抱き締めても良いですか?

樹々

文字の大きさ
109 / 152
抱き締めても良いですか?

34-4

しおりを挟む

「終わったら先行ってて良いから!」
 二人に手を振り、横並びに座った。真澄は怖いのか、ピッタリとくっついている。
「け、結構、揺れるね」
「風が少し強いから」
 手を放すと腰を抱いた。細い体が震えている。宥めながら窓の外を指さした。
「ほら綺麗ですよ。だんだん上がって行きますからね」
 上昇していくほどに、ネオンの輝きが強くなっていく。勇気を出して窓の外を見た真澄は、体ごと窓を向いた。
「凄い! 綺麗!」
「でしょう? そろそろ頂上ですよ」
 眼下に広がる明かりの瞬き。光り輝くジェットコースターが通り過ぎていく。先ほど乗ったメリーゴーランドの屋根も瞬きを繰り返している。
 俺の服を握り締めたまま、夜景に夢中になっている真澄の背中を抱き締めた。

 柄じゃ無い。

 こんなベタな告白をする日がくるなんて。

「真澄さんが好きです」
 夜景から、俺の方へと振り返ってくれる。
「ぼ、僕も、愛歩君が大好きです!」
 見上げてくる瞳を、目に焼き付けておきたい。両手で真澄の頬を包むと顔を近づけた。
「愛歩君?」
 俺を呼ぶ声を塞ぐようにキスをした。
 唇を離すと、真澄の目は開いたままで。驚いているその顔を、しっかり脳に焼き付けた。
「俺がΩで。真澄さんはαで」
 真っ直ぐに真澄を見つめた。
「それでも、俺があなたを、抱き締めても良いですか?」
 両手を広げた。ハッとしたように瞬きを繰り返し、飛び込んでくる。
「うん! 抱き締めて欲しいです!」
「……良かった」
「大好き、愛歩君が大好き!」
「俺も。めっちゃ好きです」
 細い体を抱き締めた。
 観覧車は最上空まで上り、下り始めている。もう一度、柔らかい唇にキスをした。唇を離すと嬉しそうに笑っている。たぶん、俺も相当顔が緩んでいるだろう。
 ゆっくり回る観覧車が終わろうとしている。従業員の姿を確認した。外から鍵を外そうとしている。
 真澄の体を素早く抱き上げた。ドアが開くと、横抱きのまま飛び降りてしまう。
「お客様! 危ないですから一人ずつ降りて下さい!」
「すみません! 気分が悪いみたいで」
 従業員に注意を受けてしまったけれど、抱いた体はそのままに歩いて行く。誰が見ていようと関係ない。腕に抱えた人は楽しそうに笑っているから。
 ツルツルしているおでこにキスをした。降ろしてやろうとしたけれど、後ろの騒ぎに振り返ってしまう。回っていたはずの観覧車が止まっている。
「ほんっとお前何してんだよ!? できるわけないだろう!? 頭打ったじゃないか!!」
「危険ですから本当に止めて頂きたい!!」
 頭を押さえている慎二。複数の従業員は浩介を取り囲んでいる。
 緊急停止された観覧車の中から人々が顔を覗かせているのが見えた。スッと背筋を伸ばした浩介は、深々と頭を下げた。
 真澄を降ろしながら吹き出してしまう。
「秘書さんって、面白キャラ?」
「普段は冷静な人なんだけど。本当にまた、熱が出てるのかな……」
「熱がある顔には見えなかったけど」
 真澄は心配そうに見つめているけれど、俺は揉めている後ろは気にしないことにした。真澄の手を取るとゆっくり歩いて行く。
「俺達があっちに行くと、気にしちゃうと思うから先に行きましょう」
「うん。慎二さん、まだ蹲ってるね」
「頭打ったみたいですね。後で詳しく聞きましょう。それよりきつくないですか?」
「うん、大丈夫」
「次のデートは公園を散歩してみましょうか」
「うん!」
 指を絡め、歩いて行く。途中、ホットコーヒーを買った。真澄はホットココアにしている。ベンチに座って明るい遊園地を眺めてみる。
 少し離れているけれど、子供用のジェットコースターが見えた。あれなら怖くないと思う。最後にあれに乗って帰ろう。
 真澄が飲み終わるのを待って歩いて行く。
「愛歩君! あれ、あれ何?」
「ああ、夜でも着ぐるみ出てくるんですね」
 ペンギンの着ぐるみが二体、陽気な音楽と一緒に歩いてくる。俺達に気付くと短い手を上げている。
「並んで下さい。写真撮ってあげます」
 二体のペンギンに挟まれた真澄を写真におさめた。満面の笑顔を見せているその写真は、俺の待ち受けに決定だ。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

人気者の幼馴染が俺の番

蒸しケーキ
BL
佐伯淳太は、中学生の時、自分がオメガだと判明するが、ある日幼馴染である成瀬恭弥はオメガが苦手という事実を耳にしてしまう。そこから淳太は恭弥と距離を置き始めるが、実は恭弥は淳太のことがずっと好きで、、、 ※「二人で過ごす発情期の話」の二人が高校生のときのお話です。どちらから読んでも問題なくお読みいただけます。二人のことが書きたくなったのでだらだらと書いていきます。お付き合い頂けましたら幸いです。

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【完結】初恋のアルファには番がいた—番までの距離—

水樹りと
BL
蛍は三度、運命を感じたことがある。 幼い日、高校、そして大学。 高校で再会した初恋の人は匂いのないアルファ――そのとき彼に番がいると知る。 運命に選ばれなかったオメガの俺は、それでも“自分で選ぶ恋”を始める。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

処理中です...