヒースクリフはまだ来ない。王都には先程から戦闘音と思われる轟音が響いている。
その音がダレンの不安を駆り立てるのだ。
ヒースクリフのことだけではない。この作戦には不安要素がいくつもある。
「本当に大丈夫だろうか。レオンの話では奪われた悪魔の魂は八人なんだろ? それに対して、こっちには精霊王のもとで修業してきたあの四人しか、まともに戦える人間がいない。ヒースを入れても五人だ。勝ち目はあるのか?」
八人の悪魔に対して、真正面から戦える者は少ない。それも一対一で時間を稼げるかどうかというところ。
一対一では戦える者が少ないこちらが対応しきれず、何人かの悪魔が野放しになる。そうなればディーレインとレオンの一対一も難しくなる。
クエンティンはダレンの言葉を訂正する。
「戦えるのは彼らだけじゃないさ。アルガンドからの応援もある。ヒースクリフを慕って集まった仲間たちもいる。信じて待つしかない」
クエンティンの言葉にダレンは黙り込む。信じていないわけではない。
ヒースクリフに味方する貴族の大半は辺境出身の者たちだ。彼らが力を貸す理由にはヒースクリフが王位を継いだ後の、自分たちの地位の向上という打算的な考えが付随している。
それが悪いというわけではない。中には純粋にヒースクリフの力になりたいと思う者もいるだろう。
しかし、アーサーはその全てを見据えているのではないか。ヒースクリフを追ってリーンまで攻撃を仕掛けてこなかったのは、そうしなくてもヒースクリフを倒す算段がついているからではないのか。
そう思うとダレンは不安な気持ちを押し殺すことはできなかった。
その不安を煽ることになるのか、それとも打ち払うことになるのか。
二人の待つ魔魔堂の扉が静かにノックされた。
扉の音にダレンもクエンティンも顔を向ける。
「ようやく来たか……ってわけじゃなさそうだな」
「まぁ、彼ならノックせずに入ってこられるだろうしね」
二人は互いに顔を見合わせる。わざわざノックをする相手に不信感を抱いたからだ。
今が平時ならば来客なんて変わったことではない。何しろここは魔法具を扱う店なのだから。
しかし今は戦闘の最中。
わざわざここを訪ねてノックをする人物がいるとは考えづらい。
扉にはクエンティンのかけた防御の呪文が施されている。合言葉を知る者しか開けることはできず、当然ヒースクリフは知っている。
ダレンとクエンティンが何かしらの罠を警戒するのは当然だった。
王都の西。大通りの真ん中に、ヒースクリフ派の魔法使いたちが集団で作業をしている場所があった。
手押しの荷車に藁を敷き詰め、それに火をつけている。そのままでは白くなってしまう煙に魔法をかけて黒煙を生み出している。
「あの……マーク隊長。本当にこんなことをしていいんですか? わざわざ敵に位置を知らせるような真似をして」
燃料となる藁をひとまとめにしながら青年が聞く。魔法騎士団時代、マークの部下だった男だ。
マークは王宮のある方角を見上げる。ここからでは建物が邪魔をして、王宮の姿をはっきり見ることはできない。
しかし、騒ぎが起こった気配は感じ取っていた。その様子からマークはヒースクリフが作戦の第一段階を成功させたことを察する。
「いいんだよ。俺たちの目的はレオンとディーレインを一対一にさせることだ。こうして目立っておけば相手の注意を引ける」
そう言うとマークは他の魔法使いたちに藁をもっと高く積み、火をさらに大きくするように指示を出した。
「大丈夫でしょうか。悪魔に憑かれたという魔法使いたちが集団で攻めてきたらヤバいんじゃ」
青年はなおも不安そうな顔をしているが、マークは特に気にしている素振りを見せない。
同時に八箇所で黒煙を焚いているため、複数の場所に敵が張り込んでいることに相手も気付いているはず。
冷静で慎重な指揮官がいれば、うかつに戦力を分散させることはないかもしれない。
