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樫野 珠代

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「かんぱ~い!」
「おめでとう!舞。22歳になっちゃったね~」
「これで全員、22歳じゃん!」
いいのか?周りは卒論で躍起になって頑張ってるってのに・・・
いや普通、ありえねぇ・・・
「こんなに騒いでいいのか?」
「ちーっと早いけど、クリパも兼ねてるからいいんじゃない?」
「いや、そういう問題じゃなくて・・・」
「もう!楓は真面目すぎだって」
「お前達が不真面目過ぎなんだろ!」
「そんなに私の誕生日を祝いたくないの?悲しぃ~」
「いや、舞の誕生日を祝うとか、祝わないとかじゃなくて・・・」
「可哀想に・・・。楓、舞を傷つけた責任取れよ~」
あぁ、駄目だ。
この連中が相手じゃ、勝ち目ない・・・
もうやってられっか!
「わーかった。今日は朝まで飲むぞ!!おまえら寝たら承知しねぇからな!」
「あ、楓が切れた・・・」
「うぉ~!飲むぞォ!」
「うわ、健もテンション上がったぞ・・・」
「この二人が目覚めたら終わりね・・・」
「おら、もっと盛り上がれよ!奈緒、飲んでるか!?」
「楓、す・て・き!うふ」
「キモッ!寄るな!おま、どこ触ってるんだよ!」
「あ、奈緒に捕まってる。楓の貞操の危機だな・・・」
「そういや・・・舞、おまえ彼氏いるんだって?」
「え?あ・・・うん。楓に聞いたの?」
「おぉ、この前な。しかし、ちょっと驚いたな。」
「なんで?おかしい?彼氏がいちゃ・・・」
「いや、てっきりおまえは楓狙いだと思ってたからさ」
「あははは。健ちゃん、おもしろ~い」
「まぁ、こんだけお互いを把握しすぎると今更って感じにもなるかもな~」
「ん~?健ちゃん、一人で解決しすぎぃ!」
「・・・舞、もしかしてもう酔ってるの?」
「まっさかぁ~、そんなことないよ~」
「はぁ・・・酔ってるし・・・おい!楓、お前の相方、もう出来上がってるぞ!」
「なんで俺に言うんだよ。健が相手してやれよ。俺は飲みに徹する!」
「あ、じゃあ私も楓と一緒に飲むぅ。健ちゃん、舞のこと頼むわねぇ~。楓ぇ、私と飲もうよぉ~」
「奈緒、あっちへ行け!健、ついでに奈緒の相手も任せた!」
「それは俺に地獄へ行けと言ってるようなもんだ。奈緒は無理!亮、任せた!」
「俺は対象外だから、無理だろ・・・」
「じゃあ、やっぱり奈緒は楓になるな、がんばれよ~」
「勘弁してくれよ~」
「か・え・で♪飲も!ね?」
「奈緒、だからお前のこの手、ど~にかしろ!手の動きが際どいんだよ!」
「やだ、感じてるのぉ?いいよ~。楓!」
「だぁ!寄るな!触るな!話し掛けるな!」
「うう・・・楓が冷たい。」
「泣き真似しても無駄だぞ・・・」
「ちぇ!仕方ない、健ちゃ~ん、お・待・た・せ!」
「うわ!来た!楓、相手しろよ~」
「頑張れ!あ、俺が舞の相手するからよ~、おまえ奈緒な」
「マジかよ~」
「嬉しいくせに!照れちゃって!健ちゃん、かわいい!」
健、悪いな・・・
舞は・・・と。寝てるよ・・・
「ほら、舞。こんなとこで寝てると風邪引くぞ。おまえ、もう帰れよ」
「・・・ん・・・・・・」
「おい!寝るな!」
「無駄みたいだね。楓んちが一番近いから、寝かしちゃえば?」
「俺はどこに寝るんだよ」
「おまえは朝まで飲むんだろ?さっき自分で言ってたぞ」
「・・・はぁ。わかったよ。」
ったく、舞の奴、寝やがって・・・
そんなに飲んでないだろう?
