BAND

三木猫

文字の大きさ
2 / 5
第一章 それぞれの日々

□ 凰雅の世界 □

しおりを挟む
 晴天。カーテン越しでも朝日を感じる朝。
そんな朝日から顔を背けるように、俺は毛布を頭の上まで引っ張り、二度寝をするために体を丸め込んだ。
大体、こんな朝早くに何で行きたくもない学校に行かなきゃならないんだ。
毎朝毎朝そんな事を思いつつ、今年で学校生活も最後の年になった。
何時もの日常。だからこそ、俺は知っていた。ここで最強で最凶の目覚ましが入る事を。
「(いい加減に起きなさいっ!!)」
「うぐっ」
『脳内』に女の声が響く。キンキンと寝起きの脳を突き刺すような声に枕に頭を埋めて逃れようと頑張ってはみるものの…。
「(今日は『こちら』も良い天気なんだから、『そちら』もきっといい天気なんでしょ?ほらほら早く目を覚ましてっ)」
直接脳に刺してくる声からは逃れる事が出来ないのはもう知っていた。
それでも最後の悪あがきとして、もふっと枕にもう一度顔を押し付ける。
「あー…。『綺月(きさ)』。お前、今日も朝から元気だなー…」
「(一年の計は元旦に、一日の計は朝にあり、よっ。『凰雅(おうが)』。さぁ、起きて。行きたくないけど、学校に行こう)」
綺月の声が沈んでいる。学校嫌いは綺月も一緒、か。
「ったく、分かった分かった。準備しますよ、お姫様」
「(凰雅っ!!)」
「ははっ」
声だけで綺月が怒った事が分かり面白くて笑ってしまう。
しかし、これ以上彼女の機嫌を損ねると色々面倒だって事も長い付き合いから知っていた。
ぐるりと体を反転させて、天井を仰ぎ見る。
「(相変わらず、凰雅の部屋は何にもないですね)」
「まぁ、そうかも、だけど。でも、天井だけ見たって物があるかどうかなんて分からないだろ?」
「(え?私は天井にも色々あるよ?)」
「…そういや、『そう』だった」
彼女の部屋を思い出して、確かに天井にも花やら綺麗な壁紙やらポスターなんかも張られていたなとついつい口だけで笑ってしまう。
本当ならこうしてずっとダラダラしていたいけれど。何時までもこうしている訳にもいかない。綺月の言う通り学校に行かなくてはいけない。…起きるか。
「んで?」
「(はい?)」
「俺としては構わないけど、着替え、見る?」
「(是非)」
「ははっ、マジかっ」
そんな返事が来るとは思わなかった。
本当に彼女は面白い。自分の予想外の返事をくれる。彼女と話していると自然と笑みが浮かぶ。今の俺にとっては貴重な存在だ。
同じ事を思っているのかどうかは分からないけれど、彼女もくすくすと笑い、冗談だと答えて、すぐ傍に感じていた彼女の気配がしなくなった。
『自分』の『世界』へと戻ったのだ。
むくりと起き上がって、顔にかかる髪を掻き上げ自室を見渡す。
まぁ、確かに彼女が言うように俺の部屋には何もない。机も椅子も棚も。しいて言うならクローゼットくらいなら。備え付けだったとも言う。でも正直この部屋には何も入れたくない。寝る事さえ出来れば問題はない。
もそりとベットから降りると、枕元に置いていた愛用のハーフフレームの眼鏡をかけて、カーテンを開けることなくクローゼットの戸を開けた。
そこには雑に掛けられた…いや、俺がかけたんだが。嫌いな学校の制服を丁寧に扱う気はさらさらない。だから雑にかけても全く問題ない。
昔からの癖で上半身には何も着て寝ないから、寝巻代わりに履いていたトレパンだけをベットに脱ぎ捨て、ワイシャツを簡単に羽織り、こればっかりはちゃんと履かないといけないから茶色のスラックスをきちんと履く。それをベルトできっかり締めると、ひらひらと無駄に長くて鬱陶しい真っ白なジャケットを肩に引っ掛けて登校の準備を終わらせた。
「はぁ…。面倒だな」
何がって、…学校が。だが、行かなきゃいけない。
俺の生きている『世界』はそういう『世界』だ。
「はぁ…」
もう一度溜息が出るが、とにかく行くかと足をドアへと向けると同時にドアがノックされた。誰だと聞くのも面倒で、ドアを開けるとゴンッと見事に頭をぶつけ「ふぎゃっ」と猫が尻尾を踏まれた時の声と同じ声が聞こえ、同じ学校の女生徒の制服であるロングコート型のジャケットにタイトスカートを着ている見慣れた姿。
その女生徒に突然ドアを開けた事を恨みがましい目で下から睨み付けられた。
「何してるんだ?陽菜(ひな)」
「何ってアンタを迎えに来たんだけどっ」
ぶつけた額を撫でながら言う彼女は一纏めに結い上げた綺麗な金髪を逆立て、透き通った蒼い瞳でこっちを見る。
「迎えに?何で?」
「なんでって、それは…」
「遅刻しそうだから、でしょ?」
新たに声が増え、廊下の奥から歩いてくる金色が見える。
どんだけ遠くから聞いてるんだよ、という突っ込みもこの世界では意味がない。
