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アルム四神編
第三話 : 薄暗い部屋で
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祖母は、他の誰も入ったことのないという禁断の部屋に俺を招いた。
大きな三段構造のログハウスの下の階。
そこには、二重ドアに厳重に固められていた。
祖母からは、部屋に入る前の忠告として、
これから先の出来事は絶対に周りに漏らさない事と、
何があっても驚いてはいけないという二つの事がこの部屋に入る条件と言われ、
訳が分からないまま了承してしまった。
少し古めの洋風なドアを開けると、
そこは薄暗い空間で、一見した感じだと正方形の部屋を囲うように置かれている本棚と、
奥に小さなライトがあって真ん中には、よくわからない物体が動いている。
「......ッ!?」
そこには、人がいるではないか。
あまりの光景に、俺は声を抑える事が出来なかった。
薄暗くてよく見えないが、恐らく体の形を見る限り女性なのだろう。鎖に繋がれている。
彼女は一体......
祖母は一瞬こちらをキッと睨みつけると、
すぐさま俺を部屋に押し入りドアを閉めた。
「驚くなと言っただろうに、どうしてあんたはいつもいつもすぐ驚いてしまうんだい」
どうしたもこうしたも、あの状況で驚かないのがおかしいだろ、とは思いつつも、
この状況はあまりにも衝撃的で、
俺は今から祖母になにかされるのか?という恐怖に背筋が凍り、少しの発言ですら怖く一生懸命言葉を飲み込んだ。
まずは、この状況の説明からしてもらわないと
俺は緊張はおろか恐怖心が落ち着かないため祖母に聞いた。
「な、なぁ、ばあちゃん。ここは一体どこなんだ?というか、この子は一体誰なんだよ!」
薄暗い空間で、祖母の表情はあまり見えなかったが、
恐らく言うべきか言わないべきか悩んでいる表情なのだろう。
薄暗いライトで照らされた表情は重く苦しそうだった。
少女の動く鎖の音だけが響く空間でいつまでも。
しばらくの沈黙の後、ようやく祖母が口を開いた。
「この部屋は、深淵への入り口がある所さ。
そこの少女の奥に入口はある。この世界で3つし か存在していない長い長い深淵への階段さ。
あんたも、見たんだろう?深淵の夢を。なら深淵の階段がどんな所か分かるはずさ」
そして祖母は再び語り始めた。
深淵という存在そのものは遥か昔からこの星に存在していた。
しかし、数十年前、ここに深淵の入り口がなんの前触れもなく出来てしまった。
深淵だと分かったのは少し先で知り合いの考古学者などを頼りこれが深淵の入り口だと判明。
それまで世界に一つと言われていた深淵が二つに増えてしまったのだ。
世界で最初の深淵は、危険地域として管理されており、冒険者しか入れない。
もし、ここに深淵があると知られたら。
もし、それが世間に広まればこの地域は恐らく危険な領域として指定されるに違いない。
この付近には国立公園もあれば、距離はあるとは言え、都心部までが近い。
これでもし、危険な地域となったらどうなる。
公園が使えなくなるのはまだいいとしても、
都心部にまで影響がでる可能性が高い。
そう考えた祖母は、この深淵の存在を伝承の一部として消し去った。
俺は、話を聞いているだけで情報量の多さにめまいがしそうになっていたが、
ここで遮ってしまえば、もう二度と聞けないんじゃないかと自分の心に鞭を打って真剣に話を聞いた。
ある程度話し終わり、一息置くと、少女の方を向いて続けて話し始めた。
遡る事、俺が7歳の頃、
どこからやってきたのか、あの長い階段を昇ってきたのか、深淵の入り口から人が出てきたと言う。
髪は乱れて、服は見るに堪えない程傷ついていたようで、
直ぐに深淵の入り口から運びだし、水分と食事、新しい着替えに風呂まで入れたそうだ。
少女は、非常に美しい顔立ちをしており、礼儀正しかったのだ。
しかし、一つ気になった事があり、人間にはない少々特徴的な耳をしていた。
ある程度落ち着いた時に、その少女に聞いてみたのだ。
どこから来たのか、どこの人間なのか。
先ほどより警戒心が解けた少女は、
少し時間を置いて、拙い言葉でこう呟いたのだ。
私は――。
大きな三段構造のログハウスの下の階。
そこには、二重ドアに厳重に固められていた。
祖母からは、部屋に入る前の忠告として、
これから先の出来事は絶対に周りに漏らさない事と、
何があっても驚いてはいけないという二つの事がこの部屋に入る条件と言われ、
訳が分からないまま了承してしまった。
少し古めの洋風なドアを開けると、
そこは薄暗い空間で、一見した感じだと正方形の部屋を囲うように置かれている本棚と、
奥に小さなライトがあって真ん中には、よくわからない物体が動いている。
「......ッ!?」
そこには、人がいるではないか。
あまりの光景に、俺は声を抑える事が出来なかった。
薄暗くてよく見えないが、恐らく体の形を見る限り女性なのだろう。鎖に繋がれている。
彼女は一体......
