Arm ~俺の下にあるアーム、もしかして世界最強!?~

Se1ene

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アルム四神編

第二話 : 地獄のような

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 先ほどまでの苦痛はどこへやら、俺は元気よく玄関を飛び出した。
飛び出してすぐの出来事。なにやら遠くから乗り物の音がした。

「よぉ......遅いから迎えにきたよ!この馬鹿孫!」

 なんと祖母がアームバイクに乗って迎えに来たのだった。
そこそこ高いアームバイクかつ、元気そうだけどもう祖母は今日で94歳だ。
因みにアームバイクとは、スピーカーアームを基に作り上げたバイクだ。
驚いたのも束の間、祖母は俺の体を持ち上げてはバイクに乗せ発進させた。
この時の俺の心境は"え、このおばあちゃん何者......!?"としか考える事が出来なかった。
法定速度ガン無視の罪悪感に苛まれながらバイクを飛ばす祖母と俺。
バイクが切る風が心地よく、街中の喧騒を抜け出し、
綺麗なアームに咲いた花々と芝生の帝国国立公園を抜けると一本の太いアームの前に止まった。
信じられない話だが、徒歩30分かかる祖母の家が、なんとたったの5分で着いたのだった。
そして、バイクを止めてヘルメットを外した祖母が口を開いた。

「さぁ、うちに上がんな。祝ってくれるんだろ?」

 他愛もない当たり前の一言だが、久々にかけられた温かい言葉に少し心がじんわりとした。
でも、俺は知っている。迎えに来てくれたとき、俺の刻印をずっと見ていた事を。

 さて、バイクから降りてヘルメットを外す。
久々に来た祖母の家をゆっくりと見上げていく。
祖母の家は、太いアームの上に建っており2階建てのログハウスのような一軒家だ。
帝国国立公園の近場だけあって、とても美しいアームで、通常のアームの中では珍しく
天然の大樹のような緑の葉と逞しい枝のようなアームが生えている。
この太いアームは、昔からここにあったようで、祖母が幼い頃からあったそうだ。
家に入るために梯子を上って行こうとしたとき、祖母から名前を呼ばれた。
返事ついでに振り返るとそこには大きな機械が地中から出てきたのだ。
 地中から出てきた機械は、エレベーターで、
それもこの世界で一番高価だとされるエレベーターがあった。
そのスマートな見た目に凝縮された技術の塊。
かつて俺は、初期段階でアシスタント技士として入ったことがあり、
この金額じゃぁ一生使う機会なんてないなと考えていた。
機械を見た時の俺は、きっと豆鉄砲を食らった鳩ような顔をしていたに違いない。
早くしないと置いていくと言われたため急いて乗り込む。
中はあの見た目からは想像し難い広さだ。
静音化されたモーターやロープの音。
初期段階では非常にうるさかったのだが、まさかここまでとは.......
感動している内に、玄関まで着いた。
祖母が木で作られた年季の入ったドアを開けて俺を招いてくれた。
ドアの奥には数人程既に人が居て、机にはたくさんの料理が並べられている。

「お邪魔します...お久しぶりです、皆さん」

 あまり最近見なかった人も居たので少しおどおどしながら部屋へと入る。
皆の反応はと言うと、まぁ予想はしていた。
視線が額と頬の刻印に刺さるのが分かる。
とても広く温かい筈の祖母の家が、急に氷河期でも来たかのような。
急に晴れた空から雪が降った時のように空気が一変した。
結果的に俺は、皆に気を遣わせてしまっていることになってしまった。
予想通りと言えど、やはりこの空間は辛い。
本当は祝わなければならないこの日。
朝から嫌な事づくめで、パーティーは進むが、
俺が話す時の視線はどうしても痛い。
誰も刻印に触れない、誰も話しかけてこない。
俺が異物かのようにパーティーは淡々と進む。
居ても経ってもいられなくて、何を言おうか考える事もせず、ついに俺は口を開いた。

「あの...!」

全員が一気に俺を見た。
そんなことも気にせず俺は言い放った。

「あの、俺なんかやっちゃいました...?
 額の刻印、何か知ってるんですか、なんで話しかけてこないんですか!!!!」

 しんと静まり返る一同。俺は言ってからやっと自己中な発言をした事に気づいた。
やらかしてしまった。
一人、俺の幼馴染の賢者は、
俺の顔を見る事はせず、俯きながら

「あなたは、どうせこの話を知らないんでしょうけど、説明してあげる」

と小さくポツリポツリと話し始めた。

 この世界には人類や動物以外にも、魔族という存在はあって、
人間界と似た生活をしたり、人間と見た目が酷似している種族。
人類が生まれた時に、光と闇の二つの人種がいたそうで、
俺たち人間は光の人種。魔族は闇の人種と別れたそう。
そして、これはあくまで噂なんだけどと、幼馴染が言うには、
魔族は、18歳になったタイミングで、18歳であるうちに勝手に刻印がつけられるという。
その内容は、誰しもが知っている噂のようだったが、
残念な事に俺は引きこもるように仕事をしており、近所の噂なんて耳に入る事はなかった。
そもそも、そういうファンタジーな内容には耳を向けない質だったこともあり、
恐らく聞いていても右から左に流れては、いずれ忘れていただろう。

 幼馴染は、話し終えると急に無口になり、
先ほどより俯いてしまった。
誰も実際に、魔族がどんな刻印を付けられるのかも知らない。
誰も口を開かず、静かに風の音が聞こえるだけだ。
もしかしたら俺に付いている刻印は魔族の印なんじゃないかと自分自身を疑ってしまう。
地獄のような空気が数刻流れた時、
唐突に祖母は俺の方に向き直って、刻印の事について真剣な表情で口を開いた。

「あんた、まさかあの夢を見たのかい?」

 夢、今朝見た夢。
アレを祖母は知っているのか?わからない。
でも夢の事について話すということ。
そして今まで見た事もない祖母の真剣な表情。つまりは......
今朝の階段の夢について何か知っているのだろう――。
俺は、祖母に向かって、震える体を抑えながら、小さな声で呟いた。

「俺は、夢を見たよ。螺旋階段を下る夢を。今朝に......」

祖母は、そうかいと一言だけ呟いただけかと思ったら急に立ち上がり、
俺を誰も入ってはいけないと強く言われている奥の部屋へと招いた。


迎えに来た祖母


祖母の家
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