藍色バース

弓川ルツ

文字の大きさ
38 / 79
第4章

十八番目の悪戯-2

しおりを挟む
浜松駅まで迅に送られて、アクアは自宅へ帰る電車に乗っていた。

窓際に座っていたが、外は真っ暗で、見える景色は街の明かりが照らす部分のみ。
アクアは窓に仄暗く反射する、電車の中の世界の自分自身を見つめていた。

愛しい。

アクアが迅に抱いている感情を表現すれば、最も相応しい言葉だと思う。
水族館で会っていた時点で、既に愛しいという感情は芽生えていたような気がする。

三崎迅。不思議だ。
何度も何度も、迅の名前を頭の中で繰り返す。

愛子の息子で実は、愛子の養子。少し前までは、名前だけしか知らなかった人物。

なのに今では、アクアの心の大部分を占めるように、大きく存在している。
と言うより、アクアの心そのものに溶け込んで、同化しているようにさえ思える。

凛也を含めて、かつて交際した数人の恋人たち。
中には、短い付き合いではあったものの、都会的に洗練されていて、モデルのような容姿の男性だっていた。

夫や昔の恋人たちの、誰に対しても抱いたことのない、強烈な想い。
全く異なる存在感。

迅には強い魅力がある。
けれど、きっとそれだけではない。

迅は不思議とアクアに「合っている」のだ。アクアは本能で迅を求めている。

ミントの言葉どおり、迅が運命の恋人であるのは、疑いようがないと思う。

迅はアクアより幾つか年下だ。
けれど、アクアは全く気にならなかった、というよりも、年齢など、どうでも良かった。

相手が迅であることが重要なのだ。

独身時代のアクアは、年下の男性など、最初から恋愛対象にしなかった。
仲間によく、アクアの考え方は古いと笑われたものだ。

アクアは、つい心の中で苦笑する。
傍から見れば、年下の恋人に溺れる愚かな主婦に違いない。

けれどアクアは迅も、アクアに相当な好意を持っていると確信している。

電車の窓の向こう側のアクアが、勝利を得たかのように微笑みかけてきた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...