何せ、この『世界』は…。
「おはよう、凰雅」
彼女の姿が一瞬の内に消えて、すぐ目の前に現れる。
そう、この世界は『魔導』が行き交っている『世界』だから。『魔導』の力を使えばどんなに遠くの会話だって聞く事は可能だ。
その『魔導』のエキスパートである眼前の彼女は澄んだ碧の瞳を柔らかくして微笑んだ。それに答えるために俺も微笑みながら口を開いた。
「おはよう。相変わらずお前の『大気魔導』は凄いな、暁菜(あきな)」
「ありがとう。でも、貴方も相変わらず凄いわよ」
「ん?」
「寝癖」
「え?あ、ははっ、そう言えば鏡見て来なかった」
「もともと見る気ないんでしょ。折角の綺麗な銀髪なのに、勿体ない」
とか言いながら人の髪を引っ張らないで欲しい。
彼女たちの身長は185近くある俺より20センチは低いから、引っ張られると首がかなり痛い。
切るのが面倒で伸ばしっぱなにした背中まで伸びた髪。
それを彼女たちは寄ってたかって鞄からブラシを取り出して、整え始める。
…何もここで、学校の寮の廊下でやらなくても良いと思う…が、それを訴える勇気は俺にはない。
彼女たちの『魔導』の力が半端ない事は知っているから。いや、例えそれがなくても逆らう気はしない。
「ちょっと、しゃがんでよ、凰雅」
「…こう?」
言われた通り膝を折ると、二人は楽しそうにブラッシングを始める。俺はペットか何かだろうか。
「所で、なぁ、陽菜、暁菜」
「ん?」
「なに?」
「お前ら、毎日毎日飽きないの?」
このやりとりも毎日の事。けれど、二人は。
「飽きないっ!」
「うん。私も飽きない。だって凰雅の銀髪、大好きだもの」
毎日この返事をくれた。相変わらずこの幼馴染の双子は優しい。
この世界での銀色の髪は『無能の証』。
そもそも、この俺の暮らす世界は『魔導四神(まどうししん)』を信仰し、その神から恩恵を受け栄えた世界だ。(『魔導四神』とは、世界を創り構成した神の事で『大いなる風を生む大気魔導神』『生の還る導べ地核魔導神』『人に知恵を与えし輝炎魔導神』『全ての源たる癒水魔導神』のことである。)
この世界に生まれ落ちた人間は名前を親に名付けられたその時から、親と共に『魔導四神』を奉る神殿へと参拝へ行き、四神いづれか一神の加護を受けなければならない。
加護を受けた者は、その証として『魔導神』の力が込められた『魔導石』を授かり、『魔導石』に触れるとその神の力を使うべき為に体の組織が変化する。そして『魔導』が使えるようになるのだ。
『魔導』は、『魔導四神』の力を使うという事。世界を作り上げた偉大な神々の力を少し借りて、様々な用途に使っている。例えば移動、情報伝達。他にも生活に関わる全てを『魔導』で担っている。しかし魔導で全てを担っているからこそ、授かった『魔導石』の持っている『魔導』の力がどれだけ強いかでこの世界では人の優劣を決めてしまう。
『魔導』の強さを推し量る上で一目で能力の強さが分かるのが『髪』だ。神の加護が強い程、加護を授けた神の髪色に近くなる。一神の加護が強ければ強いほどその色は鮮やかになる。
勿論、例外もある。例えば、幼馴染の双子と俺だ。陽菜と暁菜は金の髪をしている。これは多数の神の加護を得ている証拠で暁菜は『大気魔導神』と『輝炎魔導神』の加護を。陽菜は『大気魔導神』と『癒水魔導神』の加護を受けている。そうすると、強い加護の力により、二つの力が混ざり合い、神々しい金の輝きを放つ髪となる。複数の神の力を得るのはほとんどあり得ない現象だから、この世界ではかなり重宝され神に近い存在と崇められる。
反対に俺の髪は銀色。これは誰の神の加護も受けられなかった証。どの色にも染まらず、輝きも放たない落ち零れの色。だから『無能の証』。その無能の証をもった人間を何故か優秀な証を持った二人が気に入ってると言う。不思議だ。
こっそりと二人に視線を送るが二人は全く気付かず俺の髪を楽し気に弄っていた。
「はいっ、オッケーっ!」
「上出来ね」
二人ともやり切ったと自信満々に胸をはる。
「ありがと」
髪をゴムで一括りにしてくれたのか。さっきより髪の鬱陶しさがなくなっている。それは、少し、いやかなり有難い。
自分の髪は好きではない。『無能の証』だから。
だから切る事も手入れもしない。―――見たくないから。
それをこの幼馴染二人は理解していつも手入れしてくれている。強制的に椅子に座らされ髪をカットされたり、失敗して耳を切られたり…いや、考えるのはやめよう。
とにかく、こうして一緒にいてくれるだけでも感謝しても感謝しきれないのに。
「さ、行きましょう。学校に」
「寮と繋がってるってこういう時便利よね」
両サイドで俺の手を握って二人が歩き出す。
最終学年になってまで手を繋いで登校ってどうなんだ?
