【本編完結】私の居場所はあなたのそばでした 〜悩める転生令嬢は、一途な婚約者にもう一度恋をする〜

はづも

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最終章 夫婦と、家族

15 世界も立場も違うけど

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 二人を客室のベッドに寝かせて、自分たちの部屋に戻り、数十分。

「お兄ちゃん……。お姉ちゃん……」

 大きな瞳を潤ませたエーリカちゃんと、付き添いのリーンくんが使用人に連れられてやってきた。
 どうしたのかと聞いてみると、「寂しくて眠れないみたいです」とリーンくんが答える。

「おいで、エーリカ」

 ジークベルトがしゃがむと、ぽすん、とエーリカちゃんがくっついた。
 姪を抱っこして立ち上がった彼と顔を見合わせ、ちょっと困ったように笑い合う。
 やっぱりこうなるよね、って声が聞こえた気がした。

 二人がここに来ることは、なんとなくわかっていた。
 子供達だけじゃ眠れないのではと、夫婦で話していたのだ。
 日本でいう小学校低学年にあたるリーンくんはともかく、エーリカちゃんは園児の年なわけで。
 いくら身内の家だからって、お兄ちゃんと二人きりにされたら不安にもなるだろう。

「エーリカちゃん、私たちと一緒に寝る?」

 ジークベルトの胸に顔を埋めたまま、エーリカちゃんが頷いた。
 子供達だけで眠れなければ一緒に寝ればいいと二人で話していたから、特に問題はない。

 ジークベルトに抱っこされて、ぎゅっとしがみつく女の子。
 昼間も膝に乗っていたらしいし、彼は本当に姪に好かれてるみたいだ。
 5歳の子がこんな風に懐いてきたら、可愛いだろうなあ。

 リーンくんだって、ジークベルトに生意気なことを言ったりするけれど、信頼しているからできることでもあると思う。
 怒鳴ったり手を上げたりしてくるかも、なんて思っていたら、そんな態度は取れないはずだ。
 ……まだ子供だから、単純に叔父を舐めている部分もあるかもしれないけど。

 リーンくんは、妹を送り届けたら客室に戻るつもりだった。
 なんとなく一人にするのは気が引けて、ちょっと強引に部屋に入れてしまった。
 大人と子供であっても男女でお風呂はよくないと、先程ジークベルトに怒られたばかり。
 でも、同じ部屋で寝るぐらいは大丈夫……だと思う。

 私たちの部屋にあるベッドは、かなり大きい。
 大人二人はもちろん、もう一人ぐらい増えてもスペースには余裕があると思う。
 だから大人二人と子供二人で使っても、窮屈にはならない。
 ……そうなんだけど、男女がどうの淑女としてどうだのと夫にお説教されたばかりの私は、同じ失敗なんてしない。

「私はソファで寝るから、ベッドは三人で使ってね」

 ジークベルト。妻の私。ジークベルトの甥っ子と姪っ子。それぞれ7歳と5歳。
 血縁関係や子供たちの年齢を踏まえて、誰と誰が一緒なら問題ないのか、誰がいるとあまりよくないのかを考えたとき、私が抜ければ丸く収まると思った。
 ソファも上等なものだから、困ることはない。
 ジークベルトだって、ソファでお昼寝していたりする。
 だからそう言ったのだけど、どうしてか、ジークベルトとリーンくんを困らせてしまった。

 ジークベルトかリーンくんがソファを使うとか、ベッドを追加してもらうとか、男女で部屋を分けたらどうかとか。
 色々話した末に、今回は四人一緒にベッドを使うことになった。
 端から私、エーリカちゃん、リーンくん、ジークベルトの順に並んで横になる。
 私たちが寝るにはちょっと早い時間だけど、たまにはこういうのもいいだろう。

 この状況に少し興奮した様子のエーリカちゃんに、なんだか恥ずかしそうなリーンくん。
 寂しさは紛れても、今度は落ち着かなくて眠れないかも……? そう思ったけれど、そんな心配は無用だった。

 そろそろ寝ようね、とエーリカちゃんを撫でてみたら結構な早さで寝た。
 特に何もしてないけれど、リーンくんもすぐに寝た。
 二人とも寝ちゃったね、疲れてたのかな。と話して間もなく、ジークベルトも寝た。
 ……シュナイフォードの血筋の人って、みんなこうなんだろうか。

 残された私も、気持ちよさそうに眠る三人を見ていたらうとうとしてきた。
 そっと目を閉じると、世界が真っ暗になった。
 なにも見えなくなった分、みんなが呼吸をする音がはっきりと聞こえるようになる。

 なんだか懐かしい。
 ああ、そういえば……。前世では、それなりの年になるまで、親や下の子と同じ部屋で布団を並べて寝ていたっけ。
 眠れないときや怖い夢をみたとき、家族が隣にいると安心できた。
 前世の私は、置かれた環境に不満があり、家を出て行こうと思っていた。
 その気持ちも間違いではない。
 でも、もうちょっと。もうちょっとでも――家族にも、目を向けていればよかったな。

 ベッドの内側に身体を向け、ゆっくりと瞼を持ち上げる。
 大切な人たちが眠る姿を眺めてから、もう一度目を閉じた。

 世界も立場も違うけど。
 今度こそ、大切なものを大事にできたと、胸を張れるように生きることができたらって。
 強く思う。
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