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課外授業編
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しおりを挟むルイズ達が洞窟内をさらに探索し、他の三人の教員とその班員の生徒達を全員見つけて合流した頃、洞窟内に鐘の音が聞こえてきた。
生徒の代表が持つ魔法の笛と同等の魔法がかけられた鐘の音は課外授業の終了の合図である。
その鐘の音を聞き、一同が一番近い洞窟の出口から外へ出ると山は夕日に照らされて真っ赤に染まっていた。
「わぁ、キレイ」
ミアをはじめとした女子生徒達はその姿に瞳をキラキラと光らせて感嘆の声を上げ、男子生徒達は何も言わなかったがその景色に魅入っていた。
そこに浮遊の魔法で空を飛ぶレオンが現れた。
その後から歩いてやってきたのはルイズ達と同じ洞窟内にはいなかった引率の魔法使いとその生徒達である。
「皆、ご苦労様。なんだかすごい大きな洞窟を見つけたみたいだね。魔力が集まってたからこっちから来ちゃったよ」
レオンは学生達全員に向けて労いの言葉をかけて、それからルイズ達に向かって軽く会釈する。
鐘の音を鳴らす少し前に残っていたもう一つの班がレオンの元に早めに帰還していたために、ルイズ達のことを迎えに来たのだ。
レオンの元にルイズが近づき、学生達に聞こえないように耳打ちをする。
「まさか、この坑道を掘ったのはあなたじゃないでしょうね? 子供達を楽しませるために」
ルイズは疑うような目と少し棘のある言い方でレオンを問い詰める。
なにせ、五組の班がそれぞれ違う入り口から入り、日が暮れる頃にようやく合流できるほど大きな洞窟である。
もしもこの洞窟が人の手によって作られたものならば一番怪しいのはレオンだった。
クルザナシュの領主であるレオンが課外授業のために既に見つけていた鉱山を生徒達に探させたのではないかとルイズは思ったのだ。
仮にそうであったとしてもレオンを責めるつもりはないが、一言相談くらいして欲しかったと思っているのだ。
しかし、レオンは首を振る。
「僕じゃないよ。僕だって驚いてるんだから。まさかこんな大きな洞窟があったなんて……」
レオンは本当に何も知らなかった。
最初に街の住人が発見した洞窟を探索して以来、レオンはこの西の山で鉱物を探すような真似は一切していなかった。
課外授業で使用するために西の山を空から観察し、危険な生物がいないかなどを探知はしていたのだが空からでは洞窟の入り口すら発見できていなかった。
学生達が一番に発見したという喜びを得られるようにあえて何もしなかったのである。
「それに、不思議なのはこの洞窟だけじゃないんだ」
レオンはそう言ってから先に合流していたもう一つの班の引率の魔法使いを呼び、その手に持っていたものをルイズに見せるように言った。
「なにこれ?」
ルイズは差し出された物を手に取る。
刃の部分も柄の部分も全て金属で作られたつるはしのようなものだった。
酷く錆びていて、随分と古い物のように思える。
「クラバースさんの班が見つけたんだよ。オルガナイトで作られた魔道具らしい」
クラバース、というのはその班を率いていた引率の魔法使いである。
クルザナシュの住人でエイデンと共にこの課外授業の補助を申し出てくれた人物だった。
クラバースが生徒を連れて散策したのはルイズ達とは全くの反対方向であった。
生徒が使った鉱物探知が指し示した場所がそこだったのである。
光の指す方へ進むと、洞窟は最も簡単に見つかった。
その洞窟がただの洞窟ではないことはクラバースにはすぐにわかった。
なにしろ、入り口に鉄でできた扉が付けられていたからだ。
岩をくり抜いて作られた人工的な建物であった。
ただ、扉はやはり酷く錆び付いていて、昨日今日に造られたような物ではなく。
下手をすれば何十年、いや何百年か経っていてもおかしくない様子だったという。
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