と、疑問に思った所でこいつらは離してはくれないだろうな。
大人しく手を繋いで学校へと繋がる寮の渡り廊下を歩く。廊下の窓から見える窓一杯の緑にふと目を奪われる。そんな窓に反射して双子の姿が見えた。
嬉しそうに俺と手を繋いで歩いてくれる姿は可愛い。でも、いい加減…。
「なぁ、暁菜、陽菜」
「んー?」
「なぁに?」
「お前ら、俺に付き合って歩いて登校しなくても良いんだぞ?お前らの力なら一瞬で学校に行けるだろうに」
『魔導』の力を使えば、さっき暁菜がやったように歩くことなく一瞬で学校の教室へ入る事が出来るはず。なのに、二人は『魔導神』の加護を受けられず『魔導』の使えない俺に付き合って、普通に歩いて登校している。それが、同情されているとかそんな事を思ったことはない。ただ、俺と一緒にいると二人にまで、こんなに優秀な二人にまで害が及ぶかもしれない。それが嫌なんだ。
そんな俺の気持ちとは裏腹に、二人はケロッとして言い返してくる。
「私、あんなにだらけた生活して太りたくないもの」
「私も。それに…学校の馬鹿達と一緒にいるより、凰雅と一緒にいた方が断然楽しい」
二人と繋がれた手にぎゅっと力が込められる。
―――何か、二人にも思う所があるのだろうか。
これ以上、言葉を口にする事が出来ず、せめてものお礼として二人の手を自分から握った。
「あ…」
「……凰雅」
嬉しそうに微笑む二人に微笑み返すと俺達は足を進めた。
学校内へ足を踏み込むと、今までの穏やかな空気は覆された。
(さっきまで普通に会話してたくせに、俺達が入るとこれかよ)
がやがやと寮まで聞こえていた話し声が静まり返り、視線だけがこちらへ注がれる。
辺りを見回すと、やはりというかひそひそと話す声もちらほらと聞こえた。
(…やっぱり、校内で手を繋ぐってのは、やばいな。どれだけ、二人が気にしないと言っても、俺は気にする。自慢の幼馴染だからな)
俺はわざと乱暴に二人の手を離すと、今来た道を引き返す。
「凰雅っ!」
「ちょっと、授業はっ!?」
二人が慌てて呼び止めてくる。
それに俺は振り返らず、
「ちゃんと出るよ。…気が向いたらな」
そう言って、その場を少し離れた。
俺が離れた瞬間、二人の周りに人が集まり、
「暁菜様っ、どうしていつもあの落ち零れと一緒にいるんですっ?」
「お手は大丈夫ですかっ、陽菜様っ」
次から次へと声がかけられる。二人は俺とさえいなければ、人気があるのだ。…だから、これでいい。
―――さて、どこにいこうか。
学校の中にいさえすれば二人も文句は言わないだろう。だとしたら…中庭がいいかもしれない。
真っ直ぐ中庭へ足を向ける。
当然、この学校の生徒とすれ違うけれど、皆きゃーきゃーと姦しい声を上げて去っていく。
この学校には俺を含めて男が20人程度。他は2000人近く女だ。
6歳になったら12年間、強制的に通わなければいけないこの学校。
それは世界各地にあるけれど、共通してどこも男は少ない。
どうやら男は、『魔導神』の力に耐えきれず、『魔導石』を授けられ体の組織が変えられた瞬間に死んでしまう事の方が多いらしい。もういっそ俺もその時に死んでしまえたら楽で良かったのに。そう思ったことは何度もある。けれどなんでか生き残ってしまった。…加護も受けられていないのに。
ぼんやりと今更どうでもいい事を考えていると、後ろから何か頭を貫くような殺気を感じ、俺は一息置くと横へと体をずらした。
―――ドスッ!
