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襲撃されたけど不死だもの
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「マリアお姉さまっ!!」
ーー朦朧とした意識の中で可愛い妹の声がする。視界は血が滲んでしまってよく見えないけれど、泣き虫な私の妹はまた泣いているのだろう。
「⋯⋯私の可愛いミリア⋯⋯泣かないで」
そう言ってミリアの涙を拭おうと彼女の輪郭を撫でようとしても、血のせいでうまく拭ってやれない。緩慢に持ち上げていた腕も段々重たくなってきて、最後には下ろさざるを得なくなった。
「お姉さまっ!お姉さま⋯⋯」
動かなくなった私の体を抱きしめながら慟哭するミリアはあまりにも痛々しい。どうにかもう一度「泣かないで」と伝えたいけれど、持ち主の意思に反して私の口は閉口したままだった。
とりあえず、ミリアが無事で良かった。この屋敷にはもう活発な人の気配はしない。主人である私を刺した事によって、賊たちは役目を終えたと判断したのだろう。
この状況ならば無理に起きる必要もなさそうだ。最近は執務漬けでろくに眠れていなかったから、やっと眠れる。
ミリアの温かな腕の中で私は意識を手放した。
***
目を開けると見慣れた天井が視界に広がった。どうやらミリアが私をベッドまで運んでくれていたらしい。状況を把握しようと体を起こすと、激しい痛みが体を襲った。
「っ!⋯⋯あいたたた」
生理的な涙が滲んだ。何度繰り返してもこの痛みには慣れない。全身を針で刺されているかのような鋭い痛み。自然と息が乱れて、肩を激しく上下させた。
ーーその時かたん、と物音がした。きっとミリアが様子を見にきたのであろう。こんな姿の私を見たら、優しくて可愛い我が妹はまた泣いてしまうかもしれない。
私は涙を袖で乱暴に拭い、顔を引き締めて扉が開くのを待った。すると、想像通り扉から現れたのはミリアだった。
「っ!お目覚めになられたのですね⋯⋯!ミリア今度こそ マリアお姉さまが死んでしまったかと⋯⋯っ!」
私の姿を確認したミリアは持っていたお盆を落として、一目散にベッドまで駆けつけてくれた。そして私の姿を見るやいなや肩を震わせて顔を覆う。
結局泣かせてしまったことに罪悪感を覚えつつも、ミリアの愛を感じることが出来て嬉しい私は、どこかおかしいのかもしれない。
「大丈夫よミリア。私は死なないわ」
私は平静を装ってミリアに語りかける。
「今までだって大丈夫だったじゃない」
そう、私は死なない。幼い頃に受けた呪いによって、私の体は不死の体になった。不死といっても痛みがない訳ではなく、痛覚はあるけれど。それでも死なない体は私にとって便利だった。
「それでもっ!それでもとても心配だったのです⋯⋯!お姉さまが死んでしまったらミリアは⋯⋯」
堰を切ったかのように涙を溢れさせるミリアを胸に抱き寄せ、言い聞かせるように囁く。
「そんなこと心配するまでもないわ⋯⋯私が死ぬなんて絶対にないもの」
優しく撫でてやるとやっと落ち着いたのか、ミリアからは鼻を啜る音だけが聞こえるようになった。
(やっと落ち着いたかしら)
それにしても、昨夜現れた盗賊団と思わしき風貌の奴ら⋯⋯。明らかに盗賊団にしては品が良かった。きっと私の家を没落させるために、どこかの貴族に雇われた私兵だろう。脳内で今までに交友関係があった貴族や謀反の可能性のある貴族たちを思い浮かべる。正直、思い当たる所は一つや二つではない。
「さーて⋯⋯どんな仕返しをしてやろうかしら」
私の妹を泣かせた罪は重いわよ。ミリアを胸に抱いたまま、私は復讐を誓ったのだった。
ーー朦朧とした意識の中で可愛い妹の声がする。視界は血が滲んでしまってよく見えないけれど、泣き虫な私の妹はまた泣いているのだろう。
「⋯⋯私の可愛いミリア⋯⋯泣かないで」
そう言ってミリアの涙を拭おうと彼女の輪郭を撫でようとしても、血のせいでうまく拭ってやれない。緩慢に持ち上げていた腕も段々重たくなってきて、最後には下ろさざるを得なくなった。
「お姉さまっ!お姉さま⋯⋯」
動かなくなった私の体を抱きしめながら慟哭するミリアはあまりにも痛々しい。どうにかもう一度「泣かないで」と伝えたいけれど、持ち主の意思に反して私の口は閉口したままだった。
とりあえず、ミリアが無事で良かった。この屋敷にはもう活発な人の気配はしない。主人である私を刺した事によって、賊たちは役目を終えたと判断したのだろう。
この状況ならば無理に起きる必要もなさそうだ。最近は執務漬けでろくに眠れていなかったから、やっと眠れる。
ミリアの温かな腕の中で私は意識を手放した。
***
目を開けると見慣れた天井が視界に広がった。どうやらミリアが私をベッドまで運んでくれていたらしい。状況を把握しようと体を起こすと、激しい痛みが体を襲った。
「っ!⋯⋯あいたたた」
生理的な涙が滲んだ。何度繰り返してもこの痛みには慣れない。全身を針で刺されているかのような鋭い痛み。自然と息が乱れて、肩を激しく上下させた。
ーーその時かたん、と物音がした。きっとミリアが様子を見にきたのであろう。こんな姿の私を見たら、優しくて可愛い我が妹はまた泣いてしまうかもしれない。
私は涙を袖で乱暴に拭い、顔を引き締めて扉が開くのを待った。すると、想像通り扉から現れたのはミリアだった。
「っ!お目覚めになられたのですね⋯⋯!ミリア今度こそ マリアお姉さまが死んでしまったかと⋯⋯っ!」
私の姿を確認したミリアは持っていたお盆を落として、一目散にベッドまで駆けつけてくれた。そして私の姿を見るやいなや肩を震わせて顔を覆う。
結局泣かせてしまったことに罪悪感を覚えつつも、ミリアの愛を感じることが出来て嬉しい私は、どこかおかしいのかもしれない。
「大丈夫よミリア。私は死なないわ」
私は平静を装ってミリアに語りかける。
「今までだって大丈夫だったじゃない」
そう、私は死なない。幼い頃に受けた呪いによって、私の体は不死の体になった。不死といっても痛みがない訳ではなく、痛覚はあるけれど。それでも死なない体は私にとって便利だった。
「それでもっ!それでもとても心配だったのです⋯⋯!お姉さまが死んでしまったらミリアは⋯⋯」
堰を切ったかのように涙を溢れさせるミリアを胸に抱き寄せ、言い聞かせるように囁く。
「そんなこと心配するまでもないわ⋯⋯私が死ぬなんて絶対にないもの」
優しく撫でてやるとやっと落ち着いたのか、ミリアからは鼻を啜る音だけが聞こえるようになった。
(やっと落ち着いたかしら)
それにしても、昨夜現れた盗賊団と思わしき風貌の奴ら⋯⋯。明らかに盗賊団にしては品が良かった。きっと私の家を没落させるために、どこかの貴族に雇われた私兵だろう。脳内で今までに交友関係があった貴族や謀反の可能性のある貴族たちを思い浮かべる。正直、思い当たる所は一つや二つではない。
「さーて⋯⋯どんな仕返しをしてやろうかしら」
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