SweeT&BitteR ~甘く甘く 時に苦く 僕らは恋をする~

樹々

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番外編

5-4

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 くそっ……! 抱き締めたい!!



 心の中で悶えながら、父さんの手前、なんとか平静を保った。大介と二人だけなら、確実に押し倒していただろう。

「……一度、お会いしたいと思っただけです。息子を宜しくお願いします」

 ゆっくりと頭を下げた父さんに、ハッとしたように大介が立ち上がっている。直角に曲がった腰は、ピタリと九十度だろう。

「こちらこそ、宜しくお願いします!!」

 大きな大介の声に、父さんが声を出さずに笑った。

「よし! 話はまとまったところで一杯、どうです?」

 三男が父さんに笑い掛けている。父さんも顔を綻ばせた。

「そうですね。お付き合いしましょう」

「蓮司、ビールだ、ビール!」

「は~い!」

 三男がコップを、蓮司がビールを運んでいる。俺は席を立つと、大介の腕を取った。

「じゃ、俺達は部屋に戻るから」

「おう! ゆっくりしていきな!」

「お、おい?」

 戸惑う大介の腕を引っ張っていく。後ろからは蓮司も付いてきた。

「ささ、どうぞ」

「これはどうも」

 三男と父さんで酒飲みが始まった。大介が加わらなくて良いのかと小声で囁いてくるので笑ってかわした。大きな背中を押しながら階段を上っていく。

「今日、泊まらせてもらうから」

「……それならなおさら……」

「良いんだって。父さんはお前を認めた。一目会って、安心したからもう大丈夫」

「……意味わかんねぇぞ?」

「まあまあ」

 強引に背中を押して、大介の部屋に押し込んだ。一歩遅れてきた蓮司がニヤニヤしながら俺の背中を叩いていく。

「俺、今日は耳栓着けて寝るから!」

「覗いたらお仕置きするよ?」

「分かってるよ~。純兄ちゃん、ファイトー!!」

「おう!」

 腕と腕を打ち鳴らし、パンッと手も打ち鳴らして別れた。蓮司は最後までニヤニヤしながら隣の部屋に入っていく。

 俺もきっちり襖を閉め、首を傾げている大介を振り返る。汚れた作業着のまま、腕を組んで眉間に皺を寄せている彼は、分からない、と何度も呟いている。

「なあ、やっぱり俺、もう少し話をした方が……ふぐっ」

 汚れている顔を引き寄せた。合わさった唇から熱を感じる。仕事をしていた彼の体は、とても熱かった。首にすがり付いてしまう。

 ポーカーフェイスを気取っている場合ではない。男らしい匂いに目眩がしそうだ。

「……ま、待て! まだ風呂入ってねぇし! 汗だくで……!」

「終わったら入れば良いよ」

「……お、終わったらって……お前……まさか……!!」

 長い足を引っかけた。倒れ込んだ体に覆い被さっていく。

「お、親父さんが居るのにするのか!?」

「父さんも知ってるから大丈夫」

「し、知ってるって……!!」

「写真、全部見られたから。こういう関係も承知の上で、お前を認めたんだ。俺も正直ホッとした。ホッとしたら、体が熱くなっちゃった」

 にこりと笑いながらズボンに手を掛けた。必死に掴んでくる彼の手。父さんが下に居るからか、踏み切れないようだ。

 力では適わない。

 だから。

「……ん……ちゅっ……大介」

「……ぅ」

「……手……どかして」

 耳たぶにキスすると、手が震えている。力が抜けた手をどかし、ズボンのチャックを降ろした。

 働いてきた男の匂いが強くなる。

 興奮した。

「……抱いて欲しいな」

 汗の匂いを残す首筋にキスをした。フルフル、フルフル、大介の体が震え始める。下半身に添えた手は、痛いくらいに握られた。

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