俺が今まで立っていた場所に氷で作られた矢が刺さる。横目で刺さった矢を見ると氷の矢はすぐさま水へと姿を変え、廊下を濡らした。
誰かが魔導で作り放ったんだろうが、今更その誰かを確認する気もない。
俺は更に連続で降ってくるであろう矢を気配で察知して回避すると、歩いて中庭へと逃亡した。
 ごくごく一般的な学校の中庭。だがこの学校の中庭には、何故か樹齢何年なのか予測不可能な位の巨木がある。その下は丁度良く木陰になっていて、昼寝には最高だった。
ここは、この学校において、数少ない俺のお気に入りの場所で。俺が高確率で出没する所為か、有難い事に学校の奴らは嫌がって寄ってこない。
木の下へごろんと大の字で横になると、ゆっくりと目を閉じた。
心地いい風が俺の上を通る。
…いっそこのまま眠ってしまおうか。
そう、ぼんやりとしていると。
「(…凰雅、さぼり?)」
脳内に声が届く。
こういう風に聞いてくるって事は、…きっと。
「綺月もか?」
「(……うん。ちょっと、分からなく、なって)」
「…じゃあ、少し休もうぜ。お前は今何処にいんの?」
「(学園の中庭。私の学園、中庭あって、そこ、大きな木、あって、その木陰、休んでる)」
「ははっ。そこまでお揃いか。俺も同じ。中庭にいる。それで一本だけある大きな木の下で。大の字になってごろんってな」
「(あぁ、それはいい。私も)」
意識を脳に響く声に集中させる。
「(ねぇ、凰雅)」
「んー?」
「(凰雅は、自分の、世界に暮らす、全ての人、嫌になる、こと、ある?)」
「……んー…ないって言ったら嘘になるな。俺はそんなに出来た人間じゃないから」
「(…そっか。そうだね)」
「なんか、あったのか?」
「(…いつもの、事)」
「…そうか」
言わなくても互いの状況が理解出来る。
そんな綺月との関係が俺にとっては心地よかった。
「(……この『世界』に、産まれて、もう18年、か)」
「あっという間だよ、ほんと」
「(…うん)」
沈黙。きっと綺月も嫌な事が頭に過っているんだろう。
でも、こういう時、俺も綺月も慰められるのは嫌いだ。余計に惨めになるから。だから何も言わないし、聞かない。
やっぱり、このまま眠ってしまおう。
互いにそう思っていたのか、綺月の気配が遠ざかり、俺も眠りの波に包まれようとした。だが…―――。
「―――ッ!?」
突然降って湧いた今まで感じた事のない気配に目を開く。
「おや、起こしてしまったかな」
目の前にある金色の瞳と視線がかち合う。濃い紫の俺の瞳とは違うキラキラの金の瞳。
…って違うっ!今の問題はそこじゃないっ。
なんでこんな顔を覗かれる位近くに寄られて気付かなかったんだっ。
大抵の奴なら少しでも傍によられるだけでその気配に気付くのに。例え寝てたとしても綺月と話していたとしても絶対に気付く筈なんだ。なのに、なんでこいつは…。
俺が驚いていているのに気付いてるのか、いないのか。
「あぁ、本当に銀の髪をしているのか」
俺の反応など一切気にせず、そいつの手が俺の髪に触れようとしてきた。伸ばされた手を慌てて払落し、体を起こし距離を取った。
金色のウェーブのかかった長髪に俺と同じ制服の『男』。そいつの髪は金色。金色の髪って事は多数の神の加護を得ているということか。しかも瞳まで金色だ。瞳もまた能力が現れる場所の一つ。それが金色と言う事は…。一つだけ心当たりがあった。俺と同じ学年の『神に愛されし男』。
「生徒長の…」
ぼそりと口に出すと、その男は耳聡く聞きつけ嬉しそうに笑った。
「おや。私の事を知っている?それは話が早いな」
話が早い?一体何のことだ?
突然現れて、意味の解らない事を言う人間を警戒するなと言う方が無理だ。体を引いて更に距離を取ろうとするが、何故かそいつは俺との距離を詰めてくる。
大体、なんでこいつはこんなに近づいてくるんだ?