しかし悪魔は違う。人間を侮っているやつらなら、必ず一人ずつバラけてやって来るだろうという確信がマークにはあった。
「それはないだろう。アイツらの目的はヒースクリフが奪った王冠だ。それをいち早く探して取り返すなら分かれた方が効率的だしな」
二人が話している間にも荷車の上の藁はメラメラと燃えている。
そろそろ衛兵たちがこちらへやって来てもいい頃だとマークが思っていると――
「報告! アーサー派の魔法使いたちがこちらへ来ます!」
見張りに行かせていた者が声を上げて戻ってきた。
よし、とマークは手のひらを拳で叩くと、
「お前ら、火はもういいぞ。悪魔は俺が相手をする。お前たちは他の衛兵を引きつけてくれ」
と指示を出した。
その頃には「飛行」魔法を使った敵の魔法使いたちが建物を飛び越えて姿を見せていた。
マークは腰に差した剣に手を伸ばし、魔力を溜める。
「やるぞ、ファルトス」
その声に返事はなかったが、マークは心の中で気持ちが重なるのを感じていた。
現れたアーサー派の魔法使いたちは皆、空中で杖を抜き、魔法を構築している。火、風の遠距離魔法が多い。
その魔法が自分たちに届く寸前までマークは待った。そして、あと少しで魔法が当たってしまうというところで剣を引き抜く。
「炎閃」
言葉と共に繰り出される斬撃。その剣にはマークが溜めた魔力が込められていた。斬撃は魔法にぶつかり、それを切り裂く。
切り裂かれた魔法は火に包まれ燃えていく。
自分の生み出した魔法が燃えるという状況にアーサー派の魔法使いたちは戸惑い、動きが一瞬止まる。
マークの斬撃はそれだけでは終わらなかった。切り裂いたところから生まれた炎は円を描くように広がり、空中にいる魔法使いたちに襲いかかる。
「ぐあっ」
それを浴びた魔法使いたちは痛みで「飛行」を維持できずに、地面に落ちる。
辛うじてかわした他の魔法使いがマークに標的を絞り、追撃しようとするが動きが半歩遅い。
その時にはすでにマークは飛び上がっており、突きを繰り出していた。
空中で繰り出される突きの連撃。
その一つ一つが炎を纏い魔法使いたちを襲う。
マークが地面に着地した頃には襲ってきた魔法使いたちは皆、地面に倒れていた。
「火を消してやってくれ。その後は拘束して後方に……誰も死なせるな」
マークが指示をすると、後ろで見ていたヒースクリフ派の魔法使いたちが倒れたアーサー派の魔法使いたちにかけよる。
マークが倒した者の中に動ける者はもういなかった。
誰も死んではいない。
マークは剣を収め、残党がいないか確認した。
今の中に悪魔がいないことはわかっていた。悪魔がいればこんなに容易く片付くことはなかっただろう。
第一陣に悪魔がいなかったのならば悪魔はそもそもここに来ていないか、それとも隠れてこちらの出方を窺っているかのどちらかだ。
恐らく後者だろう。
マークは自分の読みを信じて警戒を解かなかった。そしてその読み通り、その後すぐに悪魔は姿を現した。
「人間のくせに、なかなかやるようだな」
突如として宙に現れたソイツはマークを見下ろして笑う。マークは剣に手をかけたまま、来訪者を見上げた。
「総員退避……ここは俺に任せろ」
現れた悪魔から決して目を離さずにマークは告げる。何が起こるのか理解したその場にいた魔法使いたちは、すぐに指示通りに避難する。
「よし、遊ぼうか小僧」
そう言って宙から降りてくる悪魔。
マークの前に現れたのはア・ダルブだった。
◇
上空から降りかかる燃えた岩の塊をオードは辛うじて避けた。
逸れた岩はそのまま建物にぶつかり、倒壊させる。岩から燃え移った火が建物に燃え移るのをオードは逃げながら見ていた。
「おいおいどうした? 挑みに来たんだよな、人間。だったら何故逃げる?」
楽しくて仕方がないといった様子でオードを追いかけ回しているのは悪魔の一人である。
