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赤の悪魔編
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しおりを挟むレオンの出した結論。
それは悪魔の長であるア・ドルマに勝ち、ア・ドルマよりもレオンの方が強いと悪魔達に知らしめることであった。
しかし、その後悪魔との共存を成功させるには足りない物がまだあった。
それは悪魔達が人間界に住むための器であった。
仮にレオンが悪魔達の長になったとしても魂だけでは人間界に残れないという縛りはなくならない。
そして、精霊達のように人間の体に共存するという方法は使えないだろうとレオンはわかっていた。
人間達にも悪魔を体の中に入れることに抵抗があるはずで、志願してくれる者が集まるとは思えなかったのだ。
当然、無理やりに体を器として差し出せと強要するつもりはレオンにはない。
また、いくら強者の言葉とはいえ悪魔達もいい気はしないだろうとわかっていた。
悪魔の個人主義は決して悪いことではない。
精霊や人間達とは暮らしてきた環境が違うため、それが文化の違いとして現れただけだ。
悪魔に体の共有を強いるのは文化の押し付けになるかもしれないと考えていた。
そこで必要になるのは「悪魔が入れる人間以外の器」か「魂だけでも人間界に残る方法」である。
レオンはその二つをガジンとクエンティンの二人に相談する。
二人はその相談に対し難色を示す。
悪魔との共存に力を貸したくないというわけではなく、その方法を思いつかないのだ。
「悪魔の器と言っても、それは当然『魔力』が必要なわけだ。となると、ほとんどの動物は魔力を持たないから無理。……亡くなった魔法使いの遺体を使えば何とかなるかもしれないけど、遺族や遺された人のことを思うと使いたくないな。そもそも人としての倫理に反してる。となると……」
クエンティンが真剣に考えた結果、「悪魔が入れる人間以外の器」の可能性があるのは魔導人形の類くらいであった。
魔導人形とは魔道具の一種で魔力を核として作られる人形のことである。
魔力を供給すれば自動で動き出し、指示通りに動いてくれる。
その核には魔力が使われているため悪魔が入り込むこともできるだろう、というのが魔道具に詳しいクエンティンの読みであった。
そう聞くと正しく器としてピッタリの存在のように聞こえるが、実はこの魔導人形はまだこの世に存在しない。
その理論が初めて世に出たのはおよそ100年前ほどのことである。
魔法使いの研究者達が集まる学会でその仕組みが発表された時、人々は大いに期待した。
しかし、その実際は複雑すぎる魔法式を「印」として書き込むことができず、核となる魔力を結晶化することもできずにいる。
つまり、机上の空論。
都市伝説の類に近い存在なのだ。
「でも、僕は魔導人形はできると思ってる。本気で取り組めば十年後には実現してみせるよ」
意気揚々と告げるクエンティンであったが、その目はすでに技術者の者に変わっていた。
学院内でも「天才」の呼び声が高かったクエンティンであっても実現できる可能性があるのは十年後。
とうてい今すぐには使えない代物であった。
そして、もう一つの方法「魂だけでも人間界に残る方法」に苦言を呈したのはガジンである。
レオンとしてはこちらの方が望みがあった。
精霊達がアルガンドの試練の間で暮らしている以上、何かしらの方法があると考えたのだ。
試練の間には人間は一人も住んでいない。
それなのに、精霊達はそこに集い暮らしている。
悪魔にも同じような場所を作れるのではないかとレオンは考えていた。
しかし、
「試練の間は何百年も前に精霊と当時の人間の間で契約が結ばれてできたと言われている。しかし、その契約の詳細な内容や方法は伝えられていないのだ」
ガジンの言葉はレオンの期待を打ち砕く物だった。
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