更に距離を取りつつ立ち上がると、そいつも立ち上がり真正面に向かいあう。
「生徒の中でも『最も神に愛されし者』が俺みたいな落ち零れに何の用だ?」
「君に興味があってね」
真剣な顔で言うセリフがそれか。
「……俺は興味ない。それじゃ」
こいつ何かヤバいぞ。
これは三十六計逃げるに如かず。とっとと立ち去るに限る。
俺はそいつに背を向けて歩き出すと、そいつは瞬時に俺の前へと回りこみ、互いの鼻がくっつきそうな程の距離で立ち塞がる。
「…ッ」
わざわざ魔導を使ってまで瞬間的に移動するなんて。一体なんなんだっ。
「…俺、そっちの趣味はないんだけど?」
あり得ないゼロ距離に冗談でその場を切り抜けられないかと、言ってみるが。
「……ふむ」
予想外に考えこんでいる…。
そいつの反応に、色んな意味で恐怖を感じる。とにかくこのゼロ距離はヤバい。一歩後ろに下がると、何故か一歩距離を詰められた。逃げないと…。しかし、俺が全力で走ったとしても、魔導を使われてしまえばあっさりと追い付かれてしまう。
それこそ、さっきみたいに。魔導の力で瞬間的に移動して。…どうしたものか。
取りあえずどんな状況になっても最低限抵抗は出来るようにしておこう。
しかし、俺もこの学校だとかなり背の高い方に分類されると思うんだが、こいつはその俺よりも更に背が高い。
「凰雅」
いきなり名前を呼ばれた。俺は落ち零れとして名が知れ渡っているから名を知られている事には驚かないが、呼び捨てにされたのには流石に驚いた。けれどそれを顔に出すのも癪だと、務めて冷静に「なんだ」と返事を返す。結構冷たく返したつもりだったがそいつは満足そうな顔をして笑い、俺の髪に手を伸ばしてきた。
今度も払い退けようとした。だが…。
「うっ…」
体全体が紐で縛り付けられたように、動かない。やられた…。『束縛の魔導』だ。相手の行動を妨げ、束縛する。その名の通りの魔導だ。
「また払い退けられたら嫌だからね。軽く動きを止めさせて貰ったよ」
「軽く、って、レベル、か…っ」
「私にとっては『軽く』、だよ」
そう言いながら、俺の髪に触れる。
なんだ、コイツ。気味の悪いっ。
だが、目の前には幸せそうに微笑む顔がある。
「あぁ、やはり綺麗だ…。これほどの銀髪を私は見たことがない」
恍惚気に撫でるその手は、非常に、ひ・じょ・う・にっ!気色の悪いものだった。
けれど、こういうタイプに素直に反応してはかえって喜ばれそうだ。俺はただただそいつを睨み付ける。
「いいね。その瞳も実に好みだ」
うん。こいつ間違いなくヤバい。精神がどっかに旅立っているようだ。鳥肌が立ちっぱなしの俺のそんな心情を知らずにそいつは言葉を続けた。
「凰雅。私の物になりたまえ」
「……は?」
ちょっと待て。こいつ行き成り何言ってるんだ。
全然ついていけない…。
「私は綺麗なモノが好きでね。大抵の物は持っているんだが。君ほど綺麗な銀髪は見たことがない」
あぁ、成程。自分のコレクションに俺を加えようとしてる訳か。
「だ、ったら、好きなだけ、切って、持っていけ、よ」
なんとか声を絞り出すものの、その案はあっさりと却下された。
「それは出来ないね。この髪は君と一緒だからこそ美しいんだよ。…そう。君のそのアメジストの瞳と一緒だから美しいさも増す。だから、君ごと私のものにしないと」
こいつ、一体何考えてるんだ。
睨み付けるように目の前に立ち嬉しそうに髪を撫でる男と対峙する。けれど、圧倒的な実力差が相手の自信となって態度に出ていて、俺の抵抗など無いに等しい。
「しかし、本当に魔導が使えないとは…。それでよく生きてこられたものだ」
確かに魔導の力さえあれば少なからずこの束縛の魔導にも抵抗する事が出来たんだろうが。
けれど、俺は落ち零れ。そんな力なんてない。だから、こんな変態にも言われ放題言われるしかない。
まぁ、そんな状況もなかば慣れてきている自分もいるんだが。…だが、流石に変態男のものになるのは絶対にごめん被る。
―――どうするか。
今のこの現状を打破するにはどうしたらいい?