燃えた岩を生み出し続ける彼女からオードは逃げ回るしかなかった。つい先程までオードはマークと同じように別の地点で藁を燃やして陽動していた。
そこに現れたのが彼女だ。
兵士を引き連れず、たった一人で現れた彼女は突如として巨大な燃える岩、「隕石」の魔法を発動させた。
一瞬の間に出現した燃え盛る岩に対抗できる者は、その場にはいなかった。
藁を積んだ荷車は粉々に、さらにその魔法の衝撃で付近のいくつかの家が倒壊する。
その状況に分が悪いと判断したオードは、精霊の魔法を行使して注意を引きつけた。
味方の魔法使いたちとは逆方向に走り、一人で悪魔の魔法に対処する。
「おいおい、どうしたんだよ人間。お前、精霊の主人だろ? 魔力でわかるぞ。なのになんで攻撃してこない」
悪魔の言う通り、オードはただ逃げ続けるだけだった。
街の入り組んだ道を走り回るが、決して撒こうとする動きではない。
時折後ろを振り返っては悪魔の位置を確認している。
「ああ、なるほど」
悪魔は納得して歩みを止める。ちょうどオードも逃げるのをやめた。悪魔は周囲の建物を見渡す。
先程まで通っていた道にある建物よりも、街並みが豪華になったように見える。
「貴族連中の家……か」
呟く悪魔にオードは頷く。
「そうさ、ここならどれだけ暴れても住人に被害は出ない」
オードが逃げ回ったのは王都に住む人たちに危害を加えたくなかったからだ。
アーサーを止めるために始まった今回の作戦。開始するよりも前にヒースクリフ派の魔法使いたちは何も知らない王都の住人たちに避難を呼びかけている。
王子同士の権力を巡った戦いに国民を巻き込むわけにはいかないという、ヒースクリフの考えがあったからだ。
オードが最初に藁を燃やしていた場所。そこはまさに平民が住む地域だった。商店が立ち並び、大通りに面していて目立つために陽動はそこで行う方が効果的だった。
しかし戦闘は違う。
付近の住人たちはすでに避難しているか、アーサーの戴冠を見に広場に集まっていて無人だっただろう。だが建物があった。戦闘で壊れた建物は時間をかけなければ元に戻らない。
戻るまでの時間、そこに住んでいた人たちに苦痛を強いることになる。
オードは最初から、陽動が成功したら貴族たちの屋敷が建つ王都の中央におびき寄せるつもりだったのだ。貴族たちは皆、アーサー派かヒースクリフ派に分かれている。
この騒動の原因も知っていて、当事者とも言えるだろう。屋敷が壊れても別荘や頼る伝があるだろうし、平民を犠牲にするよりもいいというオードの考えだ。
まんまとおびき寄せられた悪魔だが、その表情は先程よりも高揚している。
オードが逃げるのをやめたということは、これから戦闘が始まるということ。それは彼女にとって朗報と言える。
悪魔にも性格は様々あるが、激しい戦闘を好むという点において彼女の右に出る者はいない。
悪魔は頭上に「隕石」を作り出す。
オードは覚悟を決めて杖を構えた。
「おい、人間。せっかくだ、お前の名前を聞かせろ」
「悪魔に人間的な決闘の慣習を守る意思があるとは思わなかったね。王都出身貴族、オード・マグナガルだ」
ニカッと悪魔が笑う。
その笑みが余裕の表れなのか、精神の昂りなのかオードにはわからない。
不気味な笑みだった。
「いいぜぇ。せいぜい知恵を絞って戦ってくれ。狂気の悪魔、ア・ドリスだ」
王都の中央、東寄りの貴族地域でオードとドリスの戦いが始まった。
◇
「あぶない!」
叫んだルイズは手を伸ばし、一人の魔法使いを突き飛ばした。
その魔法使いの背後に敵が忍び寄り、不意打ちで命を刈り取ろうとしていたからだ。
間一髪。まさにそんなタイミングで振り下ろされた刃の魔法は、倒れた魔法使いとルイズの上を通り過ぎた。ルイズはすぐに身を起こし、助けた魔法使いを抱えて距離を取る。
「大丈夫ですか? ここは私に任せて、あなたはダレンのところへ向かってください」
突然のことに萎縮してしまったのか、ガタガタと震えている魔法使いは辛うじて頷く。