舞を負ぶって、なんとか我が家へ。
ベッドの上にドサッっと舞を放り込むと
「!?いたっ!なんか体・・・痛い・・・」
「やっと目が覚めたか・・・世話の焼ける・・・」
「・・・あれ?ここ・・・楓の部屋」
「お前が寝ちまうから、一番近いここに連れてくるしかなかったんだよ」
「あ・・・ごめん。でも、もう大丈夫。目・・・覚めたし」
「今さらだって・・・。ここで大人しく寝とけよ」
「え?」
「俺、また研究室に戻ることになってるからさ。ゆっくり寝とけ。じゃあな」
部屋から出て行こうとしたら舞が駆け寄ってきた。
「待ってよ。ねぇ?私にプレゼント、ないの?」
「はぁ?」
「だって今日は誕生日だよ。大事な舞様に何もないの?」
「ない!」
「え~、ケチ!友達甲斐のない奴ぅ!」
「ほぉ~。俺の時は何もなかったのに自分の時だけ欲しがるなんて、そっちの方がどうかと思うけど?」
「う・・・そう言われれば・・・」
お、怯んでる・・・珍しい・・・
いつもならもっとがーっと言ってくるのに。
「なんだよ、今日はやけにシオラシイじゃん。彼氏となんかあったのか?」
「なんか・・・楓、人の不幸を喜んでない?」
「ないない、聞いてやるぞ。」
久しぶりに舞の不幸話が聞ける・・・
いつも幸せ話ばっかだもんな、貴重だよ。
とりあえず冷蔵庫からビールを取り出し、舞に1本。そして自分に1本。
軽く舞と缶をカツンと合わせて乾杯をする。
「別に・・・話す事なんてない!」
「なんだよ~、せっかく俺が相談相手になってやるってのに」
「いい!そんなに楽しそうに聞かれたくないもん!」
「そんな、俺がいつ楽しそうに・・・」
「今!目の前に笑いながら聞いてる楓がいる!」
「これが元顔なんだよ。で?早く話せよ。もったいぶらずに・・・」
「ホントに話す事ないんだって・・・」
「何、出し惜しみしてんだよ。それに研究室で俺を待ってる奴がいるんだ。早くしろよ」
舞が急に黙った。
珍しい。いつもはずっと笑いが耐えないのに・・・
ホントに今日は様子が変・・・
そういや誕生日って彼氏と普通、祝うんじゃないか?
だからか・・・会えないから・・・
「舞・・・彼氏と・・・」
「・・・・・の?」
「え?」
小さい声で何かを囁く舞。
今日の舞は、弱々しく見える。
「だから・・・私よりも他の研究室のメンバーが大事なの?って聞いてるの!」
「は?なんだ、それ」
「だって、さっきの言い方、そんな感じだった」
「さっき・・・って。別にそんな意味じゃねぇし。おまえ、今日おかしいぞ。やっぱりなんかあったんだろ?話せよ。すっきりするかもしれないだろ?」
「楓に話しても余計に惨めになるもん・・・私、帰る!」
そう言って立ち上がり、ビールの缶をテーブルに置いて舞は玄関へ向かった。
なんなんだ?一体・・・
「待てよ・・・落ち着けって」
舞の腕を引っ張り、ソファーまで連れて行き、座らせた。
舞の隣りに座り、彼女の方へ体ごと向いた。
「俺の態度が悪かったなら謝るから、な?真剣に聞くから。舞、ごめん。で?話してみろよ」
それでも舞はだんまり・・・
俺にこれ以上、ど~しろってんだ・・・
こういうのが苦手なんだよ。
女は何を考えてるのか、全く理解不能。
舞は・・・少なくとも今までの舞は、こんな奴じゃなかった。
だから付き合い易かった。
なんでも気軽に話せて、お互いに相談したり、バカ言ってふざけたり。
舞はなんでも俺のこと、わかってくれて。
俺もたぶん・・・他のメンバーよりかは舞のことわかってやれてると思ってた。
でも今、目の前にいる舞は・・・女だと改めて認識してしまう存在に変わった。
理解不能な存在に。
はぁ~っと重い溜息をついた。
とたん、舞はびくっと体を大きく震わせてた。
よく見ると、小刻みにずっと震えていた。
「お、おい。寒いのか?あ、暖房入れてねぇ。震えてるじゃん。ちょっと待ってろ。すぐに暖かくなるから」
とりあえずリモコンを探そうと立ち上がった。
「寒い!寒いよぉ・・・楓」
俯いて呟く舞に俺は振り返った。
舞は・・・泣いていた。
マジかよ・・・
とりあえず暖房を入れ、舞の傍へ戻った。