祖母は一瞬こちらをキッと睨みつけると、
すぐさま俺を部屋に押し入りドアを閉めた。
「驚くなと言っただろうに、どうしてあんたはいつもいつもすぐ驚いてしまうんだい」
どうしたもこうしたも、あの状況で驚かないのがおかしいだろ、とは思いつつも、
この状況はあまりにも衝撃的で、
俺は今から祖母になにかされるのか?という恐怖に背筋が凍り、少しの発言ですら怖く一生懸命言葉を飲み込んだ。
まずは、この状況の説明からしてもらわないと
俺は緊張はおろか恐怖心が落ち着かないため祖母に聞いた。
「な、なぁ、ばあちゃん。ここは一体どこなんだ?というか、この子は一体誰なんだよ!」
薄暗い空間で、祖母の表情はあまり見えなかったが、
恐らく言うべきか言わないべきか悩んでいる表情なのだろう。
薄暗いライトで照らされた表情は重く苦しそうだった。
少女の動く鎖の音だけが響く空間でいつまでも。
しばらくの沈黙の後、ようやく祖母が口を開いた。
「この部屋は、深淵への入り口がある所さ。
そこの少女の奥に入口はある。この世界で3つし か存在していない長い長い深淵への階段さ。
あんたも、見たんだろう?深淵の夢を。なら深淵の階段がどんな所か分かるはずさ」
そして祖母は再び語り始めた。
深淵という存在そのものは遥か昔からこの星に存在していた。
しかし、数十年前、ここに深淵の入り口がなんの前触れもなく出来てしまった。
深淵だと分かったのは少し先で知り合いの考古学者などを頼りこれが深淵の入り口だと判明。
それまで世界に一つと言われていた深淵が二つに増えてしまったのだ。
世界で最初の深淵は、危険地域として管理されており、冒険者しか入れない。
もし、ここに深淵があると知られたら。
もし、それが世間に広まればこの地域は恐らく危険な領域として指定されるに違いない。
この付近には国立公園もあれば、距離はあるとは言え、都心部までが近い。
これでもし、危険な地域となったらどうなる。
公園が使えなくなるのはまだいいとしても、
都心部にまで影響がでる可能性が高い。
そう考えた祖母は、この深淵の存在を伝承の一部として消し去った。
俺は、話を聞いているだけで情報量の多さにめまいがしそうになっていたが、
ここで遮ってしまえば、もう二度と聞けないんじゃないかと自分の心に鞭を打って真剣に話を聞いた。
ある程度話し終わり、一息置くと、少女の方を向いて続けて話し始めた。
遡る事、俺が7歳の頃、
どこからやってきたのか、あの長い階段を昇ってきたのか、深淵の入り口から人が出てきたと言う。
髪は乱れて、服は見るに堪えない程傷ついていたようで、
直ぐに深淵の入り口から運びだし、水分と食事、新しい着替えに風呂まで入れたそうだ。
少女は、非常に美しい顔立ちをしており、礼儀正しかったのだ。
しかし、一つ気になった事があり、人間にはない少々特徴的な耳をしていた。
ある程度落ち着いた時に、その少女に聞いてみたのだ。
どこから来たのか、どこの人間なのか。
先ほどより警戒心が解けた少女は、
少し時間を置いて、拙い言葉でこう呟いたのだ。
私は――。
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