妖艶幽玄奇譚

樹々

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第一幕

奇ノ四十六『この両手に守るもの』

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 日々、成長していく。

 紫藤と、俺だけの時間に加わった、新しい時の流れの中で。

 子供達と。

 主・紫藤蘭丸が。

 強い絆で結ばれ、成長していっている。

 守るべきものを見つけた紫藤の心は強く、そして温かくなっていく。彼の両手は、子供達をしっかりと抱き込んでいた。

 二人を守ると、照れくさそうに顔を赤くしながらも、意思表示を伝えた。



 俺は駄目な大人だ。



 胸の奥が震え、どうしても心を制御できなくなった。

 子供達の前だというのに、感情が抑えられないとは。

 達也に大人のことを相談されたばかりだと言うのに。あまりこういったことを意識させないようにしてやりたいのに。

 子供達を守る紫藤の姿に、愛しさが込み上げて仕方がない。

「……ぁ……清次郎……ぅん……!」

「蘭丸様……」

 はだけたシャツから覗く、尖った突起に優しく口付けた。紫藤の中はとても熱く、俺を包み込んでいる。

 服を脱ぐのももどかしく、性急に紫藤を求めてしまった。解しが甘く、狭い中をなるべくゆっくり押し進んでいる。その度に、もどかしそうな手が俺の腕を掴んでくる。

「ん……!」

 苦しそうな声に、胸がざわついた。ベッドに散った長い白髪を整えるように撫で、赤味を差した頬に唇を当てる。啄ばむように口付け、紫藤の体が緩和するのを待った。

「……はっ……ぁ……はぁ……」

 ベッドに沈んだ体が、受け入れ態勢を整えたことを教えてくれる。黒い瞳は潤み、俺を呼んでいる。

「……清次郎……はよぅ……!」

 掠れた声に呼ばれ、奥を突き上げた。仰け反る喉元を見つめながら、腰を掴み、紫藤が感じる場所を突いていく。

「ぁ……ぁ……ああっ!」

 久しぶりにベッドで抱いているせいか、紫藤が乱れた。胸元を反らせ、腰を揺らし、俺を煽ってくる。

「蘭丸様……!」

「もっと……来い……清次郎!」

 紫藤の足が俺の腰を捕まえるように挟みこんでくる。期待に応えるため、抱き締めると突き上げた。風呂場のマットの上とは違い、紫藤の体が傷つくことはない。

 だから俺も全力で抱いた。



 愛しい人を。



 たまらなく愛しい人を。



「蘭丸様……ほんに愛しゅうございます……!」

「ん……ん……清次郎……!」

 俺の首にしがみ付き、感じる体に素直に涙を流している。俺の頬にも流れた紫藤の涙は、胸を熱くさせた。

 互いを抱き寄せ、息を乱す。

 紫藤の胸元、子供達には見えない場所に、口付けの跡を残していく。

「……清次郎……熱いぞ……たまらぬほど熱い……!」

「蘭丸様こそ……あまりの熱さに溶けてしまいそうです」

「お主が男前なことをするからぞ……!」

 手の甲への口付けが、よほど気に入ったようだ。スッと差し出された白い手を取り、恭しく甲に口付けてやればキュッと後ろが締まる。

 涙を流しながら微笑んだ紫藤は、俺の手を握ると、甲に口付けた。

 そのまま唇が重なった。愛しい体を掻き抱く。腰が揺れるほど打ち続ける俺にしがみ付き、自らも腰を揺らし、汗ばむ体を寄せ合った。

 やがて昇り詰めた絶頂に、紫藤の綺麗な胸が反らされる。余韻に震える姿さえ、愛しくて。

「ぁ……ぁ……はぁ……!」

 中で吐き出した俺の熱に、フルリと震えている。全てを俺に任せ達した紫藤は、乱れた白髪を顔に掛けたままベッドに沈んだ。両腕を投げ出し、汗を噴き出した体のまま横たわっている。

 俺を見上げている涙に濡れた黒い瞳と、口付けで赤く色づいた唇が、また胸をざわつかせた。

 気付かない紫藤は終わったと思ったのだろう、額に滲んでいた俺の汗を拭うように手を当て、弾む息を整えながら首を傾げている。

「……清次郎。この間もそうだが……何ぞ嬉しいことでもあったのか? 達也達の前で私を浚うなど、お主らしからぬが……」

「蘭丸様……」

 名を呼びながら、着ていたシャツのボタンを外していく。ボタンを一つ外すたびに、胸元が広がっていくからか、紫藤が息を飲んでいる。

 ハラリと、広がったシャツ。汗で濡れたそれをベッドの下に落とし、熱い紫藤の中からそっと出る。抜き取る時に震えた紫藤は、履いたままだったジーンズを脱いでいく俺を見守っている。

