【本編完結】私の居場所はあなたのそばでした 〜悩める転生令嬢は、一途な婚約者にもう一度恋をする〜

はづも

文字の大きさ
117 / 133
最終章 夫婦と、家族

14 ジーク視点 君たちがやると可愛いんだけどね

しおりを挟む
 シュナイフォード邸到着後、少し休んでから兄妹が使う客室を決めた。
 ベッドが2つあって、なるべく僕ら夫婦の部屋に近い場所。
 本人たちの希望も聞きつつ、そんなところを選んだ。
 7歳のリーンは一人でも大丈夫かもしれないけど、5歳のエーリカはそうもいかない。
 一人にするのは酷だろう。
 兄と一緒かつ、僕らにもすぐに会いに来れる位置がいいだろうと考えて、こうなった。



 泊まると決まった時間も時間だったから、間もなく夕食をとることになった。
 食事には、なにやら賑やかなワンプレートが用意された。
 お子様ランチといって、アイナが提案したそうだ。
 夕食だからランチじゃなくてディナーなんだけど、そこは気にしなくていいんだろう。
 丸く盛られたライスの上に小さな旗が立てられていたりして、見ていて楽しくなる。

 大人の僕らの前に出されたプレートも、内容は大体同じだ。
 エーリカと僕が同じ量で満足するはずがないから、それぞれの体の大きさに合わせて調整されている。

 アイナの影響でうちでは米もよく食べるけど、あまり一般的ではない。
 だから、お客さんがいるときは、ライスとパンのどちらでも選べるようにしてある。
 子供達の口に合うだろうかと心配して見守っていると、どうも米を気に入ったらしく、美味しいと繰り返していた。
 これには、米好きのアイナもにっこりだ。
 また食べたいと言う二人には、米を持たせて帰すことになった。



 食休みをして、少し遊んで。
 そうしていると、あっという間に夜になった。
 僕らにしてみれば、これからがゆっくり過ごせる時間帯。
 ある意味では、1日の本番であるとも言える。
 それは大人の話であって、まだ幼い子供たちにとっては、そろそろ1日を終える時間だ。
 このぐらいにはお風呂を済ませ、早めにベッドに入れるようにナターシャ姉さんからも言われている。
 入浴の話になったら、アイナとエーリカが一緒に入りたいと言い出した。
 アイナだけには任せられないため、エーリカの侍女にも見守ってもらう方向で話がまとまった。

 我が家には、大人二人でも一緒に入れる大きさの湯船がある。
 大人と子供であれば、スペースにはかなり余裕がある。
 それをわかっているアイナが、「リーンくんも一緒に入る?」なんて言い出したものだから、勘弁してあげてと口を出した。
 親族の大人と子供とはいえ、男女は男女。
 淑女として褒められたことではないし、何より、リーンが可哀想だ。
 ……アイナには、後で僕から話しておこうと思う。

 血の繋がりはなくたって、アイナとエーリカが一緒にお風呂に入るのはわかる。
 アイナはエーリカを可愛く思っているし、エーリカだってアイナに懐いている。
 妻と姪っ子が仲良くお風呂に入るなんて、なんとも微笑ましいじゃないか。
 親族なのだから仲良くすべきとまでは思わないけど、仲がいいにこしたことはない。
 そこまではわかるんだ。可愛らしいとも思う。
 だけど、妻にこんなことを言われるとは思っていなかった。

「じゃあ、次はジークとリーンくんだね」

 お風呂上がり特有の香りを漂わせた妻は、当然のようにそう言った。

「……リーンは、僕がいなくても大丈夫なんじゃないかな?」

 リーンと一緒に入浴するのが嫌なわけじゃない。
 嫌じゃない、けど、なんとなく気が進まない。
 お姉さんと女の子だと可愛いけど、大人の男と生意気な少年の組み合わせに、可愛さや微笑ましさを見出すことができない。
 基本的に、この国には複数人で入浴する文化はないから、余計にそう感じるのだろう。

