SweeT&BitteR ~甘く甘く 時に苦く 僕らは恋をする~

樹々

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初恋トルネード

1.トルネード到来!?

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 真上から照りつける太陽の下で、白いタンクトップに作業着ズボンを履いた筋肉逞しい男達が行き交っている。

「おう、大介! こいつ運んでおいてくれ!」

「おっす」

 汗まみれの男達に、俺も混ざっている。噴き出す汗を拭いながら、先輩大工に言い渡されたセメント袋を持ち上げた。肩に担ぎ上げて運んでいく。

 山本家の長男である俺は家を離れ、東京で住み込み大工として働いていた。二十歳になり、出来上がった体は伸びに伸び、いつの間にか百九十センチを越えている。肩幅もでき、男として、少しは成長できただろうか。

「大介! わりぃがこっち手伝ってくれ!」

「今行きます!」

 セメント袋を置き、駆け足で先輩のもとへ向かう。途中、黄色いヘルメットを外して汗を飛ばした俺は、眩しい太陽の光に目を細め、その先に見える弟や妹、母さんの顔を思い浮かべた。



 長男・山本大介・二十歳の初夏。



 家族の笑顔のため、今日も俺の体は汗を噴き出していた。



***


 住み込み先の大塚家に帰ったのは、午後十一時を回っていた。今日は急ぎの仕事が立て込んでいたために、いつも以上に疲れていた。

 加えて、勝手に出されたテレビのせいで、妙なギャラリーが増えてしまった。なるべく笑顔でいろと、先輩達に言われているけれど煩いだけで笑えるものではない。

 それがまたセクシーだと、訳の分からない事を言われながら、コンビニに行く時も付いて来られたし、スーパーに買い出しに行った時も後を付けられた。

 冗談ではない。面倒で仕方がない。

 一ヶ月もすれば皆飽きるだろうから、と手だけは出すなと言われている。相手は女だ、殴ってはいけないことくらい、俺にも分かっている。

 だが、煩い女の声は俺をイライラさせるだけだった。もてもてで羨ましいと先輩に言われても、何も嬉しくなかった。

 風呂に入って汗を流すと、そのまま布団に転がった。六畳の質素な部屋が俺に与えられた空間だった。着替えを詰め込むためだけの箪笥しか置いていない。

 この家の中だけが、今落ち着ける場所だった。

 だるい体を横たえると、すぐに眠ってしまう。

 また、あいつの夢を見るかもしれない、そう思うと憂鬱だったけれど。眠たい体は休みを欲している。逆らえるはずがなかった。


~*~


『……大介』


 俺の胸に両手を添えた立川純が見上げている。

 やはり出てきた。

 もう、何度彼の夢を見ただろう?


『……なあ、良いだろう?』


 少し長い黒髪と、やや垂れている黒い瞳。細そうに見えて、意外にしっかりしている体つき。

 世間で言うところのイケメンの彼は、俺の肩に手を滑らせてくる。

 しなやかに抱き付き、顔を寄せてきた。

 赤い大きめの唇が、耳元に寄せられる。


『……大介……俺を……好きにして良いよ』


 気が付けば、彼が着ていた服が消えている。恥ずかしそうにしながらも、俺の頬を両手で包み込んだ。

 赤い唇が重なってくる。

 押し倒された俺は、裸の彼を見上げていて。


『大介……』


 ゆっくりと重なった体を、俺は力一杯抱き締めた。


~*~


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