脳みそをフル回転させて、自分の持てる知識を全て使い、回避する手段を探っていた、その時。
『凰雅っ!!』
まだ、神は俺を見捨ててなかったのかもしれない。
今の自分にとっては最高に頼もしい双子の声が聞こえ、風を伴い、二人は瞬時に俺の横に現れた。
動けない俺の体をぐいっと引っ張り、生徒長から引き離し、その間に二人が体を挟ませる。
陽菜が俺を護る様に抱き着き、暁菜は生徒長と対峙した。
「御機嫌よう。燦都(あきと)生徒長」
後ろにいる俺からは表情は見えないけれど、きっと綺麗な笑顔を浮かべているんだろう。まるで見るもの全てを凍らせるような目をしながら。
昔から暁菜は、俺に絡む人間をそうやって撃退してきていた。
「これは、暁菜さん。今日も美しいね」
「ありがとうございます。燦都生徒長にお褒め頂けるなんて光栄ですわ」
穏やかな会話の後ろに、黒さを、黒いオーラを感じるのはきっと俺だけではないはず。
その証拠に、俺に抱き着いている陽菜の顔が凍っていた。
「所で、燦都生徒長。私達の凰雅にどんなご用件で?」
「いや、なに。君達が大事に大事にしている幼馴染君に興味があってね」
「…それは、どういう意味でしょう?」
暁菜が怒っている。
背中から十分それが察してとれる。正直暁菜は陽菜と違って直ぐに怒るタイプではない。
だからこそ、怒ると恐い。冷静にマジ切れするタイプだ。そうなると俺と陽菜、二人がかりで止めようとしても全く手をつけられない。だが、それを知らない生徒長はにっこりと微笑みながら言った。
「意味?不思議な事をきくね。言葉のままだよ。私は凰雅に興味がある。自分のものにしたいと思う位にね」
その一言が、完全に暁菜の逆鱗に触れてしまったようだ。
「……凰雅。教室に行きましょう」
くるっと振り返る彼女の顔は笑顔のままで。けれど、その碧の瞳は怒りで燃え上がっていた。
やばい。恐い。
この様子だと教室に戻った途端に、俺には説教が待ち受けている。
なんでだ…。俺は立派に被害者なのに。しかし、怒っている暁菜には通用しない。あぁ、でも、この魔導を受けている限り動けないんだよな。ちらりと生徒長を見る。すると生徒長は意味ありげに溜息をつく。
「今回は仕方ないか。でも、凰雅。また君を誘いに行くから」
生徒長が指をぱちっと鳴らすと体が軽くなる。束縛の魔導が解除されたのだ。
魔導が解かれたのならば、これ幸いと、
「出来れば、もう来ないで貰えると嬉しいんだけど」
はっきりと言いきる。これが正直な俺の気持ちだ。しかし、それを聞いても生徒長は笑い、そして…。
「君が私のものになるのなら、誘いに行く必要もないんだが?」
「それじゃ全く意味がないだろ。俺は誰のものになる気もない。でも、まぁ、それでも誰かのものになれと言うのなら俺はこいつらのものでいい」
誰かのものにならねばいけないと言うのであれば、俺は暁菜と陽菜のものでいい。
これは本心だった。
二人は驚き弾かれた様に俺の顔をみて、直後ぷいっと顔を逸らした。
「成程。…君を手に入れるには彼女たちを排除しなければいけないのか。…面白い」
生徒長の瞳がゆらりと揺らぐ。
……意図が読めない。こいつ、本当になんなんだ。
疑問と二人の名を出した事の後悔が脳裏を過る。しかし、やってしまった事を今言った所でどうしようもない。ならば今俺に出来る事は、せめて二人に目が向かないようにと先手を打つことだ。
出来ることは、それに先手を打つくらいだ。
「言っておくが、暁菜と陽菜に手を出したら、俺はあんたの物になる前に命を絶つ。…それだけは覚えておいてくれ」
生徒長は生きた俺が欲しい筈だ。だったら使わない手はない。でないと二人を傷つけるだろうから。俺ははっきりと言いきった。
すると、生徒長はそれがおかしくて堪らないと口元を抑え笑いだした。
「…行こう。暁菜、陽菜」
生徒長が笑い終わるのを待つ義理はない。
二人の肩を抱き、生徒長へ背を向けて歩き出す。
「本当に、いいね。ますます欲しくなったよ。…凰雅」
本当に心の底から思う。一体何なんだ。背後からする声。それを無視して歩き出す。
生徒長の執着も何もかもが面倒で俺は二人にばれない様に大きくため息をついた。
 俺達はそのまま教室へ戻り、授業を受けていた。幸いな事に暁菜の怒りは全て生徒長に向いていて、教室に戻っても俺に説教が来ることはなかった。
そもそも俺は説教を受けるような事をしてないから受ける必要はない筈なんだが。しかし、暁菜は授業をサボるからこんな目に合うんだとトクトクと説教をする。それがいつもの事だと思っていたから、こうも何も言ってこないうえに静かだと、逆に怖い。もしかして嵐の前の静けさみたいなことなんだろうか。
窓際の一番後ろ。落ち零れの俺が座るにはちょうどいい席。窓のガラスに反射して映る姿で暁菜と陽菜の様子を窺う。怒ると言うよりはなんだか表情が暗い。二人の様子が気にかかり、ずっと窓越しに眺めていると気づけば今日の全授業が終了していた。何かぼそぼそと語っていた教師が教室を出て行き、同じクラスの連中も終わった終わったとさっさと教室を出て行く。出て行き方は様々だ。魔導を使って窓から出て行ったり、座ったままいなくなったり、かと思えば廊下で誰かと待ち合わせてるとか。
何時もなら俺もさっさと教室を出て行って寮に帰るのだけど、今日は流石にそれは出来なかった。席を立ち、並んで教卓の前の席でじっとしている二人の前に立った。
「…どうした?二人共」
目線を合わせる為に膝を折って二人の顔を覗き込むと、二人は今にも泣きそうな顔をして俺を見た。
「凰雅、ごめんね…」
「ん?何が?」
「私達の所為で、あんな事言わせてしまった…」
「っと、え?」
二人が同時にぎゅっと俺の首に抱き着いてきた。震える二人の体。
…泣いてるのか?