ルイズの目から見てもかなり若い魔法使いだった。
まだ学院を卒業したてなのではないかと思えるくらいだ。勇ましく戦いに参加したはいいものの、まさか自分が襲われるとは思ってもいなかったのだろう。
ルイズはその魔法使いが離れるまで敵から目を逸らさないようにした。
つい先程までこの場所に敵の姿はなかった。襲撃者は突如として現れたことになる。
「転移魔法……あなたがア・シュドラね」
ルイズは目の前に立つ襲撃者……ア・シュドラを睨みつける。
彼女のことはレオンから聞いている。
五年前の王都襲撃の首謀者で、転移魔法を持つ実力者。五年前は学院の女教師、アイリーン・モイストの体を乗っ取っていたらしいが、今のシュドラはまるっきりの別人である。
小柄で可愛らしい顔をしているものの、そこに作り出される表情は酷く不気味にも見える。
何より、彼女が持っている武器。魔法で作り出された両手持ちの大きな鎌が、邪悪さを強調しているようにルイズには見えた。
「いかにも、私がア・シュドラだ。我が主君の命により、お前たちを殲滅する」
そう言ってア・シュドラは鎌を構える。当然ながら交渉の余地はない。
走り出したシュドラに合わせてルイズも迎え撃つ。振り下ろされた鎌をルイズは体を後ろに反らせて避けた。
鎌の切先がルイズの前髪を数本、はらりと落とす。ルイズは怯まずに両手に魔力を集め、縄のようにして、それをシュドラに絡ませる。
縄はシュドラの両足を絡め取り、動きを封じようとする。
シュドラはすぐにそれを切り落とした。
「小賢しい真似を。力では勝てないから小細工か」
切られて落ちた縄は地面に溶けるように消えていく。
「おあいにく様、私は色々と考えて戦うのが好きなの……でも、力で勝てないとは言ってないわよ」
ルイズはニヤリと笑う。
その瞬間、シュドラの立つ地面から再び縄が飛び出した。
今度は先程よりも太く長い。地面から現れた縄はシュドラの体に絡みつき、地面と連結する。
その無数の縄に一時的にシュドラは身動きを取れない状態になった。
「なに?」
突然のことにシュドラは驚く。
彼女が切り落としたはずの縄は実はルイズの罠だった。
地面に消えていくように見せかけて、ルイズは魔法を遠隔で操作したのだ。
シュドラを拘束している間にルイズは別の魔法を構築する。極大の水の魔法だった。
大きな渦を巻く水がルイズの前に集まり、まっすぐにシュドラ目がけて放たれる。
水は身動きの取れないシュドラを呑み込み、竜巻のように大きくなる。
今のルイズにできる最大限の魔法ではあるが、それだけで勝負が決まるほどシュドラは弱くはない。
魔力を高め、一瞬のうちに爆発させてその水の中から抜け出してくる。
「なるほど。力がないと言ったことは撤回しよう」
ルイズの攻撃はシュドラにとって予想外だった。まさか人間にこれほどの力があるとは思っていなかった。
しかし、彼女にとって脅威と呼べるほどでもない。
「確かにお前は強いようだ。悪魔の一人や二人なら倒せるかもな。だが、お前の目の前にいるのは悪魔の中でも選りすぐりの強者。お前たちに勝ち目はない」
言い切るシュドラにルイズは呆れた顔になる。
「聞いていたよりもずいぶんお喋りね。余裕の表れかしら? 言っておくけどこっちにだってちゃんと作戦はあるわよ。ほら、さっさと戦う準備をしなさい」
そう言ってルイズは構えるが、シュドラは彼女の言葉に呆然としているようだった。
「理解できん。お前ほどに力があれば実力の差にも気付くはず。それでも向かってくる理由はなんだ。どこからそんな希望を持てる」
立ち尽くすア・シュドラを前にルイズも攻撃を仕掛けずにいた。
◇
王都西の商店街。そこは平時であれば貴族も平民も足を運ぶ賑わったところだった。
しかし、内戦が始まった今となっては見る影もない。客など当然寄りつくはずもなく、店の主人たちもヒースクリフ派の魔法使いたちの説得により避難している。
