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抱き締めても良いですか?
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しおりを挟む「終わったら先行ってて良いから!」
二人に手を振り、横並びに座った。真澄は怖いのか、ピッタリとくっついている。
「け、結構、揺れるね」
「風が少し強いから」
手を放すと腰を抱いた。細い体が震えている。宥めながら窓の外を指さした。
「ほら綺麗ですよ。だんだん上がって行きますからね」
上昇していくほどに、ネオンの輝きが強くなっていく。勇気を出して窓の外を見た真澄は、体ごと窓を向いた。
「凄い! 綺麗!」
「でしょう? そろそろ頂上ですよ」
眼下に広がる明かりの瞬き。光り輝くジェットコースターが通り過ぎていく。先ほど乗ったメリーゴーランドの屋根も瞬きを繰り返している。
俺の服を握り締めたまま、夜景に夢中になっている真澄の背中を抱き締めた。
柄じゃ無い。
こんなベタな告白をする日がくるなんて。
「真澄さんが好きです」
夜景から、俺の方へと振り返ってくれる。
「ぼ、僕も、愛歩君が大好きです!」
見上げてくる瞳を、目に焼き付けておきたい。両手で真澄の頬を包むと顔を近づけた。
「愛歩君?」
俺を呼ぶ声を塞ぐようにキスをした。
唇を離すと、真澄の目は開いたままで。驚いているその顔を、しっかり脳に焼き付けた。
「俺がΩで。真澄さんはαで」
真っ直ぐに真澄を見つめた。
「それでも、俺があなたを、抱き締めても良いですか?」
両手を広げた。ハッとしたように瞬きを繰り返し、飛び込んでくる。
「うん! 抱き締めて欲しいです!」
「……良かった」
「大好き、愛歩君が大好き!」
「俺も。めっちゃ好きです」
細い体を抱き締めた。
観覧車は最上空まで上り、下り始めている。もう一度、柔らかい唇にキスをした。唇を離すと嬉しそうに笑っている。たぶん、俺も相当顔が緩んでいるだろう。
ゆっくり回る観覧車が終わろうとしている。従業員の姿を確認した。外から鍵を外そうとしている。
真澄の体を素早く抱き上げた。ドアが開くと、横抱きのまま飛び降りてしまう。
「お客様! 危ないですから一人ずつ降りて下さい!」
「すみません! 気分が悪いみたいで」
従業員に注意を受けてしまったけれど、抱いた体はそのままに歩いて行く。誰が見ていようと関係ない。腕に抱えた人は楽しそうに笑っているから。
ツルツルしているおでこにキスをした。降ろしてやろうとしたけれど、後ろの騒ぎに振り返ってしまう。回っていたはずの観覧車が止まっている。
「ほんっとお前何してんだよ!? できるわけないだろう!? 頭打ったじゃないか!!」
「危険ですから本当に止めて頂きたい!!」
頭を押さえている慎二。複数の従業員は浩介を取り囲んでいる。
緊急停止された観覧車の中から人々が顔を覗かせているのが見えた。スッと背筋を伸ばした浩介は、深々と頭を下げた。
真澄を降ろしながら吹き出してしまう。
「秘書さんって、面白キャラ?」
「普段は冷静な人なんだけど。本当にまた、熱が出てるのかな……」
「熱がある顔には見えなかったけど」
真澄は心配そうに見つめているけれど、俺は揉めている後ろは気にしないことにした。真澄の手を取るとゆっくり歩いて行く。
「俺達があっちに行くと、気にしちゃうと思うから先に行きましょう」
「うん。慎二さん、まだ蹲ってるね」
「頭打ったみたいですね。後で詳しく聞きましょう。それよりきつくないですか?」
「うん、大丈夫」
「次のデートは公園を散歩してみましょうか」
「うん!」
指を絡め、歩いて行く。途中、ホットコーヒーを買った。真澄はホットココアにしている。ベンチに座って明るい遊園地を眺めてみる。
少し離れているけれど、子供用のジェットコースターが見えた。あれなら怖くないと思う。最後にあれに乗って帰ろう。
真澄が飲み終わるのを待って歩いて行く。
「愛歩君! あれ、あれ何?」
「ああ、夜でも着ぐるみ出てくるんですね」
ペンギンの着ぐるみが二体、陽気な音楽と一緒に歩いてくる。俺達に気付くと短い手を上げている。
「並んで下さい。写真撮ってあげます」
二体のペンギンに挟まれた真澄を写真におさめた。満面の笑顔を見せているその写真は、俺の待ち受けに決定だ。
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