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第1章 地下1階層
29話 病み上がりの同期
しおりを挟む「武器が出来るのが明後日か……それまでは久々にゆっくりしようかな」
第11階層にいた武器職人のクラフターに武器の製作を依頼しつつタウンエリアをしばらくうろついていたら、ライザー活動可能時間が迫ってきていたので急いでユグドラタワーを脱出した。
フロアランクが上がって活動可能時間も増えてきてはいるが、時間制限がない地下階層での活動に慣れてしまっていたのでタワー内にいると数時間があっという間に過ぎてしまう感覚になってしまう。
バイト中は逆に1分1秒が永遠に感じるんだけどな……
「それにしても、遂に俺もタワー内で使える武器が入手できるのかあ」
クラフターに武器製作をお願いしたときはどんな武器が作れるのかは教えてくれなかったので、完成してみてのお楽しみ。
でも渡した素材がゴキブリ型のモンスター、ブラックジェットローチの装甲なんだよな……ゴキブリの触角みたいな鞭とかだったらどうしよう。
「ブラックジェットローチと同じくらいのスピードで飛べるようになるジェット装置とかならまあ……でも見た目がゴキになるのは嫌だな」
そんなことを考えながらユグドラセンター内を歩いていた時だった。
「リュウト先輩、病み上がりの復帰戦なのに絶好調っすね~!」
「フン、ランク28の雑魚なんざハンデ貰ったって余裕だぜ」
「あっ……」
聞き覚えのある声に振り向くと、ユグドラコロシアムへと続く通路からやってきた、あまり会いたくない知り合いを発見する。
同期の郷原リュウトくんと、郷原くんを慕う後輩の越野ギンくんだ。
「ん? ……チッ。なんだ、和取か」
「やあ、郷原くん。その……怪我の具合はどうかな」
「あ〝ぁ!? 怪我なんてしてねえよ!!」
前に郷原くんと会ったときに軽く口論になり、怒って手を出してきた郷原くんを投げ飛ばしてしまったことがあった。
あの時はユグドラセンターの警備と救急スタッフに対応を任せて帰ったんだけど、後になって風の噂で郷原くんが怪我をしたらしいと聞いていたのだ。
おそらく、俺に投げ飛ばれた時に受け身が上手くいかなくて身体を強打してしまったせいだろう。
「リュウト先輩は最近まであばら骨折と高熱で入院してたんすよ! でも驚異的なスピードで回復して、今日もコロシアムで大活躍! 和取先輩、知らなかったんすかぁ?」
「そ、そうなんだ」
うーん……日奈多さんと同じ先輩呼びだけど、越野くんのはなんか馬鹿にされてる感があるんだよな。
まあ、年功序列とかは別に気にしてないし、俺より後からライザーになって郷原くんと同じくあっという間にフロアランクを上げていったから、実力でいったら俺を下に見てしまうのも仕方ないっちゃ仕方ないんだけど。
「た、退院おめでとう郷原くん。それじゃあ俺はこれで……」
「おい、和取」
「……な、なに?」
触らぬ神に祟りなしということでさっさと退散しようとしていたところ、相変わらず不機嫌そうな郷原くんに呼び止められる。
も、もしかして投げ飛ばしたことを怒っているんだろうか……?
「お前、最近遂に第1階層を攻略して万年チュートリアルじゃなくなったそうだな」
「あー……うん。今日の活動でフロアランク11になったよ」
「そうだったんすねえ。おめでとうっす」
「あ、ありがとう」
どうでも良さそうな越野くんからお祝いの言葉を貰いつつ、隣に立っている郷原くんの様子を伺う。
彼はこちらを祝うどころか、軽く睨みを利かせた邪悪な顔でこちらを見ていた。
「そうかそうか……それじゃあその調子でさっさと第20階層を突破して中級ライザーになるんだな」
「えっ? ああ、うん……」
「そしたらユグドラコロシアムでぶちのめしてやるからよ!!」
「…………」
そう言い残し、郷原くんと越野くんは去っていった。
ユグドラコロシアムに参加できるライザーは第20階層を攻略してフロアランク21になった者からだ。
どうやら郷原くんはそこで俺をボコしてこの間の復讐をしたいらしい。
「コロシアムなんて参加するつもり無いんだけどなあ……」
この世は面倒くさい事で溢れている。
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