 全てを脱ぎ捨て、裸になった俺は、はだけさせていた紫藤のシャツも脱がせた。張りのある白い肌の全てを晒した彼に、重なるように寄り添うと、赤く染まった耳に囁いた。

「…………たまらぬほど熱いのです。蘭丸様が沈めて下され……」 

「……ぉ……おおぅ……!?」

 奇妙な驚きの声を上げた紫藤は、寄り添った俺の顔をまじまじと見つめ、鼻息を荒くするとすぐに覆い被さってきた。腕を突っ張って俺を見下ろし、そっと胸に触れてくる。

「ほ……ほんに良いのか!?」

「はい……」

「お主から誘われるとは……!!」

 目が血走り、胸の突起を摘んでくる。喉を詰まらせ、感じる俺を凝視しながら、コリコリと突起を摘んでは転がした。

「……あっ……蘭丸様……」

 名を呼ぶ俺に、次第に紫藤の息が荒くなった。指だけでなく、唇でも愛撫され、たまらず身を捩る。追いかけた紫藤の唇から伸びる熱い舌が、突起を転がした。

 スルリと滑りこんだ彼の白い手が、後ろに当てられる。足を広げ、誘えば、ゴクリと生唾を飲み込みながら指が入ってきた。

「くっ……!」

 白く長い指に解され、乱れそうになる息を整える。俺の黒髪を撫でる紫藤の手を感じながら、なるべく力を抜いて待った。

 指が増え、丁寧に解される。顔に掛かる紫藤の白髪に手を通し、掻き上げてやれば、柔らかい口付けを受けた。

「……ほんに美しい男だ、清次郎……!」

 興奮した目が血走り、俺の肩に噛み付くような口付けを落としている。そうして引き抜かれた指の代わりに、猛った紫藤のモノが入り込んだ。

「ぅん……!」

「清次郎……!」

「熱うございます……蘭丸様……!」

 紫藤を抱き寄せ、熱に耐えた。入り込んだ紫藤のモノが脈打っている。もっと奥に来ても良いと、自ら腰を押し付けた。

「ぁ……せ、清次郎……!」

 フルリと震えた紫藤が、思いきったように腰を動かし始める。俺に抱き付きながら、熱心に抱いてくれている。

 滑らかな背中を撫で下ろし、見つめてくる熱い瞳に微笑んだ。

 紫藤の手を、握り締める。

「この手で、子供らを守ってやって下され」

「……清次郎」

「達也も七海も、紫藤様を頼っております。俺は、二人を守る紫藤様をお守り致します」

 赤く染まった頬を引き寄せ、唇に触れた。重なった唇は、すぐに熱い舌を感じさせてくれる。絡まる舌を受け入れ、触れ合わせ、紫藤の腰に触れると引き寄せた。

 結合が深まる。奥まで紫藤を感じ、素直に体を震わせた。

「……蘭丸様……!」

 息を吹き込めば、心得たように奥を探ってくれる。密着した肌が汗ばみ、乱れた紫藤の息遣いが耳を擽った。

 しかと抱きとめた体が震え始める。絶頂が近い事を感じとった俺は、より感じてもらうため、後ろを引き締めた。

「うんん……!」

「あっ……!」

 しがみつき、震えた紫藤が達した。奥で迸る熱に、俺も素直に感じることで達してしまう。

 奥で暴れた紫藤のモノが大人しくなるまで、抱き締めた体を離さなかった。顔に掛かる長い白髪を掻き上げるようにして整えてやれば、震えながら体を起こしている。

 俺の中から出ていくと、寄りそうように寝転んだ。潤んだ瞳に見つめられる。

「……共に守ろうぞ」

「はい」

「あの子らが、生きて、死ぬまで見守ってやろう」

「はい」

 甘えるように抱きつく紫藤を受け止めた。そろそろ、隣の部屋に二人が入る頃だろう。

 そうしたら一度シャワーを浴びて、さっぱりしてから二人のもとへ戻ろう。

 からかう達也の顔と、恥ずかしそうに笑っている七海の顔を思い浮かべながら、紫藤の滑らかな額に口付けた。



***



 三脚に置いたデジタルカメラのタイマーを確認し、ボタンを押すと急いだ。ソファーに座って待つ、紫藤と達也、七海の後ろに回る。後ろから三人を覗きこむようにして体を固定し、視線はカメラへ向ける。