ただ一つ、ボロボロの外観でありながら多くの魔法使いが足繁く通う魔法商店「魔魔堂」を除いて。
その店主であるクエンティン・ウォルスは目の前で心配そうに貧乏ゆすりをする男、ダレンに声をかける。
「そんなに気を張り詰めていても仕方ないさ。僕たちに今できるのは気長に待つくらいだろ」
「それはわかっている……わかってはいるが、落ち着かないんだよ」
二人が待っているのはこの国の第二王子にして、彼らが担ぐ旗頭でもあるヒースクリフだ。
ダレンは窓から見える景色を眺めながら少しだけ後悔し始めていた。
今回の作戦を考えたのはレオンとクエンティンである。そうでなければ主人であるヒースクリフに王冠の奪取なんて危ない真似をさせるわけがない。
いや、後悔などしても遅い。止める機会などいくらでもあった。最後まで反対することもできたのだ。
結局自分はヒースクリフの覚悟に押されたのだ。ダレンの胸中は自責の念でいっぱいだった。
作戦といっても大したことではない。ヒースクリフがアーサーの不意をつき、王冠を奪取する。
そして、風精霊の力を使い姿を隠して魔魔堂まで逃げてくる。
ヒースクリフを魔魔堂で匿いながら、他で陽動して敵戦力を拡散させ、ディーレインとレオンが一対一で戦えるようにする。
それが作戦の全貌だった。
ヒースクリフはまだ来ない。王都には先程から戦闘音と思われる轟音が響いている。
その音がダレンの不安を駆り立てるのだ。
ヒースクリフのことだけではない。この作戦には不安要素がいくつもある。
「本当に大丈夫だろうか。レオンの話では奪われた悪魔の魂は八人なんだろ? それに対して、こっちには精霊王のもとで修業してきたあの四人しか、まともに戦える人間がいない。ヒースを入れても五人だ。勝ち目はあるのか?」
八人の悪魔に対して、真正面から戦える者は少ない。それも一対一で時間を稼げるかどうかというところ。
一対一では戦える者が少ないこちらが対応しきれず、何人かの悪魔が野放しになる。そうなればディーレインとレオンの一対一も難しくなる。
クエンティンはダレンの言葉を訂正する。
「戦えるのは彼らだけじゃないさ。アルガンドからの応援もある。ヒースクリフを慕って集まった仲間たちもいる。信じて待つしかない」
クエンティンの言葉にダレンは黙り込む。信じていないわけではない。
ヒースクリフに味方する貴族の大半は辺境出身の者たちだ。彼らが力を貸す理由にはヒースクリフが王位を継いだ後の、自分たちの地位の向上という打算的な考えが付随している。
それが悪いというわけではない。中には純粋にヒースクリフの力になりたいと思う者もいるだろう。
しかし、アーサーはその全てを見据えているのではないか。ヒースクリフを追ってリーンまで攻撃を仕掛けてこなかったのは、そうしなくてもヒースクリフを倒す算段がついているからではないのか。
そう思うとダレンは不安な気持ちを押し殺すことはできなかった。
その不安を煽ることになるのか、それとも打ち払うことになるのか。
二人の待つ魔魔堂の扉が静かにノックされた。
扉の音にダレンもクエンティンも顔を向ける。
「ようやく来たか……ってわけじゃなさそうだな」
「まぁ、彼ならノックせずに入ってこられるだろうしね」
二人は互いに顔を見合わせる。わざわざノックをする相手に不信感を抱いたからだ。
今が平時ならば来客なんて変わったことではない。何しろここは魔法具を扱う店なのだから。
しかし今は戦闘の最中。
わざわざここを訪ねてノックをする人物がいるとは考えづらい。
扉にはクエンティンのかけた防御の呪文が施されている。合言葉を知る者しか開けることはできず、当然ヒースクリフは知っている。
ダレンとクエンティンが何かしらの罠を警戒するのは当然だった。
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