俺は抱き着いてきた二人の背に手を回し、ぽんぽんと背を叩き二人を宥める。
「えーっと…。もしかして、さっきの生徒長との事か?」
素直に疑問に思って聞いたのに、その台詞は二人に火を付けてしまったようだ。
「それ以外何があるってのよっ」
「どうして凰雅はそうやっていつも独りになろうとするのっ。もっと頼ってくれていいのにっ」
回された腕に力が込められた。二人がかりで首に回した腕に力を込められると流石に窒息しそうなんだけど。なんて事は今間違っても口に出来ない。本当に絞められてしまうから。
きっと二人は俺が最後に生徒長に言った言葉が気になってるんだろう。
気にしなくていいのに。間違ったことは言ってない。暁菜と陽菜が幸せになれるのなら、二人が傷つかず自分の心のまま生きていけるなら、俺みたいな落ち零れが二人の為になれるのならこんな命いくらでもくれてやる。その位には二人には感謝と恩を感じているんだ。だからこそ、俺の所為で二人が傷つくなんてあり得ない。そんな事絶対にあってはいけないんだ。
「凰、雅」
「私達の大事な、凰雅」
優しい俺の幼馴染。大切な、俺の命よりも大切な双子。
「俺も…暁菜と陽菜が大事だよ。誰よりもどんな物よりも…」
―――俺自身よりも。
でも、それは言わない。優しい二人だから。俺は二人の膝裏に腕を回し、一気に立ち上がった。急に抱き上げられた二人は驚き、瞳から溢れさせていた涙がぴたりと止まる。
「さ、帰ろう。今日は俺が晩飯作ってやるよ」
わざと一際明るい声で二人に微笑みかけると、二人は目をごしごしと擦り涙の形跡を拭い去ると綺麗な笑顔をみせた。
二人を抱えたまま、教室を出て真っ直ぐ寮へと向かう。
「…所で、凰雅」
「ん?」
「私は思うのですが。そもそも貴方が授業をさぼったりしなければ」
……やっぱりここに戻るのか。今回はないと思ったんだけどな。どうやらその考えは甘かったらしい。今更彼女たちを腕から降ろして逃走する訳にも行かず。周りに助けを求める事は、二人を抱き上げている落ち零れの男と言うレッテルを張られている自分には出来る訳もなく。結局は寮へと帰る道すがらずっと暁菜の説教を聞く羽目となった。
 寮に付属されている売店で食材を買い込み、双子の部屋にあるキッチンで俺は晩飯の準備をした。本来はこんなに時間をかけずに料理は出来る。魔導の力で野菜を切り刻み火を操作して。だが、俺にはそんな事は出来ない。全て自分の手でやらねばならない。しかし、何故か知らないが、二人は俺の作る料理が酷くお気に入りらしい。明らかに魔導で作った完璧な出来上がりの料理の方が美味しいはずなのに。二人が作る料理の方が美味しいはずなのに。事実俺も二人が魔導で作る料理の方が美味しいと思う。なのに二人は俺に料理を作れと言い、作った料理を幸せそうに食べる。こんなに時間をかけて、バランスも何もあったもんじゃない料理を。
けれど、それを悪くないと思っている自分もいる。自分が必要とされていると思うから…だろうか?自分の事ながら良く解らない。
料理を食べて、二人に部屋の鍵はしっかり閉めるように言うと俺は自室へと戻った。
ドアを開けて中に入り、鍵を閉め、制服をクローゼットの中へ適当にかけ、手早くトレパンを履き、上半身に来ていたシャツを投げ捨て半裸になるとベットへとダイブした。
今日は色々あり過ぎて、何か疲れた。いつもより疲れが倍増しな気がする。
「…綺月」
無意識に名を呼んでいた。すると。
「(呼んだ?)」
直ぐに返事が返ってきた。まさか、返事が来るとは思わなかったから、驚く。
「(凰雅?)」
「あ、あぁ、うん。ごめん。無意識に呼んでたみたいだ」
「(へぇ。凰雅が無意識に?珍しい)」
「あぁ、俺もそう思う」
くすくすと笑う声が脳に届く。
「…今日は疲れたんだ」
「(…私も)」
「人気者になりたいとは思わないが、せめて目立たないように過ごしたい」
「(…うん。私もそう思う)」
「普通に生きられたら…」
「(うん…)」
ベットに体を沈めてる所為かだんだん睡魔が襲ってくる。うつ伏せが少し苦しくなってごろんと体をひっくり返すと。
「―――ッ!?!?」
息が止まりそうになる程、驚いた。本日二度目だけれど言わせて欲しい。
なんで、なんでっ、目の前に生徒長がいるんだっ!?