 タイマーが作動し、俺達四人を写し取る。俺が取りに行く前に、達也が駆け寄っていく。七海も一歩遅れて達也の横に立つと、デジタルカメラを覗きこんだ。

「撮れてるぜ!」

「うむ。この家の中であれば、霊の姿も映らぬでな」

 満足そうに頷く紫藤に微笑み、俺も画像を確認した。紫藤を挟むようにして座っている達也と七海、その後ろに立っている俺の姿もきちんと映っている。

「引き伸ばして飾りましょう」

 皆で生きている証だ。ぜひとも目に止まる場所に飾っておきたい。

「あんまでかいと恥ずかしいって」

「僕は嬉しいよ」

「そこそこなら良いけどよ」

 渋る達也とは違い、七海は嬉しそうだ。そんな二人にデジタルカメラを構え、シャッターを押す。あっ、と達也が手を伸ばしてくる。

「ずりーぞ、清兄!」

「良い顔で笑っているからな、つい」

「……俺が撮る!」

 俺の手からデジタルカメラを奪った達也が構えている。カシャッと音がすると、撮られてしまった。七海と一緒になって画面を確認した達也が舌打ちしている。

「ちぇっ。ドジ顔でも撮れたらおもしれぇのに」

「清兄さんだもん、難しいと思うよ」

「うむ、清次郎はどのような時でも男前故な」

 胸を張った紫藤に、すかさずデジタルカメラを向けた達也がシャッターを押している。撮れた画像を確認した達也が吹き出した。

「すっげー偉そう!」

「偉そう、ではなく、私は偉いのだ。当然ぞ!」

 ますます胸を張った紫藤に、俺も吹き出してしまった。そんな俺の腕を取った七海が引っ張り、紫藤の隣に座らせてくる。達也の元に戻った七海は、くっ付け、と両手を合わせている。

 達也がデジタルカメラを構え、待っている。

 期待に応えるため、紫藤の腰を引き寄せ、白い頬に口付けた。

 シャッターが切られ、紫藤と俺を写し取る。

 わなわな、わなわな、紫藤の手が震えているので、握り締めると今度は滑らかなおでこに口付けた。

 再びシャッターが切られる。胸に抱き締めた姿も、長い白髪を撫でる姿も、撮られていく。

 その間ずっと、紫藤はわなわな震えていた。唇はプルプル震え、白かった頬はもう、真っ赤になっていた。

 そんな姿がとても愛しくて。微笑みながら、震えが止まるよう、両頬を挟むように撫でてやった。

「清兄おっとこ前~!」

「いっぱい撮れたね」

「どれ、今度はお前達を撮ってやろう。家でプリントするからな、面白い顔でも良いぞ?」

 立ち上がり、達也の手からデジタルカメラを受け取った。七海と二人、どんな顔をしようかと相談している。シャッターチャンスを逃さないよう、いつでも撮れるよう構えて待った。

「……よし、行くぞ!」

「うん!」

 何かを閃いたのか、二人は頷き合った。紫藤の目の前に立っている。

 これでは俺に背を向けているので、二人の顔が撮れない。せっかく二人を写そうとしているのに、どうして背中を向けるのか。

 紫藤もまた、何故目の前に二人が立っているのだろう、と赤い顔のまま見上げている。大人しくなっていた紫藤は、ぶっ、といきなり吹き出した。

「あは、あはは! な、何だその顔は! お、お主ら……こ、これ、止めぬか!」

 達也と、七海の顔を見ては腹を抱えて笑っている。紫藤の、これほど吹き出す笑いは珍しくて。思わずシャッターを切っていた。

「た、達也……ぶっ! 七海も……!」

 とうとう、体を折り曲げるようにして笑っている。そんな紫藤に、達也と七海が顔を寄せては笑わせていて。

 気配を消すと、紫藤の背後に回りこんだ。笑わせるのに夢中になっている、達也と七海の面白い顔をデジタルカメラに収めていく。

 口を引っ張り、白目を向いている達也と、両頬を自分の手で潰し、唇を尖らせている七海の、変顔をしっかり撮ってやった。

「凄い顔だな!」

 何度もシャッターを押した俺に気付いた達也が、慌てて止めたけれどもう遅い。紫藤を笑わせた変顔は消させない。

「清兄! それは駄目だって!」

「良い顔だったぞ?」

「お願い! 消してくれ!」

「さて、どうしようか」

 飛び跳ねる達也からデジタルカメラを守るため、高い位置まで持ち上げる。身長差で勝つ俺の方が有利だった。

「楽しみにしていてくれ」

「消してくれって~!」

 達也の願いは却下し、デジタルカメラを守り続ける。根負けした達也が溜め息をつきながら紫藤の隣にどさりと座った。

「清次郎は強い男故、諦めるが良い」

「つか、蘭兄のひーひー顔も撮られてっぞ?」

「私は美しいからな、問題ない」

「……こうしてやる!」

 達也の手が、素早く紫藤の頬を挟みこんだ。思わずデジタルカメラを構えてシャッターを押してしまう。

 うにっと、上に引き上げられた紫藤の頬。つり目になった顔に、本気で吹き出した。

「あは、あはは!」

「こ、これ清次郎!? 笑うでない!」

「七海!」

「うん!」

 紫藤の背後に回った達也が首に腕を巻きつけ、七海は長い白髪を広げるように持っている。笑いに震える手で、何度もシャッターをきっていく。

「……己わっぱども! 懲らしめてやろうぞ!」

 紫藤が反撃に出る。まずは七海を腕に抱き、背後に居る達也を引っ張るようにして引き寄せた。二人の首に、腕を掛けている。軽く締めているのか、二人がもがいた。

「苦しいって蘭兄!」

「蘭兄さん……!」

「まだまだよの!」

 ふんっ、と鼻息を吹き出し、二人を抱き寄せている。

 その瞳は心底楽しそうに笑っていて。

 苦しいと言っている達也と七海も笑っていて。

 かしこまって撮った一枚よりも、何倍も良い顔をして笑っている三人をデジタルカメラに収めた。

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