「一人でも大丈夫かもしれないけど、せっかくのお泊まりだし……。リーンくんはどう?」

 リーンは僕に若干の敵意……というか、ライバル心を抱いている。
 そんな相手と一緒は嫌なはずだ。きっと、彼は首を横に振る。
 そう期待してリーンに視線を送れば、

「俺は、ジークベルトさんと一緒に入りたいです」

 と言い出した。絶対嘘だ。
 アイナが喜ぶとわかっているから、こう答えたに違いない。
 仲良しで素敵、とアイナが笑顔を見せた。騙されている。

 アイナたちが使ったお湯は流したそうだ。
 同じ湯船をもう一度使うとなると、準備に時間がかかる。
 だから小さい浴室を一人ずつ使ったほうが……と流れを変えようとしたものの、失敗。
 次は僕らが使うと聞いた使用人たちが、既に作業に取り掛かっているらしい。
 張り切っているらしく、中断しろ、一人で入るとも言いにくい。


 結局、男二人で入浴することになった。
 僕と二人になったリーンは、アイナがいないのをいいことに生意気な面を見せてくる。
 俺だってもっと大きくなるとか、俺が大人になる頃にはおっさんはもっとおっさんになってるとか、なかなかに好き勝手なことを言う。
 ちなみに、おっさんというのは僕のことだ。

 アイナがいる時は大人しくしていたくせに、叔父の僕にはこの態度。
 次に勝負をするときも手加減などせず勝利を収め、大人の威厳を見せつけてやろう。
 リーンは僕に挑んでくることが多いから、早ければ、明日にでも機会があるだろう。
 大人げないとか、そんなことはどうでもいい。男同士の勝負なのだから。



 僕たちがお風呂から出た頃には、エーリカはうとうとしながら目を擦っていた。
 兄妹を客室に連れて行き、ベッドに寝かせる。
 本人たちが大丈夫だと言うから、二人を残して自分たちの部屋に戻った。
 そうして数十分ほど経った頃。

「お兄ちゃん……お姉ちゃん……」

 瞳に涙を溜めたエーリカと、付き添いのリーンが僕らのところにやってきた。
 身内の家であっても、ここはいつもと違う場所で、両親とも離れている。
 そんな状態だから、寂しくなってしまったようだ。
 ……うん、そうなるかなと思ってた。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

婚約破棄までの168時間 悪役令嬢は断罪を回避したいだけなのに、無関心王子が突然溺愛してきて困惑しています

みゅー
恋愛
アレクサンドラ・デュカス公爵令嬢は舞踏会で、ある男爵令嬢から突然『悪役令嬢』として断罪されてしまう。 そして身に覚えのない罪を着せられ、婚約者である王太子殿下には婚約の破棄を言い渡された。 それでもアレクサンドラは、いつか無実を証明できる日が来ると信じて屈辱に耐えていた。 だが、無情にもそれを証明するまもなく男爵令嬢の手にかかり最悪の最期を迎えることになった。 ところが目覚めると自室のベッドの上におり、断罪されたはずの舞踏会から1週間前に戻っていた。 アレクサンドラにとって断罪される日まではたったの一週間しか残されていない。   こうして、その一週間でアレクサンドラは自身の身の潔白を証明するため奮闘することになるのだが……。 甘めな話になるのは20話以降です。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

転生貧乏令嬢メイドは見なかった!

seo
恋愛
 血筋だけ特殊なファニー・イエッセル・クリスタラーは、名前や身元を偽りメイド業に勤しんでいた。何もないただ広いだけの領地はそれだけでお金がかかり、古い屋敷も修繕費がいくらあっても足りない。  いつものようにお茶会の給仕に携わった彼女は、令息たちの会話に耳を疑う。ある女性を誰が口説き落とせるかの賭けをしていた。その対象は彼女だった。絶対こいつらに関わらない。そんな決意は虚しく、親しくなれるように手筈を整えろと脅され断りきれなかった。抵抗はしたものの身分の壁は高く、メイドとしても令嬢としても賭けの舞台に上がることに。  これは前世の記憶を持つ貧乏な令嬢が、見なかったことにしたかったのに巻き込まれ、自分の存在を見なかったことにしない人たちと出会った物語。 #逆ハー風なところあり #他サイトさまでも掲載しています(作者名2文字違いもあり)