ベット脇に立って自分の顔を覗き込んでいる。
「やぁ、凰雅」
やぁって、やぁって何だっ!?
「って言うか、何で俺の部屋にあんたがいるんだっ!?」
「おや?言っただろう?また君を誘いに行くって」
「どういう意味の誘いなんだ、かっ!」
魔導を使われる前に拳を覗き込んでいる顔に繰り出す。
「おっ、と」
結構早く繰り出したはずなのに、寸での所で避けられた。ちっと舌打ちして起き上がり、生徒長と距離を取る。ベットの端まで。
「凄いな、こんなスピードの拳。私でなければ避けられなかったよ」
「いっそ、当たってくれた方が俺としては嬉しかったんですが?」
「すまないね。痛いのは嫌いなんだ」
悪びれなく言いやがる。そもそも何で俺の部屋にいるのか、その疑問が解けてない。
「(凰雅っ、どうしたのっ?大丈夫なのっ?)」
そうだ。綺月と会話していた最中だった。綺月もこの光景を今一緒に『見ている』筈。
「(凰雅っ!)」
「…大丈夫じゃあないが、どうにかするから、気にするな、綺月」
答えて再び意識を生徒長へと向ける。すると生徒長はどこか驚いた表情で俺をまじまじと見ていた。
一体なんだ?
今日はこのセリフばかりだ。だが、仕方ない。何せこの生徒長の行動が一切読めないのだから。
「これは、驚いたな。私の他にもこんな類稀な存在がいるとは…」
類稀な存在?
そんなの、俺が銀色の髪の落ち零れだと、この学校の人間誰しもが分かりきってる事だ。
それとも…そう言う事じゃないのか?
「面白い。本当に面白いね。決めたよ。私は必ず君を私の物にしてみせる」
「はっ?」
「覚悟しておきたまえ」
一瞬対応が遅れた。目の前に再び現れた生徒長は何故か人の頬を撫でて姿を消した。
「(凰雅…。もしかして貞操の危機?)」
「やめろ」
「(綺麗な男の人だったけど…まさか、そっち系だったとは)」
「頼むから綺月。やめてくれ」
頭を抱えたくなった。額に手を当てて溜息をつく。
「(取りあえず、ちゃんと鍵閉めて寝ようね)」
「だから、やめろって。その本気で心配してる感じ」
体から力を抜いて、ぼふっと再びベットへと横になる。
「大体、こっちじゃドアの鍵は飾りで本当は魔導で張る結界が鍵替わりなんだよ。だから、俺の部屋は鍵はないに等しい」
「(凰雅っ!!駄目よっ!!貞操がっ!!)」
ぎゃんぎゃん聞こえる綺月の声がどんどん遠くなる。
俺は色々な物から逃れるように、深い眠りに落ちて行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

おばさん冒険者、職場復帰する

神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。 子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。 ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。 さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。 生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。 ----- 剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。 一話ごとで一区切りの、連作短編(の予定)。 ----- ※小説家になろう様にも掲載中。

それは思い出せない思い出

あんど もあ
ファンタジー
俺には、食べた事の無いケーキの記憶がある。 丸くて白くて赤いのが載ってて、切ると三角になる、甘いケーキ。自分であのケーキを作れるようになろうとケーキ屋で働くことにした俺は、無意識に周りの人を幸せにしていく。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...