ティッシュを何枚か舞に差し出すと、それは素直に受け取った。
「舞・・・頼むからワケを説明してくれ。でないと、俺はどうしていいのかわからん」
「バカ・・・」
「・・・は?」
いきなり、『バカ』かよ・・・
しかもまた泣き始めるし・・・
お手上げだ・・・誰か、代わりに聞いてやってくれ・・・
「あ~、もう。ど~すりゃいいんだよ!」
とりあえず、ティッシュをもう数枚、渡す。
「泣くなって・・・」
舞の頭をポンポンと軽く撫でながら、途方に暮れていた。
するといきなり手を掴まれた。
「プレゼント、頂戴・・・今すぐ」
舞は俯いたまま、俺に向かって言ってきた。
「今すぐったって・・・用意してねぇぞ。なんか欲しいもんがあるのか?あと数時間待ってろ。一緒に買いに行ってやるから。な?だから泣くな」
「そうじゃない・・・違う。今、欲しいの!すぐに欲しいの!」
「だから・・・」
「楓の・・・楓を、頂戴。楓の愛が欲しい。私だけの楓でいて欲しい。楓の傍にずっと居たい。」
「ま、舞?ちょ、ちょっと待て。落ち着け」
落ち着けと言いつつ、自分が落ち着いてないのが明らかで・・・
今、舞はなんか、どでかい事言ってなかったか?
慌ててる俺にさらに畳み掛けるように舞は詰め寄った。
「好きって言って欲しい。愛してるって言って欲しい。抱きしめて欲しい。無理?」
「お、おい」
いきなりの告白。
相手は舞だぞ?
今まで恋愛対象にしてなかった奴だぞ?
しかもなんか圧倒されてるし・・・
「私のこと、嫌い?」
「嫌いってワケじゃ・・・」
「じゃあ、好き?」
「いやぁ、それも・・・」
「楓!」
「だ、だからイキナリ言われても・・・」
「イキナリしか言えないじゃない!だって、ずっと一緒に居て、ずっと傍に居て・・・。でも全然そんな雰囲気にならないし。イキナリにしかならないじゃない。」
「ま、まぁ。そうだけど・・・」
なんか俺って弱くねぇ?
舞は、言い出したら止まんないからなぁ・・・
しかも変なところで極端で、頑固で・・・
それがわかってるからなおさら返事に困る。
「楓の気持ち、聞きたい!言って?」
「ちょ、ちょっと待てよ。おまえ、彼氏いるだろ?二股かよ」
「違う!彼氏なんていない!」
「はぁ?だっておまえ・・・」
「楓が好きなのにいるわけないじゃん!楓に・・・楓に気にして欲しかったから、だから嘘ついた・・・でも、後で後悔した。楓、鈍いってこと、忘れてた。鈍い楓にそんな遠回しな態度取っても意味がないって気付いたから。でも、言った手前引けなくて・・・作り話してたの・・・」
嘘かよ・・・
しかも何気に俺、貶されてないか?
「なんとか言ってよ、楓」
言ってと言われてもなぁ・・・
「俺は、舞のこと・・・そういう対象にみてなかったし・・・」
「・・・かえで・・・」
「ずっと友達だとしか思ってなくて・・・舞をそんな目で見たことないからさ」
「・・・楓・・・残酷」
「残酷?」
「ずっと一緒に居てくれるし、いつでも助けてくれる。だから私、ちょっとは私のこと気に入ってくれてるのかなって思ってた。他の女の子よりも優しくしてくれた。でも、それって結局、思わせぶりな態度でしかなかった。残酷だよ。それだったら、嫌いって言ってくれた方がマシ。きっぱりと忘れることが出来るのに・・・。」
何も言えなかった・・・
いや何を言えばいいかわからなかった・・・
俺はただ、舞のこと、大事な友達だから一緒にいて、助け合って、気を使って・・・
っつーか、それを残酷だと言われちゃ、もうなんかやってらんねー・・・
少しヤケになってた自分。
少し酒に酔っていた自分。
少し混乱してた自分。
舞を傷つけるとわかっていても、止められなかった。
「わーったよ。言えばいいんだろ?俺はおまえが嫌いだよ!」
「・・・っ。ばいばい・・・」
涙を流しながら、舞は出て行った。
俺は・・・・追いかける気にならず、研究室に戻る気もしなかった。
気がついたら、朝になっていた。
俺は・・・舞を失ったのか?
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