【完結】幼い頃からの婚約を破棄されて退学の危機に瀕している。

桧山 紗綺
恋愛
子爵家の長男として生まれた主人公は幼い頃から家を出て、いずれ婿入りする男爵家で育てられた。婚約者とも穏やかで良好な関係を築いている。 それが綻んだのは学園へ入学して二年目のこと。  「婚約を破棄するわ」 ある日突然婚約者から婚約の解消を告げられる。婚約者の隣には別の男子生徒。 しかもすでに双方の親の間で話は済み婚約は解消されていると。 理解が追いつく前に婚約者は立ち去っていった。 一つ年下の婚約者とは学園に入学してから手紙のやり取りのみで、それでも休暇には帰って一緒に過ごした。 婚約者も入学してきた今年は去年の反省から友人付き合いを抑え自分を優先してほしいと言った婚約者と二人で過ごす時間を多く取るようにしていたのに。 それが段々減ってきたかと思えばそういうことかと乾いた笑いが落ちる。 恋のような熱烈な想いはなくとも、将来共に歩む相手、長い時間共に暮らした家族として大切に思っていたのに……。 そう思っていたのは自分だけで、『いらない』の一言で切り捨てられる存在だったのだ。  いずれ男爵家を継ぐからと男爵が学費を出して通わせてもらっていた学園。 来期からはそうでないと気づき青褪める。 婚約解消に伴う慰謝料で残り一年通えないか、両親に援助を得られないかと相談するが幼い頃から離れて育った主人公に家族は冷淡で――。 絶望する主人公を救ったのは学園で得た友人だった。   ◇◇ 幼い頃からの婚約者やその家から捨てられ、さらに実家の家族からも疎まれていたことを知り絶望する主人公が、友人やその家族に助けられて前に進んだり、贋金事件を追ったり可愛らしいヒロインとの切ない恋に身を焦がしたりするお話です。 基本は男性主人公の視点でお話が進みます。 ◇◇ 第16回恋愛小説大賞にエントリーしてました。 呼んでくださる方、応援してくださる方、感想なども皆様ありがとうございます。とても励まされます! 本編完結しました! 皆様のおかげです、ありがとうございます! ようやく番外編の更新をはじめました。お待たせしました! ◆番外編も更新終わりました、見てくださった皆様ありがとうございます!!

【完結】一番腹黒いのはだあれ?

やまぐちこはる
恋愛
■□■ 貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。 三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。 しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。 ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。

ヒロインに躱されて落ちていく途中で悪役令嬢に転生したのを思い出しました。時遅く断罪・追放されて、冒険者になろうとしたら護衛騎士に馬鹿にされ

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
第二回ドリコムメディア大賞一次選考通過作品。 ドジな公爵令嬢キャサリンは憎き聖女を王宮の大階段から突き落とそうとして、躱されて、死のダイブをしてしまった。そして、その瞬間、前世の記憶を取り戻したのだ。 そして、黒服の神様にこの異世界小説の世界の中に悪役令嬢として転移させられたことを思い出したのだ。でも、こんな時に思いしてもどうするのよ! しかし、キャサリンは何とか、チートスキルを見つけ出して命だけはなんとか助かるのだ。しかし、それから断罪が始まってはかない抵抗をするも隣国に追放させられてしまう。 「でも、良いわ。私はこのチートスキルで隣国で冒険者として生きて行くのよ」そのキャサリンを白い目で見る護衛騎士との冒険者生活が今始まる。 冒険者がどんなものか全く知らない公爵令嬢とそれに仕方なしに付き合わされる最強騎士の恋愛物語になるはずです。でも、その騎士も訳アリで…。ハッピーエンドはお約束。毎日更新目指して頑張ります。 皆様のお陰でHOTランキング第4位になりました。有難うございます。 小説家になろう、カクヨムでも連載中です。

【完結】姉に婚約者を奪われ、役立たずと言われ家からも追放されたので、隣国で幸せに生きます

よどら文鳥
恋愛
「リリーナ、俺はお前の姉と結婚することにした。だからお前との婚約は取り消しにさせろ」  婚約者だったザグローム様は婚約破棄が当然のように言ってきました。 「ようやくお前でも家のために役立つ日がきたかと思ったが、所詮は役立たずだったか……」 「リリーナは伯爵家にとって必要ない子なの」  両親からもゴミのように扱われています。そして役に立たないと、家から追放されることが決まりました。  お姉様からは用が済んだからと捨てられます。 「あなたの手柄は全部私が貰ってきたから、今回の婚約も私のもの。当然の流れよね。だから謝罪するつもりはないわよ」 「平民になっても公爵婦人になる私からは何の援助もしないけど、立派に生きて頂戴ね」  ですが、これでようやく理不尽な家からも解放されて自由になれました。  唯一の味方になってくれた執事の助言と支援によって、隣国の公爵家へ向かうことになりました。  ここから私の人生が大きく変わっていきます。

処理中です...